宮里藍、涙の予選落ちの影にあったプラス1秒の進化=クラフトナビスコ選手権
そんなドラマが起こるなか、2010年春に流した宮里藍の涙もまた、1つのドラマだった。
2日間で7オーバー。パットに苦しみ予選落ち
米女子ツアー開幕2連勝で注目を集めた宮里藍だったが、無念の予選落ち。コーチに声をかけられると、その目から悔し涙がこぼれ落ちた 【Photo:日刊スポーツ/アフロ】
「今までギリギリで予選通過を繰り返していたので、ここらへんで自分がやるべきことをリマインドする結果だととらえています。自分をコントロールすることはまだまだ勉強不足。2連勝? タイもシンガポールも数億年前に終わったことのように感じている。もう過ぎたことですから。影響があるとかないとか、そういう問題じゃない。スムーズなグリーンでも入らなかったのは自分にも問題があるかもしれないし、それはこれから解決したい」
取材中は笑顔も交えて話していたが、ひとたび輪から離れ、メンタルコーチのピア・ニールソン氏から言葉をかけられると、涙がワッと溢れ出た。「本音が出たかな」。遠くで見守る父の宮里優さんがポツリとつぶやいた。
よりゆっくりになった、宮里のスイング
開幕前の練習ラウンドでは、ゴルフカメラマンを困らせる場面も。スイングの連続撮影をしようとしたカメラマンたちは1スイング3秒の設定で撮影しようとしたが、3秒に収まらず、カメラの細かい設定を急きょ変えなければならないほどだった。ミシェル・ウィー(米国)の男勝りのスイングなら2秒強。昨年まではギリギリでも3秒に収まっていたのだから、どれほどゆっくりしたテンポなのかが分かる。
宮里が4歳の頃からスイングを作り上げてきた優さんはこう解説する。
「ルーティンもスイングもさらにゆっくりになった? そうかもしれないね。(1、2月の)合宿のとき、初日に見たときはスイングが完ぺきにできていて、『ワオ!』と言ったのよ。『オレ、帰ろうか?』って。それが2日目になったら崩れてて、どうしたもんかと。リン(・マリオット=メンタルコーチ)とピアと3人でスイングを見ていたら、リンが『バックスイングでほんの少し、右手に力が入ってるんじゃないか』って気付いた。ゆっくり振るようにしたら、ずいぶんよくなりましたよ。バックスイングの力感がなくなって、トップでいいタメが作れている」
予選落ちの悔し涙も、次への飛躍のチャンス
宮里の悔し涙を間近で見ていた上田桃子は、「開幕から2勝した人が予選落ちするなんて、誰も考えてなかった。これがゴルフ。それに気付いた藍ちゃんは、一回りも二回りも強くなるんだと思う」と話した。悔し涙は飛躍のチャンス。長いシーズン、リベンジの機会はいくらでもある。自分の弱さを見つめ努力し続けることができるのが、宮里の強さなのだから。
<了>
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