レッドソックスの敗退から学ぶ

カルロス山崎

リベラも失敗を繰り返したプレーオフ

最強の守護神と言われるリベラ(ヤンキース)でさえ、いくつもの試練を経験したポストシーズン 【Getty Images】

 守護神パペルボン、まさかの炎上。

 レッドソックスはその裏、3者凡退と見せ場もなくシーズンを終えた。パペルボンの次の言葉はとても切なかったが、決して暗いものではなかった。

「(普段は)クラブハウス(球場)を出て、家に持ち返るものは何もない。でも、きょうのような負け方をして、オフシーズンに入るというのは、間違いなく、間違いなく、(きょう味わった)いろんな事、状況を持ち帰って、思い出すことになると思う。僕は、家のウエイトルームにあるテレビでこのシーンを繰り返し観ることになるだろう。そして、それを来年のモチベーションにしたい」

 その夜、ヤンキースはツインズを逆転で下し、地区シリーズ突破を決めた。8回途中からマウンドに上がったのは守護神マリアーノ・リベラ。彼は9回裏、どうしようもないファンがフィールドに乱入して、試合が中断するハプニングもあったが、自分のリズムを崩すことはなく、「チームを勝たせる」という仕事は果たした。

 このリベラでさえ、プレーオフで4度失敗している過去がある。

 97年、インディアンスとの地区シリーズ第4戦。2勝1敗で王手をかけていたヤンキースだったが、リベラが同点ホームランを浴び、結局、9回にサヨナラ負け。ヤンキースは第5戦も落とし、インディアンスがワールドシリーズまで勝ち進んだ。

 01年、ヤンキース対ダイヤモンドバックスのワールドシリーズ第7戦も記憶に新しいところ。2対1とリードして8回を迎えたヤンキースのジョー・トーリ監督(現ドジャース監督)は、リベラに2イニングのリリーフを託した。8回、3つの空振り三振を奪って無失点に抑えたリベラだったが、9回裏にはサヨナラ負けというこれ以上ない悲劇を味わった。

 04年、レッドソックスとのア・リーグ優勝決定シリーズでは、第4戦で最終回に同点タイムリーヒットを、第5戦では8回に同点の犠牲フライを許し、ヤンキースはいずれも延長の末、サヨナラ負けを喫した。

斉藤隆の対応から分かる日米の違い

 リベラも経験してきたように、パペルボンもこの経験を肥やしにしていくことになるだろう。負けて悔しいのは当たり前。しゃべりたくない自分もいるに違いないが、それでも彼らは、打たれた時こそ、自分をしっかりと見つめ、メディアに対応してきた。これは、米国では珍しいことではないだけに、日米の違いを感じるところでもある。

 日本のプロ野球では、“敗者の弁”をなかなか聞くことができない。「きょうは何もない」、「きょうはちょっと……」とか。打たれた時こそ、打てなかった時、勝てなかった時こそ、ファンは選手の声を聞きたいものではないだろうか。

 レッドソックスの斎藤隆は今シーズン、好投した時も、打たれた時(レイズ戦でサヨナラ本塁打を浴びた時)も、常に自分と向き合い、メディアにも対応してきた。彼がドジャースでさまざまな経験をしてきたことも大きな要因になっていると思うが、斎藤はその理由についてこう話してくれた。

「米国に来て多少大人になったのかな。(メディアの)皆さんが伝えてくれていることは、若い頃は普通だと思っていましたけど、発言することによって日本のファンが喜んでくれたりする。今は、それが野球選手としては当たり前のことと思っています」


<了>

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著者プロフィール

大阪府高槻市出身。これまでにNACK5、FM802、ZIP-FM、J-WAVE、α-station、文化放送、MBSラジオなどで番組制作を担当。現在は米東海岸を拠点に、スポーツ・ラジオ・リポーター、ライターとして、レッドソックス、ヤンキースをはじめとするMLBや、NFL、NHLなどの取材活動を行っている

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