上田桃子、2年目の挑戦は試練のスタート=米女子ゴルフツアーが開幕
パットでリズムを崩し、20位タイで終える
米女子ゴルフツアー開幕戦となったSBSオープンでは、最終日に崩れ、20位タイという成績に終わった上田桃子 【Photo:ロイター/アフロ】
気まぐれに吹き荒れるコナウインドが上田桃子(ソニー)にもたらしたのは、またしても試練だった。
2009年の米女子ツアーは、サーフィンのメッカ、ハワイのノースショアから始まった。開幕戦となる「SBSオープン」は、米ハワイ州カフクのタートルベイ・パーマー・コース(パー72)で行われた。
昨年の同大会で5位に入り、優勝へのリベンジを誓う上田は、初日から勢いに乗った。バックナインからのスタートで、3バーディー、1ボギーでハーフを終えると、3番ロングで今季初イーグルを奪う鮮やかなスタートダッシュ。初日を4アンダーとすると、風が増した2日目も、スコアをひとつ伸ばし、首位に3打差4位で最終日へ。逆転Vへと期待が膨らんだ。
最終日、序盤にバーディーを決め、首位にプレッシャーをかける。そう思い描いた作戦とは裏腹に、早々と歯車が狂った。
2番で4メートルのバーディートライがカップに届かずショートすると、10番では10メートル強のバーディーパットが5メートルもオーバーし、結局ボギー。パットからリズムを崩すと、12番からまさかの5連続ボギー。終わってみれば優勝スコアに11打差の1オーバー20位タイと、大きく水をあけられた。
「情けない。(スタート前の)練習グリーンでは何の不安もなかったのに、2番で思うように打ち切れなくて引きずってしまった。10番で3パットして、パンチを食らったみたいで……。自分の悪いところが出たと思う」
試合後、あふれ出そうになる涙を必死にこらえ、インタビューに応じた。
小技やメンタルが今回の敗因
最終日、チャンスホールだった3番ロングでは、25ヤードのアプローチをカップから6メートルの位置に置いてしまいパーとすると、12番では35ヤードの3打目を寄せきれずにボギーとした。
風にも負けない強弾道が武器のショットメーカーだが、コースセッティングが厳しい米ツアーでは、いかにパーを拾っていくかが勝負の鍵を握る。オフの間に男子プロの第一人者、ジャンボ尾崎にアプローチの指導を受けたが、今季初戦ですぐに生かすことはできなかった。
もう1つの敗因は、揺れた心。12番ティーグランドでは、競技委員からスロープレーを注意された。焦りもあっただろう。止まらないボギーの大波にのまれると、気持ちもゴルフも立て直すことができなかった。
最後の敗因は、準備万端ではなかったこと。人気者ゆえ、オフの間にはイベントにも引っ張りだこになり、練習と仕事のバランスが取れず「トレーニングができなかった」と本音もポロリ。また、1年間戦い抜く体力をつけるための帯同トレーナーが見つからないまま、開幕戦を迎えていた。
小技とメンタルの強さ。そして初日のティーグランドに立ったとき、勝つための100パーセントの準備ができたと思えなければ、勝利の女神は振り向いてくれない。
18番グリーン上で表彰式が行われ、駐車場へのバスを待つギャラリーが大行列をなしていたとき、誰もいない練習グリーンでは、桃子が1人、悔し涙が乾くまで黙ってパットを繰り返した。
「結果は残念だったけど、今回の経験を次の試合に生かせるように、早く気持ちを切り替えたい」
今後は日本に一時帰国し、3月5日から始まる「HSBC選手権」(シンガポール)に備え調整を行う。人一倍の負けず嫌いだからこそ、悔しさを飛躍のバネにしてきた。
だから、桃子は強くなる。目の前のハードルをクリアしていくことが、世界の頂点につながると信じて。
<了>
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