全米3連覇のフェデラーのすごみ=全米オープン
タイガー・ウッズが最前列に
試合前、タイガー・ウッズ(左)の激励を受けたフェデラー 【Getty Images/AFLO】
ウィンブルドン4連覇に重ねての全米オープン3連覇は史上初――硬軟織り交ぜたほれぼれするタフネスに地元の声援も割れ、最後は満場がスタンディングオベーションでフェデラーの通算8度目のグランドスラム優勝を祝っていた。
「粘る」ことの意味
オープン化以降3人目となる全米3連覇を達成したフェデラー 【Getty Images/AFLO】
コナーズがしきりにハッパをかけ、第2セット、ロディックはスロットル全開でフェデラーに挑んだ。ツアー最速の時速240キロのサーブ力がある。ストロークで押すことができれば、ショットに余裕が出て展開にも幅が生まれる。いきなりのサービス・ブレークで波に乗り、手がつけられない勢いになった……。だが、フェデラーは、ポイントを競り、ゲームを競り、ラリーを簡単に終わらせない長尺の展開に持ち込んだ。その様子は、さながら、土俵際の横綱。セットオールの第3セット第6ゲームが好例で、7度のジュース、5度のブレークポイントを自分のものにこそできなかったが、そこから試合の流れを引き戻している。第12ゲームをブレーク、完全に自分のペースに作り直した。
テニスではよく「我慢」とか「粘り」とか、それを支える「精神力」など抽象的な言葉が飛び交う。これは、相手の勢いをずらして自分のペースを取り戻す、いわば“時間の組み換え”をする方法論である。フェデラーの強さは、それを実践できる冷静な判断力にある。これは恐らく、タイガー・ウッズと共通するメンタリティーに違いない。
フェデラーは10月のAIGオープンに出場するため、初来日の予定だ。
明白な米国衰退
地元・米国の声援を受けて打倒フェデラーに挑んだが、ロディックの夢はかなわなかった 【Getty Images/AFLO】
男子はフェデラー、女子はエナンが4大会のすべての決勝に駒を進め、そのうちの3大会に優勝したフェデラーは年間グランドスラムに1勝だけ及ばない“準グランドスラム”だった。また、ヨーロッパの隆盛、米国の没落が明白で、米国選手によるメジャーの決勝進出者は、男女合わせてもロディックの1回きりに終わった。
また今回、採用されたビデオ判定のインスタント・リプレーの評価は、選手間ではまちまちだったが、観客の興味が徐々に薄れていったことは事実。選手からの判定要求(チャレンジ)は88試合で215回、判定が覆された確率は32%と意外に低かった。この結果は、コーチングの導入などの改革に、何らかの影響を与えるだろう。
<了>
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