孫悟空”な福留と“殿馬”なイチロー、いざ球宴へ=小グマのつぶやき

阿部太郎

3.殿馬vs.孫悟空

 先日、イチローはタイガースのガラーラガの遅球や、体に当たりそうな内角球が打てず、こう発言したという。
「殿馬にはなれへんかったな〜」。このときは“秘打”が出なかったようだが、かつてはワンバウンドのボールでもヒットにしたイチロー。そこはオールスターで対する猛者どもから“秘打”を見せてほしい。たとえば、ブランドン・ウェブの魔球シンカーやティム・リンスカムの超高速ストレートに対して、いとも簡単に芯(しん)をとらえて、「きょうは簡単に打てたズラ」なんて粋なコメントをしてくれると、盛り上がるのだけれど。

 一方、漫画つながりでいけば、福留は球団の月刊誌の1コーナーで、好きな漫画のキャラクターについて「孫悟空」と答えている。そして、「ずっと自分の筋斗雲が欲しかった」とも。オールスターにはプライベートジェット機で行くという話も出ており、自分の「筋斗雲」を手に入れるのかもしれない。まぁ冗談はさておき、孫悟空は誰よりも強い相手と戦うのが好きな男。それは福留にも通ずる部分でもある。ベン・シーツから開幕戦で2安打、エリック・ガニエから3ランを放った。ジェイク・ピービーやトム・グラビンら一流投手からもメジャー初対戦できっちり結果を出してきた。オールスターも一線級の投手ばかりで、福留の闘争本能もマックスまで届くかもしれない。案外終わってみると、「いや緊張はしなかったっす」とも言いそうだが。

2人の活躍を目に焼き付けたい

 さて、これ以外にも見どころはたくさんあると思うが、皆さんはどのようにお考えでしょうか? ここでは詳しく取り上げなかったが、確固たる“哲学”を持った2人の守備にも、注目である。

 ところで、今大会で現在のヤンキー・スタジアムでは最後のオールスターとなる。福留は「行けないと思っていた」という聖地に足を踏み入れる。やはり、何かを持った、そういう星の下に生まれた選手なのだろう。イチローはまさに、ネームバリューで、これまでの彼の軌跡で勝ち取ったオールスター。またどでかい、われわれの想像を絶するプレーを見せてくれるのだろうか。

 こう考えると、メジャーファンの多くが2人の活躍に胸をときめかせていることだろう。自分もその一人。やはり、この目で見たい。しかと、目に焼き付けたい。「よしっ!」と、ここまで興奮先走りながら、キーボードをたたいていたが、ふと気付いた。気付きたくなかった現実を。オレ、オールスター取材行けないんだった……。

「さびしいズラ」

<了>

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著者プロフィール

1978年1月9日生まれ、大分県杵築市出身。上智大卒業後、シアトルの日本語情報誌インターンを経て、スポーツナビ編集部でメジャーリーグを担当。2008年1月より渡米し、メジャーリーグの取材を行う

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