【J1マッチレビュー】FC町田ゼルビアvsサンフレッチェ広島【2025 第1節】

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたTanaLifeさんによる記事です。】

【TanaLife】

Attack Momentum by Sofascore(https://www.sofascore.com/football/match/machida-zelvia-sanfrecce-hiroshima/KmbsjNr#id:13231868) 【TanaLife】

はじめに

昨シーズン、Jリーグに大きな爪痕を残した(?)我が軍。しかし途中から相手チームによる町田対策が進み、自チームが抱えている課題の露呈も相まって失速。勝てなくなった理由を分析し、対策の対策をしても問題を解消できない状況を"ジレンマ"と位置付けて提示してくれたらいかーさんのコラムは秀逸だった。
その内容は黒田ゼルビアの現状を分析する上で非常に大きな基準となるだろう。同時にアタクシが順位予想キャスで不安を撒き散らかしていたのも少しは理解できるものだと思う。

というわけで、書き物として当面は町田ジレンマ解消プロジェクトの定例報告会をしていきます。

ただ開幕のお相手がいきなり町田の上位互換みたいな広島というのがきつい。さらに言えば広島はキャンプで多くの実戦をこなして開幕に合わせてくるチーム。コンディションや練度と強度が他のクラブに比べて高い状況であるのはスーパーカップやACL2で既に証明している。

対する町田がジレンマ解消を進めながらも、ナチュラルにこちらを上回るクオリティの相手に何が出来るか、何をさせないのかを重視したシナリオで準備と試合を迎えたのはいかにも黒田監督らしいと言えるだろう。最終的に無失点に抑えるための3バックを継続したのもそうだが、要は中野就斗のクロス対策として左ウイングバックに中山雄太をマッチアップさせた点である。左サイドの守備を高める代わりに内側には相馬勇紀を添えて攻守バランスを均等にする算段だ。

町田の序盤の選択肢と結果

いまいち疑わしいけど参考にしちゃうデータでお馴染みアタックモメンタムで見られるように、序盤の主導権は一方的でないにせよ町田が握ることとなる。その手段はロングボールとセットプレーの連打、そして即時奪取と従来通りの徹底によるものだった。強みは昨年と同じという町田の自己紹介から試合は始まる。

ロングボールに関しては、昨年の同対戦でオ セフンのエアバトルが優位に立てないことは承知済みではあるが、町田は非効率お構いなしでまずはロングボールが有効か試していた。ロングボールのパターンは①オ セフン ターゲット ②シャドー裏抜け ③望月ヘンリー海輝大作戦 を織り交ぜていた。

オ セフンをターゲットとしたロングボールはやはり広島に分があった。町田のターゲットマンは立ち位置を移動させ強度を持って空中戦に挑む傾向がある。どのチームも対策してきているが、その振る舞いに対してはまずは最適なポジショニングを取らせなければ後はマリーシア混みで不利となる対面は減少する。そうなるとやがてはターゲットマンが自滅的なファウルトラブルを抱える。藤尾翔太やミッチェル デュークにも同じことが当てはまるだろう。また、出し手側の雑なボール供給も優位性をなくす原因のひとつと言えた。

その代わりにもちヘン大作戦は有効だった。180cmあるウイングバックの東俊希であるが192cmある身体能力お化けをターゲットに空中戦と地上戦の両対応を求めるのは流石に酷だった。町田がロングボール徹底で主導権を握ることができたのは、右サイド対面での駆け引きによる優位性が主な要因だろう。

主導権観点でのジレンマ

町田の自己紹介に対して付き合い気味だった広島であるが、15分辺りからはボール保持展開が強まってくる。岡村大八の治療中に10人で守らなければならなくなった辺りから町田の我慢は続くことになるが、11人に戻ってからはリスタートからの攻めで前進できていたため、まだ一方的な展開とはなっていなかった。その中でボールは広島に握られてもリスタートはイーブンなんだぜと言わんばかりに広島のスローインを跳ね返し相馬が単騎突破から先制点を決めるさまは実に町田らしい。5-2-3のシャドーがゴリゴリに進んで決めるという点では新たな形のひとつと言えるかもしれない。人によっては平河悠を思い出すものだったであろう。

先制後のアタックモメンタムは次第に広島の圧力が増す形となっているが、町田陣営は前半の試合展開はパーフェクトに近い旨のコメントを残していた。守りきれたためという意味が強いとは思うが、スコアを動かしたことでたとえボールを保持していなくとも試合の主導権を握っていた感覚があったためでもあるだろう。要は堅守速攻のフェーズに移行していた。

広島の実力を踏まえるとここからが本当の闘いだった。広島は町田に付き合う形で縦志向ベースのアタックを実施していたとはいえ、試合の立ち上がりからボール保持では町田のファーストディフェンスをもろともしていない。どの選手も町田にプレッシングスイッチを押させないための下りる移動や裏抜けの駆け引きが上手く、町田はジャブを浴び続けていた。

5-2-3マンマーク軸のプレッシングを行いたい町田は、4-4-2調になったりと無理やりにでも追っていく頻度を増やせれば良かったのだが、逃げ場である大迫敬介からのディストリビューションもえげつなくハメることもビルドアップ妨害をすることもできない場面が多かった。プレッシング面でのジレンマは広島レベルの相手には解消しきれてはいないことを露呈していた。

最後はさせないという点で町田は我慢できていた。ミドルブロックが突破されてもローからゴール前でのブロック守備の部分で身を挺して広島の攻撃を耐えきる姿はさすがだった。ただし致命的となる問題が潜んでいた。町田はロングカウンターが遂行できず主導権を失うこととなる。広島の攻撃を防いだ後の相手の即時プレスを回避する手段が、シンプルなクリアまたは可能性が低くても優先される縦パス敢行しかないためだ。また通常のパスにもミスが表れやすい。

ロングカウンター面のジレンマは以前から顕在化していたが現在も解消できていない。厄介なのは1-0で勝利するのが至高というゲームモデルや該当するプレー原則、そして成功体験がプレス回避の成長と相反している点だろう。高いレベルに辿り着くためにはプレス回避の練度向上が必須であるが、成功体験を重視するあまり自陣で致命的なリスクを負うことを町田は避け続けているゆえ解消に時間がかかる難題となっている。

急務となる流行セットプレーへの対応

前半を良しとして終え、後半立ち上がりも縦志向ベースでイーブンに試合を運べた町田。従来と同じで!と抱えているジレンマをひととき忘却し試合の行く末に辿り着きたかったが菊池流帆離脱の影響でそれも叶わなかった。カウンターが成就しないうえ、少ない攻撃もクロス連打がいつものように失敗に終わる。ミドルブロックからのプレススイッチは川辺駿の暗躍によりハマらない。最終ラインが下がる傾向も増える。

グループ守備で対応すれば良いにも関わらず林幸多郎が単騎で突っ込みセットプレーを与え同点に追いつかれた場面では、この試合何度も披露されたセットプレー開始時の広島の振る舞いに注目する。ファーサイドに集団を形成し相手を押し込みながら中央・ニアサイドになだれ込む形はアーセナル式。守備側が背後からの競り合いでポジショニングやクリアのタイミングに遅れが生じたり、失点場面のように倒れやすい傾向があるのが特徴であり、とうとう日本にも入ってきた。現在のところ効果的な対応策はなくやり得なセットプレー戦術と言える。この失点を機にいち早く守備の順応化の準備をしなければ昨年のような少ない失点数に抑えることは望めないだろう。開幕戦で新たな課題を得られたことをポジティブに捉えるしかない。

追いつかれてスコアによる優位性を失った町田は従来通りの徹底が通用しなくなり、また二度の負傷交代により適したタイミングでの交代策が取れないため広島の仕掛ける地上戦の前にジリ貧となる。その辺りの広島視点の詳細はたぶん他の分析レビューコンテンツに詳しく書かれているだろうし、当分の間は分析・議論した方が良いだろう。

町田は最悪を免れるタイミングで3枚替えをすることができたが、センバに移った中山にロングボールを放つ前のコントロールミスが出てしまい、ジャーメイン 良のプレスとその後の強烈なシュートから中村草太伝説の幕開けとなりそうなJ初出場ゴールを献上してしまい試合は決着した。

おわりに

広島が相手とか関係なしに、3バック軸にしながらも昨年からの踏襲感が色濃い町田だった。抱えているジレンマも昨年と同じなので解消には時間がかかるという判断と覚悟すら感じる。ネガティブなことを延々と書いてしまったが、選手たちのポテンシャルの高さと百戦錬磨の黒田イズムは健在なのである程度やれるだろうという現在地予測の所感に変わりはない。ネクストステージのためにジレンマを追い続けていて内容がこんな感じになっちゃうという点をご了承ください。

なおこの時点で東京戦が終わっているので急いで次の報告会の準備をしなければならない。忙しい日常が帰ってきた。モンハンもやるけど。

試合結果

明治安田J1リーグ 第1節
2025年2月16日(日)14:03KO
町田GIONスタジアム
FC町田ゼルビア 1-2 サンフレッチェ広島
26'相馬 勇紀
59'トルガイ アルスラン
77'中村 草太

晴のち曇 / 15.7℃ / 37%
主審 山本 雄大 副審 日比野 真、坊薗 真琴
第4の審判員 中川 愛斗
VAR 川俣 秀 AVAR 俵 元希
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