〜ミシャ体制のコンサドーレを振り返る〜選手別雑感④(ウイングバック編)

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【これはnoteに投稿されたoreoさんによる記事です。】

MF 菅 大輝(2016〜2024)

 ユースではFWとしてプレーしていましたが、2017シーズンにトップチーム昇格後、四方田監督によって左ウイングバックにコンバートされ、ミシャ体制ではスタメンに定着。サイドをアップダウンし続けることができる運動量とパンチ力のある左足を武器として活躍しました。負傷離脱が少ないことも多くの出場機会を得られた要因でしょう。

 福森や中村など左CBが攻撃的な特性を持つ選手であり、最終ラインのカバーも求められることから、上下動し続けることができる菅がスタメンで起用されるのは必然だったと思います。一方でウイングバックとしては縦への仕掛けが得意ではなく、バックパスの多さを揶揄されることもありました。良くも悪くも安定感が持ち味と言えるでしょう。2021シーズンからは福森の不調もあり、左CBで出場することもありました。

 菅キャノンと呼ばれる左足の強烈なミドルシュートでチームを救うこともありましたが、昨季限りで契約満了となりました。最終節柏戦終了後はベンチで涙を流すなど、コンサドーレへの愛着が相当強い選手でした。新シーズンは広島でプレー。アジアの舞台にも挑みますので、そのプレーぶりに注目です。

MF 早坂 良太(2017〜2020)

 四方田体制では右ウイングバックの主力として、2017シーズンのJ1残留に大きく貢献しましたが、ミシャ体制では駒井、白井、ルーカス、金子と次々にサイドアタッカーが加入したことで控えに回りました。ウイングバックのみならず、シャドーや右CBもこなすなどユーティリティ性がある貴重な選手として、ミシャからの信頼も厚かったと思います。

 金子やルーカスのようなドリブル突破があるわけではありませんが、攻守のバランスを取ることに長けており、足元の技術も高く、ミスも少ない選手でした。石川とともに、ベテランとして途中からチームを引き締める役割にはうってつけの選手だったと言えるでしょう。

 前述の通り、多くのサイドアタッカーが加入した影響で徐々に出場機会を減らしていき、2020シーズン限りで現役引退となりました。派手さはありませんが、堅実な仕事人というイメージでミシャ体制初期のコンサドーレを支えた功労者の1人でしょう。

MF 白井 康介(2018〜2020)

 2018シーズンにJ2愛媛から加入しましたが、当初は駒井と菅のウイングバックが定着していたことで、序列は低いものでしたが、ルヴァン杯でのアピールにより同シーズン後半戦からは途中出場でチャンスを掴みました。

 2019シーズンは菅が日本代表招集で離脱した間に左ウイングバックで先発起用されると鋭いドリブル突破を武器に活躍。菅の復帰後はルーカスに代わって右ウイングバックの定位置を一時的に確保し、ルヴァン杯決勝でも菅の先制点をアシストする活躍を見せました。スピードがあり、縦突破や相手の股を抜くドリブル突破が特徴的でした。守備面でも献身的なプレスバックが光り、右サイドを支えました。

 2020シーズンに入ると、自身の不調やルーキー金子の台頭もあり、出場機会が激減。2021シーズンからは出場機会を求めて当時J2の京都へ移籍し、J1昇格に貢献。2023シーズン夏からはFC東京に移籍し、サイドバックとして活躍しています。2020シーズンのパフォーマンス低下と金子の台頭が重なってしまったことにより、スカッドから押し出されてしまったと言えるでしょう。

MF ルーカス・フェルナンデス(2019~2023)

 2019シーズンに前シーズンに右ウイングバックの主力として活躍していた駒井をボランチにコンバートするために、新たな右ウイングバックの主力として期待され加入しました。前任の駒井同様に鋭いドリブル突破と精度の高いクロスを武器に1年目から主力として活躍しました。

 2020シーズン後半から金子の台頭により、左ウイングバックにも挑戦し、カットインからのシュートやインスイングのクロスといった右サイドとは異なるプレーを見せました。最も得意としていたのは右サイドで幅を取ってドリブルで敵陣深くに侵入してチャンスクリエイトするプレーですので、ミシャも金子との併用は試行錯誤が続いていたなという印象です。2019シーズンは負傷者続出時にシャドーで起用されたこともありましたが、フィニッシュワークやディフェンスを背負いながらのプレーに課題を抱えていたため、2020シーズン以降は、ウイングバックでのプレーに専念することになりました。ただ、サイドでのチャンスクリエイトはコンサドーレの武器の一つとなっていたことは確かでした。

 2023シーズンは負傷で出遅れると、復帰後も調子が上がらず、来日後初のシーズンノーゴールに終わりました。このシーズンのプレー内容だとフロントが契約更新の際に高額年俸を提示しなかったことも頷けます。結果的にシーズン終了後、契約更新の交渉が決裂して退団。C大阪へ移籍することになりました。C大阪では3トップの右として守備のタスクが減り、攻撃に専念できるようになったことで、リーグトップの10アシストをマークしました。

MF 中野 嘉大(2019~2021)

 左ウイングバックで菅の競争相手として2019シーズンに仙台から加入しました。スピードというよりは、技術で相手を剝がしていくタイプのドリブラーでラストパスの精度も高く、新たな攻撃のピースとして大きな期待をかけられていたと思います。

 しかし、コンサドーレの左ウイングバックは福森のカバーなど守備面でのタスクが多く、上下動を繰り返すスタミナが求められるため、走力に長けた菅の起用が多くなってしまいました。コンサドーレでは右ウイングバックやシャドー、ボランチといったポジションにも挑戦。特にボランチではパスセンスが発揮しやすいポジションだったこともあり、ミシャからの評価も高かったと思います。その証拠としてオールコートマンツーマンの初陣とも言える2020シーズン第7節の横浜FM戦ではボランチで先発出場。中盤で存在感を発揮していましたが、前半で負傷交代となってしまいました。結果的にこの試合の負傷が中野のコンサドーレでのキャリアを決定づけるものとなってしまいました。

 負傷から復帰後はボランチのポジションで高嶺が台頭し、荒野が好調なパフォーマンスを見せたことに加え、本職の左ウイングバックもルーカスの起用が増えたことで構想から外れてしまいました。2021シーズン開幕直後に出場機会を求めて鳥栖へ移籍し、湘南でのプレーを経て現在は四方田監督率いる横浜FCでプレーしています。

MF 金子 拓郎(2019~2023)

 大学在学中の2019シーズンにプロデビューを果たし、1年目の2020シーズンからコンスタントに出場機会を掴みました。2020シーズン後半からは右ウイングバックと右シャドーでの起用で固定され、切れ味鋭いドリブル突破とカットインからの左足を武器に攻撃の中心となりました。

 2021シーズンはシャドーでの起用が多い中でチーム2位タイの7ゴールをマークしましたが、当時は左足一辺倒で、複数人でのマークに苦しんでいた印象です。大きく成長を見せたのが、2023シーズン。スピードの乗ったドリブルは手の付けられない領域となり、縦突破からの右足クロスの精度が大きく向上したことで多くの得点に絡みました。同シーズンは夏場までにキャリアハイの8ゴールをマークするなど大活躍を見せました。

 2023シーズンの活躍から、海外クラブからも熱視線を注がれるようになり、同シーズン夏にクロアチアの名門ディナモ・ザグレブへレンタル移籍。UEFAカンファレンスリーグでも活躍しました。その後ベルギー1部のコルトレイクへの完全移籍を経て、今季より浦和でプレーします。J1の舞台で再びその鋭いドリブル突破を見せてくれることでしょう。

MF 田中 宏武(2021~)

 スピードが売りのサイドアタッカーとして期待され、大学卒業後の2022シーズンに入団しました。両サイドをこなせるユーティリティー性を持ちますが、金子、ルーカス、菅とライバルが強力であったこともあり、加入から1年半でリーグ戦僅か1試合の出場に留まりました。2023シーズン後半戦はJ2藤枝にレンタル移籍し、実戦経験を積んでいます。

 レンタル移籍から復帰した昨季は、怪我人続出の前半戦に先発出場のチャンスを掴み、特に第18節の京都戦では左サイドで効果的な仕掛けを見せるなど奮闘しました。クロスやラストパスの精度に課題があり、なかなか出場機会が得られていませんでしたが、徐々に精度を上げてきている印象です。得点やアシストといった目に見える結果が得られれば、更に序列を上げることも可能でしょう。

 今季は菅が退団したことにより空席となった左ウイングバックで定位置争いをすることになるでしょう。昨季のプレーを見ても右サイドより左サイドの方がプレーしやすいのかなという印象を受けました。大卒4年目ですので、勝負のシーズンと言えるでしょう。

MF 近藤 友喜(2024~)

 金子、ルーカスとウイングバックのドリブラーが次々に退団したことで、後釜として横浜FCより昨季加入しました。タイプ的には金子よりもルーカスに近い印象で、縦へのドリブル突破からの右足でのチャンスメイクが得意の選手です。

 昨季は開幕スタメンを勝ち取るも、いきなり負傷離脱。復帰後は不慣れな左サイドで起用されたりとミシャも最適解を探っているような状況でした。縦への仕掛けはチームで最も期待感がありましたが、守備やスタミナに課題を抱えており、途中から流れを変えるジョーカーのような起用法の方が持ち味は発揮されやすいのかなというのが序盤戦の印象でした。しかし、シーズン後半戦は守備やスタミナといった課題を徐々に克服し、サイドでのドリブル突破のクオリティーも大きく上がりました。近藤の仕掛けから相手の守備をこじ開けるシーンも多く、そのプレーぶりは高校・大学の先輩でもある金子を彷彿とさせるものでした。

 昨季後半のプレーぶりからJ1クラブの注目の的になることは間違いないと思っていましたが、複数クラブからのオファーを断り、残留することになりました。J2では反則級のドリブラーだと思いますので、慰留に成功したのは大きな補強と言えるでしょう。今後のキャリアも考えると今季のJ2ではプレーの幅を広げていくことが求められてくると思います。

MF 原 康介(2024~)

 昨年の全国高校サッカー選手権で名古屋高校の一員として活躍し、沖縄キャンプ中に練習生から正式契約を勝ち取りました。スピードはプロでも通用する水準だと思いますが、身体の線が細く、プロで活躍するには時間がかかるのかなという印象でした。

 キャンプ中に首脳陣を驚かせる程のサッカーIQの高さを見せると、負傷者続出により、第2節鳥栖戦でJリーグデビューを飾りました。第4節の町田戦ではチームのシーズン第1号ゴールを記録し、チームが苦しい状況だったこともあり、彼のプレーが大きな希望となっていたサポーターも多かったことでしょう。ただ、フィジカル面ではまだまだJ1の水準に達していないこともあり、長い時間出場した試合では、対面の相手に潰されることも多くなっていました。当然かもしれませんが、スタメンとしてプレーするにはまだ早いのかなという印象です。

 シーズン後半戦は負傷者が復帰してきたこともあり、ベンチ入りもできない状況となってシーズンを終えましたが、プロ1年目のJ1で2ゴールという結果を残したのは大きな自信になるでしょう。フィジカル強化に成功できれば大きく飛躍できる可能性を秘めていますので、今後の成長ぶりに期待しましょう。
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