緊張、チャージ、そして突き放す。世界的名手が見せた「勝ちたいという気持ち」
東芝ブレイブルーパス東京 リッチー・モウンガ選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】
さすがのスーパースターも、リーグワンの開幕戦を前に緊張の色が隠せなかった。
「もちろん緊張していました。お腹がちょっと痛くなるぐらいに」とBL東京のリッチー・モウンガ。幾多の修羅場を乗り越えてきた世界的名手も“人の子”だった。
それでも、試合が始まれば、リッチー・モウンガはスーパースターの実力を存分に発揮した。0対16からの逆転を信じて戦ったBL東京は、前半終了間際の初トライを機に反撃の機運を高めると、後半15分にリッチー・モウンガのトライで逆転に成功。直後のコンバージョンキックも決めた。
ところが、突き放しても追いすがる横浜Eは後半23分、ヴィリアメ・タカヤワが左の大外でトライを奪取。これでスコアは21対21と、両者は一歩も譲らなかった。
田村優のコンバージョンキックが決まれば、横浜Eの勝ち越し──。最大のピンチにリッチー・モウンガが立ち上がった。キックモーションに入った田村に対し、リッチー・モウンガは少しでもキックの精度を狂わせようと果敢にチャージをしかけた結果、田村のキックがゴールの枠を外れた。
「勝ちたいという気持ちの一心でチャージを掛けに行きました。プレシーズンの時期に横浜Eと戦ったときも、キッカーはけっこう時間を取ってゆっくり蹴るタイプの選手だったので、絶好のチャンスかなとプレッシャーを掛けに行きました」
点差をつけられても、決して勝負は捨てない。リッチー・モウンガの機転でピンチを乗り越えたBL東京は後半30分に眞野泰地のトライで突き放すと、リッチー・モウンガがコンバージョンキックも決めて熱戦に決着を付けた。
「追い掛ける状況において大事なのは、何か特別なことをしようとするよりは、目の前のことを一つずつ信じてやるしかない」。モウンガ流の持論とポリシーが導いた逆転劇に、横浜Eの田村は「勝負どころで相手が1枚も2枚も上手だった」と脱帽していた。
なお殊勲のリッチー・モウンガは、ロサンゼルス・ドジャースのキャップを被って取材エリアに登場。その理由を聞かれた彼は冗談混じりにこう応えている。
「ショウヘイ・オオタニ(大谷翔平)と会える方法があれば教えてください。ピッチャーの山本(由伸)選手も好きですね。(来年3月日本開幕の)プラチナチケットをください。オネガイシマス(笑)」
開幕戦のヒーローは、どこまでも饒舌だった。
(郡司聡)
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