【朝日杯FS】未勝利勝ちから一足飛びの頂点アドマイヤズーム、来春NHKマイルCへ川田騎手「楽しみにしてもらえたら」

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アドマイヤズームが朝日杯FSを快勝し2歳マイル王者に 【Photo by Shuhei Okada】

 JRAの2歳マイル王者決定戦・第76回GI朝日杯フューチュリティステークスが12月15日、京都競馬場1600m芝で行われ、川田将雅騎手が騎乗した5番人気アドマイヤズーム(牡2=栗東・友道厩舎、父モーリス)が優勝。2番手の好位追走から最後の直線を突き抜ける完勝で2歳マイル王の座に就いた。良馬場の勝ちタイムは1分34秒1。

 アドマイヤズームは今回の勝利でJRA通算3戦2勝、重賞は初勝利。川田騎手は2017年ダノンプレミアム、20年グレナディアガーズ、23年ジャンタルマンタルに続き朝日杯FSは3勝目。管理する友道康夫調教師は18年アドマイヤマーズ、21年ドウデュースに続き同レース3勝目となった。

 2馬身半差の2着にはクリスチャン・デムーロ騎手騎乗の2番人気ミュージアムマイル(牡2=栗東・高柳大厩舎)、さらに2馬身半差の3着には今年デビューのルーキー吉村誠之助騎手が騎乗した9番人気ランスオブカオス(牡2=栗東・奥村豊厩舎)が入線。1番人気に支持された武豊騎手騎乗のアルテヴェローチェ(牡2=栗東・須貝厩舎)は5着に敗れた。

期待の逸材、2戦目でガラリと成長

「2戦目でガラッと成長した」と川田騎手、この日のレースも文句なしの競馬内容だった 【Photo by Shuhei Okada】

 好位2番手からの鮮やかな勝利。そして、前走未勝利勝ちから一足飛びでの重賞初挑戦がGIという舞台にも関わらず、2着以下に2馬身半差の完勝だ。2025年の競馬が楽しみになる大物登場と言っていい。

「新馬の時から期待していた馬なので、予定通りここまで来てくれてホッとしています。前走の未勝利戦はデイリー杯2歳ステークスの翌日だったのですが、時計を比較してもGIでもいい競馬ができるなと思っていました」

 友道調教師が未勝利勝ちから一気の格上挑戦で朝日杯FSを使うに至った経緯を説明した。デビュー3戦目で朝日杯FSへ、これはもともと友道厩舎が思い描いていた青写真。それほどの期待をかけていた逸材だったのだが、デビュー戦でまさかの4着といきなりつまずいてしまった。川田騎手が振り返る。

「初戦は調教の感じほど競馬場では動きが出なくて、返し馬の時点で『これはきついな』と。その通りにレース中もなかなか動きが出ないまま初戦を終えてしまいました」

 しかし、レースを一度使ったことでアドマイヤズーム自身が競馬というものをきちんと学習できたのだろう。「2戦目で雰囲気が変わってくれて、ガラッと成長したなと思いました」と川田騎手。今度は持てる能力をキッチリと出し切り、3馬身差の快勝。メンバー、ペースの違いがあるため一概には比較できないが、前日に同じ京都芝マイルで行われたGIIデイリー杯2歳Sより0秒8も速い勝ちタイムだった。

「これはもう負けることはないなと」

追い出されると鋭く反応して突き抜けたアドマイヤズーム、友道調教師は「いい脚を長く使えるのがストロングポイント」と語る 【Photo by Shuhei Okada】

 そして、この日のレースも未勝利戦をなぞるような好位2番手からのスムーズな競馬。急遽の乗り替わりとなった横山典弘騎手のダイシンラーが半マイル48秒0、1000mを60秒4というスローペースに落とす中、川田騎手&アドマイヤズームは折り合いを欠くこともなくしっかりと脚をタメることができた。

「気持ち良く走り続けることを優先してあのポジションに。とにかくリズムを大事に、これ以上ムキにならないようにとケアしながらの道中でした。しっかりと我慢することができましたし、最後の3、4コーナーもとてもスムーズに下ってくることができました」

 抜群の手応えのまま直線に入って間もなく先頭に立つと、川田騎手の追い出しに鋭く反応して後続をアッという間にちぎったアドマイヤズーム。

「4コーナーで少しだけ反応を見た時にしっかりと動ける雰囲気がありましたので、これはもう負けることはないなと。ですので、なおさら丁寧に馬場を選びながら、今後のためを思ってある程度しっかりと動かしていきました」

 重賞馬や2勝馬たちをまるで問題にしなかった破格の勝ちっぷり。友道調教師も「追い出してからの反応がいいですし、いい脚を長く使えるのがこの馬のストロングポイントなのですが、今回も抜け出す脚は凄かったですね」と手放しで絶賛していた。

気性面に課題、その分だけ成長の余地もまだまだ

テンションが高くなるとブレーキが利かなくなるなど気性面での課題もあるが、それだけ成長の余地が残されているということだ 【Photo by Shuhei Okada】

 2戦目、そして今回の朝日杯FSの危なげない競馬内容を見ると、完成度の高い馬という印象を持って当然。だが、その成長曲線についてトレーナーは次のような見解を述べている。

「まだまだと言いますか、レース中はすごくお利口さんで操縦性の高い馬なのですが、ゴールした後が大変みたいで、今日も止めるのに一苦労したみたいです。そのあたりも含めてまだまだ良くなっていく馬だと思います」

 この「レース後に止まらない」という点に関しては、川田騎手も明確な課題として言及している。

「2戦目でもゴールして止めて戻ってくる時に、もうどんどんとコントロールが利かなくなり、止まらなくなるような感じになっていきました。テンションが上がっていくごとにブレーキが利かなくなっていきますので、今回もレース前から消耗しないようにと返し馬から、ポケットでの過ごし方、ゲート裏での過ごし方に気を付けていました。今日もゴールしてから止めるのがなかなか大変でしたし、そういう面が難しいところです」

来春の目標はNHKマイルカップ「一番良いコンディションで」

来年春は3歳マイル王座を目指し、府中マイル戦へと挑む 【Photo by Shuhei Okada】

 そうした“難しさ”も考慮すると「マイルがベストだと思います」と川田騎手はキッパリ。友道調教師もジョッキーとの意見交換の中で「来春はマイル路線」と腹は決めており、目標はクラシックではなくNHKマイルカップだと明言した。

「今後のことはオーナーと相談することになりますが、来年の春はNHKマイルカップを目指して、そこに一番良いコンディションで出られるように番組を組んでいきたいと思います」

 朝日杯FS→NHKマイルカップ連勝と言えば、友道厩舎がアドマイヤマーズで、川田騎手は昨年のジャンタルマンタルですでに経験済み。その2人がタッグを組むのだから、これほど強力なチームはないだろう。

「ポテンシャルのある馬ですので、これから先も良い育ち方をして、皆さんに喜んでいただける競馬を提供できる1頭としてしっかり走ってくれればと思います。また来年も楽しみにしてもらえたらなと思います」と川田騎手と期待も大きい。

 2歳マイル王から3歳マイル王を目指す中でアドマイヤズームはどのような成長を踏んでいくのか。陣営の思惑通りのレベルアップを遂げた時、今度は不動の主役として府中マイルの舞台に降り立つことになる。(取材・文:森永淳洋)
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