【阪神JF】札幌組から新スター誕生アルマヴェローチェ、初GI制覇の岩田望来騎手「クラシック総なめにできる力を」

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アルマヴェローチェが阪神ジュベナイルフィリーズを制し2歳女王に、鞍上の岩田望来騎手は待望のJRA・GI初制覇を飾った 【Photo by Hiroki Yamanaka】

 JRAの2歳女王決定戦、第76回阪神ジュベナイルフィリーズが12月8日、京都競馬場1600m芝で行われ、岩田望来騎手が騎乗した5番人気アルマヴェローチェ(牝2=栗東・上村厩舎、父ハービンジャー)が優勝。中団追走から最後の直線を力強く伸び切り、2歳牝馬チャンピオンの座を手にした。良馬場の勝ちタイムは1分33秒4。

 アルマヴェローチェは今回の勝利でJRA通算3戦2勝、重賞は初勝利。手綱をとった岩田望騎手は嬉しいJRA・GI初勝利、上村洋行調教師は同レース初勝利となった。

 1馬身1/4差の2着には幸英明騎手騎乗の8番人気ビップデイジー(牝2=栗東・松下厩舎)、さらに1馬身3/4差にはミルコ・デムーロ騎手騎乗の7番人気テリオスララ(牝2=美浦・田島厩舎)が入線。1番人気に支持されていたクリストフ・ルメール騎手騎乗のブラウンラチェット(牝2=美浦・手塚厩舎)は16着、史上初めてとなる米国からの遠征馬でランフランコ・デットーリ騎手が騎乗したメイデイレディ(牝2=米・J.リー厩舎)は13着に敗れた。

デビュー6年目、岩田望騎手初めてのGI・Vロード

中団追走から直線大外を矢のような伸び、先行勢をまとめて差し切った 【Photo by Hiroki Yamanaka】

 今年の2歳女王はソダシ以来4年ぶりに夏の北海道デビュー組から誕生した。道中は好スタートから自然な形で中団前めの7、8番手を確保。岩田望騎手は噛みしめながら、キャリア6年目で初めての経験となるGI・Vロードまでの道のりを振り返った。

「2走目でゲートがあまり上手く出ていなかったので、そこだけ気を付けましたが、スタートは五分に出ました。後ろから行っても他の馬にやられてしまうと思ったので、ある程度前につけて行こうと。理想通りの形になったと思います」

 アルテミスステークス2着のミストレスが前走同様に果敢にハナを取り、世界のデットーリ騎手の手綱で注目を集めた米国2歳牝馬メイデイレディも勢いよく飛び出して3番手の外を追いかけていく。もともと逃げ・先行で勝ち上がってきた馬が多かったこともあっただろうが、最初の半マイルは46秒5、1000mが58秒5と、やや前がかり。その分、先行勢を見る形のポジションにいたアルマヴェローチェには絶好の展開が待っていた。

「4コーナーから直線にかけて内から出た時に外の馬には迷惑をかけてしまいましたが、追い出してからの脚は凄いものがありましたね」

同期、若手騎手でもっと盛り上げたい

岩田望騎手はデビュー6年目で待望のJRA・GI初制覇、同期の団野騎手と菅原騎手も今年GIを勝っており若手騎手の勢いがさらに増していきそうだ 【Photo by Hiroki Yamanaka】

 その言葉通り、アルマヴェローチェは直線大外を矢のように伸びて一気の差し切り。GIを勝ったことがなかったので最後まで分からなかった、と岩田望騎手は照れ笑いを浮かべたが、ゴール手前でグッと握った左拳には「やった!」の喜びと、「やっとGIを勝てた」の安堵、その二つの想いが込められていたという。

「ウィナーズサークルでようやく皆さんの声援を聞くことができました。応援してくれるファンの方がたくさんいましたので、GIを1日でも早く勝ちたいと思っていたんです」

 今年11月24日には武豊騎手、加賀武見元騎手に次ぐ史上3番目のスピードでJRA通算500勝を達成。20代前半の若手騎手の中では一番星の活躍ぶりだが、GI勝利では2019年デビュー組の同期である団野大成騎手、菅原明良騎手に先を越されていた。

「先日のマイルチャンピオンシップ(団野騎手がソウルラッシュで優勝)も自分は乗っていなかったので悔しい思いをしていました。でも、同期の活躍は刺激になりますし、僕が刺激を与えていることもあると聞いています。なので同期全体でもそうですし、20代の若手騎手でもっと盛り上げていきたいですね」

来春クラシックへ「まだまだ成長してくれる」

来春の桜花賞、そしてオークスへ、アルマヴェローチェが主役の名乗りを挙げた 【Photo by Hiroki Yamanaka】

 そして、待望のGIタイトルをもたらしてくれたアルマヴェローチェ。阪神JFで見せたパフォーマンスを考えれば、今回だけでなく来春のクラシックでも堂々の主役を名乗れる器だろう。岩田望騎手が相棒への大きな期待を語る。

「1600mじゃないといけない馬ではないですし、引っかかる心配もない。クラシックを総なめできるくらいの力をつけていってほしいですね」

 春の大阪杯に続き、自身2度目のビッグタイトルとなった上村調教師もマイルの馬ではないことを強調している。

「これまで千八しか使っていなかった馬ですが、器用な馬なのでカバーしてくれればと思っていました。これから桜花賞に向かうにはこの距離をこなしてもらわないといけないですからね。長いところも向いているのかなという感じもしています」

 しかしながら当面の最大目標はやはり、3歳牝馬クラシック第一冠・桜花賞であることはジョッキーもトレーナーも同じ思い。「まずは桜花賞。コース形態も問わない馬だと思うので阪神コースも個人的には大丈夫だと思います」(岩田望騎手)、「春までにまだまだ成長してくれると思うので、それを桜花賞に上手くつなげていきたい」(上村調教師)と、桜が舞う阪神マイルコースの舞台へと視線を向けていた。

札幌2歳S→阪神JF勝ち馬は活躍馬がズラリ

テイエムオーシャン、ソダシに続くか――岩田望来騎手&アルマヴェローチェのコンビのさらなる活躍を期待したい 【Photo by Hiroki Yamanaka】

 そして、札幌2歳ステークスと言えば、これまでも数多くの名馬を輩出してきた出世レースだが、ここを経験した阪神JF勝ち馬と言えば、2000年以降ではテイエムオーシャン(2000年)、ソダシ(2020年)が桜花賞を制し、その後の活躍ぶりも競馬ファンには広く知られているところだろう。

 また、ヤマニンシュクル(2003年)は桜花賞3着・秋華賞2着、レッドリヴェール(2013年)が桜花賞2着と、軒並み翌年の牝馬三冠戦線で好成績を収めている。この傾向に照らし合わせれば「クラシックを総なめできる力を」と岩田望騎手が期待を寄せるのもうなずけるし、またそれだけの手応えを持っているということなのかもしれない。札幌2歳S組から新たなスター牝馬の誕生だ。(取材・文:森永淳洋)
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