ドラフト1位・西川史礁の加入でさらなる激戦区に。千葉ロッテの熾烈な外野争いに迫る

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今季35試合で守備でも出場したポランコ選手 【©パーソル パ・リーグTV】

西川史礁選手の加入によって、外野争いはさら激しさを増してきそうだ

 2024年のドラフトで、千葉ロッテが西川史礁選手(青山学院大学)の交渉権を獲得した。強打の外野手として注目を集めていた西川選手は、マリーンズの外野争いにこれから身を投じることになる。

 今回は、2024年の千葉ロッテで活躍を見せた主な外野手たちの成績と、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標について紹介。現在のチームにおける外野争いの現状をあらためて振り返るとともに、西川選手を含む選手たちのさらなる躍進にも期待を寄せたい。

若手、中堅、ベテラン、助っ人、新加入組と多士済々の様相を呈す外野事情

 2024年の千葉ロッテにおける、主な外野手の成績は下記の通り。

2024年 千葉ロッテの主な外野手の打撃成績 【©PLM】

 ポランコ選手は指名打者としての出場がメインだったが、外野手として守備に就いた試合数は2023年が11試合だったのに対し、2024年は35試合と3倍以上に増加。チーム事情に応じて外野守備もこなしつつ、リーグ3位の23本塁打と随所で持ち前のパワーを発揮して打線を支えた。

 岡大海選手はチーム最多の100試合で外野の守備に就き、5月19日のサヨナラ弾を含む7本塁打を記録。8試合連続二塁打というNPB新記録も樹立し、8月上旬までは打率ランキングでも上位に位置する大活躍を見せた。故障の影響で惜しくも自身初の規定打席到達は果たせなかったが、打率.287、出塁率.373、OPS.806と、キャリア最高の1年を過ごしている。

 和田康士朗選手は主に代走・守備固め要員として出場を重ね、チームの外野手で2番目に多い88試合に出場。11盗塁を決めて失敗はゼロ、盗塁成功率100%と非常に高い確実性を示し、今季も足のスペシャリストとして活躍した。2023年の打率.265から今季は打率.150と数字を落としたこともあり、来季は打撃不振を脱してレギュラーの座を狙いたいところだ。

 角中勝也選手はシーズン序盤から好調を維持し、8月終了時点で打率.331と抜群のハイアベレージを記録して打線をけん引。9月以降に調子を崩して最終的な打率は.280となったものの、出塁率.361、OPS.774と一定以上の数字を記録した。高い打撃技術と優れた選球眼を活かし、今季も頼れるベテランとしてチームのAクラス入りに大きく貢献している。

 荻野貴司選手は角中選手とは対照的に、8月終了時点で打率.239と中盤戦まで不振に陥っていた。しかし、9月に入ってからは月間打率.447、出塁率.523と大きく調子を上げ、激しいAクラス争いを演じていたチームの起爆剤の一人となった。最終的な打率も.279まで向上させており、39歳を迎えた今季も終盤戦に輝きを放って存在感を示した。

 高部瑛斗選手は故障の影響で2023年は一軍出場なしに終わったが、今季は5月に一軍へ合流して以降は出色の活躍を披露。打線の上位から下位まで幅広い役割に対応しながら打率.300と高打率を残し、わずか76試合で10盗塁を記録。故障の影響で9月8日の試合を最後にシーズンを終えたが、走攻守の全てにおいて大いに持ち味を示して復活をアピールした。

 藤原恭大選手も開幕前のケガによってシーズン初出場が6月28日までずれ込んだが、その後は優れた打撃センスを存分に発揮。課題だった好不調の波の激しさを克服してコンスタントに安打を積み上げ、自己最高の打率.290を記録。出塁率.364と選球眼も向上させてチャンスメーカーの資質を示し、自らの殻を破って今後のさらなる成長にも期待を持たせた。

 2023年の現役ドラフトでチームに加わった愛斗選手は、埼玉西武時代から定評があった高い守備力を活かし、主に試合終盤の守備固めを務めた。打撃面では打率.188と苦しんだものの、6月1日には値千金のサヨナラ打を放つなど、新天地で確かな存在感を示している。

 昨季にチーム2位の14本塁打を放った山口航輝選手と、2023年途中に加入して同年は打率.348と出色の打撃を見せた石川慎吾選手は、いずれも打撃不振に陥り苦しいシーズンを送った。両選手が2025年に復調を果たせば、外野争いもさらに激しさを増してきそうだ。

チャンスメーカーの資質を示す選手が多い一方で、長打力が大きな課題に

 次に、2024年に各選手が記録した、さまざまな指標について見ていきたい。

2024年 千葉ロッテの主な外野手の打撃指標 【©PLM】

 岡選手、角中選手、藤原選手はいずれも出塁率.360以上と優れた数字を残しており、打率と出塁率の差を示す「IsoD」も3名揃って.074以上と高水準だ。選球眼に優れた先述の3選手に加えて、高部選手もIsoDこそ.048と低いものの、出塁率は.348と優秀であり、チャンスメーカーとしての資質を示している選手が多く存在していることがわかる。

 本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「BABIP」に関しても、岡選手、角中選手、藤原選手、高部選手の4名は、いずれも.330以上と高い数値を記録。BABIPは運に左右される要素が大きいものの、内野安打の多い俊足の選手にとっては有利な指標でもあり、この数字は脚力を武器とする選手が多いことを示すものにもなっている。

 その一方で、長打率が.400を上回ったのはポランコ選手、岡選手、角中選手の3名のみと、多くの塁打を稼ぐことができる選手の数はやや少ない。また、長打率から単打の影響を省いた、真の長打率を示すとされる「ISO」についても、ポランコ選手、岡選手、角中選手を除く選手は全て.100以下とやや低い数値にとどまっていた。

 本塁打数という観点においても、DHでの出場も多かったポランコ選手が23本塁打を放ったものの、それ以外の外野手で4本塁打以上を記録したのは岡選手ただ一人。球界全体で投高打低の傾向が強まっていることを考えても、総じてパワー不足の傾向が示されている。

 ポランコ選手は、本塁打を一本放つのに必要な打数を示す「AB/HR」に関しても、リーグ2位の18.09とハイレベルな数字を記録。岡選手のAB/HRも規定打席到達者に当てはめると11位相当と一定の水準にあり、角中選手も63打席に1本のペースで本塁打を記録。その一方で、荻野貴選手、高部選手、藤原選手の3名は、いずれも1本塁打につき100打席以上を要した。

 以上の傾向を鑑みるに、現チームの外野陣はチャンスメイク能力に優れた選手が多く存在する一方で、一発長打のある選手がやや不足していることが浮かび上がってくる。それだけに、西川選手がプロの舞台でも前評判通りの強打を発揮することができれば、外野手の中でもひときわ異彩を放つ存在となり得るはずだ。

質・量ともに充実しつつある外野争いを勝ち抜くのは、はたしてどの選手に?

 キャリアハイの活躍でチームをけん引した岡選手をはじめ、確実性と選球眼を大きく高めた藤原選手と、故障からの復活を強く印象付けた高部選手もそれぞれ躍動。夏場まで打線の核として奮闘した角中選手と、9月以降に抜群の打棒を発揮した荻野貴選手の両ベテランや、俊足好守の和田選手と愛斗選手も奮闘を見せ、外野陣は質・量ともに充実しつつある。

 そこに、チームに欠けている要素の一つである長打力を秘めた西川選手が新たに加わることによって、さらなる化学反応が引き起こされる可能性も大いにあるはずだ。さらに熾烈さを増すことが予想される、2025年における千葉ロッテの外野争い。各選手が新シーズンに見せてくれるであろう激しいアピール合戦に、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太
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