いよいよJBC!佐賀の馬場傾向は?実は最近、砂を追加していた/佐賀・大恵総合研究所レポート
佐賀競馬 【撮影:大恵陽子】
そこで、「佐賀ってどんなコース?」「有利な脚質は?」といった疑問を、大恵総合研究所でお馴染みの競馬リポーター・大恵陽子が取材・分析。実は最近、砂が深くなっていることも判明しました。これを読めば、JBC佐賀の馬場はバッチリ!……な、はずです。
大恵総合研究所 【JBC直前!馬場レポート】
4角イン突きも見どころ!?多彩なレースの佐賀競馬
佐賀競馬場 【コース図】
「いつもより内を空けて走っている!」
そう、内の砂がいつも以上に深くなっていたのです。佐賀競馬のセオリーは、内ラチから数頭分を空けて走ること。それが、さらに1~2頭分も空けて走っているのです。一体何があったのでしょうか。
その秘密は砂の追加。実は9月末(※)に砂を補充し、内の砂がさらに深くなっていたのです。
※砂の補充は9月30日、10月1日に実施。
佐賀競馬場4コーナー 【撮影:大恵陽子】
内ラチから4mまで:約15cm
内ラチから4m~16m:約11cm
現在の砂厚 【ダートコース断面図】
その後、雨が降って砂が締まったことでタイムはそこまで要さなくはなりましたが、「雨で砂が流れた分は補充をして、砂厚をキープしています」と佐賀県競馬組合で馬場保全を担当する川俣博太郎氏。
さらに、内ラチ沿いの砂が薄くならないように調騎会が音頭を取って、調教中は内ラチから5~6mの辺りにコーンを立てて使用しないようにしています。
「前有利ではない」はどこまで事実なのか?
まず気になるのは前述の2騎手の言葉。砂を追加後は「そこまでの前有利ではなくなった」との肌感覚でした。
そこで、砂追加前の今年(9月末まで)と、追加後の10月での脚質別成績が下記グラフ。2人が話すように先行馬は勝率、連対率、3着内率のすべてにおいて4%以上の低下でしたが、逃げは勝率のみ26.3%→30%にアップ。展開次第では逃げ切り勝ちもあるというデータとなりました。
砂追加前後での脚質別成績 【表1】
“内ラチが2頭分外に移動”のイメージ
これまでよりも内ラチ沿いの砂が深く、またそのエリアが広くなったことで、1番枠と2番枠の勝率が5%以上も下がりました。対照的に3番枠と4番枠の勝率がアップしたのは、ここが砂の深さと距離ロスの少なさのバランスが最も取れた場所だからでしょう。つまり、イメージ的には内ラチが2頭分、外に移動したと言えます。
なお、3着内率の折れ線グラフがガタガタなのは砂追加後のサンプル数の少なさが原因と思われます。
砂追加の前後での馬番別成績 【表2】
500kg以上だと好成績が期待できる
すると、たしかに500kg以上の馬の勝率が6%以上アップ。馬格があり、パワーのあるタイプの方が従来より深い馬場をこなせていることが分かります。
なお、500kg台後半の馬は砂追加後、3頭のみの出走のため、数値は参考程度ですが、500kg台前半の馬は100頭以上が出走し、高い勝率をマークしました。
砂追加の前後での馬体重別成績 【表3】
台風の影響は?不良馬場でも意外と傾向に変化なし!?
雨が降った場合、馬場への影響はどうなるのでしょうか。
佐賀競馬では今年8月に砂が変わりました。昨夏の全面入れ替え時には福岡県遠賀川産50%、島根県江の川産50%でミックスしていたものが、今年は江の川産100%に変更。それにより水はけがよくなり、先日は雨上がりにハローをかけると水たまりも消滅したとのこと。また、排水性を確保するために定期的に側溝の浚渫を行っています。
そういったこともあり、不良馬場になっても極端な逃げ有利ではなくなりました。下記グラフは今年における脚質別成績を「全ての馬場状態」と「不良馬場」で比較したもの。不良馬場ではわずかに逃げ・先行の勝率が上がりますが、1%ほどの差異。ペースや展開を考えると、誤差の範囲内と言えるでしょう。
馬場状態による脚質別成績の変化 【表4】
続けたくても競馬ができなかった中津・荒尾の思いも背負って――JBC成功へ
枠としては砂の追加によって3~4番枠が有利。また、500kg以上の馬格のあるタイプの方がこなせそうです。
九州にはかつて、中津競馬(大分県)と荒尾競馬(熊本県)がありましたが、それぞれ2001年と2011年に廃止。あの頃、日本全体が不況にあえぎ、続けたくても競馬を存続できない地方競馬がたくさんありました。
佐賀競馬はそんな時代を九州で唯一生き残った地方競馬。あの時、涙を流しながら歴史に幕を下ろした中津と荒尾の思いも背負い、初のJBC開催に臨みます。
馬場保全を担当する川俣氏はJBCに向けてこう話します。
「開催前には必ずグレーダーという機械で内にこぼれた砂をかき出し、砂厚調整を行っています。JBC当日はこのままの砂厚で開催予定。全人馬、事故なく安全にレースが行われることは当然のこととして、九州初のJBCですので、ぜひ盛り上がってほしいですね」
全ての出走馬が全力を発揮できる馬場を目指します。ファンの皆さんは全力でJBC佐賀を楽しみましょう!
文・大恵陽子(おおえ ようこ)
競馬リポーター。小学5年生で競馬にハマり、地方競馬とJRAの二刀流。毎週水曜日は栗東トレセンで、他の日は地方競馬の取材で全国を駆け回る日々。グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」「地方競馬中継」などに出演のほか、「優駿」「週刊競馬ブック」「うまレター」「馬事通信」など各種媒体で執筆。
「大恵総合研究所」なるデータ分析機関を勝手に設立し、現場取材で得た騎手・調教師などの談話をヒントに、馬場傾向やレース傾向を導き出して精度向上に励む。
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