【日本選手権35km競歩/高畠競歩】鈴木雄介さんに聞く!展望インタビュー:東京世界陸上最初の選考レース!内定者の誕生なるか!?

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【フォート・キシモト】

来年9月、日本では18年ぶり、東京では34年ぶりとなる世界選手権が、東京・国立競技場で開催されます。日本代表選手として、この大会での活躍を期すアスリートたちの戦いが、いよいよ本格的にスタート!その幕開けとなるビッグレースが、10月27日に予定されている「「第61回全日本35km競歩高畠大会 / 第108回日本陸上競技選手権大会・35km競歩」です。

東京世界選手権への出場権は、日本勢では、女子やり投の北口榛花選手(JAL、ダイヤモンドアスリート修了生)が前回のブダペスト大会を制したことにより、すでに獲得していますが、代表即時内定者が出る可能性のある選考競技会の開催は、日本選手権35km競歩が最初のレース。男女ともに、日本陸連が設定する派遣設定記録(男子2時間26分00秒、女子2時間45分00秒)を突破した優勝者は、その場で東京世界選手権の日本代表に内定するのです。即時内定を得るためには、非常にハイレベルな戦いが求められるこのレース、いったい誰が、勝利と内定切符を手にするのでしょうか?

今回は、先日、長い競技生活から退いたばかりの鈴木雄介さん(サトウ食品新潟アルビレックスRC)にインタビュー。競歩ファンならご存じの通り、鈴木さんは、富士通所属の2015年に男子20km競歩で世界記録(1時間16分36秒、2015年)を樹立、男子50km競歩においても2019年ドーハ世界選手権で金メダルを獲得している人物。“世界一美しい”と称賛された歩型で、その名を知らしめたトップウォーカーです。20kmから50kmまで幅広い実績を残している鈴木さんに、レースの見どころや注目選手を教えていただきました。

当日は日本陸連公式YouTubeでのライブ配信も実施予定!王者誕生の瞬間に是非ご注目ください。
熾烈な代表争い
東京世界陸上への切符は誰の手に!?

【フォート・キシモト】

――鈴木さんは、7月末に引退を発表するとともに、社会人になってからずっと所属していた富士通も退職されました。現在は、どのような活動をなさっているのですか?
鈴木:順天堂大学の大学院に通っています。順調に行けば、今年度で修了するので、来年度からは新潟に拠点を移して、株式会社ARC(旧社名:株式会社新潟アルビレックスランニングクラブ)の所属で、新潟食料農業大学の競歩・長距離コーチを務めることになっています。
――それでは、これから修士論文の提出に向けて、いよいよ執筆作業が佳境を迎える時期になるわけですね。
鈴木:はい。頑張っています(笑)。
――「アスリート」という立場ではなくなったわけですが、そんななかで今、日本の競歩界をどんなふうにご覧になっていますか?
鈴木:そうですね。東京オリンピック(2021年)やオレゴン世界選手権(2022年)あたりまでは、誰が出てもメダルを目指せるという状況でしたが、海外選手が記録を伸ばしてきたことによって、メダル獲得が簡単ではなくなってきたという印象を持っています。ちょうど、「入賞して、メダルを目指す」という思いで取り組んできた私たちのころに戻ったように感じています。
――そんななか、第108回日本選手権35km競歩が開催されます。1月に起きた能登半島地震の影響で4月に予定されていた輪島市での開催が中止となったことにより、今年は、全日本競歩35km高畠大会を日本選手権と兼ねる形で実施することになったわけですが、この大会が、来年、東京で開催される世界選手権に向けて、内定者が出る可能性のある最初の選考レースとなります。
鈴木:そうですね。競歩については、ほかの種目とは異なり、参加標準記録より水準の高い派遣設定記録を、日本陸連が独自に設定しています。高畠では、男女ともに、派遣設定記録を突破して優勝すると、その場で代表に内定することが、選考要項(https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202409/26_123848.pdf)に示されているんです。特に男子に関しては、派遣設定記録を突破できる実力を持った選手が、何人もエントリーしていますから、大会では、まずは、この記録を上回ること、そして優勝して内定を得ることを目指してのレースになりそうです。


男子は、丸尾と川野の一騎打ちか!?
展開次第では、日本新記録の可能性も

【フォート・キシモト】

――では、さっそく男子からレースを展望していただきましょう。男子の参加標準記録は2時間28分00秒、そして派遣設定記録は2時間26分00秒です。この2時間26分00秒という記録は、今の日本選手たちにとって、そんなにハードルの高い記録ではないとみていいのでしょうか?
鈴木:いいえ、決して簡単な記録ではないと考えています。35kmになると、ちょっと調子を崩すだけで、記録が数分変わってくる可能性もありますから。それを考えると、「いつでも誰でも突破できる」いうほど楽なペースではないタイムです。ただ、気象条件にもよりますが、10月末の高畠の涼しい気候のなかで、当日、暑くならなければ、何人かはクリアできると思いますし、基本的に、優勝する選手は、派遣設定記録を切ってくると考えています。
――残念ながら、日本記録保持者(2時間23分13秒)で、ブダペスト世界選手権では6位に入賞した野田明宏選手(自衛隊体育学校)が欠場を表明していますが、男子は、どんな上位争いになると思われますか?
鈴木:勢いを感じるのは丸尾知司選手(愛知製鋼)ですね。丸尾選手は、ずっと50kmをメインに取り組んでいて、2017年ロンドン世界選手権では4位に入賞、東京オリンピックにも出場しています。しかし、この種目がなくなったことでスピード強化に力を入れ、前回のブダペスト世界選手権には35kmで代表になりました(13位)。35kmが実施されなかったパリオリンピックでは代表入りを逃しましたが、今年は、20kmで1時間19分06秒の自己新記録をマーク。秋に入ってからは、10000mで全日本実業団は38分40秒26の自己新で2位、国民スポーツ大会ではセカンドベストの38分43秒63で優勝を果たしています。35kmに求められるスタミナや体力だけでなく、スピード勝負にも対応できる練習をしてきたのではないかと思います。また、丸尾選手は、この夏、海外の実力者の選手たちと合宿したりもしています。

【フォート・キシモト】

――丸尾選手は、今年の夏、単身でスイスへ飛び、以前から知己があり、世界大会でトップランカーとして活躍するペスセウス・カールストローム選手(スウェーデン)やエヴァン・ダンフィ選手(カナダ)らと1カ月近くのトレーニングキャンプを実施したと聞いています。パリオリンピックに向けた一番大切な期間に、練習メニューなどもすべて開示してくれて、一緒にトレーニングを行ったことで得た経験は、とても大きかったそうで、「それを形にするためにも、絶対に、高畠で内定を決めたい」と強い意欲を話していました。
鈴木:そうですね。そこで得たさまざまな知識や経験が、この好調につながっているように感じてます。日本選手権では、丸尾選手が基本、中心となってレースを進めていく形になることが予想されます。そこに川野将虎選手(旭化成)がどう対応するか。今回は、その2人がレースをつくっていくことになるんじゃないかと思いますね。

――川野選手は、ブダペスト世界選手権のこの種目の銅メダリスト。2時間23分15秒と、野田選手に次ぐ日本歴代2位の自己記録を持っています。

【フォート・キシモト】

鈴木:はい。ですから、川野選手が、前半から飛び出して、ハイペースで入っていく可能性もあります。
――川野選手が飛び出したら、丸尾選手はついていく?
鈴木:是が非でも代表を取りたいと考えているでしょうから、もし、ハイペースで入ったとしてもついていくのかなと思います。
――男子の場合は、目安とする1kmあたりのペースは、どのくらいになるのでしょう?
鈴木:派遣設定記録の場合は、4分10秒くらいをイーブンで押していけば切ることができます。日本記録を更新しようと思ったら、4分05秒くらいのペースが必要です。
――速いですね。
鈴木:日本記録と同等の自己記録をもっている川野選手からしてみれば、一度歩いたことのあるペースですし、男女混合競歩リレーで8位となったパリオリンピックでも、20kmで好成績を残した選手たちに遜色のない歩きを披露していたので、35kmの自己記録を出したときよりも実力は上がっているとみています。そうすると、4分05秒を切ってレースを進めていく可能性もあると思います。4分00秒から4分05秒、もしかすると、前半の10km過ぎあたりから4分を切るペースに上げていく…というようなレースを展開するかもしれません。丸尾選手も、川野選手にそういった力があることを想定したうえで、準備をしているのではないかと思いますよ。
――内定を得るために、「派遣設定記録を突破して優勝しなければならない」ということを考えると、駆け引きをしたり、大幅なペース変動で揺さぶったりという展開にはならない? 選手の心理としてはどうなのでしょう?
鈴木:優勝することは大事ですが、派遣設定記録を切っていないと代表には内定しないので、それを考えると、イーブンで行くほうがタイムは出しやすいです。ですから、駆け引きを目的とした大きなペース変動はないかなと思いますね。特に、前半部分でスローペースにしてしまうと、そのペースにハマってしまって上げられなくなってしまったり、後半でペースアップしなければならないとプレッシャーが大きくなったりするので、前半では、多少貯金をつくりつつ…というところを考えて歩くかな、と。
――そうすると、前半のペースの目安としては?
鈴木:4分10秒が必須となるわけですから、最初は4分05秒くらいが一つの目安にはなるかなと思います。
――では、前半は、4分05~10秒くらいで進んで、「もっと行ける」となったら、どこかでガンとペースが上がることも?
鈴木:ありますね。あとは、タイプにもよります。川野選手の場合は、けっこう前半からハイペースで行くタイプ。動きが噛み合えば、最初から4分くらいで行ってしまう可能性もあるのかなと思いますね。


トップ2を追うのは勝木と髙橋
持ち味を生かし、派遣設定記録に挑む

【フォート・キシモト】

――丸尾選手、川野選手に続く選手としては、誰が考えられますか?
鈴木:2時間28分53秒の自己記録を持つ勝木隼人選手(自衛隊体育学校)と、あとは今年、世界チーム競歩選手権とパリオリンピックに出場している髙橋和生選手(ADワークスグループ)あたりだと思います。
――それぞれの特徴を教えてください。
鈴木:勝木選手は、50kmをメインとしていたころからそうですが、自分のスタイルやペースを貫くタイプの選手です。当日の状況に応じて、自身が最大限目指せるタイムからペースを割り出し、イーブンもしくは後半上げていくレースをするのではないかと思います。
――上位争いから大きく離れた位置で序盤を進めながら、気がついたら、いつも入賞、さらには上位圏内にいるというイメージです。
鈴木:そうですね。まずは3位あたりを狙っていくような形になるかと思います。ただ、彼も、今年、20kmでは、2月の日本選手権で1時間20分42秒、3月の能美競歩では1時間18分43秒までタイムを更新してきています。丸尾選手と同様に、スピードを上げてきているので、上位争いに加わってくる可能性は十分にあります。
――髙橋選手は、今季になって、大いに躍進した選手という印象です。20kmの日本選手権で1時間19分01秒をマークして5位となり、その後、男女混合競歩リレー種目で、世界チーム競歩、パリオリンピックと、続けて日本代表に選ばれました。35kmの持ち記録は、2時間30分55秒にとどまっていますが…。
鈴木:もともとは50kmを得意としていた選手なので、35kmでも、記録を更新してくる力はあると思いますね。
――今季の20kmのレースでは、髙橋選手もわりと序盤から上位でレースを進めている印象があります。丸尾選手や川野選手と一緒に飛び出していく可能性もある?
鈴木:地力がついてきていますから、35kmでも力を発揮するとは思いますが、最近のレースを見ている限り、丸尾選手のほうが頭一つ抜けているかなという印象があるんですね。おそらく髙橋選手も、その点を頭に入れて展開を考えているはず。そこまで無理するレースはしないんじゃないかなと予想しています。勝木選手や髙橋選手は、派遣設定記録突破を目安にレースを進めつつ、丸尾選手や川野選手の状況によっては、上位争いに迫っていくような展開になるのかなとみています。


さまざまな展開を期待できるのが35kmの魅力
「ぎりぎり」を攻めていく、心理戦にも注目!

【フォート・キシモト】

――鈴木さんは、意外なことに、35km自体はレースに出ていないんですね?
鈴木:そうなんですよ。35kmが実施され始めた時期と、私が活躍できていた時期とが、少しずれているので、経験したことがないんです。ただ、個人的な印象としては、30~35kmくらいの距離は、競歩で一番いい距離だなと思っています。だから、35kmという種目に挑戦できる今の選手が羨ましいというか、もし、この種目が私の時代にあったら歩きたかったです。
――35kmを「一番いい距離」と思う理由は?
鈴木:35kmは、スタミナも必要ですし、スピードもなければならない。また、レース展開としても、いろいろなレースができる距離なんですよね。例えば、50kmだと、最後まで歩ききることを考えると、私がドーハで優勝したときのように、ポンと前に飛び出しても、ほかの選手はついていかない選択をするケースが多かった。でも、35kmの場合は、ハイペースで入っても、動きが噛み合えば、そのまま行ききることができる距離なので、一人が飛び出して逃げきるような展開にはなりにくいんです。レース展開なども含めて、面白く見られる距離なのかなと思いますね。選手自身も、すごく計算しながらレースを進めなければいけないというか…。
――攻めていく、限界ぎりぎりのところを、すごく考える必要がありそうですね。
鈴木:そうなんですよ。50kmだったら、「あのペースで最後まで行かれたら諦めるしか無い」と考えたり、「あれで最後までは行けないよね」と読めたりするわけですが、35kmだと「もしかしたら、行けちゃうかも…」と感じてしまう距離なんですよ。
――そうなると、追わないわけにはいかないし…ってことになりますよね(笑)。
鈴木:はい(笑)、そういった心理戦も出てきますから、自分は4分05秒ペースで行こうとしていたのに、相手が4分00秒ペースで行くようだと、優勝を狙うのなら無理してでもついていくべきかなと考える必要があります。
――まさに、そこは先ほど仰っていた川野選手と丸尾選手が、どういう展開をするかの話につながっていくところですね。
鈴木:そうですね。川野選手や丸尾選手は、どちらも4分00秒くらいのペースで行く実力はすでにあると踏んでいるので、もし、川野選手がハイペースで入ったら、丸尾選手もついていく可能性はあります。
――「行かせるか、つくか」、どこがその決断のポイントになるか、と考えるだけでも、ワクワクしますね。
鈴木:見応えのあるレースになると思いますよ。
――今回、海外からもオープン参加でエントリーしていますが、そのなかには、ダンフィ選手の名前もあります。
鈴木:ダンフィ選手は、得意としていた50kmがなくなってからは、スピード強化を図って、20kmと35kmで活躍してます。ブダペスト世界選手権では、2種目に出場して、どちらも4位の成績を残しています。

【フォート・キシモト】

――35kmの自己記録は、オレゴン世界選手権でマークした2時間25分02秒。もしかすると、日本選手の上位争いと同じ位置でレースを進める可能性もありそうです。
鈴木:大いにあると思います。20kmの実績でいうと、今回のエントリーメンバーのなかではダンフィ選手が一番高い実績を持っているほどですから。逆にいえば、国内の選手たちは、ダンフィ選手をペースの目安にしながら、レースをしていくこともできますね。


女子は、前回全日本覇者の内藤に、ベテラン渕瀬が上位候補
35km初挑戦の下岡の躍進にも期待

【アフロスポーツ/フォート・キシモト】

――女子については、いかがでしょうか? 女子の参加標準記録は2時間48分00秒、派遣設定記録は2時間45分00秒となっています。これを上回る日本記録(2時間44分11秒)を持つ岡田久美子選手(富士通)はエントリーしておらず、歴代2位(2時間44分25秒)の自己記録を持ち、ブダペスト世界選手権では7位に入賞している園田世玲奈選手(NTN)も、今季は苦戦が続いている状況です。そこに続く選手たち…となると、派遣設定記録を狙ってというよりは、まずは参加標準記録突破を狙ってのレースになるかもしれません。
鈴木:そうですね。まずは参加標準記録を切らないことには、出場が難しくなってきますから。もちろんワールドランキングで選ばれる可能性はありますが、まずは参加標準記録を突破して、確実に出場資格を得ることが大きな目標になってくるかなと思います。
――女子の場合は、派遣設定記録、参加標準記録をクリアするためには、どの程度のペースが必要なのですか?
鈴木:派遣設定記録を狙うためには、1kmあたり4分43秒を切るくらいのペースで、イーブンで行くことが求められますが、参加標準記録の場合は4分48秒くらいのペースとなってきます。それを考えると、序盤は4分50秒を切るくらいのペースで進めていき、状態がよければ、後半で派遣設定を狙えるペースに上げていく展開になるかもしれませんね。逆に、最初から派遣設定記録のペースに挑戦する選手が出てくるかというところも、見どころの一つになりそうです。
――上位争いが期待される選手として、鈴木さんは誰に注目しますか?
鈴木:可能性がある選手としては、内藤未唯選手(神奈川大)や渕瀬真寿美選手(建装工業)を挙げることができます。あとは、今年、5000mや10000m、20kmでも記録を大きく更新している下岡仁美選手(極東油業)でしょうか。この3人が中心になってきそうですね。個人的には、下岡選手に成長の著しさを感じていて、35kmが得意そうなタイプだと思うので、もしかすると派遣設定記録をクリアするような躍進もあり得るのではないかとみています。
――渕瀬選手のキャリアと実績の高さは、改めて触れる必要がないほど素晴しいものです。世界大会入賞実績はもちろんのこと、20km、50km、35kmの3種目で世界選手権に出場しています。下岡選手は、今季は35kmを狙って取り組んできたという話も聞いていますので、35kmはこれが初挑戦となるはずですが、どのくらいのタイムでくるのか楽しみですね。また、内藤選手も、20kmよりも、より長い距離のほうが力を発揮できるという話をしていました。2時間50分35秒の自己記録は、初挑戦となった前回の高畠でマークしていて、このときは優勝も果たしています。若手の2人にとっては、ステップアップの大きなチャンスともいえます。
鈴木:自国開催の世界選手権ですからね。代表に入っていこうと狙う選手たちが、この高畠で躍進してくれるようだと嬉しいですね。


20km競歩にも注目選手がエントリー
勝負や記録よりは、「歩型を確認」する位置づけか

【フォート・キシモト】

――35kmは日本選手権としての実施となりますが、高畠競歩では、20km競歩も行われます。男子20km競歩の参加標準記録は1時間19分20秒に引き上げられたものの、それでも現時点で8選手が突破済み。日本陸連が設定する派遣設定記録は1時間18分30秒ですが、このタイムも池田向希選手(旭化成)と山西利和選手(愛知製鋼)がクリアしている状況です。今大会には、その山西選手(東京オリンピック銅メダリスト、2019年・2022年世界選手権2連覇)のほか、2022年オレゴン世界選手権8位入賞の住所大翔選手(富士通)、パリオリンピック日本代表の濱西諒選手(サンベルクス)がエントリーしました。こちらのレースも楽しみです。
鈴木:優勝争いということでは、山西選手と濱西選手の戦いになってきそうですね。山西選手は、オレゴン世界選手権で優勝したあとは、苦しい戦いが続いていて、パリ五輪は2月の日本選手権で失格となり出場を逃しました。しかし、今シーズンに入ってからは、海外のレースでもしっかりと結果を残せていますし、9月の全日本実業団も独り旅で優勝と、「強い山西選手」に戻ってきている感じがしています。
――この大会での内定はないわけですが、来年2月に神戸で行われる日本選手権に向けて、しっかり勝ちきっておきたいとか、派遣設定記録や参加標準記録をクリアしておきたいとか、そういう思惑を持って臨むことになるのでしょうか?
鈴木:20kmに関して言うと、この大会でより重要になってくるのは、ジャッジかなと感じています。もちろん、好記録を出せれば、それに越したことはありませんが、20kmの場合、神戸の日本選手権は、自動的に派遣設定記録を上回るペースで先頭集団は進んでいくことになるはず。それを考えると、今、ここで記録を出す必要はなく、神戸でしっかりと結果を残すことが大切なんです。ペナルティーゾーンを設けるルールができて、近年では、よりジャッジが厳しくなっている感じがあります。今回の高畠競歩では、IRWJ(国際競歩審判)の方々がジャッジを行いますから、そういった目のなかで、20kmをハイペースで歩ききることができるか、その確認ができるレースになるといえるでしょう。
――なるほど、高畠で動きのチェックを実際のレースで行い、そこで出た課題を元に、来年2月の選考レースに向けて、取り組んでいくということですね。
鈴木:はい、私は、そういう位置づけになると勝手に推測しています。もちろん、勝負もしてくると思うので、それなりのペースにはなるのかなとは思いますが…。むしろ、先頭集団の選手たちの動きを見て、ジャッジを受けるか受けないかを予想しながら観戦していただくというのも面白いかもしれませんね。特に今回に関しては、勝負よりも、歩型の確認が重要になってくると思います。
――「神戸決戦」を占うレースという視点で、観戦したいと思います。男女35kmに、男女20km。当日は忙しくなりそうです! 本日は、ありがとうございました。
(2024年10月17日収録)


構成・文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

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