【リレフェス特別企画】U16参加チーム限定「日本代表選手トークショー」レポート

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【JAAF】

10月5~6日に、東京・国立競技場で開催された「みんなでつなごうリレーフェスティバル2024」、通称「リレフェス」では、公認・非公認2つのパターンで、さまざまなタイプのリレーが2日間にわたって実施されましたが、期間中、会場では「リレー」以外にも多くの特別プログラムが用意されました。ここでは、U16リレー参加チーム限定で行われた日本代表選手トークショーの模様をご報告します。

【JAAF】

このトークショーは、U16リレー出場チーム限定で行われたイベントです。ゲストとして、パリオリンピック日本代表の飯塚翔太選手(ミズノ、男子200m)、川端魁人選手(中京大クラブ、男子4×400mリレー)、栁田大輝選手(東洋大、男子4×100mリレー、ダイヤモンドアスリート)の3名が登壇。事前に申込みがあった13チームが参加し、大会初日の10月5日の午後に開催されました。

トークショーは、リレフェス全体のMCも務めた宇佐美菜穂さんのナビゲートで進んでいきました。まず、飯塚選手、川端選手、栁田選手は、U16アスリートたちからの大きな拍手に迎えられて着席。実施に先立ち、3人のオリンピアンに向けた質問を参加者から募ったところ、「ものすごくたくさんの質問をいただいた」(宇佐美さん)ことから、今回のトークショーでは、それらの質問に、各選手が答えていく形で展開していきました。

質問として上がったのは、

「オンとオフの切り替えをどうしていますか?」

「生活や食事など、トレーニング以外で大切にしていることは? また“勝負メシ”があったら教えてください」

「記録が出ないときや調子が悪いときに、どう打開していますか?」

「学生のころの部活動の思い出を教えてください。また、今、中学生や高校生に戻ることができたら、何をしたいですか?」

「いつ、“陸上選手になろう”と思いましたか?」

といった事柄です。

これらの1つ1つに対して、オリンピアンたちは、それぞれに自身が実際に取り組んでいることや心掛けていることを紹介していきました。ときには、思わず宇佐美さんが、「これは皆さん、見習わないでくださいねー!」と釘を刺したり、独特のこだわりぶりに横で聞いたいた他の2人も苦笑したりするような回答も飛びだし、会場全体が笑いに包まれる場面も。しかし、その一方で、「なるほど!」と思うような心がけや、食事への気の配り方、ネガティブな感情のリセット方法、感じたことや考えたことを書き留めたり話したりする習慣など、U16年代だけでなく、指導者や大人が聞いても参考になる貴重な内容が次々と紹介され、あっという間に時間が過ぎていきました。また、参加者たちの多くが、そうした“強くなるためのヒント”を、熱心にメモしている様子も印象的でした。


ここでは、事前に最も多く寄せられた内容として上がった質問と、トークショー内で出た質問の1つに対する、各選手の回答を、以下に2つご紹介しておきましょう。

【JAAF】

Q:パリオリンピックなどの大きな大会で力を発揮するための目標設定や、大切にしていること、意識していることを教えてください。

川端:
目標設定で大事にしているのは、自分が達成できるかできないかが、ちょうど良いラインであるかどうかということです。簡単すぎてもダメだし、難しすぎてもダメ。例えば、今年の目標は、「パリオリンピックに出てメダル獲得」が僕の目標でした。それは「無理な目標ではなく達成可能かな、でも難しい」というものだったんです。もし、これが「世界記録をマイル(4×400mリレー)で出す」となると、今の僕の力では現実的に難しいわけですね。その絶妙なところを探すことが大事なのかなと思います。

栁田:「大きい大会で力を発揮する」という部分では、僕は常々コーチから「余計なことは考えずに、とにかくシンプルに」と言われていて、それをずっと心がけています。例えば、100mだったら、「(スタートの)音が鳴って、それに反応して、ゴールまで走るだけ」という考え方。2週間前の日本インカレのときも、それを本当に期間中ずっと言われていて、それで実際にいい走りができた(10秒09で優勝)という僕の経験もあるので、「シンプルにやってみる」ということは大事なんじゃないかと思います。僕の場合は、良くないときは、レース中もごちゃごちゃと考えてしまい、それで動きが崩れて自滅していくパターンが多かったんですね。それもあってずっと「シンプルに」を心がけています。

【JAAF】

飯塚:「今日のベストを出す」ということを意識しています。朝起きると毎日調子が違っていて、良い調整ができていたと思っていても、起きたら8割だったり、7割だったり、あるいは9割だったりと、100%の状態で迎える試合って、実はほとんどないんですよね。だから、起きたときの調子が8割だったとしたら、その8割を出せば100点満点だと考えて試合に臨むようにしています。それを例えば、8割で起きたときに、「今日は80%の状態だから、(ウォーミング)アップで100%にしよう」と、いろいろなことをし始めると、それが60%に下がってしまったりするんです。背伸びとかをせずに、「今の持っている力を出すにはどうしたらいいか」という意識でやっていると、それが逆に120%になったりするので、「今のベスト、今日のベストを出して、結果はどうなるのかな」と割りきって取り組むのがすごく大事だと思っています」


Q:どうしたら、そこまでトップに上り詰めることができるのですか?

飯塚:
えーーっ、うーん(笑)。僕も、ずっとわからないままやっていて、「なんで速くなるのか」って、今でもわからずにやっているんですが…。もう、目の前のことをやるということと、あとは自分一人の力でやるのは本当に難しいので、例えば、コーチや先生とか、応援してくれる人とか、一緒に練習してくれる友達とか、自分の周りにどんな人がいるのかということが一番大事なので、いろいろな人の力を借りてトップになっていけるような人間になることかなと思います。僕も一人だったら絶対にここまで来られていません。普段からいろいろな人に囲まれて、競技をやっているということを頭に入れて取り組んでいれば、ヒントをくれたり、きっかけをもらえたりするので、それがトップの選手になる道のりなのかな、と。どういう練習をやるかというよりは、そういった環境をつくっていくことが大事かなと思いますね。

【JAAF】

川端:強くなるために、自分のなかで一つ明確にあるものがあります。それは「習慣力」なのかなと思っています。習慣力、つまりは継続ということですね。人間は、継続することが一番難しいのかなと思います。私も、陸上は好きなのですが、当然、練習ではしんどいこともたくさんあります。でも、継続していると、そのしんどいことも、当たり前になってきて、辛いと思わなくなるというか、そうなったときが人間は最強なのかなと思うんです。例えば、歯磨きは、毎日やって習慣になっていれば、面倒くさいとは思わないですよね? 陸上でも、そういう状況になったら勝ちなのかなと思うので、練習とか、すべてにおいて、習慣力を身につけることが、上り詰めるための一番の近道なのかなと思います。

【JAAF】

栁田:僕も、何が正解なのかがわからないので、「これ、やったほうがいいよ」とはあまり言えないのですが、自分がもちろん陸上をやりたくて、今までずっとこうしてやってきているので、「自分が陸上を好きで、速くなりたい」という気持ちを絶対に忘れてほしくないなと思います。あとは、先生とか、コーチとか、いろいろな人が練習を考えてくれたりしてくれると思いますが、ただそれを受け入れるだけじゃなくて、自分なりに考えて、「こうしてみたい」とか「自分はこうだ」とか伝える。一方通行じゃなくて、会話しながら、自分の思ったことをしっかり表現していくことも必要だと思いますね。


文・写真:児玉育美(日本陸連メディアチーム)

【みんなでつなごうリレーフェスティバル2024 概要】

【JAAF】

■開催日 :2024年10月5日(土)・6日(日)
■開催地 :国立競技場
■同時開催:第108回日本陸上競技選手権大会・リレー競技
■特設サイト:https://www.jaaf.or.jp/relayfes/
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