【週刊グランドスラム267】第48回全日本クラブ野球選手権大会で準優勝したエフコムBCの熱い兄弟
エフコムBCの準優勝に貢献した八百板兄弟。右が兄で主将の飛馬、左が弟でプロ経験者の卓丸。 【写真=松橋隆樹】
打球を見て、そう思った。
全日本クラブ野球選手権大会一回戦。エフコムBCとシンバネットアーマンズベースボールクラブの対戦は、エフコムBCが2対0とリードした2回表終了時点で雨天のためサスペンデット・ゲームとなり、翌9月1日の午前10時に再開された。2点を追うシンバネットワークアーマンズBCは5回表に二死二、三塁のチャンス。四番・知念 誠の打球は、センターを守る八百板卓丸の頭上を襲った。抜けそうだ、同点か……。
だが、八百板卓は背走してダイビングで好捕する。この美技で2点のリードを保ったエフコムBCは、6、7回に加点し、結局は7回コールドで一回戦を突破した。
「安心して見ていました」
そう言うのは、ライトを守る実兄の八百板飛馬だ。
「弟は、一見余裕を持って打球を追っていますが、目の高さががブレないから、追いつけば確実に捕ってくれる。球際に強いですし、守備範囲の広さはさすがですよ」
八百板卓丸は、2日がかりとなった一回戦で3安打をマークした。 【写真=松橋隆樹】
エフコムBCでも高校時代と同じ熱量でプレーできている
「江川卓(元・巨人)さんです。卓“球“と書いて「たくまる」と読ませたかったようですが、それだとピンポンの卓球になるので」
そう言って笑う。小学生時代に揃って野球を始め、福島三中では軟式の『のたまクラブ』に所属。聖光学院高では兄が2013年夏、弟が2014年夏の甲子園に出場した。ベスト8まで進んだ弟は一番を打ち、4試合で5割超の打率を残すと、その年のドラフト会議で東北楽天の育成1位に指名される。
2017年に支配下登録され、移籍先の巨人と合わせ、一軍で通算82試合に出場した。だが、2022年に戦力外通告を受け、「いつかは、また一緒にプレーしたい」という兄の待つエフコムBCに入団した。昨年は「社会人として、初めての経験ばかり」と、なかなか思うようなプレーができなかったが、「一発勝負の緊張感が凄く新鮮で、今季はいい意識で取り組めています」という卓丸2年目の今季は、兄弟揃って全国の舞台に立ったたわけだ。
昨年は弟が三番、兄が四番を打つことが多かったが、「松嶋拓郎といういい打者もいますし、2人を離したほうが得点力が増す」という中島周作監督の判断で、今季は弟が二番、兄が四番だ。シンバネットワークアーマンズBCとの戦いでは、弟が4打数3安打。7回裏には、コールド勝ちを決める内野安打も放っている。前年王者・ショウワコーポレーションとの準決勝では1回裏、「初球からいく」と狙い澄ましていた兄が先制の2ラン本塁打。「強い相手を倒すのは痛快です」と、チーム初となる決勝進出の立て役者となった。
準決勝で先制2ランアーチを架けた八百板飛馬は、スタンドの声援に応える。 【写真=松橋隆樹】
「高校時代は、兄弟で熱い時間を過ごした。今も、それと同じ熱量で野球ができています」
そんな“熱い時間”は、これからも続きそうだ。
取材・文=楊 順行
【左=紙版表紙・右=電子版表紙】
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