【物語りVol.109】宮尾 正彦 ハイパフォーマンスアナリスト「選手のこともゲームのことも、もっともっと知りたい」
【東芝ブレイブルーパス東京】
※今シーズン新加入の選手の物語りを掲載していきます
【物語りVol.109】宮尾 正彦 ハイパフォーマンスアナリスト
「リーグワンの試合は土曜日か日曜日に行なわれるので、月曜日の練習から週末の対戦相手の情報を落としていきます。そのためには、前週の木曜日ないしは金曜日の段階で、ヘッドコーチ以下スタッフに翌週の対戦相手の情報を伝えておかなければなりません」
日々の仕事はダブルタスクだ。練習を撮影し、終わったら編集する。撮影は一つひとつの練習メニューの目的を理解し、スタッフがその達成度を確認できるものでなければならない。何を撮るのか、どこで撮るのか、といったことに細心の注意を払う。必要に応じて、練習中に数値を取ることもある。
選手から個別に映像の撮影を頼まれることもある。そのためには様々な映像を頭のなかにストックし、すぐに取り出せる状態にしておかなければならない。
そうした作業と並行して、翌週の対戦相手の分析にも着手する。練習前から翌週に備えた仕事を進めることも、もちろんあるだろう。脳を二分割して同時に働かせるような作業を、アナリストたちは日常としている。
筑波大学を卒業し、大学院へ通いながらラグビー部のコーチを務めた。大学で師事する先生が日本代表の強化に関わっており、宮尾も「お手伝いのような立場で」合宿などに足を運ぶようになる。そのまま1999年のラグビーW杯に帯同する幸運に恵まれた。
その後はラグビー界から離れた。JISSと呼ばれる国立スポーツ科学センターで、他競技のゲーム分析などに従事した。
楕円球の行方を再び追いかけるのは、2003年からである。トヨタ自動車ヴェルブリッツの分析コーチとなった。99年のW杯で分析チームを束ねた朽木英次が監督に就任し、スタッフ入りを打診されたのだった。テクニカルコーチの肩書で、分析を担当していった。
「分析担当というスタッフは、20年くらい前から必要性が語られるようになり、その仕事が生まれていったように思います」
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アナリストの仕事を始めた当時に比べると、働きかたは明らかに変わっている。作業がデジタル化され、分析にかかる時間が短縮された。「働き方は普通の仕事と変わりません」と宮尾も話す。ただ、アナリストとして譲れないものはある。
「分析には専用のソフトが使われるようになりましたが、だからといってソフトが何か特別なものを編み出してくれるわけではありません。どんなデータがほしいかの入力は、ほとんどが自分たちで行ないます。データの項目を立てるために、ひとつの試合を何度も観ることは変わりません。試合のなかで気になったところを、何回も巻き戻して観ていきます」
ピッチ上で起こった事象を客観的にとらえ、数値化したり切り取ったりしていくのが、アナリストの主な仕事である。そのために、宮尾は練習中のグラウンドから目を離さず、スタッフや選手たちの言葉に耳を傾け、映像と向き合う。
探求心も旺盛だ。
「選手のこともゲームのことも、もっともっと知りたいですね。データの傾向が変わってきていることに気づいたり、自分が知らなかったプレーのトレンドに気づいたりすることが、すごく楽しいですね」
トヨタ自動車ヴェルブリッツからNECグリーンロケッツ、日野レッドドルフィンズを経て、23-24から東芝ブレイブルーパス東京でハイパフォーマンスアナリストの職に就いている。光の届きにくい仕事だが、チームには欠かせない。
「仕事のやり甲斐ですか……もちろん勝ったときは嬉しいです。ここ最近は分業化されてコーチがたくさんいるなかで、色々な担当のコーチが頑張って、力を発揮して、みんなで勝つという喜びは格別です。勝敗と別のところで言えば、選手の変化に触れられるのは嬉しいですね。たとえば、ある選手が苦手にしていたスキルの向上を映像で確認したときなどは、喜びを感じることができます」
主観の入り込まない映像で真理を追究しながら、スタッフ、選手と触れ合って苦楽を分かち合う。
直近の試合へ力を注ぎながら、次の試合への準備を進めていく。
宮尾の戦いに区切りはなく、常在戦場の日々が続くのだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
【東芝ブレイブルーパス東京】
東芝ブレイブルーパス東京 試合情報
今シーズン3度目の府中ダービー、ぜひ会場で皆様のご声援をよろしくお願いいたします。
【試合情報】
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 プレーオフトーナメント準決勝
東芝ブレイブルーパス東京 vs 東京サンゴリアス
日時:5/19(日)14:05キックオフ
会場:秩父宮ラグビー場(東京)
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