【物語りVol.108】吉岡 大貴 通訳「もっともっと上達して、試合で通訳を任されるような立場を目ざします」

東芝ブレイブルーパス東京
チーム・協会

【東芝ブレイブルーパス東京】

東芝ブレイブルーパス東京では、多くの皆さまにクラブのことをより知っていただくために、今シーズンもライターの戸塚啓さんにご協力いただき、選手・スタッフ一人ひとりの「物語り」を発信しています。
※今シーズン新加入の選手の物語りを掲載していきます

【物語りVol.108】吉岡 大貴 通訳

 ラグビーの街・東大阪に生まれた。少し恥ずかしそうに、吉岡大貴は明かす。
「けれど、子どもの頃からラグビーに強い関心があったわけではないんです。中学校の体育の授業で、やったことがあるぐらいでした」
 関西外国語大学で学び、卒業後はフィリピンの日系不動産会社へ就職した。学生時代に東南アジア諸国が放つエネルギーに触れ、現地で働きたいと考えた。
 フィリピンには1年半ほど滞在し、営業に汗を流した。
「新型コロナウイルスの影響で帰国を余儀なくされまして、帰国後もしばらく勤めてからその会社を離れました。語学力を生かした仕事に就きたいと考えていたところで、友だちが花園近鉄ライナーズの通訳をやっていて、ラグビー業界のエージェントを紹介してもらったのです。トヨタ自動織機シャトルズ愛知の面接を受けて、採用が決まりました」
 2015年にニュージーランドのクライストチャーチへ短期留学し、オールブラックスのW杯優勝パレードに立ち会ったことがある。世界中のラグビーファンを沸かせたスター選手たちと握手をして、写真も撮ってもらったが、選手の名前はほとんど知らなかった。
 S愛知のスタッフ入りした当時も、「ラグビーの知識はゼロ」である。吉岡にとって幸いだったのは、通訳の肩書を持ちながらチームマネージャーの仕事を任されたことだった。主務と呼ばれるこちらのほうが、仕事のボリュームは圧倒的に多かった。
「マネージャーの仕事はめちゃめちゃ大変でしたけど、ものすごく勉強になりました。時間があればミーティングに出るようにして、どういうことを話しているのか聞いたりもしていました。チームのためにサポートをしている実感が得られるので、ものすごくやりがいがありました」
 試合中はピッチレベルに立った。激しいぶつかり合いを間近で見ていると、身体が内側から熱くなっていった。
「激しく当たっているところを真横で見ると、テレビで観るのとはまったく違うんですよね。思わず興奮してしまうぐらいでしたし、ラグビーの知識も蓄えることができました」

【東芝ブレイブルーパス東京】

 21年度から2シーズン在籍したS愛知を離れ、23年度から東芝ブレイブルーパス東京の一員となった。望んでいた通訳として採用された。
「フルタイムで通訳をやってみたいという思いは、ずっとありました。実際に仕事をしていくと、難しさを多々感じています。自分はラグビーをやったことがないので、話している内容を理解できなかったり、間違えて訳してしまったりすることがあります。練習が終わったあとで、スタッフに『あの言葉はどういう意味だったの?』と聞いて、身体の動きを実際にやってもらうこともあります」
 単語の意味を正確に理解するのは、通訳の仕事の一部に過ぎない。日々のトレーニングでは、インプットしたものをいかに素早くアウトプットできるのかが問われる。
「そうなんです、グラウンド上では早さがすごく求められます。それもこのチームへ来てからの課題で、まだまだです。通訳としてのスキルがまだまだ身に着いていないですし、英語力もまだまだ伸ばしていかないといけない。同時進行で頑張っていかないと」
 言語を変換する際には、感情を置き忘れないことも大切だろう。一つひとつのフレーズを覆う感情まで読み込みながら、吉岡は当事者が伝えたいことを探り当てていく。
「ハードな練習を終えたあとのハドルで、大事なメッセージをシンプルに適切な音量で、適切な早さできちんと伝えられたときは、すごく嬉しいですね。その瞬間は一番充実感があります。きちんと訳せた場面では、選手みんなが頷いてくれますし、僕も選手たちの目を見渡しながら、自信を持って喋ることができる。まだまだその回数は少ないですけれど、そこが一番のやり甲斐かなと思います」
 通訳としての力不足に、歯嚙みすることもある。けれど、心が挫けることはない。東芝ブレイブルーパス東京という「自分にはもったいないぐらい素晴らしいチーム」で、「ずっとやりたかった仕事」に打ち込むことができているからだ。
「伸びしろはたくさんあると思っていますので、もっともっと上達して、試合で通訳を任されるような立場を目ざします」
 通訳としての自身を語る吉岡は、「まだまだ」というフレーズを何度も使う。足りない自分を自覚し、なりたい自分をイメージする。心のなかに芽吹く未来図は、一日が終わるたびに色と線を増やしていく。

(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)

【東芝ブレイブルーパス東京】

東芝ブレイブルーパス東京 試合情報

5/19(日)はプレーオフトーナメント準決勝として、秩父宮ラグビー場にて東京サンゴリアスと対決します!
今シーズン3度目の府中ダービー、ぜひ会場で皆様のご声援をよろしくお願いいたします。

【試合情報】
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 プレーオフトーナメント準決勝
東芝ブレイブルーパス東京 vs 東京サンゴリアス
日時:5/19(日)14:05キックオフ
会場:秩父宮ラグビー場(東京)

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著者プロフィール

東芝ブレイブルーパス東京はジャパンラグビーリーグワン(Division1)に所属するラグビークラブです。日本代表のリーチマイケル選手や德永祥尭選手が在籍し日本ラグビーの強化に直接つなげることと同時に、東京都、府中市、調布市、三鷹市をホストエリアとして活動し、地域と共に歩み社会へ貢献し、日本ラグビーの更なる発展、価値向上に寄与して参ります。

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