【ラグビー/NTTリーグワン】より確かになった自分たちが歩むべき道。 “大阪になくてはならない存在”への挑戦は来季も続く<RH大阪 vs 九州KV>

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マッチエピソード&記者会見レポート
RH大阪 22-12 九州KV


5月5日(日)にヤンマースタジアム長居で行われたディビジョン2の4~6位順位決定戦第3節で、レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)と九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)が対戦した。九州KVが勝利したリーグ戦第10節と同じ会場、同じキックオフ時間、同じような青空の下での対戦となったが、今回はRH大阪が22対12で勝利。最終順位はRH大阪が4位、九州KVが5位となり、両者は今季の戦いの幕を下ろした。

九州KVとの対戦について「(今季は)1勝1敗でここまで来ていて、直近の試合では負けていたので、絶対に勝って終わりたいと思っていた」と話した、RH大阪の金勇輝。この日もこれまでと同様、攻守ともにチームのために力を尽くした。

どの試合でもブレることのない強い意志がプレーから見える金勇輝だが、ゲームが途切れるタイミングでは、よく観客席を見上げて「自分を奮い立たせている」という。今季のRH大阪は、総当たりのリーグ戦でのホストゲームの1試合平均観客数が6,000人を超えていたが、この日の観客数も5,331人。チーム関係者の家族や友人たちだけでなく、多くのファンが会場を訪れ、試合を見守ってくれていることは、選手たちに良いゲームと勝利の喜びを届けたい意志をさらに固くさせた。

「今季のプレシーズンから取り組んできた区民アンバサダー活動で直接関わった人たちが、会場に足を運んでくれているのが見えたり、試合後に手を振ってもらったりしました。フィールド外でできたつながりが、フィールドでまたつながるということに、とてもやりがいを感じていた」(金勇輝)

練習と社業の合間を縫って地元・大阪の人たちに愛されるチームになるために継続して取り組んできたことは、選手たちのモチベーションにも大阪を背負う誇りにもなった。

今季は、厳しい結果を突きつけられることも少なくなかった。それでも、昨季開幕前のチーム再編からマット・コベイン ヘッドコーチと杉下暢キャプテンが率いてきた2年をとおして振り返れば、新たなチームとして生まれ変わった自分たちが歩むべき道の土台は、今季でより確かなものにすることができたと言えるだろう。

「ラグビーは複雑なスポーツなので、自分たちの意思だけでは成功体験を継続して重ねることができないこともあるけれど、結果を出すことと観客動員を増やすこと。2本柱で今季取り組んできたことは、右肩上がりに成果を出してこられたと感じている。シーズンやチームの人が変わっても、そういう文化は、つなげていきたい」(金勇輝)

『大阪になくてはならない存在』になるために。さらに、地元・大阪に根付いた強くたくましいチームになって、来季もディビジョン2の舞台で戦う。

(前田カオリ)

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レッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ

「少しフラストレーションの溜まる試合となりました。たくさんのチャンスはありましたが、そこでトライを取り切ることができませんでした。序盤はスコアもできましたが、前半の終盤や後半の始めには、規律面で相手にチャンスを与えてしまいました。ハーフタイムでは規律面について話しましたが、後半は良いところも悪いところもあったと感じています。モールからの流れでトライしたこと、最終的に勝利できたことは良かったと思っています。フラストレーションを感じたというのは、本来持っている力を出すことができれば、もっと良いゲームができたと思うからです。今シーズンはそうした試合が多かったです」

――この1年で、成長を感じた部分はありますか?

「このディビジョン2には、素晴らしいチーム、フィジカルも強い素晴らしい選手がたくさんいました。その中でも、もっとできるという思いも強くありましたが、私たちはハードに取り組み、ベストを尽くしてきました。シーズンを通じて負傷者も多かったですし、杉下キャプテンもシーズン序盤はけがで試合に出ることができませんでした。一貫して遂行し切ることに関してはまだ足りない部分があるかもしれませんが、キックをうまく使うことに関しては、理解も深まり、チャンスを増やせるようになれたかと思います。また、2年前のチーム再編から継続して取り組んできたことはたくさんありますが、考える人になって、ハングリーな精神を持ち、絆を大切にしていこうと掲げていたものに対しては、成長したと言えるだけのものになったと感じています。杉下キャプテンも、よくチームを支え、助けてくれました。また、これからチームを去ることになる選手も出てくるかと思います。チームに貢献してくれた選手たちをこの場で讃えることができないことは非常に残念ですが、貢献してくれたことに感謝していますし、その人たちの次の道が良いものとなることを祈っています」

レッドハリケーンズ大阪
杉下暢キャプテン

「前半の早い時間では、自陣でプレーする時間が長くなってしまいましたが、そこで我慢強くディフェンスできたことが良かったと感じています。ジョシュ・マタヴェシ選手などを中心にコンテストキックをうまく使いながら中盤を戦い、相手陣内の22mラインに入ったあとは何度かスコアできました。今シーズン掲げていた『スマートに戦うこと』が発揮できましたので、チームの成長を感じました。ただ、22mラインに入ったあと、ボールセキュリティーが甘かったり、不必要なペナルティを重ねてしまったりしたことが、結果的に自分たちの首を絞めてまた自陣に戻ってしまうことがありました。来季に向けてそこを改善していかなければD2のトップ3に入ることはできないとも感じました」

――今日も5,331人の観客がヤンマースタジアム長居に訪れました。シーズンをとおして、たくさんの観客に訪れてもらえるチームに成長してきたのかと思います。

「今季は、プレシーズンから区民アンバサダー活動に継続して取り組んできました。たくさんの方に来ていただくということは当たり前のことではないので、本当にうれしいです。ただ、せっかく来ていただいているので、もっと勝利を届けていかなければならないとも感じています。チームとしては“最高の月曜日を迎える”ことも掲げていますが、来ていただいた方たちに最高の月曜日を迎えてもらうために、週末の試合を『良い試合だった』で終わるのではなく、もっと勝って、ハッピーになっていただきたい。これからまたオフシーズンに入りますが、そこで一人ひとりがレベルアップし、もっともっと強くなって戻ってきます」

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九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ代行

「天気も素晴らしく、たくさんの観客の方に来ていただいたスタジアムで今季最後の試合をできたことをうれしく思います。ご尽力いただいたみなさまに感謝申し上げます。

勝って終わりたいという思いは当然ありましたが、選手たちは準備してきたこと、やれることをグラウンド上でしっかりやってくれたので、今日の試合をしっかりレビューして、来季につなげたいと思います。ただ、この1年やってきたことは間違っていなかったと思っていますし、選手たちが成長したことは本当に一番大きな収穫だったと思うので、来季にしっかりつなげていきたいと思います」

――この1年で最も成長を感じたのは、どういった部分でしょうか?

「昨季と比べると、選手たちが考えてラグビーができるようになったところかと思います。今季は私がヘッドコーチ代行という形でシーズンをスタートしましたが、この1年で意識したのは、選手たち自身がグラウンドで判断できるようになること。選手たちから学ばされることも多くありましたし、そこは本当に成長したと感じています」

――来季のさらなる成長につなげられそうな部分はありましたか?

「山田(有樹)キャプテンも話してくれていましたが、今日は試合の中で、自分たちでコントロールすれば抑えられるであろうペナルティがいくつかありましたので、そのあたりをゲーム内でマネジメントできるようになる伸びシロはあると思います。そうした部分を改善しなければD1にチャレンジすることも難しいと思うので、来季につなげていってほしいです」

九州電力キューデンヴォルテクス
山田有樹キャプテン

「今日はこのような素晴らしいグラウンドで多くのファンの前でラグビーできたこと、本当にありがとうございました。

今日は今季最後の試合でしたし、今日を最後にチームからいなくなるメンバーもいましたので、そのメンバーのためにも『勝って笑って帰ろう』と話をしていました。ただ、結果としては勝ち切れませんでした。ちょっとしたミスや規律の甘さがあって、点差につながったと感じています。1年をとおして成長できたことは実感できましたし、また来季もD2の舞台で戦うことができるので、今季の戦いで得られたものを糧に、来季に向かって頑張っていきたいと思います」

――試合のあと、良い雰囲気でハドルをされているようでした。

「この試合を最後に、チームを去る選手もいます。チームにコミットしてくれたことは、これから新しいチームになっていく上で良い文化を残してくれました。勝ち切れなかったですが、そのような人たちのために時間を取れたことは良かったと思っています」

――来季に向けての意気込みをお願いします。

「この1年間、D2で戦ってきて自信も付きました。どのメンバーが入っても、コンスタントに良いパフォーマンスができるようになりました。シーズンの前半は大差で負けるような試合もありましたが、後半には負けても僅差の試合ができるようにもなりました。戦える部分も多くなってきたので、来季に向けても引き続きしっかり取り組んでいきたいと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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