【物語りVol.101】山内 遼 通訳「どうせ行くのなら、日本から一番遠いところがいいだろうと考えました」

東芝ブレイブルーパス東京
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【東芝ブレイブルーパス東京】

東芝ブレイブルーパス東京では、多くの皆さまにクラブのことをより知っていただくために、今シーズンもライターの戸塚啓さんにご協力いただき、選手・スタッフ一人ひとりの「物語り」を発信しています。
※今シーズン新加入の選手の物語りを掲載していきます

【物語りVol.101】山内 遼 通訳

 山内遼はグローバルな感覚の持ち主だ。
「北海道で生まれて、父親の仕事で幼稚園の年代はアメリカで過ごしました。小学校から高校1年生までは、東京で過ごしました」
 高校2年時には交換留学プログラムの試験をパスし、南米のアルゼンチンへ向かった。その理由が何とも個性的だ。
「どうせ行くのなら、日本から一番遠いところがいいだろうと考えました。英語はそれなりにできていたので違う言語の国に行こう、それなら世界的に見ても喋る人が多いスペイン語じゃないか、と」
 小学校から中学3年まで、サッカーに打ち込んだ。中学3年からは、母親が好きだったラグビーへ転向した。世界のサッカー大国にしてラグビーでも国際的な競争力を高めているアルゼンチンは、スポーツに打ち込むにも最適の環境だった。
「サッカー選手としての自分はプレーが荒くて、中学生なのに警告を受けてしまうような選手で。アルゼンチンはサッカーもラグビーも強いので、どっちもできるかな、と」

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 帰国後は東京外国語大学へ進学し、ラグビーを続けていく。SOとFBでプレーしていた山内は、4年時にキャプテンを任された。
 ところが、チームの先頭に立った矢先に、価値観が大きく転換するような事態に襲われる。生死の境をさまようほどの大けがを、負ってしまうのだ。
「タックルをしてきた人の肩が喉に入って、軌道が破裂して呼吸ができなくなりました。チームメイトがすぐに救急車を呼んでくれて、病院へ運ばれている間もだんだん呼吸ができなくなって、酸素マスクをはめられて。身体中に酸素がめぐっていなくて、緊急手術になって」
 ストレッチャーに乗せられ、手術室へ運ばれた、その間にも、息ができなくなっていく。心拍数が、血圧が、血中酸素濃度が、どんどんと下がっていく。意識が遠のく。看護師の「このままだと死んでしまいます!」という叫びが、遠くから聞こえたような気がした。
「僕はもう息ができなくて、ああもう、死ぬんだなあと思って、諦めて眼をつぶって……」
 1日半後だったか、それとも2日後だったか。山内は意識を取り戻す。母が付き添ってくれていた。
 その後は入退院を繰り返し、「5回か6回」手術をした。声帯が傷ついた影響で、最初は声を出すことができなかった。少しずつ発声できるようになったものの、いまも声はかすれたままである。
 治療に時間を費やしたため、就職活動ができなかった。人生の岐路で行き先を探す山内を、持ち前の語学力が救う。
「大学の先輩が日野レッドドルフィンズでチームマネジャーをやっていて、通訳を探していると。自分みたいな声でもいいならと面接を受けて、ありがたいことに働くことができました」

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 2020年8月、山内は日野RDの通訳となった。空き時間を活用して大学に辛抱強く通い、卒業までこぎ着けた。
「日野RDで22-23シーズンまで働いて、次はどうしようかなと思っていたところで、アナリストの宮尾さんを通して東芝ブレイブルーパス東京から声をかけてもらいました。宮尾さんは家が近かったこともあって、ずっとお世話になっているんです。恩人です」
 東芝ブレイブルーパス東京では、オールブラックスのリッチー・モウンガやシャノン・フリゼルと、ひんぱんにコミュニケーションを取る。世界的プレーヤーの素顔を知ることができるのは、生活のサポートもする通訳の特権かもしれない。
「ある程度ラグビーが分かっている前提で、リッチーやシャノンが普通に話してくれるのは、確かに嬉しいことですね」
 外国人選手のすぐそばに立つ山内は、彼らの言葉をメモしない。それでいて、英語から日本語への変換に時間を要したり、重要な単語を飛ばしたりすることはないのだ。
「頭のなかの容量を、できるだけ大きく持っておく感じです。メモを取って行ったり来たりしている間に言葉が抜けることのほうが、僕自身は多いんです。なので、できるだけ頭のなかに残しておく、という。通訳を始めたばかりの頃に比べれば、脳のメモリーは大きくなっています」
 スポーツが好きで、ラグビーが好きで、外国語が得意だ。山内にとっての通訳は、天職のように映る。
「どうですかねえ……まだまだ、この仕事の魅力みたいなものを、実感できていない気がしますが。たとえば、一緒に仕事をしているヘッドコーチが他のチームへ行くことになり、『通訳はリョウがいい』と言ってくれて自分も連れていってくれたら、嬉しいかもしれません。そういうことは、まだないですけどね」
 幼少期から磨かれたグローバルな感覚で、山内はスタッフと選手の心をつないでいく。東芝ブレイブルーパス東京が多様性を認め合い、生かし、チームの強みとしていくために、彼ら通訳の存在は欠かせないのだ。

(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)

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東芝ブレイブルーパス東京 試合情報

4/14(日)はホストゲームとして、秩父宮ラグビー場にてコベルコ神戸スティーラーズと対決します!
ここまで10勝1敗と勢いに乗っています!この勢いのままにプレーオフトーナメントに向け勝利を重ねていきますので、ぜひ皆様のご声援をよろしくお願いいたします。

【試合情報】
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 第13節
東芝ブレイブルーパス東京 vs コベルコ神戸スティーラーズ
日時:4/14(日)14:30キックオフ
会場:秩父宮ラグビー場(東京)

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著者プロフィール

東芝ブレイブルーパス東京はジャパンラグビーリーグワン(Division1)に所属するラグビークラブです。日本代表のリーチマイケル選手や德永祥尭選手が在籍し日本ラグビーの強化に直接つなげることと同時に、東京都、府中市、調布市、三鷹市をホストエリアとして活動し、地域と共に歩み社会へ貢献し、日本ラグビーの更なる発展、価値向上に寄与して参ります。

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