【高松宮記念】短距離界にマッドクール時代到来の予感、完成はまだ先「もっと強くなる」
春のスプリント王決定戦・高松宮記念は坂井瑠星騎手が騎乗した6番人気マッドクール(右)が優勝 【Photo by Shuhei Okada】
マッドクールは今回の勝利で12戦6勝(うち海外1戦0勝)、重賞は初勝利。騎乗した坂井騎手、同馬を管理する池添学調教師ともに高松宮記念は初勝利となった。
なお、2着ナムラクレアから3馬身差の3着には香港から遠征してきた5番人気ビクターザウィナーが入線。1番人気に支持されていた西村淳也騎手騎乗のルガル(牡4=栗東・杉山晴厩舎)は10着に敗れた。
道中は理想のポジション「思っている中で一番良い形」
道中は「理想通りのポジション」だったという坂井騎手、直線も一気の伸び脚で後続を封じた 【Photo by Shuhei Okada】
「本当によく頑張ってくれました。馬を称えたいですね」
表彰式後の共同インタビューで主戦の坂井騎手が会心の笑顔を浮かべた。レースは好スタートを決めるとハナにはこだわらず、香港のビクターザウィナーを先に行かせてインの2番手をがっちりとキープ。
「勝つならスタートを決めて、ハナに行く馬の後ろを取ろうと思っていました。良いスタートが切れて、思っている中で一番良い形で進めることができました。理想通りのポジションで、思い描いた通りの競馬ができたと思います」
昨秋ハナ差2着のリベンジ「結果で答えるしかない」
ハナ差で敗れた昨秋スプリンターズステークスの悔しさを晴らす大きな1勝、坂井騎手は共同会見でも会心の笑顔を見せた 【Photo by Shuhei Okada】
「道中でのリズムが良かった分、直線もしっかりと反応してくれましたし、後ろを離していましたから、これなら最後までしのいでくれるだろうと思っていました」
鞍上の期待通り、最後まで先頭を譲らなかったマッドクール。国内と海外合わせて3度目の挑戦でGIタイトルに手が届いた嬉しさはもちろんだろうが、坂井騎手にとってはそれ以上にハナ差で惜敗したスプリンターズステークスの“リベンジ”を果たせたことがより感情を揺さぶったに違いない。
「去年の秋、ハナ差で負けたのでもうコンビを組ませてもらえなくてもおかしくないと思っていました。でも、また依頼していただいたので、これはもう結果で答えるしかないと思っていたんです。今回、乗せていただけて本当に嬉しかったですし、結果で答えることができて良かったと思います」
成長の余地タップリ「まだ完成ではない」
(左から)坂井騎手、池添調教師ともに「もっと強くなる」とさらなるマッドクールの成長に期待している 【Photo by Shuhei Okada】
「未勝利を勝った時から比べると本当に成長を感じますが、それでもまだ良くなる余地があると思います」(坂井騎手)
「だいぶしっかりしてきましたが、まだ完成ではないと思っています。もう一段階成長してくれればと思いますし、トモ(後肢)の緩さが取れてもっと調教で乗り込むことができれば、さらに強くなると思います」(池添調教師)
中京1400m芝で初勝利を挙げた3歳5月の時点で担当助手に「高松宮記念を目指しましょう」と語っていたという坂井騎手。その通りの成長を見せた愛馬とともに目指す次の道はどこになるのか。池添調教師によれば4月28日・香港チャンピオンズデーに開催されるGIチェアマンズスプリントプライズの招待が届いており、「オーナーサイドと相談してから」としているものの前向きな姿勢を見せている。
昨秋スプリンターズステークスのリベンジを春の中京で果たしたように、今度は暮れの香港スプリント8着の悔しさを同じ舞台で晴らす――そんなドラマを期待したい。
希代のアイドル馬、メイケイエールがラストラン
高松宮記念でラストランを迎えたメイケイエール、引退式では多くのファンに見送られた 【Photo by Shuhei Okada】
前向きすぎる気性ゆえに鞍上とリズムが噛み合わずに大敗するレースもあったが、ひとたび人馬一体となれば驚くほどのスピードと強さを見せたメイケイエール。そんな両極端な走りと個性的な性格、そして愛らしい顔立ちから人気に火がつき、単独の写真集も発売されたほどだった。
競馬史に残る希代のアイドルホースの最後のGI挑戦は9着。「ゲートもしっかり出てくれて、道中はいい感じ。4コーナーを回る時には手応えもあったので『これならいいな』と思ったんですが……」と池添騎手。だが、雨でぬかるんだ重馬場がメイケイエールにとっては文字通りの足かせとなってしまった。
「きれいな走りをする馬ですから、この馬場がね……。欲を言えば良馬場でやりたかった。これで高松宮記念は3年連続で道悪でしたから恵まれなかったですね」
それでも、決して得意ではない条件の中で最後まで力を出し切った最愛のパートナーに向けてはもちろん感謝しかない。池添騎手は「今回は本当にちゃんとレースができましたし、僕としては納得のいくレースでした。よく頑張ってくれたと思います」とねぎらいの言葉を送った。
国内・海外合わせて通算20戦7勝。この7つの勝ち鞍のうち6つが重賞勝利という素晴らしい成績を残し、今後は北海道安平町のノーザンファームで繁殖牝馬となる予定。母のスピードと個性を受け継ぐ2世がターフに戻ってくる日が本当に楽しみだ。(取材:森永淳洋)
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