【SABR】BettsのコンバートはWARに影響するか?守備位置補正の仕組みについて
■不慮の事態…思わぬ副産物も?
一方、開幕前のこの時期に想定外の事態に陥ることもあります。主力として計算されていた選手の故障や不調などはわかりやすい例でしょう。オフシーズンに最も注目を集めた球団、ロサンゼルス・ドジャースの遊撃手候補ギャビン・ラックス(https://www.fangraphs.com/players/gavin-lux/19955/stats?position=2B)の不調と、それに伴った球界のスーパースター、ムーキー・ベッツ(https://www.fangraphs.com/players/mookie-betts/13611/stats?position=OF)の遊撃手コンバート案もそのひとつ。
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ただ、稀代のユーティリティープレイヤーとしても知られるベッツを抱えていたのはドジャースにとって不幸中の幸いと言えます。外野の名手として知られるベッツですが、昨年は遊撃手としても16試合に出場。コンバートに対してベッツが前向きな発言を残しているのはファンも一安心と言えるでしょうか。
「ベッツが遊撃手にコンバートしたらWARが上がるのでは?」
MLBファンの中でも謎に包まれている総合指標「WAR」と、その特徴である「守備位置補正」によるものです。今回は「ベッツはコンバートによってWARを上げることができるか?」という点に注目し、守備位置補正の基本的な解説を行います。
■守備位置補正とは
実際の守備位置補正値を確認してみましょう。各データサイトごとに算出方法は異なりますが、今回はFangraphs WAR(fWAR)に焦点を当てます。
162試合換算。 【鯖茶漬】
■「SS:Betts」と仮定してみよう
i.打撃貢献(Batting Run)
ⅱ. 走塁貢献(Base Running)
②総合守備貢献(Defense WAR)
ⅰ.守備貢献(Fielding)
ⅱ.守備位置補正(Positional)③リーグ調整(League)
④代替水準対比価値(Replacement)
Fangraphs(https://www.fangraphs.com/players/mookie-betts/13611/stats?position=OF)でベッツの各コンポーネントを確認してみます。ページ下部の「Value」から。
https://www.fangraphs.com/players/mookie-betts/13611/stats?position=OF(https://www.fangraphs.com/players/mookie-betts/13611/stats?position=OF) 【鯖茶漬】
これが仮に1284.2イニングすべて遊撃手としての出場だったと仮定して計算し直しましょう。結果は以下。
赤字が変更点。 【鯖茶漬】
とはなりません。実はこの計算方法には大きな見落としがあります。それは「UZR(https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20026)から算出しているFieldingが各ポジション内での相対評価のままである」という点です。ここでいうと、ベッツの守備成績の比較対象が「遊撃/二塁/右翼」となっています。
前述したように、各守備位置の難易度は同等ではありません。遊撃手1284.2イニングの守備位置補正値を扱うなら、UZRから算出したFieldingの数値もすべて遊撃手として出場したと仮定した数値を扱わなければなりません。
■コンバートはWARに影響しない?
では、なぜ「WARに影響はない」とされるのでしょうか。ここには守備位置補正の算出方法への理解が必要になってきます。セイバーメトリシャンのトム・タンゴが実際に守備位置補正値を算出する過程を自身のブログで明かしているので、以下に少しだけ紹介します。
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つまり守備位置補正とは「過去に複数ポジションを守った選手の守備成績を参考に、難易度を定量的に評価した値」ということです。もちろんすべての選手をサンプルとしたわけではない点に注意が必要です。各選手によってポジションの向き不向きはあるので、あくまで傾向の話。
話をベッツに戻します。遊撃/二塁/右翼としてFielding0.7を記録する能力を持っていたベッツですが「遊撃としてフル出場した場合はFielding-8.2を記録する」という仮定ができます。今までは守備能力が比較的低い他球団の右翼手が比較対象となっていましたが、遊撃を守る場合は高い守備能力を有する他球団の遊撃手が比較対象となるためです。
遊撃手とした出場した仮定。WARには影響なし。 【鯖茶漬】
過去の傾向から「遊撃手として98イニング+二塁手として485イニング+右翼手として701.2イニングしてFielding0.7を記録する野手」はどのポジションでも「Defense-1.6」を記録する可能性は高いと考えられます。守備位置補正とはそういったポジション間の難易度を同等にするために扱うものです。
しかし、今季ベッツがコンバートすることによってこれ以上の数値を記録することも十分にあり得ます。そのようなことが起こった時、我々は改めて野球選手としての彼の凄さを実感することになるのではないでしょうか。
【Tango on Positional Adjustments(http://bbalone.blog119.fc2.com/blog-entry-583.html)】
・守備位置補正の算出過程がBaseball Concreteにまとめられています。
【コンバートは打撃成績に影響を与える?(https://note.com/baseball_namiki/n/n70590fd47e22)】
・本稿では守備成績への影響のみを考慮していますが、コンバートによる打撃成績への影響も考えられます。少なくともFangraphs社はそのあたりの影響を考慮していません。
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