早大フィギュア部門 祝100周年 OB・OGらも集い豪華スケーターが共演 引退生は最後の舞

チーム・協会
【早稲田スポーツ新聞会】記事 及川知世、吉本朱里、荘司紗奈 写真 吉本朱里、荘司紗奈、及川知世、水平櫻子

 2021年から始まり、今回で4回目となる早稲田大学スケート部フィギュア部門のエキシビションショー、WASEDA ON ICE(WOI)。今年は、スケート部の創立100周年を記念し、例年は無かった豪華OB・OGのグループナンバー出演、スケート部他部門とのコラボも実現し、唯一無二のショーが更に進化。それに、現役選手それぞれが自分のスケートを最大限に魅せる個人演技、WOIの真髄とも言えるグループナンバー、そして卒業生挨拶が加わり、立ち見が出るほどの大盛況となった会場は終始興奮と感動に包まれた。

★オープニング

 2024年のWOIの最初を飾るナンバーは1年の山田琉伸(人通1=埼玉栄)が振付を担当したオープニングナンバー『Believer』。ダークでクールな雰囲気の曲に合わせ、激しく変化する照明の中、部のウィンドブレーカーを着用して部員が2人ずつ順に登場した。4年生の男子部員2人、島田高志郎(人通4=岡山・就実)と岡島右京主将(商4=東京・早大学院)が最後に1人ずつ順に登場し、他の選手より長くソロパートを踊ると、早速観客からは大歓声が。全スケーターが氷上に揃うと、激しい曲にキレのある動きを全員が合わせ、曲のラストでは岡島主将がリンク中央で拳を突き上げた。早くもグループナンバーの完成度の高さを印象付け、この後のショーへの期待が膨らむオープニングとなった。

オープニングから会場を盛り上げた部員たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★現役生演技①

 現役生個人演技、最初に登場したのは中村華(人4=群馬・高崎女)。(※2年入部、休学留学中のため、部内では3年。)留学先のカナダで作ったプログラム、『Gabriel's Oboe』を披露。トップバッターに相応しい、しっとりとした美しい演技で魅せた。

『Gabriel's Oboe』を披露した中村 【早稲田スポーツ新聞会】

 2番滑走の坂﨑愛介(基理1=東京・早大学院)は『Give Me Love』をお披露目。WOI初出演ながら、それを感じさせない堂々とした滑りで大人っぽく情感たっぷりなプログラムを滑り切った。

『Give Me Love』を披露した坂﨑 【早稲田スポーツ新聞会】

 同じく1年生の栁田梨穂子(創理1=埼玉・川越女)のプログラムは、自分でプロュースしたという『Back in Time』。淡いピンク色の衣装を身にまとい、可憐な滑りや美しいスパイラルで魅せると、会場からは大きな歓声が上がった。

『Back in Time』を披露した桝田 【早稲田スポーツ新聞会】

 廣田聖幸(スポ3=千葉・東邦大東邦)は今シーズンのショートプログラム(SP)『It's gonna be alright』を演じた。演技クライマックスのステップに入る前には観客を煽り、アイスショーならではの演出で会場を盛り上げた。

『It's gonna be alright』を披露した廣田 【早稲田スポーツ新聞会】

 第1グループ最終滑走は木南沙良(人通3=東京・日大一)。競技ではクールで大人な女性を演じる木南だが、WOIにはポップなプログラム『Made You Look』を用意。ポーズを決めるたびにリンクサイドからは「かわいい!」の声が上がるなど、キュートな振り付けで魅了した。

『Made You Look』を披露した木南 【早稲田スポーツ新聞会】

★男子グループナンバー

 ハリーポッターの曲に乗せた男子グループナンバーには、男子部員5人と、大のハリーポッター好きだという吉本玲(国教1=兵庫・芦屋国際中教校)が出演。まず、坂崎、山田、吉本の1年生3人がマントにネクタイの衣装に魔法の杖を持って登場すると、その後黒の長いコートをはためかせながら岡島、島田、廣田が悪役としてリンク上を疾走。赤、緑、紫などの怪しげで激しい照明演出に彩られながらバトルシーンとなり、1対1の氷上魔法バトルが繰り広げられた。最終的に1年生たちが勝利し、和解するようなかたちで大団円。ストーリー仕立てのナンバーで各選手の演技力が光った。

マントをまといハリーポッターの世界観を演じた部員たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★女子グループナンバー

 男子グループナンバーからシームレスに続くようにして始まった女子のグループナンバー『Part of your world』には、前のナンバーで滑ったばかりの吉本も、また今回のショーでは個人演技を行わなかった斉藤彩花(国教1=岡山学芸館)も参加。女子部員9人が青いポンポンを持って登場し、大人数ならではのフォーメーション変化も織り交ぜたプログラムを作り上げた。滑らかなスケーティングが持ち味の選手が多い早稲田の女子部員たちの演じる海の中の世界は、華やかでありながらも儚さが感じられ、特に全員同時のスパイラルは美しく揃い、客席からは感嘆のため息も上がっていた。

華やかに氷上を舞う女子部員たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★現役生演技②

 グループナンバーを挟み、現役生演技の2グループ目の演技がスタートすると、トップバッターとして嶋田輝(教3=千葉・昭和学院秀英)が登場。プログラムは昨年のWOIでも披露した『Once Upon a December』だが、演技時間を1分長くしたバージョンで演技を行った。最初から最後まで笑顔で演じ切った。

『Once Upon a December』を披露した嶋田 【早稲田スポーツ新聞会】

 副主将の千葉紫織(文構3=東京・筑波大付)は、2年前のプログラム『The Mission』を伸びやかに演じた。「心を込めて滑る」との言葉通り、豊かな表情で感情の伝わる演技で魅了した。

『The Mission』を披露した千葉 【早稲田スポーツ新聞会】

 2回目のWOI出演となった妻鹿愛(政経2=大阪桐蔭)。継続のプログラム『Crystalier』を演じた。「葛藤と悩み」を描いているというピアノ曲に乗せて、繊細な表現と丁寧な滑りを見せた。

『Crystalier』を披露した妻鹿 【早稲田スポーツ新聞会】

 お気に入りのプログラムだという『Somewhere only we know』を披露した吉本。定評のある一歩一歩が伸びる美しい滑りに加え、ジャンプやスピンも披露。満面の笑みで初のWOIでの個人演技を終えた。

『Somewhere only we know』を披露した吉本 【早稲田スポーツ新聞会】

 現役生最後に登場した山田は、自身でアレンジしたという『Queen メドレー』を演じた。試合さながらのジャンプ構成をやり切りながら、曲が盛り上がる後半には会場を大いに盛り上げた。

『Queen メドレー』を披露した山田 【早稲田スポーツ新聞会】

★現役生グループナンバー

 今年のグループナンバーの楽曲には、残念ながら現地での出演が叶わなかった4年生・西山真瑚(人通4=東京・目黒日大)が今シーズン使用していた『スーパーマリオブラザーズ』が選ばれた。最初に4人の4年生がそれぞれ、島田がマリオ、西浦穂香(スポ4=東京・都立墨田川)がルイージ、馬場はるあ(社4=東京・駒場学園)がピーチ姫、そして主将・岡島がゲームをプレイしている少年に扮して登場。岡島がゲームを進めるプレイヤー、他の4年生が動かされるキャラクターとなり、キャラクターさながらの飛び跳ねるようなコミカルな動きを多用して、曲に合わせてさまざまな場面を見せていく。下級生はクリボー、ノコノコなどのTシャツを着て後から登場し、こちらもゲームの一部として役になり切った。途中、キャラクターたちの行く先に妨げる悪役としてはホッケー部門の選手たちが登場。また、スターを獲得した時の音楽が流れる部分は、ホッケー部門とスピード部門の選手たちがフィギュア部門の選手たちの間を猛スピードで駆け抜け、観客も大いに沸いた。
グループナンバーの後にはホッケー部門、スピード部門の選手たちを氷上に呼び、練習形態や、出演した感想を選手たちが述べ、3部門合わせて100周年の早稲田スケート部、という面を印象付けた。

マリオのキャラクターに扮して楽しげに演じた部員たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★現役生&OB・OGナンバー

 次に氷上で行われたのは、今回のショーの目玉とも言える、八木沼純子氏(平7教卒)振付のOB・OGナンバー『Time to say goodbye』。現役生は赤、OB・OGは黒の、100周年記念Tシャツを着用して、総勢35人が一丸となってナンバーを作り上げた。まず、現役生が2列になって入場し、隊列の交差を経てリンクの端につくとその後にOB・OGが入場。感動的な旋律に乗せて全員が柔らかい動き、且つ晴れやかな表情で演技を行なった。最後は町田樹氏(令2スポ院卒)、武田奈也氏(平23スポ卒)、永井優香氏(令3社卒)、石塚玲雄氏(令4スポ卒)が中心を成す円の周りに、一旦退場した現役部員が加わる形でフィニッシュ。ナンバーの後は1人ずつ出演したOB・OGの名前が場内にコールされ、それぞれがスパイラルやジャンプを披露した。

【早稲田スポーツ新聞会】

OB・OGと現役部員、総勢35名が一体となって演技を披露した 【早稲田スポーツ新聞会】

★卒業生演技

 第三部はじめに行われたのは、卒業生5人による個人演技。西山、島田は現役続行を表明しているが、それ以外の選手にとっては、これが最後の演技となる。トップバッターとして、今回は現地で演技をすることが叶わなかった西山がビデオ出演。観客への感謝のメッセージと共に、昨年現地で披露したWOIでの演技が場内で放送された。プログラムは『Friend like me』。明るい音楽に合わせ、持ち味の美しい滑りを披露した。今シーズンからアイスダンスに専念している西山の、貴重なシングル時代の演技に、ビデオ出演にも関わらず、観客からは大きな拍手が送られた。

 西山の演技が終わると、4年生4人がリンクイン。全員の手を重ね合わせ、大きな声で気合を入れてから、6分間練習をスタートした。4人の中で最初に出番を迎えた西浦は、木南が以前使用していたものを借り受けたという、青とピンクのグラデーションが美しい衣装に身を包んで、笑顔でリンクイン。WOIのために新しく作った『Nero/Promise』を披露した。コーチであり、OB・OGナンバーにも参加している武田氏と、そのチームメイトに振り付けてもらったという特別なプログラムだ。終盤に向けて勢いを増すスピードと、緩急自在な滑りで、壮大な曲調を演じつつ、西浦らしい繊細で柔らかな表現でも観客を魅了。ジャンプも全て着氷させ、最後は祈るように両手を組み、見上げるポーズでフィニッシュ。観客の歓声にも丁寧に応え、最後まで笑顔でリンクを降りた。

『Nero/Promise』を披露した西浦 【早稲田スポーツ新聞会】

 続いて登場した馬場は、今シーズンのSP『My Blood』を披露。薄ピンクと灰色の淡い衣装を身にまとい、笑顔でスタートポジションについた。静かな音楽がかかり始めると同時に、そっと伏せていた顔を上げ、柔らかな腕遣いで曲の世界観に引き込んでいく。終始優しい微笑みを浮かべながら演技をする馬場。万感の思いがこもったステップでは、全身を大きく使って、盛り上がりを見せる感動的な曲調を表現した。演技を終えた後にも、カメラに向かってピースサインをして見せるなど、明るい表情が印象的だった馬場。今シーズン、怪我の影響などで思うような演技ができず、険しい表情も見られたが、最後はとびきりの笑顔でスケート人生を締めくくった。

『My Blood』を披露した馬場 【早稲田スポーツ新聞会】

 島田は、来シーズンのSPを初披露。世界的な振付師であるシェイリーン・ボーン氏に振付を依頼したというプログラムは、『Can’t Take My Eyes Off You』。強くまっすぐな愛を歌った名曲だ。上品な白い衣装を身にまとった島田がリンク上に姿を現すと、会場からは大歓声が送られ、島田のバナーを振る観客も多く見られた。歌詞に合わせてそっと手を差し伸べるような仕草をしたりと、繊細な表現でどこか切なげに演じていく島田。その中でも4回転トーループなど高難度のジャンプに挑戦し、3回転アクセルを美しく着氷させた際には、本人も笑顔を見せた。演技後半は全身を大きく使って歌うように、激しい愛を表現。最後は再びしっとりとした動きでプログラムを締めくくった。笑顔で部員らのもとへ向かった島田は、早大スケート部の部員としては最後の個人演技を終えた。

『Can’t Take My Eyes Off You』を披露した島田 【早稲田スポーツ新聞会】

 最後に登場したのは、今シーズン早大フィギュア部門の主将を務めた岡島。今日一番の歓声が送られる中、わずかに瞳を潤ませた岡島は、目に焼き付けるように会場内をぐるりと見まわして、リンクの中央へ向かった。プログラムは『トスカ』。「観ている人に何かを思ってもらえる演技にしたい」と選んだ、大切なプログラムと共に最後の演技に臨んだ。冒頭から2回転アクセル2本を含む5本のジャンプを立て続けに成功。途中、部員の前を通るときに笑いかけた岡島に、部員が声援を送る場面も。その後わずかなミスがあったものの、一つ一つの振りに想いを込めて丁寧に演じていく岡島の世界観に、観客全員が引き込まれていく。終盤も、盛り上がっていく曲調に負けない加速するスケーティングを見せ、最後は、バタフライなどの技を盛り込みつつ、激しく情熱的なコレオシークエンスで幕を閉じた。演技を終えた岡島は、かみしめるような表情で何度も深くお辞儀をし、大きな拍手に見送られてリンクを降りた。

『トスカ』を披露した岡島 【早稲田スポーツ新聞会】

★フィナーレ

 個人演技を終えたばかりの岡島主将の掛け声で拍手が起こり、岡島と島田のミラーの振りから始まったフィナーレ『You are the reason』。4年生島田、西浦が振付したこのナンバーは、スケートできることへの喜びや感謝を体現しているような振付で、全体的に前向きで感情のこもった雰囲気。スケーター全員が、オープニングやグループナンバーとは違った、柔らかい動きで踊り、部員全体でナンバーに対する意識や解釈が統一されていることがうかがえた。ラストは4年生4人が外向きに手を繋いで円を作り、その周りを3年生以下が取り囲むような隊形でフィニッシュ。曲が終わった後は観客席に向けて手を振り、WOIのショー本編は幕を降ろした。

感動的な演技でWOIを締めくくった部員たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★挨拶、クロージング

 ショー本編の後には、部を引退する4年生からそれぞれ今までのスケート人生の思い出や感謝の言葉が述べられた。特に、今公演を引っ張った主将・岡島は100周年の特別なショーを作り上げることができた喜びとともに、幼少期に町田氏と交わした共演の約束を、今回のショーで10年越しに果たしたことを明かした。また、本公演には出演せず、裏方として公演をサポートしていた川畑和愛(社4=沖縄・N)も氷上に姿を表し、競技からの引退を発表した。新年度の体制も紹介され、長年スケート部の監督を務めてきた福原美和監督の退任も発表された。
 その後は、一般の観客も撮影が可能なクロージングのセッションとなり、選手は集合写真に収まったり、リンクを周回したりしながら観客の声援に応えた。

千葉から花束を受け取る島田と、それを見守る4年生たち 【早稲田スポーツ新聞会】

★公演後

 公演終了後の楽屋では、この日が誕生日だった町田氏と廣田にサプライズでケーキが用意され、出演者全員で祝うという温かいイベントが。昨年度卒業のOGが4年生に花束を渡す場面もあり、出演者それぞれが感動と達成感を噛み締める時間となった。

サプライズでケーキをプレゼントされ、笑顔を見せる町田氏と廣田 【早稲田スポーツ新聞会】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント