【CHC】今永昇太の”Philosophy”はカブスを救うのか
【【CHC】今永昇太の”Philosophy”はカブスを救うのか】
日本時間の午前9時ごろ、複数のインサイダーより、NPB:横浜DeNAベイスターズからポスティングシステムでのMLB移籍を目指していた今永昇太投手をカブスが獲得したとの報道が出ました。
今回は今永投手の契約内容やNPB時代の活躍を振り返りながら、カブスで求められる役割とMLBで生き抜くためのポイントを探っていこうと思います。
リスクを軽減できた契約内容
当初は2年総額$30Mをベースとして、複数のオプションとエスカレーター、インセンティブによって最大4年$80M程度まで膨れ上がる契約ではないかと予想されていましたが、結果的には4年総額$53Mが保証される契約に加え、2年後となる2025年、そして2026年オフにクラブオプションを付け、最大5年$80Mまでエクササイズできる全体像が見えてきています。また、2,3年目終了時のクラブオプションが行使されない場合、今永投手にオプトアウトの権利も付与となっているようで、最短で2年、最長5年というブレ幅のある契約期間が予想されています。
AAV:$13.25M(現時点)→保証された4年$53Mの平均年俸額
2024~2025:15M(Signing Bonus等も含まれる可能性高)
→2年総額$30Mの報道に準ずる形
~ここまでで残り2年$23Mと仮定~
2025年オフ:クラブオプション
行使:2028年:残り$27M(インセンティブ等含む)までのエクステンション決定
破棄:契約続行orオプトアウトしてFAになる
2026年オフ:クラブオプション
(2025年オフのクラブオプション破棄の場合)
行使:2028年までのエクステンション確定
破棄:2025年オフに破棄された際の動きと同様
2027年:契約最終年(AAV$13.25Mはここまで適用?)
→25年、26年オプトアウトの場合はなし
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2028年(球団オプション行使の場合)
→残り$27M(インセンティブ等含む)
加えて4球団に対するノートレード条項も付与されており、こちらも球団オプションが行使された段階で29球団へのノートレード条項へと拡大することになるようです。また、ロールモデルでも触れたインセンティブやエスカレーターはサイヤング賞や新人王に連動していますが、決してべスティングオプションではないので今永投手にとってはボーナスをもらえるようなものと言っていいでしょう。
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元よりミドルスターターとしてローテーションの3~4番手クラスの評価を受け、WBCでの投球からアップサイドの大きさや高品質のフォーシームなど随所で片鱗を見せていた中でのこの契約には、今永投手にとって未知のリーグで4年間の契約保証を獲得したことに加え、たとえクラブオプションを破棄されたとしてもその時の活躍次第でオプトアウトを選択し、よりよい契約にたどり着ける可能性もあります。
一方のカブス側も、当初想定されていた契約総額を大幅に下回る価格で今のローテーションにはいないタイプの投手を1枚確保したこと、そして今永投手が仮に怪我や不振に陥ってしまったとしても、チーム編成に大打撃を与えるようなペイロールの圧迫を避けられる形になりそうですので、お互いにとって過度なリスクを軽減させた形となったでしょう。
また、この契約におけるポスティングフィーはおよそ$9.825Mと推定され、日本円にして約14億2500万円がベイスターズに入る予想となっています。
30歳という年齢や、2020年に受けた左肩のクリーニング手術の影響もあってのディスカウントかもしれませんが、大きなポテンシャルを秘めた選手を獲得したことに変わりはありません。
安定感抜群のNPB時代
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そして毎年130~140イニングを消化するイニングイータぶりも魅力ですが、通算でのHQS率が54.5%を誇る点においても、ただイニングを消化するのみならず、先発登板した試合の半分以上においてゲームを支配する投球ができていた裏付けにもなるでしょう
まさにNPBを代表するスターターサウスポーですね。
今永昇太が本当の"Pitching Philosopher"になるために
①フォーシームのクオリティとデリバリー
WBC決勝でのピッチアーセナル(https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=3/22/2023&gamePk=719497&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=illustrator&sportId=51#719497) 【イサシキ】
各球種の成分(https://baseballsavant.mlb.com/gamefeed?date=3/22/2023&gamePk=719497&chartType=pitch&legendType=pitchName&playerType=pitcher&inning=&count=&pitchHand=&batSide=&descFilter=&ptFilter=&resultFilter=&hf=playerBreakdown&sportId=51#719497) 【イサシキ】
WBCではアメリカ代表との決勝戦でこそ先発起用されたものの、基本的にはショートイニングで高出力だったため、球速もアベレージが|93.7MPH《約150km/h》、スピンレートも平均2577回転と文句なしに高品質です。
となると、MLBの舞台でもカギを握るのは唯一無二とも言える浮き上がるフォーシーム。これが最大の効力を発揮するのが「高めへのコマンド」と言われています。
NPB時代より、右打者に対するフォーシームでのインコース攻めは今永投手がアイデンティティとしている一部でもあったように思いますが、どちらかと言えば高めよりも打者のベルト付近に集中し、そのコマンドがずれてど真ん中付近への失投となったフォーシームを痛打される印象があります。
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②被本塁打と打者に対するウェポン
実際にWBCで計測した各種投球データも、全てショートイニングのもの。先発での起用となれば常にあの数値を維持できるとは思えないですし、それによる被本塁打増加は対策なしで免れられるものとは思いません。
正確には「スプリットチェンジ」と呼ばれる球種で、130km/h前後で打者の膝元に鋭く落ちる性能を持っています。同チームに所属していた東克樹投手から伝授されたチェンジアップの握りから生まれたボールであることも有名ですね。
カブスの試合を放映するMarquee Sports Networkでアナリストを務めるLance Brozdowski氏のYouTubeでも、フォーシームの特質に加え、スプリットやスイーパー(NPB時代はスライダー)にもフォーシームと同様の価値があるボールとして紹介されています。
今季右打者に対してのスプリットでWhiff%は41.9%と非常に高水準で、左打者に対してもスイーパーでWhiff%33.9%と容易にこの2球種がマネーピッチになり替わる想像もできます。
MLBでもフォーシーム、スプリット、そしてスイーパーの3球種をメインに据えて活躍してほしいです!
③Steeleとはまた違うサウスポーに
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Steeleも質の高いフォーシームと横滑り&縦割れの大きいスライダーを武器としている投手であり、どちらも右打者に対するインコースへのフォーシームに高い価値を持っています。
ただ今永投手がこのSteeleと全くタイプの同じ投手だとは考えていません。それは、「フォーシームの質」に明確な違いがあるからです。
そしてスライダーもWhiff%31.1%、K%33.8%をマークする十分なウェポンで、主に左打者のアウトローへと逃げる軌道の球種となっています。
そんなSteeleとの差をつけるとするならば、今永投手の場合はホップ成分の強いフォーシームと左投手にしては珍しいスプリット系の球種があることでしょうか。なので決してグラウンドボーラーの多いカブスの先発陣に染まらないアイデンティティを持っているので、Steele(元を辿ればJohn Lester)のピッチングをMLBで生き抜くためのバイブルにしつつ、大きな飛躍につながる可能性のあるピッチデザインを描けると良いなあと思います。
Steeleのフォーシーム(2023)の横変化と縦変化(https://baseballsavant.mlb.com/player-scroll?player_id=657006#pb_FF) 【イサシキ】
”Hey Chicago what do you say?"
その中で本人は11月にシカゴ入りして様々な観光やシカゴブラックホークスの試合観戦(NHL)をしたとの報道もあり、クリスマス以降はシカゴに拠点を置いて生活をしていたようで、The Athleticの記者であるPatrick Mooney氏に対して、「カブスからオファーがくれば良いなあ(当時カブスは具体的な興味関心を示していなかった)」と半ば冗談を漏らすほど、カブスが意中の球団であることを自ら意思表示していたようです。他球団(おそらくレッドソックス)から、カブスの倍となる契約のオファーがあったようですが、それを蹴ってカブスに入団した意図も垣間見える一件となっていますね。
そしてカブスコンベンションが開催される前、日本時間の昨日午前5時から記者会見が開かれ、Hoyer氏が一通り話し終えた後の今永投手の一言目は、この通りでした。
what do you say?(ウオオオオオ!!!)
Cubs are gonna win today(ウオオオオオ!!!)
カブスの球団歌である”Go Cubs Go”の歌詞を用いた今永投手。これには隣で聞いていたHoyer氏を含めて会見場が笑いと歓喜と拍手に包まれ、ばっちりとファーストインパクトを与えました。今永投手本人のしてやったり顔も、個人的にツボにはまる部分でした。
その後会見は進み・・・
?:カブスへの入団を決めた経緯について
?:鈴木誠也選手との情報交換は
?:WBCの経験はどのような影響を与えてくれたか
?:背番号「18」を選んだ理由は
といった質問に受け答えをしていました。印象深かった回答は、やはり背番号18を選んだ理由についてですかね。てっきり「日本ではエースナンバーだから」とか「和田毅さんがカブス時代に着用した背番号だから」といった理由かと思いましたが、まさかZobrist氏の名前が出てくるとは…。恐れ入りました。
”Intelligent Spending"の一員となれるか
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おそらく以前より頻繁に報道されているCody Bellingerとの再邂逅やRhys Hoskins、Matt Chapman、複数のリリーバーとの接触が過熱するでしょう。
今回の今永投手が結んだ契約でもAAVが$13.25Mと予想されており、おおよそジャイアンツのAlex CobbやレンジャースのJon Grayらに近いAAVであり、何よりMLBでの先輩サウスポーとなる菊池雄星投手(現ブルージェイズ)の契約がロールモデルになっている可能性もあるでしょう。今永投手を加えてもCBT閾値まであと$46Mとなる$191Mのペイロールなので、決して大幅にカブスの補強戦略を狭めたわけではないと言えるでしょう。これでもし同条件のGlasnowを獲得していたら…
個人的には今永投手に、怪我をしなかった世界線の和田毅投手がどのような活躍を魅せていたのか、という部分を少し期待しています。かつてオリオールズからカブスへと移籍し、TJの傷を抱えたままわずか2年間で21試合の登板に留まってしまった和田投手とピッチングスタイルが似ている部分が多く、今永投手も体力面が十分にケアされれば本当にやってくれるのではないかという期待が大きいです。
”Professor”ことKyle Hendricksに、名前に見合わぬパワー全振り野手のPatrick "Wisdom"、そしてNPB時代に浸透したネットミーム「投げる哲学者」ーすなわち”Pitching Philosopher”こと今永昇太の獲得によって、なんだかすごく賢そうな球団になってきたカブス。ドジャースから将来有望なMichael Buschら2選手をトレードで獲得した球団が次に見せる一手は、いったい何でしょうか。
↓Buschらのトレード記事はこちら!(Masatoさん執筆記事)
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