早大フィギュア部門 「あずしん」ここにあり!  結成1年目で堂々全日本2位/アイスダンスFD

チーム・協会
全日本選手権 12月24日 長野ビッグハット
【早稲田スポーツ新聞会】記事 及川知世、写真 吉本朱里

「あずしん」ここにあり!  結成1年目で堂々全日本2位/アイスダンスFD

 毎年クリスマス前後に行われる全日本選手権(全日本)。アイスダンスの前半リズムダンス(RD)を首位で折り返した田中梓沙(オリエンタルバイオ)・西山真瑚(オリエンタルバイオ/人通4=東京・目黒日大)組(「あずしん」組)はフリーダンス(FD)最終滑走で『ジゼル』を披露。自己ベストを更新する得点でFD3位、総合2位となり、結成わずか7カ月目、初の全日本で見事銀メダルを獲得した。
★アイスダンスFD
 北京五輪代表の小松原美里・尊組(倉敷FSC)や、10月の予選会で優勝した吉田唄菜・森田真沙也組(木下アカデミー)をRDで上回り、期待や注目度が高まった中迎えたFDの演技。先に演技を終えた2組の好演でボルテージの上がった会場に、ポップなRDとは印象がガラリと違うクラシック音楽が流れて演技が始まると、まず、バレエのリフトのように腰を持って女性を持ち上げる形が多用されたコレオアシストジャンプでプログラムの世界観が提示される。続くスピード感を持った滑らかなスライディングムーブメントも含め、プログラム冒頭のコレオエレメンツでは、過去の大会よりも高い出来栄えの評価を得た。
 音楽の序奏部が息ぴったりのポーズとともに終わると、ゆったりした3拍子のアクセントにエッジ使いを合わせるようなワンフットターンに入っていく。当日朝の公式練習では乱れが出て、繰り返し確認していたエレメンツだが、大きなミスを出すことなくまとめた。次のツイズルも、会場入り後の練習でかなり苦戦を強いられていたエレメンツ。田中がレベルを少し取りこぼす評価にはなったものの滞りの無い実施を見せ、緩急のついた難度の高いトランジションや、バレエらしい美しいポジションで、出場全組中トップの出来栄え点を獲得。フリーレッグはバレリーナのポワント使いを想起させるようにピンと揃い、ロマン派バレエらしい田中の長めの柔らかいスカートはなびき、こちらもバレエプログラムの世界観を支えた。

『ジゼル』を演じる田中・西山組 【早稲田スポーツ新聞会】

 ダンススピンは安定した回転でしっかりとレベル4を獲得すると、12月初旬に出場した大会の後に構成を変更したコンビネーションリフトへ。ストレートラインリフトからカーブリフトへと変更した一つ目のリフトは、伸びやかな音楽が西山のイーグルの軌跡が描く曲線とよくマッチする。アウトサイドエッジに乗る二つ目のカーブリフトでは、西山の片腿に乗る田中が氷上ギリギリまで上体を反らすと、観客からは拍手が沸き起こった。音楽との相性や、出来栄えの評価から見て、このリフトの変更は吉であったと言える。
 曲が変わって音楽のテンポが上がり、軽やかな印象に変わるミッドラインステップでは、途中で田中がつまずき、バランスを崩す箇所があった。しかし、組み合う西山はバランスを崩さずに支え、最小限の乱れにとどめた。最後のレイバック姿勢のローテーショナルリフトと、勢いのあるコレオツイズルも出来栄えの高く付く実施でプログラムを彩り、感情の高まりを体現するような西山のバタフライの振り付けを経て、田中の手に西山が頬を添えるようなポーズでフィニッシュ。演じ終わると二人でうなずき、ほっとした様子を見せた。細かいミスはあったが、演技をまとめ上げ、自分たちのスケートで魅せたあずしん組の得点は105・35点の3位。総合では2位となり、結果こそRD首位発進から逆転を許すかたちにはなったが、FD・総合とも自己ベストをマークした。そして、重点的に練習してきたと大会前の取材で話していたスケーティングスキルの項目も含め、演技構成点は全組中トップ。「自分たちのやるべきことは発揮できた」(西山)と、納得の初全日本となった。

フィニッシュポーズを決める田中・西山組 【早稲田スポーツ新聞会】

 12月初旬のクロアチアの大会からタイトなスケジュールで迎えた今大会。大会中の公式練習でも、調子が上がらないのか、エレメンツに苦戦する様子がたびたび見られた。また、RDを首位で折り返したことに対する「見えない緊張感やプレッシャーがあった」(西山)とも言う。その中で、大きなミスのない演技を二つ揃え、緊張する大舞台で自分たちの滑りができたことは、結成1年目、さらに田中はアイスダンス転向、西山はアイスダンス専念を決めた初のシーズンの二人にとって、今後につながる大きな財産となっただろう。そして、何より大会前の取材で語っていた、「田中・西山組という存在を知ってもらいたい」という目標。それを十分に達成したと言えるだろう。
 今大会の結果により、彼ら自身初のチャンピオンシップ大会となる四大陸選手権の代表選手(※世界選手権の代表は未発表)に内定した。田中のケガにより、メダリストオンアイスの出演を見合わせており、状態が心配されるが、来年1月に日本代表として戦う二人の元気な姿が見られることを望みたい。そして、結成以後成長著しい二人が、今後さらにその名を轟かせていくことを期待したい。

結果

▽アイスダンス

田中・西山組

RD 1位 71・08点

FD 3位 105・35点

総合 2位 176・43点

コメント

※FD後囲み取材より抜粋

田中梓沙(オリエンタルバイオ)・西山真瑚(オリエンタルバイオ/人通4=東京・目黒日大)

――初めての全日本で2位です。結果をどう受け止めてますか

田中 表彰台に上がるのが一つの目標だったので、今の気持ちとしては素直に嬉しいです。

西山 全日本という最高峰の舞台で2番という成績をいただけて、率直に嬉しいです。

――5月に結成したばかりで時間がなかった中で仕上げてきましたが、それができた理由というのは

田中 私は初めて2人で組んで、向こうに行ってから練習する間もなくプログラムを作り出して、何が何だかちょっとわからない状態でした。まず言語がわからなくて真瑚くんに助けてもらって、アイスダンスというものについていくために必死に練習していました。

西山 まず、世界で一番アイスダンスの環境が良いと言われるモントリオールに行くことができたこと、また、梓沙ちゃんがすごくアイスダンスのポテンシャルが高かったからかなと思っていて。夏にケガとかもあって1カ月練習ができなかったんですけど、その中でもちゃんとシーズンに向けて練習できたというのは、先生方の指導のおかげでもありますし、梓沙ちゃんが頑張ってくれたのもありますし、僕の経験も活きたのかなと思います。

――リズムダンス1位から迎えたフリーはいかがでしたか

田中 調子があまりうまいこと上がらなかったのですが、大きなミスなく試合を無事に終えられて良かったです。

西山 リズムダンス1位で終えて、フリー最終滑走ということで、自分たちは今まで全日本で最終滑走で滑ったことがなかったので、見えないプレッシャーや緊張感があったのですが、その中でもうまく演技がまとめられて良かったなと思ってます。

――滑る前に、2人でどんなことを話しましたか

田中 最後だから頑張ろうねって言ってました(笑)。

西山 僕も、後4分だけだから、4分だけ頑張ろうって言っていました(笑)。

――順位や点数は意識されていましたか

田中 全日本での自分たちの目標は、ベストな演技をして表彰台に上がるということで、順位についてはちょっと頭にあったのですが、ちゃんとは考えてませんでした。

西山 今回自分たちの目標は、全日本に出て、表彰台のできるだけ高い位置につくことだったのですが、まさかリズムダンスを1位で終えるとは思っていなくて。結果のことは、意識したらうまくいかないだろうなと思って、意識しないようにしていたのですが、もちろん最終滑走ということで、多少頭の中にありましたが、あまり力みすぎず、ちゃんと自分たちのやるべきことを、ちょこちょこミスはあったんですけど、ある程度は発揮できたのかなと思います。

――4分間滑り切る体力については、成長をどう考えていますか

田中 本当に初めの頃はプログラムを通すのがやっとだったので、よく考えて見ればここまで滑れるようになったんだなと、今は思っています。

西山 練習中はすごくしんどいのですが、それを演技に見せずに、できるようになってきたのかなと。顔とかに出さずに、最後まで楽しそうに滑っているように演技ができるようになってきたのかなと思います。

――今回の結果や内容を受けて、今後の目標は

田中 全日本で見つかった課題を持ち帰って、もっと上達するために、2人で引き続き頑張って練習していきたいです。

西山 今シーズン、全日本までの課題と、全日本で見つかった収穫を持ち帰って、次の大会に備えて、もっともっと良くできるように練習していきたいです。

――上位3組は僅差でしたが、そのように良いかたちで競い合ってる状況についてはどう思っていますか

田中 同じアイスダンスをしているチームが日本にもたくさんいて、その方達と一緒に試合に出て戦えるのは嬉しいことだなと思ってます。

西山 日本国内にライバルがたくさんいる状況は、今まであまりなかったと思うのですが、今は競り合う選手がたくさんいて、普段の練習のモチベーションにもなりますし、全日本で一番良い演技がしたいという、全日本への想いが強くなっています。他のチームがいてくれて、大会に出るのも楽しいですし、自分たちの競技力向上の良いガソリンになっていると思います。

――今回良い結果を出して、「来年は絶対優勝するぞ」という気持ちになってますか

田中 大会を終えたばかりで、まだ2人で思ったことや次に向けてなど、フィードバックをできていないので、次の目標とかはまだそこまで立てられていないです。

西山 まだ試合が終わったばかりで、今回の良かった点とか課題とか2人でまだ共有できてないのですが、今回リズムダンスで1番にもなれましたし、今回(総合)2番というありがたい結果もいただけたので、来年は1番を、もう一つ高い台を目指して頑張りたいなと思っています。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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