第100回ラグビー早慶戦 43ー19で早大が白星を飾る

チーム・協会
関東大学対抗戦 11月23日 対慶大 東京・国立競技場
【早稲田スポーツ新聞会】記事 長野恵治、写真 川上璃々、西川龍佑
関東大学対抗戦(対抗戦)第6節、早大は宿敵・慶大との伝統の一戦に臨んだ。第100回早慶戦となる今日、東京・国立競技場に2万人以上のラグビーファンが足を運び、試合は大きな盛り上がりを見せた。早大は、立ち上がりから20分までにモールや持ち前の展開力で3トライを挙げる。慶大も意地を見せ、前半を28ー14で折り返す。後半は先制トライを獲得したが、ミスや慶大のキックにエリアを取られ、自陣でのプレーが続く。約30分停滞した展開の末、試合終了間際にNO・8松沼寛治(スポ1=東海大大阪仰星) がインゴールへ飛び込みトドメのトライ。歴史あるこの戦いを43ー19で勝利を収めた。

 序盤から早大は果敢に敵陣へ攻め込む。開始3分、BKとFWが一体となった早大の展開ラグビーで試合は動いた。ハーフ10メートルラインからWTB矢崎由高(スポ1=神奈川・桐蔭学園)がオフロードでLO池本大喜(文構4=東京・早実)につなぎ、大きくゲイン。そして、最後はフォローに来ていたSH島本陽太(スポ4=神奈川・桐蔭学園)に渡り、先制トライを獲得した。ここから早大が流れを引き寄せる。前半9分、ゴール5メートル前のラインアウトからモールで勢いそのままに押し込み、FL安恒直人(スポ3=福岡)がグラウンディング。続く20分にも、スクラムからの一次攻撃でFB伊藤大祐主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園) がトライを取り切り、19ー0とリードした。しかし、23分から慶大の反撃が始まり、早大は勢いを失う。SO山田響の個人技に加え、慶大FWの意地の19フェーズアタックに耐えきれず、2トライを返された。このまま終われない早大は、42分に渾身のモールでトライを取り返し、28ー14と後半へ弾みをつけた。

気迫あるランを見せ、会場を沸かすFB伊藤 【早稲田スポーツ新聞会】

迎えた後半、またしても早大が試合を動かす。後半3分、相手のハイパントキックをフェアキャッチした伊藤がすぐさま仕掛ける。伊藤の意表を突いた速攻に慶大は守備を整えることができない。その後、HO佐藤健次(スポ3=神奈川・桐蔭学園) がボールを受け取り、「最近、力を入れている」(佐藤)ランで、約40メートルの圧巻のゲインを見せ、矢崎までつなぎトライ。ここから早大は、さらに差をつけたいところであったが、14分に慶大の伝統のモールに押されトライを献上した。その後は、両校の洗練された組織ディフェンスが光り、スコア38ー19のまま約30分間停滞する苦しい展開となった。ロスタイムを含めた試合終了時間が過ぎてもなお、早大は最後の一秒まで攻め続ける。45分、相手のラインアウトからボールを奪い、今季対抗戦初出場を果たしたSH清水翔大(文3=東京・早実)の素早いテンポを起点にアグレッシブかつ立体的なアタックを展開。15人全員で徐々にラインを押し上げ、最後は松沼がステップで相手を見事にかわしてインゴールへ飛び込んだ。最終スコア43ー19とし、第100回早慶戦の軍配は早大に上がった。

力強いキャリーで大きくゲインするHO佐藤 【早稲田スポーツ新聞会】

 途中ミスやキックプレッシャーで自陣でのプレーを強いられる場面も見られたが、チームとしての強みを生かし、宿敵相手にスコア差をつけることができたことは大きな収穫だろう。両校の攻防が白熱した本試合。プレイヤーオブザマッチ(POM)に選出された伊藤主将は「今後も慶応大学さんと切磋琢磨していきたい」と語った。伝統の試合を戦い抜いた両校の選手に敬意を表するとともに、今後の活躍に期待したい。

コメント

大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)

――今日の試合についてコメントをお願いします

 慶應大学さんとの試合は、コンタクトの部分でプレッシャーをかけ合うという非常にカラーがはっきりしているので、そこに対して自分たちがどういう戦いができるかということを話して、今日臨みました。試合を通して、うまくゲームコントロールしながらやってくれたと思いますし、今日出た課題をしっかりと次の早明戦に生かしていきたいと思います。

――スタメン1年生二人の評価があれば、教えてください

 二人とも非常にスピードという強みがありますし、物怖じせずやってくれてるので、チームに良いアクセントを加えてくれてると思います。二人には、やるべきことをやりながら、伸び伸びとプレーしてほしいと思っています。

――今日の試合を受け止めて、今後の展望を教えてください

 これから対抗戦残り1試合、いつも通り準備をするだけですが、自分たちがもっているものを洗練させていく作業に入るかなと思います。新たに多くのものを加えるよりも、今までやってきたことに自信をもって、ディティールを詰めていきたいです。

――改めて、100回目の早慶戦はどういったものでしょうか

 先輩たちが築いてきた財産だと思います。伊藤主将には、「多くのOBの方が注目する一戦であり、早稲田らしいプレーがいくつ出せるかというような責任がある」と言って送り出しました。責任がある試合ですし、これを乗り越えたら個人としてもチームとしても大きく成長できる、そんな試合だったと思います。

FB伊藤大祐主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

――今日の試合についてコメントをお願いします

 ブレイクダウンやコンタクトの場面でチームとして勝負しに行こうとしていました。そこに対しては、非常に良かったなと思いますが、ちょっとしたミスや隙を慶應大学さんに突かれた場面も何度かあったので、そういった部分を率先して修正していきたいと思います。

――100回目を迎えた早慶戦で戦って何を感じましたか

 100回目ということで、重圧や普段とは違う試合であるということを感じないようにしていましたが、感じてしまうものでした。このプレッシャーの中でできたことを早稲田の今後に生かしていきたいと思います。

――スコアで差をつけることができた要因はどう考えていますか

 FWのセットプレーが安定したことが要因かなと思っています。点数は開きましたが、自分たちの体感では、そこまでチームとしての差が大きいとは考えていなかったです。

――後半、最初のトライを振り返っていかがでしたか

 ハイパントのフェアキャッチだったので、相手が来ていることは分かっていました。10メートル相手が下がっていないというのも、試合前からイメージしながらゲームに臨んだので、仕掛けていこうという気持ちがありました。後半に入って1発目でトライを取り切れたのは大きかったですが、ラッキーな部分もあったので、チームとしては良いトライとは考えすぎないようにしていました。

――次戦の意気込みをお願いします

 今回の準備期間における自分自身の取り組みに関して、100%でやったつもりになってしまった部分があったので、早明戦では自分が一番率先して、その一戦にかける思いをつくって100%でやっていきたいです。

CTB岡崎颯馬副将(スポ4=長崎北陽台)

――早慶戦を戦い抜いた率直な感想をお願いします

  100回目の試合という伝統の試合に出場できたのは、すごくいい経験だったと思いますし、慶應大学さんも凄いファイトしてきた中で、そこに関して早大も負けることなく自分たちのプレーができたのはすごく良かったと思います。

――個人のプレーを振り返っていかがでしたか

 今日は自分のやることは明確で、スペースにボールを運ぶこととディフェンスラインをコントロールすることでした。その2つに関してはすごく自分でも良い評価ができると思います。他のことに関してはまだ課題があるので、しっかり映像を見て振り返って、次の早明戦に向けてやっていきたいと思います。

――ダブルタックルが目立っている場面がありましたが、チームとして組織ディフェンスを振り返っていかがですか

  最初から後半途中までは、すごく組織としていいディフェンスを崩さずにできていたので、良かったと思います。ですが、やはりメンバーが変わって、慶應大学さんが最後粘り強くやってきた中で、少し自分たちのシステムが崩れかけたところがあるので、そこはこれから早明戦に向けて反省しないといけないところだと思います。

――BKのアタックを振り返っていかがですか

 やることを常に明確にしてアタックできたのは、すごくプラスかなと思います。ですが、その中でしっかり自分たちで相手との間合いを取って、いいアタックをすることができていなかったので、そこは次戦への修正点かなと思います。

――今日のチームの課題と収穫をお願いします

 今日はディフェンスに関して、すごくいい評価ができると感じてます。ですが、明大は一人一人のキャリアーが強かったりするので、もっと強度を高めることが必要だと思います。また、1つのミスが自分たちをマイナスに向ける面だと思うので、ひとつひとつ精度高く、常に試合をイメージして上井草の時間を大事に過ごしたいと思います。

――早明戦までに詰めていきたいことはありますか

 1年間やってきたことをやるだけだと思うので。自分たちが1年間やってきたことに自信を持って、そこにフォーカスしていい準備をしていきたいと思います。

――早明戦に向けて意気込みをお願いします

  明大には非常にいい選手がたくさんいますし、早大にとっても対抗戦の最終戦という選手権につながる大事な試合になると思うので、しっかり勝てるようにいい準備をしていきたいと思います。

HO佐藤健次(スポ3=神奈川・桐蔭学園)

――100回目の早慶戦を終えた感想をお聞かせください

 100回目という記念すべき試合に出場して試合をすることができてうれしく思います。試合にも勝利できて、自分にとっても良いプレーが随所にあって、そこは評価できると思います。ですが、セットプレーの安定性やチームとして切れてしまう点など、改善すべき点はまだまだあると思うので、明大戦に向けて、ここからまたレベルアップできればと思います。

――今日のゲームのテーマを教えてください

 自分のやりたいことよりやるべきことをしっかりとやるということです。最近は、今自分として何をやらなければいけないかという事にフォーカスして取り組んでいて、今日はボールを相手の陣地にすぐ運べたので、そこはできたと思います。あとは、慶大に対してはやはりブレイクダウンがフォーカスポイントでした。そこでの接点の強さというのは今シーズン通してずっと取り組んできていたので、それはすごく良かったと思います。

――セットプレーがうまくいった要因は

 スクラムに関しては、8人でまとまってタイミングを合わせるということを意識していました。そこがうまくハマったと思います。ラインアウトに関しては、僕がノットストレートがあったり、リフターがマックスで上げれなかったりといったミスがあり、もっと精度を上げなければと思います。ですが、昨年と比べると精度はあがったと思います。ここで満足せずにもっとラインアウトの精度を上げていきたいと思います。

――次に、矢崎選手のトライにつながった突破について振り返っていただけますか

 伊藤大祐さん(FB伊藤大祐主将、スポ4=神奈川・桐蔭学園)がマークしていて、で大祐さんからタップして来るのではと予想していて、そこについていけたので良かったのかなと思います。最近、自分はランニングに力を入れているので、それが出たシーンだったと思います。そこで前の僕だったら、相手にコンタクトしてそこで一個のラックを作ってしまっていたところを、由高(WTB矢崎由高、スポ1=神奈川・桐蔭学園)が来るのを待つ余裕を作れるようになったのは、自分の中での成長ポイントだと思います。

――結果的に桐蔭学園出身者3人でつないだ結果のトライとなりました

 大祐さんも由高も、あの嗅覚はすごく優れている選手たちなので、そこについていけたというのは僕的にも成長できたと思います。今日は慶大にも桐蔭学園の選手がたくさんいて、そういう時間も楽しんでプレーできたので、今日はすごくいい試合だったと思います。

――タイミングとしては

 もう完璧でしたね。僕が抜けて、おそらくFBの今野(椋平、慶大)と一対一になったときに誰か来てくれないかと思って外を見たら由高が来たので。

――『日本一』を目指すにおいて、自分たちの立ち位置と、これから何をしていかなければいけないとお考えですか

 まず僕のところで言うと、FWのセットプレーのところです。帝京相手にも良いスクラムを組んで、良いラインアウトをしてというところがフォーカスされると思うので、そこを意識してやりたいと思います。あとは、帝京大戦、今日も含め良いコンタクトをして僕自身前に出れていたと思うので、そこは継続していきたいと思います。

――次の明大戦に向け、どのような準備をしていきたいですか

 明大はすごくFWが強いチームでもありますし、SOの伊藤耕太郎くんがランニング能力が高い選手でもあるので、もう一回FWの中でもそうですし、セットプレーやディフェンスでの横とのつながりなど、もっと改善しなくてはいけない点はまだまだあると思います。今日の試合よりももっとレベルアップできるよう準備していきたいです。

SH島本陽太(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

――今日の試合についてご自身で振り返っていかがですか

 今日の試合は、80分間通して試合に集中できている時とできていない時でメンタル面にムラがあり、安定したパフォーマンスを出せなかったことが反省点です。

――何か良かった点はありますか

 ブレイクダウンの点で、慶應大のプレッシャーがある中で焦らず、スムーズにいつも通りパス捌きができたのは良かったと思います。

――BK全体を振り返ってみていかがですか

 外のスペースがあったらボールを振るところであったり、空いていなかったら強いプレーでゲインを切れていたりしたので良かったなと思います。

――慶應大はかなりゴール前でFWを中心に押してくる場面がありましたが、ラック際の攻防に関して後ろから見ていてどのように感じましたか

 最終的に点を入れられてしまいましたが、比較的前で止めることもできたので良かったと思います。

――今後に向けての意気込みをお願いします

 先ほど言ったようにパフォーマンスにムラがあったので、次の早明戦では徹底したパフォーマンスを出せるように頑張っていきたいと思います。

SH清水翔大(文3=東京・早実)

――初赤黒だったことについて感想をお願いします

 素直に嬉しい気持ちと、初赤黒が早慶戦という舞台であったことに少し不安はありました。こういった機会にチャンスをいただいたことに感謝して、今までやってきたことを出し切ろうと思いました。

――実際に、アップやベンチでの待機時間の緊張感はどのようなものでしたか

 早慶戦や国立の独特の雰囲気があって、やっぱり伝統ある試合なんだと身をもって感じました。

――短い出場時間でしたが、どんな意気込みでグラウンドに立ったのか教えてください

 試合前は緊張していましたが、できることを明確にしてやろうと挑んでいました。試合中は、アタックの部分でとにかく早くラックに寄って、いいボールをチームに供給しようということだけを考えていました。

――最後のトライは選手でボールを継続し、清水選手がテンポを上げているようにも感じましたが、振り返っていかがですか

 時間もなかったので、アタックで前に出続けようと思ってテンポよくボールを放っていました。チーム全体もそういう意識があったと思うので、そこの部分がうまくつながってトライを生むことができたと思っています。

――最後に今後の意気込みをお願いします

 今日は、出場時間が短かったですが、これからもっと試合に出て、チームの勝利に貢献できる選手になりたいと思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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