2023.11.21
【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集　川上璃々

早慶スポーツ新聞会コラボ企画もいよいよ最終章。早大側の最終回を飾るのは、伊藤大祐主将（スポ４＝神奈川・桐蔭学園）だ。ラグビー早慶戦まであと２日に迫る中、100回目の節目の試合に挑む主将の心境とは。チームの成長やご自身の主将としての在り方について変化も伺った。

――主将に就いて半年以上が経ちますが、これまでの３年間よりも、違った感覚や背負うものを感じていますか

伊藤　キャプテンになって、プレーの面で責任感が全然違うなと思っていました。みんな僕を見ていると思いますし、プレーのところで、練習だったり、試合でしっかり責任を持ったプレーをするということは、今までで一番感じているところです。

――早稲田の伝統の重みを感じる瞬間はありますか

伊藤　あまり僕自身そういうものは感じない方ですが、結局そういう早稲田の伝統を感じて責任を持っているんだと思います。『赤黒』とか、『荒ぶる』とか百何年とか、そういうものが自分に責任感を持たせてくれているのかなと思います。

――主将に主任する前は早稲田やチームよりも個人フォーカスでしたか

伊藤　そうですね。下級生の時は自分自身のプレーがどうかというのを考えて練習していましたが、４年生になってチームのことを１番に考えるようになりました。

――主将として今過ごしているからこそ、良かったなと思う事、成長できた事があれば教えてください

伊藤　自分のことだけを考えるより、チームのことを考えて、チームに何を求められているのかという思いがあって練習するのとしないのでは、全然スケールが違うというか、責任や思いが違います。そういうものに気づけて良かったなと思いますし、今後もラグビー人生が続くので、この経験を忘れずに考えてやっていきたいなと思います。

――では、主将としてのやりにくさはありますか

伊藤　特にやりにくさはありませんが、考えることが多くなりましたね。その分、自分のパフォーマンスやチームに返ってくるので、それが今一番やりがいになっています。なので、苦しいとはあまり感じないです。

――その「チームに返ってくる」とは具体的にどのようなことですか

伊藤　自分が厳しくなれば、おのずとみんなも厳しくなってくれますし、試合や練習でもその姿が表れるようになります。自分がチームにいるからこそ、やらなければいけないシーンが多々あるので、そういった部分で自分で自分を追い詰めるようになっていると思います。

――春は背中で引っ張って行きたいという主将像をお話されていましたが、春を振り返って主将としてのチームのまとめ方はいかがでしたか

伊藤　春シーズンは、プレー面だけで引っ張ろうとしていて、それなりにプレーはできていましたが、やっぱりそれではなにか足りないなと思っていました。

――現在から春シーズンのチーム力を振り返るといかがでしたか

伊藤　チーム力的には良かったと思います。いろんなことにチャレンジしようとした結果だったので、それが今につながっているかなと思います。

――その「今につながっている部分」とは具体的にどんな点ですか

伊藤　真っ向勝負して行くところや、コリジョンの部分やモールの所でも。チャレンジした結果の春シーズンだったので、やられる部分も多少考えていましたが、春に挑戦できて良かったなと思います。

――夏合宿の練習内容、目標達成度具合を振り返って評価をお願いします

伊藤　夏もそのまま帝京大に２連敗して大差をつけられてしまいましたが、少し違う感覚を得ることができた試合でした。本当にきつい夏合宿で、きつい中で試合に出たりすることもありました。タフになろうとした夏合宿だったので、そこでベース作りはできたのかなと思います。

――夏合宿中、周りの選手たちの成長をどう感じていらっしゃいましたか

伊藤　リーダー陣を中心にまとまってきたと思います。本気度が上がってきていたので、その部分は良かったかなと思います。

――昨年、出場とはならなかった対抗戦はここまでフル出場を果たしています。初戦はリザーブからの出場となりましたが、どのようなお気持ちでグラウンドに立ったか教えてください

伊藤　体調不良でいいコンディションではなかったのですが、自分ができることはやろうと思っていました。「自分が」というより、「チームが」という所で初戦をどういうかたちで、乗り越えていけるかというのはすごい考えていました。

――対抗戦序盤を振り返って１番思い出に残っている試合はありますか

伊藤　筑波大戦は印象深い試合です。かなり接戦になりましたが、ある意味いいかたちで、まとめられたなと今改めて感じていて。力的には早稲田がもう少しのところで何かを変えることができていれば、もっと点数が開くのに、あの点数になったという。勝利して反省できたことは、良かったかなと思います。接戦の中で勝ちきれて、すごい反省があって、ある意味いい試合になったと思います。

――筑波大戦が、チームとしても士気が高まったと思えるターニングポイントとなった試合だったのでしょうか

伊藤　あの試合でもう少し頑張らないといけないと思わされた気持ちもありますし、課題がはっきり見えた試合だったと思います。

――春シーズンから主将として気持ちの変化は

伊藤　対抗戦で自分のキャプテンシーについてもう一度考え直しました。僕は何をしないといけないのかをもう一度考えて、自分にできることは、練習や試合でのプレーもそうですが、勝ちたいとか、勝たせたいという思いを全面に出せるキャプテンになれればいいなと思っています。今は本当にラグビーにしか集中していないので、普通のキャプテンではなくて、なにか固執したキャプテンになりたいなと思っています。勝ちたい欲とか勝つためという気持ちを今全部出してやっているので、そこが大きな変化かなと思います。

――監督とお話されたということですが、どんな内容を話されたのでしょうか

伊藤　「なんで大祐をみんなが最終的にキャプテンに選んだと思う？」という話をされました。「大祐がいい子ぶるとかキャプテンっぽくというのは、多分案外誰も求めていなくて、本当の思いはチームを勝たせるというところに着目したからだと思うよ」と言われました。みんなもそう思っているだろうなと感じたので、勝つという思いに厳しく今は取り組んでいます。それが今のいいチーム状況を作り出しているのかなと思います。

――帝京戦前の部内マッチについて、伊藤主将にどう映ったのでしょうか

伊藤　やっぱりジャージーを着れていないメンバーが出ていた試合なので、一つ一つにかけるプレッシャーや相手にドミネートしようという気持ちが強くて、Ａチームの試合に出たいけど、出ることができなくて頑張っている選手がいる中で、明日は戦わないといけないというのを感じる部分が多かったので、すごいいいきっかけになったと思います。

――帝京戦のポジション変更に関して

伊藤　僕自身は問題なかったです。ＦＢは何回もやったことがありましたし、自信はありました。僕自身もＦＢが１番力を発揮できるのではないかと思っていたので、他のメンバーも何人かポジション変更がありましたが、そこに迷いもなく、自分がこれで選ばれているという自信があったと思うので、一人一人が自分のやるべきことを把握して試合に挑めていたと思います。

――全国大学選手権で帝京大と再び戦うため、チームの何をどう詰めていけば良いと思いますか

伊藤　まだやはり、勝負弱いという選手が多くて。ここがピンチだから早く帰らないといけないとか、今が畳みかけだから、みんなでギアを上げて走らなければいけないというのができていなくて。それは結構マインドのところや意識で変わると思います。スキルとかどうやって詰めていくかのラグビー面に関して、うまく行くか行かないかは正直分からないので、自分たちで変えることができるとしたら、そのマインドの点だと思うので、そこを残りの期間でフォーカスしていけたらと思います。

――帝京大戦が終わったあとにチームに声をかけられたことは

伊藤　集合の時に今日いい試合したねとかで終わる話ではなくて。これからおそらく、このまま対抗戦で２連勝したとしても大学選手権（全国大学選手権）でも、厳しいパートに入ることは間違いなくて。僕たちが５段階くらいレベルをあげないとまた同じ結果になると思うから、そこをどう鍛えていくかについて話しました。

――次戦はいよいよ100回目の早慶戦ですが、どのような心境ですか

伊藤　特別な試合になることは間違いないのですが、自分たちのやるべきことをやり切ることが１番大事だと思うので、自分自身だったり、チームとしてやるべきことをしっかり把握する必要があると思います。

――先月、野球の早慶戦に観戦に行っていたと思いますが、いかがでしたか

伊藤　慶応の大学スポーツチームは、どれもすごい良い集団だと改めて思いました。早稲田とはなにか違う力を持っていると感じたので、ラグビー早慶戦では、簡単に勝てない難しい試合になるだろうなと思いましたし、同時に絶対負けたくないと思いました。

――今年の慶応チームの印象はいかがですか

伊藤　やってるラグビー自体は早稲田にフォーカスしているのかなと思うので、これまでの試合と違う雰囲気になるだろうなと感じています。過去の戦績はあまり意識せず、『自分たちがしっかり慶応に勝つ』というのを見据えていきたいと思います。

――伊藤主将にとって早慶戦とは

伊藤　ラグビー界の中で一目置かれる試合だと思います。その試合に出れること自体、本当にうれしく思いますし、その舞台に出て絶対に勝ちます。

――岡主将に一言お願いします

伊藤　僕たちが勝ちます。

――残すシーズンを共に戦う仲間へ一言お願いします

伊藤　いろんな面で助けてもらっているので、このチームメートで『日本一』を取りたいという強い思いがあります。最後、一緒に美味しいお酒を飲みましょう。

――『日本一』への目標意気込みをお願いします

伊藤　もう一度、自分たちのやるべきことを整理して、やるに尽きると思います。『日本一』を取ります！　

――ありがとうございました！

◆伊藤大祐（いとう・だいすけ）

2001（平13）年７月１５日生まれ。179センチ。８５キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。スポーツ科学部４年。部員が口をそろえて「オンとオフの切り替えがすごい」と答えるほど、マインドコントロールがうまい伊藤選手。秘訣は、練習前の水風呂！　練習前に必ず入って、毎回一気に集中力を高めているそうです！