早大スケート部フィギュア部門 島田、4年ぶりのジャパンオープン 仲間の演技を力に氷上を舞う

チーム・協会
木下グループカップジャパンオープン2023 10月7日 さいたまスーパーアリーナ
【早稲田スポーツ新聞会】記事・取材 荘司紗奈、大村谷芳 写真 吉本朱里

 4人のフリースケーティング(FS)の合計点数で順位を決める3地域対抗団体戦、ジャパンオープンに早大の島田高志郎(人通4=岡山・就実)が出場。坂本花織(シスメックス)、宮原知子氏、友野一希(上野芝ク)とタッグを組んだ。4年ぶりの参戦となった島田は今季のフリープログラム『死の舞踏』を国内の競技会で初披露。FS164・26点で男子3位となり、チーム日本の2連覇に貢献した。

『死の舞踏』を演じる島田 【早稲田スポーツ新聞会】

 島田は男子2番滑走で登場し、前の滑走者の演技に対し拍手を送りながらリンクイン。いつも通りステファン・ランビエールコーチと両手の拳を合わせた後、位置についた。腰をかがめ両手を横に開き、たらすような独特な姿勢でスタートポジションについた島田は、静かな音楽がかかると同時に腕をすっと下ろし、動き出した。今シーズンのフリープログラムは「自分にとって挑戦」と話す『死の舞踏』。「今までの自分とはちょっと違ったテイストで、ダークな感情や、クラシックでありつつもちょっと奇抜な動きというもの」をテーマにしているという。緊張感のあるピアノの旋律に合わせ、腕をピンとはじくように伸ばす斬新な振りで一気に観客を曲の世界観に引き込んでいった。

  直前の6分間練習で軌道を確認していた4回転サルコウはわずかに着氷が乱れたものの、回り切って着氷。直後の4回転トーループは前戦のネーベルホルン杯で転倒するミスがあったが、今回は2回転になるミスが出てしまう。しかし、続く3回転アクセル+3回転トーループのコンビネーションジャンプは成功。良い流れに乗り、特に注目してほしいというステップシークエンスに入った。見どころは長い手足を存分に使った印象的な振付。腕を下げたまま肩を揺らしたり、肘を曲げたまま回転したりと、徹底的に『死の舞踏』のダークな世界観を表現した。

  疲れが出る演技後半に組み込んだコンビネーションジャンプ2つは堪えながらも着氷。同じく注目ポイントである終盤のコレオシークエンスでは勢いを増す音楽に合わせ、疲れを感じさせない激しい滑りを披露した。そのまま3回転ループ、スピン、と畳みかけ、最後は片腕を横に突き出して小首をかしげるポーズでフィニッシュ。大きく息をついた後笑顔を見せた。立ち上がって大きな拍手を送る観客を見渡すと嬉しそうな表情を浮かべ、リンクから上がる際にも胸に手を当ててお辞儀をするなど、大舞台での演技をかみしめた。

大勢の観客が見守る中演技を披露 【早稲田スポーツ新聞会】

 リンクサイドでは自身のコーチだけでなく、既に演技を終えていたチーム日本の女子2人にも笑顔で迎えられた。個人競技のフィギュアスケートでは珍しい、団体戦ならではの光景だ。緊張した面持ちで迎えた得点は164・26点。自己ベストに近い得点をマークし、本人も驚いたような表情を見せた。世界選手権も行われたさいたまスーパーアリーナでの演技に高揚感とそれ以上の緊張を感じていたというが、「女子2人(宮原、坂本)の演技を(先に)見させていただいて、力を本当にいただいた感覚があった」と話す。メンバーの演技をリンクサイドで見守り、宮原の演技後には感動で涙を流す姿も見せるなど、メンバーとの絆も感じられた。

チーム日本のメンバーと団体優勝を喜ぶ島田(右) 【早稲田スポーツ新聞会】

 今シーズンは「グランプリシリーズの表彰台や全日本選手権の表彰台」を目標にしつつ、「心が震えるような演技」を目指していくと熱を込めて語った島田。フィギュアスケートという競技に対する熱い思い、そして理想のスケーター像を胸に、今シーズンも歩んでいく。

結果

▽男子
島田高志郎
FS 3位 164・26点

▽団体
チーム日本
1位 614・79点

コメント

島田高志郎(人通4=岡山・就実)

※10月6日公式練習後の囲み取材より抜粋

――プログラムのテーマを教えてください

 フリースケーティングは『Dance Macabre』(死の舞踏)を滑らせていただくのですが、今までの自分とはちょっと違ったテイストで、ダークな感情やクラシックでありつつもちょっと奇抜な動き、というものをテーマにステファンコーチに振り付けていただいたので、世界観を表現することが目標です。

――その世界観を表現するにあたって、どのような練習をされてきましたか

 本当に数をこなして、何度も何度も曲かけで練習を行って、流れの中でジャンプを跳べるように、流れが途切れないように練習をしてきました。

――明日(競技当日)はどこを見てもらいたいですか

 もちろん、プログラム全体を通しての流れや世界観を全部見てもらいたいなとは思うのですが、特にステップシークエンスやコレオシークエンスでプログラムのポイントとなるような動きがたくさん詰め込まれているので、そういったところに注目していただきたいなと思います。

――明日に向けて、意気込みをお願いします

 このさいたまスーパーアリーナは特別で、自分にとっても滅多にできないというか、生きていてもあまり経験できないものなので。大きなモチベーションを得ることができる機会だと思うので、緊張をうまく自分の中で使えるようにして、最高の演技ができるように、今できる自分の全てを出せるように頑張りたいと思います。

――フリープログラムはご自分で選んだのですか

 クラシックな曲に挑戦したいとステファンコーチに掛け合って、そこから「『死の舞踏』とかどう?」などと、ディスカッションののちに決まりました。

――このプログラムに決めた理由、気に入ったところなどは

 最初はオーケストラのバージョンで決まりつつあったのですが、ユジャ・ワンさんのピアノだけの編曲がすごく特別な雰囲気であったのと、自分のスケートで表現したいなと思ったので、違ったバージョンにして今使っているものになりました。

――かなりステップやコレオの動きが激しくて大変かと思いますがご自分ではいかがですか

 この前、初戦のネーベルホルン杯で初めて試合で滑ることができたのですが、その時もやはり練習できついものは試合でもきつくて(笑)。かなり後半に余っている体力が、昨年までのプログラムより少なくなっているなとは感じるので、そこはシーズンを通しての課題かなと思っています。



※競技終了後、会場でのインタビューより

――演技後、笑顔も見られました。振り返っていかがですか

 まずは会場にお越しの皆様、見てくださっている皆様本当に応援ありがとうございました。朝起きた瞬間からすごく緊張していて、さいたまスーパーアリーナという特別な舞台で滑るという高揚感もあったんですが、それよりも緊張が勝っていた感じで。それでも先に女子二人(宮原、坂本)の演技を見させていただいて、応援させていただいて、力を本当にいただいた感覚がありました。本当にありがとうございます。



※優勝チーム共同記者会見より

――今日の演技を振り返っていかがですか

 ジャンプですごく耐えたり、4回転トウループがダブルになってしまったりとかミスもたくさんあった中で、なんとか耐えきることができたのでひとまずはホッとしています。コンビネーションを意地でもつけようと思ったのは本当に知子ちゃん(宮原)と花織ちゃん(坂本)の演技を最初に見て、やらなきゃと思って、本当に力をもらえたのでそれが要因だったかなと思います。

――宮原選手の演技後、涙を流していた時の気持ちは

 知子ちゃんのスタートポジションについた時の表情の時点で涙腺が緩んでしまって、耐えないとと思って耐えていたのですが、『ロミオとジュリエット』の世界観を表現していく体の動きもそうなんですが、内から出る感情っていうものが今回すごく直に感じられて、その美しさに涙が止まらなかったです。そのおかげで緊張などの嫌なものを全部一緒に流せて、すっきりして自分のフリーに臨むことができました。

――今日は地元の小中学生が招待されていますが、アスリートという立場から色々なことを頑張る子ども達へ一言お願いします

 自分はアスリートで、自分が好きなことをやらせていただいている立場なので、壮大なことは言えないですが、自分の好きなことを見つけて周りの方々が助けてくださるシチュエーションがあると思うので、しっかりその助けを力に変えて自分がやりたいことを一心にやっていってほしいと思います。

――今シーズンの目標とその目標に向かって今シーズンすでに重ねた試合でなにか感じることを教えてください

 今シーズンは、もちろんグランプリシリーズの表彰台や全日本選手権の表彰台など結果としてはそういう数字や順位を目指してはいるのですが、今シーズンのフリープログラムは自分への挑戦ということで、今日の演技だとお客さんが感動で心が震えるというところまでは全く及んでいないなと感じました。自分にしか出せない特別な世界観を大事に、さらにプログラムを作り込んでいって、いつかは心が震えるような演技を目指して今シーズン練習をまずはしっかり積んで頑張っていきたいと思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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