「本当に涙が出そうでした」ACL初出場の仁川ユナイテッド、ワンクラブマンが明かす横浜F・マリノス撃破の裏側

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キム・ドヒョク 【写真=韓国プロサッカー連盟】

9月19日に横浜国際総合競技場で行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループG第1節で、仁川(インチョン)ユナイテッドは横浜F・マリノスを4-2で撃破。クラブ創設20周年の節目に迎えた初のACLで、昨季J1リーグ王者相手にアウェイで記念すべき初勝利を成し遂げた。

「横浜F・マリノスは当然、韓国でも有名なチームですし、素晴らしいチームであることはわかっていました。でも、だからといってアウェイであれ負けるつもりはまったくなかった。実際、試合でも自分たちが準備した通りのプレーが出たと思います」

そう話したのは背番号7番のMFキム・ドヒョク。彼は2014年のプロデビュー以降、兵役の期間を挟んで現在まで仁川一筋でプレーを続ける31歳の“ワンクラブマン”だ。

仁川がACL出場権を獲得する以前、毎年のようにギリギリの残留争いを繰り広げ、「生存王」と呼ばれた苦難の時期を経験しているだけに、初めて戦ったアジアの舞台での白星に感慨深い様子だった。

「涙を流したら、ここで終わってしまうかもしれないと思った」

「ウォーミングアップの時から本当に涙が出そうでした。でも、僕が涙を我慢した理由はこれからが仁川の始まりだから。もし今涙を流したら、ここで終わってしまうかもしれないと思ったからです。だからこそ、涙を流したい思いを我慢して、試合に最大限集中しないといけない。そんな思いで試合に臨みました」

試合は前半早々にオウンゴールで先制し、その後コーナーキックから同点弾を決められるも、同37分にキム・ドヒョクのロングボールで裏に抜け出したFWジェルソが相手DFとGKをかわして勝ち越し。終了間際に再びコーナーで失点して前半を2-2で折り返したが、後半は途中出場のFWエルナンデスが圧巻ゴール2発を決め、結果的に4得点の大勝を収めた。

【写真提供=仁川ユナイテッド】

「準備した通りに上手く行ったと思います。ただ、セットプレーでの2失点が少し惜しかった」と振り返るキム・ドヒョクは、横浜FM相手の戦い方についてこう語っていた。

「横浜F・マリノスはビルドアップが優れているので、仮に仁川がもっとラインを上げて前に出ていたら、中央のハーフスペースやサイドを上手く突かれていたと思います。ただ、僕ら(中盤)の前にいるFWたちがそのようなパスを徹底的に防ごうと頑張ってくれたので、相手も苦労したと思います。そして、守備からカウンターで得点までつなげることができたので、仁川としてはスムーズに戦えた試合だったと思います」

仁川の2点目を決めたジェルソ 【写真提供=仁川ユナイテッド】

そんな仁川の選手たちの力強い支えとなったのは、日本まで応援に駆け付けた約600人のファン・サポーターだろう。ホームの声援にも負けない迫力でチャントを歌い続けてくれた彼らに、キム・ドヒョクも感謝の言葉を欠かさなかった。

「試合中は苦しいときもありましたが、ファン・サポーターの方々を見たら本当に元気が出ました。横浜まで応援に来てくれた方々はもちろん、韓国で応援してくれた方々にもとても感謝しています」

「仁川のファン・サポーターはKリーグで最も応援が素晴らしく、最も情熱にあふれていると思っています。なので、当然あれだけ情熱的な応援をしてくれると思っていました。何より、アウェイでもあれだけの声量が鳴り響いていたので、選手たちも当然力をもらいました。“仁川が本当に強いんだ”という姿を日本で見せることができて良かったです」

仁川のファン・サポーター 【写真提供=仁川ユナイテッド】

ACLは「仁川が本当に大きなクラブになるための始まり」

数年前まで残留争いの常連だったクラブが、敵地でのACL初陣で手にした貴重な勝ち点3。そこには仁川にとって、ただの1勝にはとどまらない大きな価値があるだろう。キム・ドヒョクは今回の勝利を“クラブの新たな第一歩”と強調した。

「僕らは今回のACLに対して、参加すること自体に意味を置くと言うより、仁川がこれから本当に大きなクラブになるための始まりになると思っています。今日の勝利でクラブとしてまた新たな第一歩を踏みだすことができましたし、次のステップに上手く進むために、この先もしっかり準備しなければならないと思います」

横浜FM戦の仁川先発メンバー 【写真提供=仁川ユナイテッド】

仁川は次戦、10月3日に仁川サッカー専用競技場でカヤFCイロイロ(フィリピン)との第2節を戦う。今度はクラブ史上初めてホームで迎えるACLの試合となるだけに、初戦の勢いそのままに2連勝を飾りたいところだ。

【取材・文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)】
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著者プロフィール

アジア初のプロサッカーリーグとして1983年に創設。現在はKリーグ1(1部リーグ/12クラブ)、Kリーグ2(2部リーグ/13クラブ)で構成。 最新ニュースはもちろん、ACL出場クラブや日本人選手たちの活躍なども紹介していきます。

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