もう一度、強いドラゴンズが見たい。

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたYuuさんによる記事です。】
 今日、東京ドームで行われた読売ジャイアンツ対中日ドラゴンズの試合において、中日ドラゴンズが1対2で敗れたため、セ・リーグで3位以上に入る可能性が完全に消滅しました。SNSの投稿によると、試合後には球場を後にする選手たちや首脳陣の乗るバスの付近にファンが集結し、罵声を上げるなどの騒ぎが起こっていたようです。

 2011年末に53年ぶりの日本一や球団初のリーグ二連覇を達成した落合博満監督が退任してからドラゴンズは一度も優勝しておらず、Aクラスすらも2012年、コロナ禍の短縮シーズンながらも2020年の2回と、球団史に残る低迷期をさまよっています。

 2010年当時は阪神タイガースを応援し、絶対的なライバル球団として落合監督時代の黄金期を見ていたわたしにとって、「中日ドラゴンズ=めちゃくちゃ強いチーム」というイメージしかなく、現在の状況は非常に歯痒いものを感じています。

 ドラゴンズファンではない野球ファンが外から観ていて、近年のドラゴンズを振り返ってみると、ここ10年だけでもいくつか「歯痒さやもどかしさ」の大きなポイントがあるように思いました。おそらくドラゴンズファンの方には耳同士が繋がるほど聞いた話かもしれませんが、大きく分けて、三つほど紹介してみます。(ファンの方にはお馴染みの内容ばかりかもしれないので、お急ぎの方は「最後に」だけでも差し支えありません)

1.黄金期を担った選手たちの世代交代

 2014年辺りまで、星野仙一さんが監督を務めた時代に獲得され、山田久志監督が我慢強く起用し、落合監督時代に黄金期を迎えた選手たちが主力を張っていました。ただ、やはり加齢や怪我などによって、30代中盤や後半を迎えると苦しくなってしまいます。落合監督時代の後半、高木守道監督の時代になると、「成績が明らかに落ちたベテラン選手たちが若手選手の突き上げが少ないのでレギュラーを張っている」という状態が多々見られるようになりました。

 よく落合監督時代は「若手を起用するのに消極的だった」と言われますが、真弓監督時代や和田監督時代の阪神タイガースを見ていたわたしとしては、大島洋平選手や大野雄大選手の抜擢、堂上直倫選手や平田良介選手の起用など、完成された選手が多かったので目に見える動きこそ少ないものの、むしろ空いているポジションに期待された実力ある若手を積極的に登用しているように感じていました。

 それでも、黄金期が5年以上続いた状態で、その中心メンバーが固定されていると世代交代のタイミングが難しいことは確かで、(ベテランから実力ある若手への)穏やかで双方が納得できる世代交代が上手く成功させられなかったのは選手本人や首脳陣にとっても、ファンにとっても、歯がゆい状態だったでしょう。

 結果としては、二遊間に関しては今もレギュラーを張れる存在を探していて、トレードでやってきた選手や若手選手たちがなんとか頑張っているという状態。

 2015年に引退した和田一浩選手は明らかに余力を残した形での引退に見えたのですが、大島洋平選手や平田良介選手が外野のレギュラーにいる状態で、読売ジャイアンツが村田修一選手を自由契約としたように、なんとか若手選手にひとつポジションを掴み取ってほしかったのかなあ……とか思ったりもします。(わたしが阪神ファンだった頃、金本知憲選手が肩の怪我で出られない状態でも他に起用できる選手がいない状態を知っているだけに……)

2.ドラフト+育成方針の不明瞭

 8年間の落合政権の中で、その辺りの世代交代が上手くいっていたかというと、大学・社会人の即戦力選手を重視したドラフト戦略や怪我・育成方針の相違による伸び悩みなど、決して上手くいっていたとは言いません。

 しかし、よく批判される2014年ドラフトが象徴的な例ですが、2012年以降の中日ドラゴンズは、本来であればトレードやFA、トライアウトなどで獲得される選手たちに担わせるような役割をプロ5年目以内の若い選手に期待するようになりました。

 これは谷繁元信監督、森繁和監督、与田剛監督、立浪和義監督とこの10年間で3年以上務めた監督がひとりもおらず、現場責任者が短い間隔で交代することにより、球団全体の方針が次々と変わっているのではないかと推測します。

 実際に期待に応えた選手もいますが、大器を育てるというよりもある程度完成された選手を即戦力で起用するという状態になりやすいのも確か。阿部寿樹選手や京田陽太選手のトレード放出のように、絶対的なレギュラーとしては難しくてもまだまだ実力が発揮できる選手なのに、チーム方針が変わるとあっさり押し出されるという状態になりかねません。

 根尾昂選手、石川昴弥選手、高橋宏斗選手と地元出身の高校生スター候補、世代を代表する好素材を集めた2018年から2020年のドラフトは方針がわかりやすく、実際の起用方法もゆっくり彼らを育てていくことで、5年から10年をかけて選手を一人前にしていくのではないかと期待しました。ただ、ここ数年は再び即戦力の傾向というか、そうせざるを得ない状態になっており、ルーキーや5年目までの若手選手たちが戦力として計算されている光景を何度も目にしました。

 素晴らしい選手がいても、チーム全体としては負けが込む。負けが込むから、選手を注ぎ込まざるを得ない。それでも、なかなか勝てない。「今はそういう時期だ」とわかっていても、負け方に納得できるものがない。

 若手選手に即戦力を求めざるを得ない現状は、世代交代の失敗と同じように、ドラフトや育成戦略の混乱にあると言わざるを得ません。

3.チームづくりの失敗

 そして、これらのウィークポイントは、チームづくりそのものにも直結しているように思います。

 軸となる選手として想像されるのがチーム内でもっとも実績のある中堅選手であることが多く、「中日ドラゴンズといえば○○選手!」という絶対的な若い象徴がいません。投手でいえば大野雄大選手、野手でいえば大島洋平選手や平田良介選手が中心で、近年はダヤン・ビシエド選手もその枠に収まっていましたが、いずれも30代の中堅・ベテラン選手もしくは外国人選手です。ドラゴンズの伝統かもしれませんが、若手時代から期待されていたものの、プロ5年目までには芽が出なかったという選手も多くいました。

 立浪監督が就任すると、石川昴弥選手や高橋宏斗選手を主軸にしようという動きが明確になり、「5年後、10年後に花を咲かせられるような選手を育てよう」という意志が明確に見えるようになりました。

 ただ、それを本気で目指すのであれば、星野仙一監督が中日ドラゴンズに落合博満選手、阪神タイガースに金本知憲選手を獲得したように、わたしは日本人で絶対的な実績を残した中心選手を補強する必要があったと考えています。東北楽天ゴールデンイーグルスの監督時代にはアンドリュー・ジョーンズ選手を獲得しましたが、それは田中将大選手という絶対的な存在がいたから。

 古い例では、根本陸夫さんが山内一弘選手、田淵幸一選手、野村克也選手らを獲得したように、若い選手を育てるのであれば、彼らのお手本となる“教材”が相乗効果を生み出した例が沢山あります。

 正直、森監督時代、与田監督時代に取り組んでおくべきだったとは思いますが、それでも勝利の味を知っている選手や卓越した技能を持った選手が市場に出た年には、本気で獲得へと動くべきでした。昨年であれば、現実的に獲得出来るかどうかは別として、近藤健介選手や森友哉選手はそれに当てはまるのかなあ……と。

 少し切り口は異なりますが、慢性的な野手陣の強化を図るために、森監督時代に森脇浩司さん、土井正博さんを招聘したのは同じような意義のあることだと考えています。与田監督時代に伊藤勤さんや阿波野秀幸さん、赤堀元之さんらと共にバッテリー間を立て直そうとしたのも、同じような意義を狙ってでしょう。

 いまの体制でも実績のあるコーチを招聘していますが、やはり立浪監督と片岡篤史二軍監督が絶対的な象徴になってしまっています。「立浪監督が……」という文脈で語られやすい。トレード、FA、トライアウト、外国人選手たちの補強は、あくまでも応急処置に過ぎません。彼らは一時的な中心になっても象徴にはならせてはいけないし、なるようではいけない。チームづくりにおいて、どんなに補強をしても、根本的な部分は生え抜き選手たちが引っ張る状態を目指していくべきだと考えます。

 だからこそ、素人が言うまでもありませんが、数年後を見据えたチームづくり、戦力運用、補強を行っていく必要があります。

 立浪監督が就任してから、選手の入れ替えを活発に行うようになりました。これ以上能力を引き出すことが難しい選手たちを放出して、新しい風を入れる。その考え自体は正しいですし、常にやらなければいけません。

 しかしながら、昨年末の戦力補強を振り返ってみると、本来であればユーティリティーのはずの31歳のオルランド・カリステ選手がレギュラーを掴みかけ、残ったポジションをルーキーやプロ5年目までの選手たちが入れ替わり立ち替わりで守っているという現状を考えると、せめて京田選手と阿部選手のどちらかをトレードせず、戦力外通告を受けて東京ヤクルトスワローズへ移籍した三ツ俣大樹選手をサポート役で据えた方が、よりハイレベルな競争が出来たのではないかというIFはどうしても生まれますよね。

 シーズン中に北海道日本ハムファイターズ、埼玉西武ライオンズとの間で行われたトレードは意図がわかりやすかったのですが、二遊間の実績ある中堅選手たちを全員放出したケースだけは本当によくわかりませんでした……

 歴代のトレードを振り返っても、レギュラー同士よりもバックアップ同士、出場機会の少ない選手同士のトレードが多く、戦力外通告を受けた選手を獲得するケースも少ない。外国人選手補強も基本的には格安の選手が中心で、年俸5000万円以上の新外国人選手を見ると「結構力を入れてきたなあ」と驚く。

 いまのドラゴンズにおいて、2009年の河原純一選手の補強と再ブレイクはひとつのモデルケースになりうると思います。

最後に:もう一度、強いドラゴンズが見たい!

 わたしは、立浪監督が辞めるだけで物事は変わらないと思っています。采配はよくわからない時もありますし、冗談としか考えられないような噂がたくさん流れていますし、ネット上ではおもちゃになっていて、チームは球団史に残るくらいの負け方を続けている。ただ、これまでの10年間の道のりを反省し、活かしていかないと、また同じ10年間が繰り返されてしまうとすら危惧しています。

 いまの立浪監督はあまりにも動きすぎていて、外国人選手の契約破棄や大野雄大選手の怪我などのアクシデントがあったとはいえ、ほとんどの動きがことごとく上向かないため、現在地がよくわからない状態になっているのではないかとも感じるのです。

 チームの成績が下がっている時、再建までの過程はフロントが補助線を引く必要がありますし、それがないと現場が困ってしまうのですが、ドラゴンズの場合はおそらく現場の意向が取り入れやすい環境にあるので、監督が変わるたびに方針がガラッと変わってしまう。いつも出来る範囲で頑張っても、現場責任者が変わるとまたゼロからの積み上げになるので、何度もやり直さなければいけない。

 あの頃のドラゴンズを幼少期に見ていた身からすると、もう本当に悲しいし、やりきれない。小学校の時、クラスに五人くらいドラゴンズファンがいて、彼らの多くは「ドラゴンズの野球が好きだから」と答えていました。阪神タイガースが強い関西にあっても、野球という競技そのものが好きなファンを惹きつける球団がドラゴンズで、実際に憎らしいくらい強い球団でした。

 今回は「歯痒さともどかしさ」をわたしなりに書き連ねてみましたが、ファンの方は特に感じられていると思います。

 わたしが2013年から応援している横浜DeNAベイスターズは2008年から2010年にかけて3年連続90敗ととてつもなく負け続けている球団でしたが、この頃になると「筒香をなんとか一人前にしよう!」という気概と「ブランコ、ソト、ソーサを総取りして、とにかく上の順位へ!」というエネルギーが凄く、中畑監督を中心に球団全体でなにか新しいことを前へ動かすビジョンが見えていました。

 おそらくですけど、ドラゴンズの場合は高橋選手と石川選手がその中心になるでしょう。いや、なってもらわないと大変です。(できれば、根尾選手もそこにいてほしいですが……)

 少しでも良いきっかけを掴んで、来シーズン以降に繋がる野球を観たいです。

 2023.9.10
 坂岡 優

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