【ラグビー/NTTリーグワン】生きた過去の経験。窮地にも信じた“自分たちのこれまで”<三重ホンダヒート vs NECグリーンロケッツ東葛>
三重ホンダヒート トム・バンクス選手 【©JRLO】
三重ホンダヒート 34-29 NECグリーンロケッツ東葛
真っ赤に染まったスタンドの大声援を受け、NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-2023 ディビジョン2で2位の三重ホンダヒート(以下、三重H)は、ディビジョン1で11位のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)との入替戦第1戦に34対29で先勝した。
「チームとして誇らしい」(上田泰平ヘッドコーチ)一勝は、シーズンをとおして積み上げてきた経験の結晶だった。
まずは開始2分、三重Hは「シーズン最初からオプションの一つとして準備していた」(藤田慶和)流れるようなデザインプレーからトライを決めて一気に主導権を握る。敵陣22mライン付近のスクラムから展開し、トム・バンクスが切り込んで、最後は藤田がトライ。「全員がタイミング良く、良い判断ができたことがトライにつながった。(トム・)バンクスのランニングコースが素晴らしかった。このトライで良いスタートを切れました」(藤田)
27対5と大きくリードして迎えた後半。強度を高めて反撃に出るGR東葛に押し込まれ、我慢の時間が続く。後半9分、三重Hは右プロップ2人を負傷で欠くとアンコンテストスクラム(押し合いをしないスクラム)になり、14人での戦いを強いられる。GR東葛に立て続けにトライを許してじわじわと点差を縮められ、さらに後半18分にはヴィリアミ・アフ・カイポウリのシンビンにより一時は13人で戦うことになる。
それでも耐え切れたのは、「これまでにも13人、14人での戦いを経験していた」からだと古田凌キャプテンは言う。「全員がパニックにならず、『自分たちのやってきたことを信じよう』と。『自分たちのアタックのシステムで思い切りやろう』ということは伝えていました」。
後半21分に27対24と3点差まで肉薄された場面では、リーグ戦からの勝ちパターンである、山路健太から根塚聖冴へのスクラムハーフリレーでテンポを上げた。これで再び流れを呼び込むと、後半31分に敵陣でのラインアウトの流れから、根塚が抜け出してヴィリアミ・アフ・カイポウリがトライを奪う。コンバージョンキックも決めて、34対24とリードを広げることに成功した。
その後はGR東葛に何度もゴールに迫られるも、浦安D-Rocks戦やトヨタヴェルブリッツとの練習試合など「入替戦に必要な強度の高い試合」(上田ヘッドコーチ)で培ってきたアグレッシブなディフェンスで対抗し、ギリギリのところで相手に落球させてトライを許さない。終了間際にGR東葛に得点されたが、前半のリードを守り切った三重Hが5点差で勝利した。
これにより、三重Hは勝ち点4を獲得。一方のGR東葛は7点差以内の敗戦のため、ボーナスポイント(勝ち点1)を得た。両チームのプライドがぶつかり合った、「プレーオフにふさわしい試合だった」(上田ヘッドコーチ)。
5月13日に柏の葉公園総合競技場で行われる、集大成となる入替戦の第2戦。今季、準備してきたそれぞれのラグビーを出し切る。
(山田智子)
【©JRLO】
上田泰平ヘッドコーチ
「ホストゲームでのスタートということで、今週一週間かけて、“ヒート”(試合に出られないメンバーのチーム内での呼称)を含めて全員で素晴らしい準備ができて、素晴らしいスタートを切ることができました。NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんも入替戦らしい本当に素晴らしいプレーが随所に見られました。僕たちもしっかりと参考にしないといけないようなプレーをやってくれたので、いいプレーは盗んでいこうかなと思います。三重ホンダヒート(以下、三重H)に関しては、しっかりと準備できていたものに対して、整ったアタックだとかいろんなことができたと思っています。13人の時間帯があったり、残り30分は14人で戦ったりした中で、しっかりと1トライを取り返したこと、(GR東葛の)反撃を守り切ったことは、選手を称える以外にない試合だったと思います。今週、一週間かけてチーム全員で準備したことを23人がプライドを持って体現してくれた素晴らしいゲームでした」
――後半は人数が減ってかなり苦しい時間帯がありましたが、具体的な指示は出されたのでしょうか?
「出してないです。たぶん、古田(凌)がしっかりとやってくれたと思います。この状況はまったく想定していませんでしたが、13人になった場合はもはや戦術どうのこうのではない。いかに選手同士が頑張るかに懸かっています。そのようなタフなシチュエーションの中で、選手がしっかりとコミュニケーションを取って戦ったことはすごく誇らしいです」
三重ホンダヒート
古田凌キャプテン
「まずはホストゲームでたくさんのお客さんの前で勝ち切れたことが本当にうれしいです。我慢の時間帯がとても長くて、NECグリーンロケッツ東葛さんもアグレッシブにいいディフェンスをされて、13人、14人という難しい時間帯もあったのですが、自分たちのラグビーをしっかり最後まで信じ切って、チーム全員で準備してきたことが結果として表れたのではないかと思っています」
――上田泰平ヘッドコーチの「古田がしっかりとやってくれたと思う」というコメントを受けて。
「前にも13人、14人の試合を経験していたので、そこは全員がパニックにならず、『自分たちのやってきたことを信じよう』と。『自分たちのアタックのシステムで思い切りやろう』ということは伝えていたので、選手全員がしっかりと役割を果たしてくれたと思います」
――ファンの大声援の力は大きかったのでしょうか。
「試合をしながらたくさんの方の声援を感じて、後押しされました。ホストだなという感じがして、勇気をもらえました」
――来週の試合に向けて、この勝利はどのような意味がありますか。
「昨季は1勝1敗で、得失点差(※第2戦でGR東葛が2点差での敗戦でボーナスポイントを獲得。得失点ではなく勝ち点の差)で負けて(昇格を逃して)悔しい思いをしたので、まずホストゲームで勝てたことがすごく大きい。ベストな状態で土曜日の試合に臨めるよう、一週間良い準備をしていきたいと思います」
【©JRLO】
ロバート・テイラー ヘッドコーチ
「まずは三重ホンダヒート(以下、三重H)さん、勝利おめでとうございます。またNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)のサポーターのみなさん、遠くまで足を運んでくださってありがとうございます。この試合を振り返って思うのは、やはりこちらのスタートがあまり良くなくて、三重Hのほうが良かったというのが一つあります。さらにペナルティを繰り返したことによって、相手陣内から自陣まで戻されることがあったので、そういうところも敗因の一つになったと感じています。最初のほうはフィールドポゼッションが良かったんですが、そこで戻されて、そこから三重Hがチャンスをしっかりとモノにしたことが点を重ねられた理由です。後半になって、GR東葛のほうももう一段階レベルアップして戦って、ここまで点を縮めた姿を最後に見せてくれたことは、来週、柏の葉公園総合競技場でやるときに勝てるチャンスがある、スタートが改善できると思いました。来週はしっかりと戦っていきたいと思います」
――スタートの悪さは少し硬さがあったのか、何が原因だと分析されていますか?
「前半は三重Hのほうが個々の思いが勝っていました。後半のわれわれが見せた思いを持ってやれば、そこには対応できると思います」
――後半に立て直すために、ハーフタイムにはどのような指示をされたのでしょうか?
「まずはエナジー。ワイドのオプションを含めたアタックの選択肢を増やすということ。インテンシティーを上げるということを話しました。GR東葛はディビジョン1で戦ってきているので、強度についてはしっかりと自信を持って臨める部分でもあると思っているので、そこを伝えました。あとはペナルティを少なくすることによって相手にモールをさせないようにすることも話しました」
――これから一週間、どのような準備をして来週の試合に臨みますか?
「来週までに大きく変えることは難しいので、一週間のトレーニングをハイインテンシティーで過ごし、今日の後半でやったことを来週に持っていくことが大事だと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン
「負けたのは残念ですが、ひさしぶりの鈴鹿の地での試合で興奮しましたし、三重Hのファンのみなさんも好きだったのでうれしかったです。8年間ずっと三重ホンダヒートでプレーしていたので、ホームみたいに感じました。前半の0対20のスタートは少し取られすぎたと思います。後半は良いプレーをしましたが、前半の20分の入りが悪かったので波をつかめませんでした。来週は試合の入りの20分でロケットスタートをしなければいけません。でも、5点差での敗戦なので問題ないと思います」
――今日の結果は、来週の戦いにどのような影響があるのでしょうか?
「来週はホストゲームで戦えます。(今日の試合で)最後5点差で終われたので、全然いけると思っています」
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