POM尾又寛汰が語る「チーム愛」と「悔しさ」から生まれた決勝トライ

NECグリーンロケッツ東葛
チーム・協会

【NEC GREEN ROEKETS TOKATSU】

〜「トライを獲るのが仕事」のWTBが証言するGR東葛2勝目の舞台裏〜

 プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(Player Of the Match)、略してPOM。
 試合でもっとも活躍した選手に贈られる賞だ。
 26日に行われたNECグリーンロケッツ東葛対三菱重工相模原ダイナボア―ズ戦で、この栄えある賞に選ばれたのが、26対26のタイスコアから勝負を決めるトライを挙げたグリーンロケッツ東葛のWTB尾又寛汰だった。
 受賞者に与えられるキャップをかぶり、フォトグラファーの注文に応じてポーズをとったときには、少しはにかんだ笑顔を見せた。
 決勝トライ直後に雄叫びを上げた形相からは想像もつかないほど穏やかな表情は、喜びと同時に自分の仕事を果たした安堵がもたらしたものだった。
「POMは素直に嬉しいのですが、なによりもチームが勝ったことがもっと嬉しい。グリーンロケッツ東葛に移籍してきてまだ1年目なのに、みんなが僕のことを受け入れてくれた。ずっとみんなといっしょにやってきたような、本当に温かいチームだと感じています。ウソ偽りなく仲が良い。だから、その代表として試合に出て、勝ってPOMをとれたことが素直に嬉しいのです」
 尾又にとってのPOMは、「本当にグリーンロケッツ東葛が好きなんです」と何度も繰り返すほどのチーム愛が、勝利という結果に結びついた証。だから、「素直に」嬉しかったのである。

【NEC GREEN ROEKETS TOKATSU】

 嬉しさには、もう少しさまざまな感情も込められていた。
「2トライ獲ったことは嬉しかったのですが……」と前置きして、尾又はこう続けた。
「第7節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦(0対45)でTMOの結果トライを認められなかった(後半34分)。前節も、(杉本)悠馬がTMOでトライを認められず、それが2週続いた。僕も、悠馬もすごく悔しかったし、その悔しさがとても大きかった。
 WTBは、みんながつなげてくれたボールをトライするのが仕事。トライするのは最低条件なのに、つなげてもらったボールをトライできなかったわけですから……。
 特にワイルドナイツ戦は、勝敗に影響するような場面ではなかったのですが、あそこでトライを1つ返すだけでも、クルーのみなさんに喜んでもらえるし、応援してくれたみなさんに少しは意地を見せられたのではないか――そんな気持ちが強かった。だから、今日はトライを獲ることを意識していたのです」
 ホストゲームで認められなかったトライを、改めてクルーに届けたい。
 そして、それが自分がまっとうすべき仕事である。
 そんな思いが、三重ホンダヒート時代にもチームメイトだったキャプテンのレメキ ロマノラヴァの絶妙なキックを呼び込むコールにつながり、それが愛するチームに2勝目をもたらしたのである。

【NEC GREEN ROEKETS TOKASTU】

 尾又の活躍はトライだけではなかった。
 7対14で迎えた前半32分だ。
 ダイナボア―ズにマイボールのラインアウトを奪われ、カウンターアタックを仕掛けられた場面。尾又はタッチライン際で鋭いタックルを相手に見舞い、すぐに立ち上がってボールに働きかけた。これで相手の反則を誘って、チームに流れを取り戻した。
 果たして続くラインアウトからグリーンロケッツ東葛はアタックを続け、最後はSO金井大雪が入団後初めてとなるトライを決めて、14対14と同点に追いついた。
 トライに比べれば地味ではあるけれども、ゲームの流れを引き寄せた点では同等の価値があるプレーだった。
 まさにPOMにふさわしい活躍だったのである。

 しかし、シーズンはまだ折り返し点を過ぎたばかりだ。
 これから次節のリコーブラックラムズ東京戦(4日 柏の葉公園総合競技場 12時キックオフ)を含めてホストゲームが続く日程を考えれば、このダイナボア―ズ戦は通過点に過ぎない。
 だから、尾又は最後にこう結んだ。
「今日は、素直に嬉しいから、しっかり喜びます(笑)。でも、明日からは次節に備えて、いい準備を始めます!」
 その先に見据えているのは、ホストスタジアムで第7節に、クルーに届け損ねたグリーンロケッツ東葛の意地が詰まったトライなのである。

【NEC GREEN ROCKETS TOKATSU】

■プレーヤーズコメント■
先制トライを挙げたCTBクリスチャン・ラウイ
 あのトライは、ずっと狙っていたトライでした。今日、やっと獲れた。良かったと思います。
 開幕戦でデビューした頃は、あまり自分らしいプレーをできなかった。でも、試合を重ねるうちに少しずつできるようになって、今日は本当に自分らしいプレーができました。
 僕自身は、ボールキャリーをしてゲインするCTBを目指しています。チームを前に出したい思いがあるから、コンタクトしてゲインをとりたい。そうすれば、その勢いでFWもノッてくる。
 今日の試合は、前半は勝たなければいけないというプレッシャーをすごく感じました。クルーにも勝つ姿を見せなければ、と思っていました。だから、ブレイクダウンのミスが多かったけれども、後半に入って自分たちが最初に点をとって、そこから落ち着いてきた。
 次節は、僕ができるだけゲインして勝ちたいですね。チームがいい感じになれるように頑張ります!

グリーンロケッツ東葛での初トライと4コンバージョンで13点を挙げたSO金井大雪
 トライは、あそこのディフェンスが薄くなるのは(事前の分析で)わかっていたので、そこに走り込んだら、ニック(・フィップス)がいいパスを送ってくれた。久々のトライだったので、ちょっとバタバタしたトライになりました(笑)。
 コンバージョンは、あそこ(決めれば勝ち越しとなった後半34分のトライ後のコンバージョン)は決めたかったですね。課題です、今後の。でも、最後のコンバージョンは、もう試合時間もないから、いい形で締めくくれれば、という気持ちでリラックスしていいキックを蹴ることができました。

26対26の同点に追いつくモールからのトライの起点となったLO山極大貴
 モールでトライを獲れたのは大きかったですね。ずっとあそこの(ラインアウト後方でキャッチする)サインでミスをしていたので……ある種、賭けみたいなものだったのですが、最後の最後にハマって良かった。でも、相手にもモールからのトライを奪われたので、次節に向けてモールディフェンスはちょっと修正が必要。頑張ります!

(取材・文:永田洋光)
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著者プロフィール

NTTジャパンラグビーリーグワンに加盟するラグビーフットボールチーム。 日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績がある。2021年にリブランディングを行い、千葉県東葛エリアをホストタウン(千葉県我孫子市、柏市、松戸市、流山市、野田市、鎌ケ谷市、白井市、印西市)とし、チーム名を「NECグリーンロケッツ東葛」に改称。柏の葉公園総合競技場で開催されるリーグワンの試合をホストゲームと位置付けて運営している。「WIN THE RACE」をスローガンとし、日本一を目指す。

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