勝利の使者となるか前田土芽、GR東葛初キャップへ!

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【NEC GREEN ROCKETS TOKATSU】

「僕が出る試合は絶対に勝つ!」  〜勝利の使者となるか前田土芽、GR東葛初キャップへ!〜

 試合出場の機会を求めて、浦安D-Rocks(旧NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安)から移籍してきた前田土芽(どが)は、昨年秋のプレシーズンマッチに心地良い手応えと自信を持って臨んでいた。
 左右両足から繰り出すキックと、左右両方向への正確で素早いパス。それに加えて、相手のわずかな隙に走り込むランと、身体を張ったディフェンスが持ち味だ。
 自ら「チームを勝たせるために、そして日本代表を目指す上でも、僕だからできる10番で戦いたい」と話す、前向きなメンタリティも持ち合わせている。
 昨年11月19日の、東芝ブレイブルーパス東京とのプレシーズンマッチには、「このままずっとグリーンロケッツ東葛の10番としてスターティングメンバーを張り続けて、1月8日の開幕戦を迎えるんだ」という、強い気持ちで臨んでいた。
 しかし――ハーフタイムを迎える前に、アクシデントに見舞われた。
 左足太ももの裏を痛めてしまったのである。

 前田が、当時を振り返ってこう話す。
「肉離れでした。その場で歩けないくらい痛かったので嫌な予感がしたのですが、病院で診断を受けたら思った以上にひどくて、開幕戦は無理だということになった。正直、かなり気持ちは落ちました……」
 いきなりの暗転に、くじけそうになった心。
 それを支えてくれたのが、前田が親しみを込めて「シマさん」と呼ぶ、リハビリテーションを担当した島嵜(しまざき)寛之アスレティックトレーナーだった。
「シマさんと話し合ったことで、『試合に出場できるところが自分のスタートであり、開幕戦だ』と、マインドを変えることができました。一度は精神的に落ち込みましたが、ケガした以上、割り切って治療とリハビリに専念しました。シマさんも、『グラウンドにいても治らないから、リハビリが終わったら早く帰って、家族との時間を持とう』と言ってくれたので、家族との時間も持てました。
 おかげで、ケガが再発しないように、そして、より強くなって戻れるように、リハビリをしっかりやることができた。復帰したときに、自分の最高のパフォーマンスを絶対に出せるよう心がけたのです。だから、2ヶ月ちょっとグラウンドから離れましたが、心の面でもリフレッシュができたし、試合に対する気持ちも、良い準備ができている手応えがあります」

左:島嵜 寛之(アスレティックトレーナー) 右:前田土芽 【NEC GREEN ROCKETS TOKATSU】

 前田は、長崎・海星高校から筑波大学と、ずっとCTBとしてプレーを続けてきた。
 筑波大在学中の16年には、日本代表に選ばれて、アジアラグビーチャンピオンシップで4試合に出場した。そのときもCTBだった。
 ところが、シャイニングアークス在籍中の21年、ジャパンラグビートップリーグのラストシーズンに、練習でSOを務めたところ才能を見込まれて、第3節クボタスピアーズ戦で先発に抜擢された。そして、第5節の東芝ブレイブルーパス戦では、自身が今でも「理想はあの試合のパフォーマンス」と話すプレーぶりで45対19と勝利に貢献。シーズン終了後には、SOとして日本代表候補に選ばれた。
 このとき10番を争ったチームメイトが、昨季グリーンロケッツ東葛で活躍したフレッチャー・スミスであり、コンビを組んだSHはスコットランド代表で長くキャプテンを務め、15年のラグビーW杯イングランド大会で日本とも対戦したグレイグ・レイドローだった。
 さらには、オーストラリア代表のクリスチャン・リアリーファノ、イズラエル・フォラウといった世界を代表するプレーヤーもチームに合流したことで、彼らから多大な薫陶を受けた。
 前田が言う。
「彼らの試合に対する準備は本当にすごかった。プロフェッショナルとしてのマインドを学びました。僕が10番だから気づいたのかもしれませんが、彼らは、もしこういう状況が起こったらこうする、こういう状況ならばこう……と、プランA、プランBを常に持つようにしていた。特にグレイグとはハーフ団を組むことが多かったので、2人でミーティングを重ねました。おかげで80分間を通しての、ゲームの進め方について理解が深まりました」

 自ら培ったそんな財産を、今、前田はグリーンロケッツ東葛に注ぎ込もうとしている。
 こう言うのだ。
「そういう環境で、スコットランドのラグビーもオーストラリアのラグビーも学ぶことができた。そして、シャイニングアークスのラグビーも経験できて、今はグリーンロケッツ東葛のラグビーに取り組んでいる。そうやって、いろいろなチームのラグビーを知り、それぞれの良いところを取り入れてプレーできるのが、自分のなかではプラスになっています」
 さらに、開幕から5試合をスタンドから見たことも、やはりプラス材料になったと話す。
「今は、ケガしたことでグリーンロケッツ東葛のラグビーを見る時間ができて良かった、と思っています。たとえば、パスのもらい方1つとっても、10番のパスを受ける12番の選手には、さまざまな個性や好みがある。自分でボールを持って走りたい選手もいれば、ちょっと早めに自分でスペースを作って、そこに長いパスを放ってもらって仕掛けたい選手もいる。僕は、彼らが求めていることをしてあげたいし、また、しなければならない。同時に、僕も彼らに要求しなければならないポジションですが、プレーしながらでは、いろいろなタイプの選手の特徴や好みをつかむのはなかなか難しい。でも、外から試合を見たおかげで、誰がどういうタイプなのかを確認することができた。だから、いざ練習に入ったときに、意外とフィットできました」

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 そうした積み重ねの末に、満を持して10番のジャージーに袖を通すのが29日の静岡ブルーレヴズ戦(ヤマハスタジアム 14時キックオフ)だ。
 キャプテンのレメキロマノラヴァが「絶対に勝たないといけない試合」と位置づけるこの試合に、前田はどういう心構えで臨むのか――その一端を明かしてくれた。
「どのチームと対戦するときもそうですが、ブルーレヴズは特に、強いFWがセットプレーから流れを持ってくるチーム。だから、まずはキックを上手く使って、自陣に入られないように、と心がけて準備をしています。あとは相手との接点、つまりタックルとボールの争奪が起こるコリジョンエリアやブレイクダウンで負けないことを意識しないといけないですね。グリーンロケッツ東葛には得点力があるので、ディフェンスでどれだけ我慢できるか、という勝負になると思います」

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 そして、その後のシーズンに向けても、こう抱負を話す。
「これは、やはり今季移籍してきた尾又(寛汰)さんとよく話すのですが、対戦相手として見たグリーンロケッツ東葛は、個々に力を持った選手がいるし、得点力があるイメージでした。だからこそ、これから勝って行くためには、いかにディフェンスを整備して失点を少なくするかが大切だと思います。今季は、いいディフェンスができているので、それを80分間通して、チームとして崩れないようにすることが必要でしょう。そのためにも、10番としてFWを消耗させない戦い方だったり、要所でプレーを切ることが必要になってくる。競った試合を勝つためには、PGで3点を積み重ねるような部分も必要になるでしょう。
 僕はまだ公式戦に出ていませんが、プレシーズンでは、ケガする前にある程度手応えをつかむことができました。直近の練習試合でも、手応えを得ています。
 性格的には楽観的というか、常に『オレがチームを勝たせてやる!』という気持ちを持っています。謙虚さを心がけつつ、10番としての冷静さも持ちながら、自信を持って試合に臨みたいですね。結果は、なるようにしかならないと思っているので(笑)」

 そして、インタビューの最後に締めの言葉として、力強くこう宣言した。
「今後、僕が出る試合は、絶対に勝ちますっ!」
 この自信と前向きさが、開幕戦で勝って以降は勝利がない、グリーンロケッツ東葛の悪い流れを断ち切る強力な太刀となるのか。
 10番前田土芽の“デビュー戦”は必見だ!


(取材・文:永田洋光)

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著者プロフィール

NTTジャパンラグビーリーグワンに加盟するラグビーフットボールチーム。 日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績がある。2021年にリブランディングを行い、千葉県東葛エリアをホストタウン(千葉県我孫子市、柏市、松戸市、流山市、野田市、鎌ケ谷市、白井市、印西市)とし、チーム名を「NECグリーンロケッツ東葛」に改称。柏の葉公園総合競技場で開催されるリーグワンの試合をホストゲームと位置付けて運営している。「WIN THE RACE」をスローガンとし、日本一を目指す。

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