マイナビ仙台コラム vol.4 「暫定3位でウインターブレイクへ。マイナビ仙台レディースはWEリーグの勢力図を塗り替えられるか」

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3連勝で好スタート。しかし、満足できない試合内容

 昨年10月に開幕した「2022-23 Yogibo WEリーグ」は、1月上旬に第8節を終えて中断期間へ入った。マイナビ仙台レディース(マイナビ仙台)は、ここまで8試合を戦い、4勝2分2敗、勝ち点14の暫定3位。首位はINAC神戸レオネッサ(勝ち点19)、それに続くのは三菱重工浦和レッズレディース(勝ち点18)。マイナビ仙台の背後には、試合数が1試合少ない日テレ・東京ヴェルディベレーザが勝ち点差1で迫っている。消化された試合数は折り返しの第11節まで来ておらず、3月に再開する後半戦で上位へ巻き返しを図りたい。

 松田岳夫監督の2季目となった今シーズンは、「よりゴールを意識した戦い方」にシフト。自分たちでボールを支配するのみならず、縦に速い攻撃や大きなサイドチェンジも意識してトレーニングに打ち込んできた。元日本代表・MF中島依美やFW後藤三知、モンテネグロ代表ストライカーのスラジャナ・ブラトヴィッチも加入し、昨季とは異なる“新たな顔”で開幕を迎えた。

 スタートは好調だった。開幕戦のちふれASエルフェン埼玉戦に逆転勝利すると、そこから怒涛の三連勝。「今年のチームでは、“勝ちにこだわる”というところにフォーカスしている」(市瀬菜々)という通り、紙一重のゲームをものにする「勝負強さ」が備わったように見えた。しかし、WEリーグでの戦いは一筋縄ではいかなかった。

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インターナショナルマッチウィークで2週間、試合間隔が空いた第4節大宮アルディージャVENTUS戦。マイナビ仙台はホーム・ユアテックスタジアム仙台で0-4とまさかの大敗を喫する。序盤に隅田凜が負傷交代するアクシデントも発生し、中盤でゲームコントロールを担う舵取り役の不在は大きく響き、それをチーム全体でカバーしきれなかった。宮澤ひなたは「試合を通して、距離感が遠く、ボールを取られた後の切り替えが遅かった。距離感が悪いことでテンポを作ることができなかった」と試合を振り返った。松田監督も「今までのゲームの課題をしっかりと修正できていなかったということがチームとしての一番の問題点。4失点受けたこともそうだが、1点も取れなかった」と悔しさをにじませた。

翌週の第5節ノジマステラ神奈川相模原戦で、松田監督は前線を中心に先発を3人入れ替えた。この日は途中出場となった船木が、宮澤やブラトヴィッチとの好連携から2得点を挙げ、逆転勝利をもぎ取った。中盤で佐藤楓のアンカー起用も当たった。トレーニングで好調を示した選手や後半からの出場で奮起し、持ち味を発揮した選手たちが輝いた。松田監督の起こす“化学反応”で、敗戦から立ち上がる貴重な「勝ち点3」をつかんだ。

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自分たちは、いかにして勝つのか。きっかけとなった“2つの敗戦”

 第8節までの戦いを振り返った松田監督は、“転機となった試合”について語った。「皇后杯(4回戦)の東京NB戦、リーグの(第7節)浦和戦の2試合で、守備も攻撃も全く何もできなかった。ここが一番のターニングポイント」。皇后杯は開始1分で植木理子(東京NB)にゴールを許すとバランスを崩し、前半だけで4失点を重ねた。ハーフタイムのロッカーには、松田監督の厳しい声が響いた。

「ここからどうしていくのか。負けている中で、どう勝ちに行くのか」

その声をきっかけに奮い立った選手たちは、後半立ち上がりから積極的な仕掛けを見せる。そして後半20分、國武愛美が高い位置を取り、矢形海優がゴールをもぎ取り、一矢報いた。「何かきっかけがなければ、持っている力を出せない。それが現状。すごくもったいないと思う」と指揮官は歯がゆさを隠さなかった。

 皇后杯敗退の悔しさを払拭すべく、強い気持ちで挑んだ翌週のWEリーグ第7節浦和戦。ここでもマイナビ仙台は開始5分にセットプレーから失点を喫する。「技術、戦術はもちろん、1対1の強さやボールへの関わり方、全てにおいて相手が上でした」(松田監督)マイナビ仙台は、守護神・松本真未子が好守を見せるが、攻撃のリズムを取り戻せず、結局0-2で敗れた。中島は「気持ちを新たに上に行くためにも、全員が練習から目の色を変えてやっていかないといけない」とより高い意識をチーム全体に求めた。

 昨年の“TOP3”(I神戸、浦和、東京NB)の牙城を崩し、そこに割って入っていく。昨季より、高みへ進むためにはその3チームからの勝利が絶対条件だ。皇后杯、WEリーグと大会は異なるが、短い間隔でライバルに立て続けに敗れ、どう立て直していくか。年明けの第8節東京NB戦に注目が集まった。

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25本ものシュートを止めた。冷静に課題と向き合い、立て直した守備

 短い年末年始が明け、新年4日にチームは動き出した。中断前の東京NB戦は何としても結果を、それ以上に気持ちを見せなければいけない一戦だった。この試合では、昨年7月に右膝に大けがを負った原衣吹がリハビリを乗り越えて先発出場した。「相手にボールを持たれることが多いというのは想定内」(原衣吹)と言う通り、中盤で中島とコンビを組み、丁寧に予測を繰り返しながら、ピンチの芽を摘み続けた。

 直近の2試合は立ち上がりに失点を繰り返した。ピンチをしのぐマイナビ仙台は前半25分、このゲーム“最大の山場”を迎える。エリア内でハンドを取られ、東京NBにPKが与えられた。ペナルティスポットには小林里歌子(東京NB)が立った。松本はゴールマウスに立つ前に、ドリンクボトルを手に取って水を飲んだ。自分の間合いを崩さなかった。落ち着いて小林と向かい合い、その様子をつぶさに観察した。「小林選手の雰囲気から打ち込んでくるんじゃないかと予測があり、対角線上に飛んだ」(松本)。その予想通り、小林は助走をつけて右足を勢いよく降りぬき、左隅を狙ってきた。ゴールポストのやや内側、ギリギリを狙ったボールを松本は横っ飛びでセーブ、すぐさま立ち上がると満面の笑みでガッツポーズを見せた。

 東京NB戦でマイナビ仙台は前後半を通じて25本ものシュートを浴びた。「数字だけ聞いたら恐ろしいが、私の実感ではそんなに危ないシーンはなかった。落ち着いて守ることができた。味方もマークについてくれたり、コースを限定することを意識していたので、その成果が無失点という結果に出た」と、松本は冷静に試合を分析し、仲間に感謝を述べた。相手の猛攻をしのぎ切り、スコアレスドローで試合を終えた。

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今、松田監督が見つめるのは中断期間明けの戦い方だ。「リーグが再開した時にもっと戦えるように。直近の試合のことだけを考えると、大切なものを置き去りにしてしまう」。今後の戦い方は、約1か月半のウインターブレイクの過ごし方にかかってくると言っても過言ではない。「新卒の選手たち(早稲田大学・廣澤真穂、JFAアカデミー福島・松窪真心、佐々木里緒)も入ってくる。その選手たちも含め、もう一度それぞれの個性を高めたい。もう一回ベースである守備の連係や攻撃の共通理解をより多く作っていきたい」(松田監督)

大事な冬に力を蓄え、雪解けの季節には勢いを持って、リスタートの後半戦に入る。マイナビ仙台が「WEリーグの勢力図」を塗り替える未来を見せて欲しい。



【試合情報】
2022‐23 Yogibo WEリーグ第9節 
マイナビ仙台レディース 対 INAC神戸レオネッサ
日時:3月4日(土)、もしくは5日(日)キックオフ時間未定
会場:未定

(マイナビ仙台レディースオフィシャルライター・村林いづみ)
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著者プロフィール

東日本大震災により休部した東京電力女子サッカー部マリーゼが移管し、2012年ベガルタ仙台レディースが発足。2017年に株式会社マイナビとタイトルパートナー契約を締結しマイナビベガルタ仙台レディースとなりました。 2020年10月にWEリーグへの参入が正式決定。2021年2月より「マイナビ仙台レディース」とクラブ名を改め、活動をスタート。選手達の熱いプレーが多くの方に届くような盛り上がりをともに作っていきます。仙台、東北から日本全国、全世界に向けて、感動や勇気を与え、WEリーグ優勝を目指し活動しています。

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