「食」で秋田を変える。秋田ノーザンハピネッツ、3つの「チャレンジ」

【ピンクモジャ】

2022‐23シーズンの開幕から2か月。30日、秋田ノーザンハピネッツは、ホームで東地区の強豪、アルバルク東京を迎え撃つ。今度こそ、ホームでの今季初勝利をあげ、CNAアリーナ☆あきたを歓喜で沸かせてほしい。今節は、先着4,500名にレプリカユニフォームをプレゼントするということで、多くの来場者が予想される。東京在住の筆者がどう頑張っても手に入れられない垂涎の品だ。現地観戦される皆さんはぜひゲットして、筆者を大いに羨ましがらせてほしい。

今シーズンのスローガン「Got it!(がりっと)」には、クラブの「日本一」に対する真剣な想いが込められている。B1の頂を目指すチーム同様、クラブは演出やグッズ展開などに、これまで以上に力を入れている。今季の入場者数の目標は1試合平均4,000人以上。今節は平日ゲームにもかかわらず4,500名分のユニフォームをプレゼントするというのもクラブの意気込みの表れだと感じている。これらの目標を達成するには、新規ファンだけでなく、コロナ禍でバスケ観戦から離れていたブースターを呼び戻すことが重要になるはずだ。そのためには、チームだけでなく、クラブ自体の「進化」を知ってもらうのが効果的なのではないだろうか。コロナ禍においても意欲的な取り組みをスタートさせている秋田ノーザンハピネッツ。今回のコラムでは、クラブの3つの「チャレンジ」をご紹介したい。



目指すのは「ワクワクするパン」

2021年2月、クラブが他業種展開の第1弾としてオープンさせたのがコッペパン専門店の「ハチトニ製パン」だ。チームの練習場である秋田ノーザンゲートスクエアの一角に店を構える。「地域とかかわり、そしてクラブの名物としてワクワクするパンを作りたい」。そんな思いで当時、秋田市内になかったコッペパン専門店を立ち上げた。

ラインナップは、あんことホイップなどの「おやつ系」と野菜サラダやコロッケを挟んだ「お惣菜系」。苺ジャムやカスタードなどがたっぷり詰められた、ふんわり白いパンを眺めているだけで、心が躍りだす。これが水野勇気社長の言う「ワクワク感」なのだろう。昨シーズンは田口選手や伊藤選手らとのコラボも実施し、好評だったとのこと。田口選手の好物だというチクワが入ったユニークなコッペ。是非、今シーズンも再販してほしい。おやつ系・お惣菜系あわせて30種類ほどあるが、担当者のお気に入りは「チョコバナナカスタード」に「追いカスタード(+50円)」だそうだ。なかなか罪悪感を感じるトッピングだが、皆さんもぜひ試してほしい。

今秋、帰省した際に「自家製たまごサラダ」と「あげコッペ(カスタード)」を買い求めた。優しい味わいの卵フィリングとなつかしさがあふれるカスタード、どちらも、食べ終えてしまうのがもったいないと思わせる美味しさだった。次回は、秋田ノーザンゲートスクエアで練習風景を眺めた後、ハチトニで好物のコッペパンを家族に買って帰ろう。そんな新しい楽しみが生まれた。

店頭にはさまざまなフィリングのコッペパンが並ぶ 【ピンクモジャ】

「金メダル級」のクラフトビール

もう一つの「食」の楽しみは、今シーズンから始まった「ビール事業」だ。今年6月、秋田ノーザンハピネッツは事業譲渡を受け、ビール醸造(秋田あくらビール)と飲食店運営(ビアカフェ)を開始した。クラフトビール界において歴史と実績を誇るあくらビールが秋田ノーザンハピネッツに仲間入りする。それは私たちブースターにとっても衝撃的なニュースだった。

秋田市大町で作られる各種クラフトビールは受賞歴も多く、最近では、アメリカで開かれた世界的なビール審査会で「なまはげIPA」がインターナショナル・インディアペールエール部門で最高賞の金賞に輝いた。筆者の友人で「クールビズならぬビールクズ」を自称するクラフトビールマニアにこの凄さを尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

「IPAという、特に人気の高い種類でのコンペティションでの金賞は、オリンピック、それも陸上短距離のような花形競技で金メダルを獲ったようなもの。日本のブルワリー(醸造所)で過去にも受賞しているところはあるが、どこも日本のトップクラスであり、あくらビールがそれらに肩を並べるレベルであるという証だ」

ビアカフェには、ビールの量り売りコーナーが設けられている。サッカーJ2のブラウブリッツ秋田のホームゲームが開催される日には、県外からのアウェーサポーターが来店してビールを楽しんでいたとのこと。あくらビールはもちろんバスケ会場でも楽しめるが、観戦後にビアカフェでゆったりと秋田の夜を楽しむというのもなかなかオツではないだろうか。県外からの友達を連れて参戦する際に、実現したい。

数多くの受賞歴を誇るあくらビール。右から2番目が「なまはげIPA」 【ピンクモジャ】

こども食堂で地域を笑顔に

最後に紹介するのはちょうど1年前にオープンした「こども食堂〜みんなのテーブル〜」だ。飲食関連ではあるが、先の二つとはだいぶ毛色が違う。
秋田ノーザンハピネッツは2026年に発足予定の新B1リーグへの参入を目指している。参入基準である売上12億円のうち20%(2億4千万円)まではバスケ事業以外の収益が認められ、パン事業・ビール事業はこの一環として進められている。しかしこども食堂は当然ながら収益貢献が目的ではない。

そもそも「こども食堂」とは、 地域住民や自治体、企業などが主体となり、無料または安価で栄養のある食事を提供するコミュニティの場を指す。 経済的理由や家庭の事情を抱えた子どもたちに温かで栄養のある食事をとってもらうことが目的だ。

秋田ノーザンハピネッツがこども食堂事業に乗り出したのは、地域とのつながりをより深めるためだ。「秋田の将来を担う子どもたちを育て、地域にとって必要な場にしていきたい」と担当者は語る。秋田県内のひとり親家庭の子どもの数は、約17,000人と言われる。ひとり親家庭をはじめ、育児を日々頑張る世代を支え、地域全体での子育てに貢献したいというのが秋田ノーザンハピネッツの願いである。

利用料金は中学生以下が無料、高校生が300円、大人は1,000円。管理栄養士が監修した二つのメニューを日替わりで提供している。食材は寄付が4割だそうだ。ちなみにコメは100%寄付で賄えているそうで、米どころ秋田の底力を感じた。玄関に飾られている花々も有志の方から頂いているとのことで、地域の方々に支えられているのだと改めて感じた。

店内の中心には、「みんなのテーブル」の名の通り、大きなテーブルがある。テーブルデスクに埋め込まれた赤い正方形のパネルは、かつて秋田ノーザンハピネッツ社が入居していた秋田県社会福祉会館の廃材を加工したもの。座ればクラブの歴史も感じられるのだ。
パンとビールとこども食堂。一見するとバスケとは縁の遠いような3つをつなぐキーワードは「地域振興」。地域の人々をつなぎ、食の楽しみで笑顔を増やしていく。10年以上にわたり秋田のエンターテインメントを牽引してきた秋田ノーザンハピネッツだからできることかもしれない。筆者も今回、3つの事業を見て回り、それぞれが目標を高く掲げて日々邁進していることに、深い感動を覚えた。

コロナ禍、秋田ノーザンハピネッツから遠ざかっていた方々にも、クラブの現在地とこれらの試みをぜひ知ってほしい。進化し続けるスポーツクラブが、あなたのそばにいることを思い出してほしい。
アリーナの外にも、ハッピーとワクワクは溢れている。

こども食堂「みんなのテーブル」の店内。ハピネッツグッズもそこかしこに 【ピンクモジャ】

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著者プロフィール

プロバスケBリーグ、秋田ノーザンハピネッツのアウェー会場を中心に出没するブースター。ツイッターアカウント名「ピンクモジャ」。秋田市出身、東京在住のワーキングウーマン。秋田魁新報電子版にて「ピンクモジャのアウェー・ブースター通信」を連載中。 ツイッター@crazypinkmoja

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