【第106回日本選手権10000m展望〜男子編〜】田澤、初優勝での内定なるか!?伊藤・相澤は、五輪に続く代表入り狙う

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【フォート・キシモト】

「第106回日本陸上競技選手権大会・10000m」が5月7日(土)本年7月にアメリカで開催される「オレゴン2022世界陸上競技選手権大会」の日本代表選手選考競技会を兼ねて、東京・国立競技場において開催される。
オレゴン2022世界選手権の参加標準記録は、男子が27分28秒00、女子が31分25秒00。日本選手権で即時内定を得るためには、このレースを3位以上でフィニッシュしたうえで、レース終了時点で参加標準記録を突破していることが必要だが、当日の気象条件によっては、このレースで、男女各3枠が埋まり、計6名の内定がアナウンスされる可能性もある。
東京オリンピックの会場となった現在の国立競技場における日本選手権の開催は、これが最初。そして、オリンピックでは叶わなかった有観客での開催となる。今大会では、グラウンド観戦ができる席種も新たに設定された。ファンが間近で見守るなかでのレースは、選手たちのモチベーションを大いに高めてくれるはずだ。
男女ともに好勝負が期待できそうなこのレース。エントリーリストに基づき、注目選手を紹介していこう。

※情報や記録・競技会等の結果は、4月22日時点の情報で構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)

【男子10000m】

51名がエントリーしている男子10000mは、資格記録順に、上位30選手を第2組、これに続く選手を第1組に振り分け、タイムレースで実施される。第2組から欠場者が出た場合は、その人数分が1組目から繰り上がる仕組みで、第2組は、日本選手30名に、オープンでの出場が認められた外国人競技者2名の計32名でレースが行われる。
4月22日の段階で、世界選手権参加標準記録の27分28秒00を突破しているのは、田澤廉(駒澤大学)のみ。昨年12月の日体大長距離競技会において、27分23秒44(日本歴代2位、日本人学生最高)をマークしてクリアした。これにより田澤は3着以内でフィニッシュすれば、記録の如何を問わず世界選手権代表に即時内定。いわば、王手をかけた状態で、大一番を迎えることになる。

【フォート・キシモト】

田澤は、参加標準記録突破後の推移も順調だ。箱根駅伝ではエースが集う2区で区間賞を獲得。箱根駅伝以来のレースとなった4月9日の「日本グランプリシリーズ熊本大会 第30回金栗記念選抜中長距離大会2022」では5000mに臨み、学生歴代8位となる13分22秒60をマークし、日本人トップの5位でフィニッシュした。これは、昨年出した自己記録を7秒以上更新するもので、2022年トラックシーズンを快調にスタートさせている。世界選手権代表はもちろんのこと、前回2位にとどまり、あと一歩及ばなかった初の「日本チャンピオン」の座を狙ってのレースとなるだろう。標準記録突破済みの心理的なアドバンテージとともに、記録をこだわらずにさまざまな戦略を立てていけることは、勝負を狙ってのレースを進めていくうえで非常に有利。優勝候補の筆頭といえる。
快進撃をみせる田澤の行く手を阻むとしたら、東京オリンピック代表の相澤晃(旭化成)と伊藤達彦(Honda)か。同学年ライバルとして知られる2人は、2020年12月の開催となった「第104回日本選手権・長距離種目」の10000mで大激戦を繰り広げ、初優勝した相澤が27分18秒75の日本新記録、2位の伊藤も27分25秒73をマークし、ともに東京2020オリンピック参加標準記録(オレゴン世界選手権参加標準記録と同タイム)を突破した。昨年の「第105回日本選手権10000m」では、伊藤が、残り2周を切ったところからのスパートで、田澤を突き放して初優勝を果たすとともに、東京オリンピック代表の座も手に入れている。

【フォート・キシモト】

2人は、世界選手権に向けては、昨年の八王子ロングディスタンス、今年の「第30回金栗記念選抜中長距離大会2022」で参加標準記録突破を狙ったもののクリアならなかった。本大会での代表入りに向けては、参加標準記録の突破に加えて、3位以内が最低条件だが、ともに2つめの「金のライオン」(日本選手権優勝メダル)獲得を狙っているはず。気象条件に恵まれ、参加標準記録突破を視野に入れた展開になるようだと、レースはいっそう面白くなる。
レースは、序盤は、ここ数年同様に、力のある外国人競技者たちが、ペースをつくって先頭集団を引っ張っていくのではないか。爆発的なキックを見せる伊藤のスパート力を考えると、田澤と相澤は終盤に入る前に伊藤を突き放しておきたいはず。一方で伊藤は、表情が険しくなり、フォームが大きく崩れても食らいつき、粘りに粘る走りが持ち味でもある。中盤から終盤に向かうあたりでは、3者による息を呑むような駆け引きがみられるかもしれない。

【フォート・キシモト】

資格記録で、この3選手に続くのが清水歓太(SUBARU、27分31秒27)と太田智樹(トヨタ自動車、27分33秒13)の2人。それぞれ昨年11月にマークしており、勢いを感じさせる。ただ、太田は昨年の5000mが日本選手権初出場(18位)で10000mは今回が初めて。清水はこれが初の日本選手権となる。「日本一という称号を懸けての勝負」となったときに、思いきりよく行ってしまえるか、はたまた経験の差が出るかで、明暗が分かれそうだ。
このほか、松枝博輝(富士通)は東京オリンピック5000mの日本代表選手。2016年リオデジャネイロオリンピック3000m障害物代表の塩尻和也(富士通)とともに、6月の日本選手権5000mあるいは3000m障害物に向けて、どういう走りをするかに注目したい。また、村山紘太(GMOインターネット)は2020年に相澤に塗り替えられるまでの日本記録保持者(27分29秒69、2015年)で、それに続く自己記録(27分29秒74、2015年)を持つ鎧坂哲哉(旭化成)は、2月の別府大分毎日マラソンで2時間07分55秒(2位)をマークし、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場権を獲得している。ほかにもMGC出場権獲得者は多数出場しており、彼らがトラックでどれだけスピードを高めていけるかは、パリオリンピックに向けたマラソン代表争いを見守るうえで、要チェック材料となるだろう。

▼昨年大会をプレイバック!3名が東京五輪日本代表内定▼

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