【第106回日本選手権10000m展望〜男子編〜】田澤、初優勝での内定なるか!?伊藤・相澤は、五輪に続く代表入り狙う
【フォート・キシモト】
オレゴン2022世界選手権の参加標準記録は、男子が27分28秒00、女子が31分25秒00。日本選手権で即時内定を得るためには、このレースを3位以上でフィニッシュしたうえで、レース終了時点で参加標準記録を突破していることが必要だが、当日の気象条件によっては、このレースで、男女各3枠が埋まり、計6名の内定がアナウンスされる可能性もある。
東京オリンピックの会場となった現在の国立競技場における日本選手権の開催は、これが最初。そして、オリンピックでは叶わなかった有観客での開催となる。今大会では、グラウンド観戦ができる席種も新たに設定された。ファンが間近で見守るなかでのレースは、選手たちのモチベーションを大いに高めてくれるはずだ。
男女ともに好勝負が期待できそうなこのレース。エントリーリストに基づき、注目選手を紹介していこう。
※情報や記録・競技会等の結果は、4月22日時点の情報で構成。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
【男子10000m】
4月22日の段階で、世界選手権参加標準記録の27分28秒00を突破しているのは、田澤廉(駒澤大学)のみ。昨年12月の日体大長距離競技会において、27分23秒44(日本歴代2位、日本人学生最高)をマークしてクリアした。これにより田澤は3着以内でフィニッシュすれば、記録の如何を問わず世界選手権代表に即時内定。いわば、王手をかけた状態で、大一番を迎えることになる。
【フォート・キシモト】
快進撃をみせる田澤の行く手を阻むとしたら、東京オリンピック代表の相澤晃(旭化成)と伊藤達彦(Honda)か。同学年ライバルとして知られる2人は、2020年12月の開催となった「第104回日本選手権・長距離種目」の10000mで大激戦を繰り広げ、初優勝した相澤が27分18秒75の日本新記録、2位の伊藤も27分25秒73をマークし、ともに東京2020オリンピック参加標準記録(オレゴン世界選手権参加標準記録と同タイム)を突破した。昨年の「第105回日本選手権10000m」では、伊藤が、残り2周を切ったところからのスパートで、田澤を突き放して初優勝を果たすとともに、東京オリンピック代表の座も手に入れている。
【フォート・キシモト】
レースは、序盤は、ここ数年同様に、力のある外国人競技者たちが、ペースをつくって先頭集団を引っ張っていくのではないか。爆発的なキックを見せる伊藤のスパート力を考えると、田澤と相澤は終盤に入る前に伊藤を突き放しておきたいはず。一方で伊藤は、表情が険しくなり、フォームが大きく崩れても食らいつき、粘りに粘る走りが持ち味でもある。中盤から終盤に向かうあたりでは、3者による息を呑むような駆け引きがみられるかもしれない。
【フォート・キシモト】
このほか、松枝博輝(富士通)は東京オリンピック5000mの日本代表選手。2016年リオデジャネイロオリンピック3000m障害物代表の塩尻和也(富士通)とともに、6月の日本選手権5000mあるいは3000m障害物に向けて、どういう走りをするかに注目したい。また、村山紘太(GMOインターネット)は2020年に相澤に塗り替えられるまでの日本記録保持者(27分29秒69、2015年)で、それに続く自己記録(27分29秒74、2015年)を持つ鎧坂哲哉(旭化成)は、2月の別府大分毎日マラソンで2時間07分55秒(2位)をマークし、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場権を獲得している。ほかにもMGC出場権獲得者は多数出場しており、彼らがトラックでどれだけスピードを高めていけるかは、パリオリンピックに向けたマラソン代表争いを見守るうえで、要チェック材料となるだろう。
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