一山&新谷が世界記録保持者に挑む!「東京マラソン2021」/記録と数字で楽しむJMCシリーズ(12)
【JAAF】
・文中敬称略。
・所属は当時のもの。
・所属は当時のもの。
女子
招待選手と有力な一般参加選手(マラソン2時間39分59秒以内。ハーフ1時間10分59秒以内、10000m31分台)は以下の通りだ。
No. 氏名 年齢 出場資格記録 自己記録
51 ブリジット・コスゲイ ケニア 27 2.14.04. 2019 シカゴ 2.14.04.
52 アンジェラ・タヌイ ケニア 29 2.17.57. 2021 アムステルダム 2.17.57.
53 アシェテ・ケベデ エチオピア 33 2.18.18. 2021 ロンドン 2.18.18.
54 ヒウォト・ゲブレキダン エチオピア 26 2.19.35. 2021 ミラノ 2.19.35.
55 ゴティトム・ゲブレシラシエ エチオピア 27 2.20.09. 2021 ベルリン 2.20.09.
56 サラ・ホール アメリカ 38 2.20.32. 2020 チャンドラー 2.20.32.
57 ヘレン・ベケレ エチオピア 27 2.21.01. 2019 東京 2.21.01.
61 一山麻緒 ワコール 24 2.20.29. 2020 名古屋 2.20.29.
62 新谷仁美 積水化学 34 1.06.38. 2020 ヒューストンハーフ 1.06.38.
301 大森菜月 ダイハツ 27 2.28.38. 2021 名古屋 2.28.38.
302 兼重志帆 GRlab関東 32 2.28.51. 2020 大阪国際女子 2.28.51.
303 下門美春 埼玉医科大学G 31 2.29.38. 2018 ゴールドコースト 2.27.54.
304 岡田唯 大塚製薬 27 2.32.00. 2020 名古屋 2.32.00.
305 水口瞳 ユニクロ 25 2.32.33. 2020 大阪国際女子 2.32.33.
306 藤澤舞 札幌エクセルAC 47 2.35.52. 2021 金沢 2.35.52.
307 澤畠朋美 埼玉陸協 29 2.35.58. 2018 さいたま国際 2.35.58.
327 森田香織 パナソニック 26 1.10.28. 2021 全日本実業団ハーフ 1.10.10.
328 加世田梨花 ダイハツ 23 31.39.86. 2020 日本陸上競技選手権 31.39.86.
男子のキプチョゲとともに女子も世界記録(2.14.04./2019年・シカゴ)保持者のブリジット・コスゲイ(ケニア)が参戦。それ以外の海外招待選手も男子ほどではないがなかなか豪華だ。2月27日時点での世界歴代の順位は、1位・10位・13位・31位・46位・59位・75位。4人が「サブ20」で3人が日本記録(2.19.12.)を上回っている。
日本人では女子単独レース日本記録(2.20.29.)保持者である一山麻緒(ワコール)と13年ぶりのマラソン挑戦となる新谷仁美(積水化学)が招待選手。
世界記録保持者に一山&新谷が挑む
日本人ファンの注目は一山と新谷がどんな走りをするか? だろう。
が、世界記録保持者が参戦するのでまずはそちらにふれたい。
コスゲイは1994年2月20日生まれで28歳になったばかり。
21歳からマラソンに取り組み今回が15回目のレースとなる。
【ブリジット・コスゲイのマラソン歴】
1 2015.11.08 ポルト 1)2.47.59.
2 2016.04.03 ミラノ 1)2.27.45.
3 2016.10.02 リスボン 2)2.24.45.
4 2016.12.11 ホノルル 1)2.31.11.
5 2017.04.17 ボストン 8)2.31.48.
6 2017.10.08 シカゴ 2)2.20.22.
7 2017.12.10 ホノルル 1)2.22.15.
8 2018.04.22 ロンドン 2)2.20.13.
9 2018.10.07 シカゴ 1)2.18.35.
10 2019.04.28 ロンドン 1)2.18.20.
11 2019.10.13 シカゴ 1)2.14.04.=世界新
12 2020.10.04 ロンドン 1)2.18.58.
13 2021.08.07 東京五輪 2)2.27.36.
14 2021.10.03 ロンドン 4)2.18.40.
17年のシカゴで20分台(2.20.22.)を出してからその名が知られるようになった。
翌年のシカゴで18分台(2.18.35.)に突入しさらに1年後の同大会で2時間14分04秒の世界新。
ポーラ・ラドクリフ(イギリス)が03年のロンドンでマークした2時間15分25秒は、それまでの世界記録を3分22秒も更新した。その後もそれに迫る選手はなかなか現れなかった。
17年にマリー・ケイタニー(ケニア)が2時間17分01秒で走ったがそれでもまだ1分36秒もの差があった。
「少なくとあと10年くらいはラドクリフの記録が破られることはないのだろうなあ」
と思われていた。
ところが、どっこいでケイタニーの2年半後にコスゲイがそれまでのベスト(2.18.20.)を4分16秒も更新して、ラドクリフの名前を16年半ぶりにレコードブックの世界記録の欄から消したのだった。
コスゲイは当初からマラソンが中心でトラックの記録は、21年6月19日にケニアでの東京五輪選考会の10000mを走った32分18秒90(6位)が、筆者の見つけることができた唯一のもの。
札幌で行われた東京五輪には「ガチガチの本命」として臨んだ。が、蒸し暑い中で苦しい走りを強いられ、最終盤に同じケニアのペレス・ジェプチルチルに振り切られ16秒差で銀メダルだった。
今回の東京ではどんな走りを披露するか? 上述のマラソン歴の通り、2時間14分04秒の世界記録を持っているがセカンドベストは18分台。とはいえ18分台で4回も走っている。自己5番目のタイムが18分台というのは歴代でコスゲイのみ、ラドクリフでも18分台以内は4回だ。
東京での自身の世界記録更新は厳しいかもしれないが、日本国内最高記録で大会記録でもある2時間17分45秒がとりあえずのターゲットとなりそうだ。
日本人選手では一山と新谷が、コスゲイや17〜19分台、あるいは20〜21分台の海外招待選手を相手にどんな走りをするかが焦点だ。
ペースメーカーの設定は不明だが、最も速い設定なら大会記録の2時間17分台あたりかもしれない。日本記録の2時間19分前後も間違いなく設定されるだろう。
【一山麻緒のマラソン歴】
1 2019.03.03 東 京 7)2.24.33.
2 2019.04.28 ロンドン 15)2.27.27.
3 2019.09.15 MGC 6)2.32.30.
4 2020.03.08 名古屋 1)2.20.29.=女子単独レース日本新
5 2021.01.31 大阪女 1)2.21.11.
6 2021.08.08 東京五輪 8)2.30.13.
3年前の東京が初マラソンで日本人トップの7位だった。この時の記録が東京マラソンでの日本人最高記録として残っている。
マラソン挑戦1年目は成績に浮き沈みがあったが、20年の名古屋で女子単独レースの日本記録をマークしてからの3レースはしっかりと結果を残している。
五輪後、疲労などから9月と10月のトラックレースや11月の実業団駅伝でも本来の走りができていなかったようだ。が、東京マラソンにエントリーしたということは、冬場にしっかりとマラソンに向けたトレーニングが積めたということだろう。とすれば、そのターゲットは「サブ20」と野口みずきの日本記録(2.19.12.)更新かもしれない。
もうひとりの新谷は、冒頭でふれた通り13年ぶりのマラソン参戦だ。
東京五輪の10000mで本来の走りができずに精神的に落ち込んでいたようだが、チームのSNS(note)の中で、マラソン挑戦の理由を次のように語っている。
「私の頭が全く切り替えられていなくて、東京五輪の結果をズルズル引きずっている部分がどうしてもあった。そこからどうにかして、立ち上がって戦いたい。そんな想いの中で、今まで遠ざけていた、一番苦手とするマラソンに挑戦しよう決めました」
【新谷仁美のマラソン歴】
1 2007.02.18 東 京 1)2.31.01.
2 2008.08.31 北海道 2)2.32.19.
3 2009.03.08 名古屋 8)2.30.58.
第1回の東京がマラソンデビュー戦で初代チャンピオンとなった。
その後、2回目の北海道は2時間32分19秒で2位。3回目の名古屋は2時間30分58秒の自己新をマークしたものの8位だった。
今回のレースについては、
「マラソン挑戦をSNSで発表して、本当に多くの方が私のマラソンを楽しみにしてくださっていたんだと感じました。目標として、私自身、東京五輪の結果から立ち直りたい想いがある。この挑戦で自分が納得できて、みんなも喜んでくれるような結果で終われたら、と思っています」
また、2月1日の会見では、
「先のことは考えず東京マラソンで納得のいくタイムを出すことに集中する」とも。
東京マラソンに向けてのステップとして2月13日の全日本実業団ハーフに出場した。
15kmまでマラソンペース(1km3分18〜20秒)でいってラスト5kmを上げてしっかり出し切って勝ちにいく。そして、レース後は、疲れた中で20kmを1km4分00秒ペースで……とマラソンを見据え、レースと練習をセットにしたメニューを組んでいた。
が、氷雨の中でのレースは途中から身体が動かずに1時間10分12秒で5位。レースで出し切れないままでの20km練習となり、当初の目論見とは違ったものになってしまったようだ。
レース後の会見では、東京マラソンに向けて「正直なところ、まったく自信はありません、という結果でした。気持ちを一度落ち着かせて、本番に合わせられるように頑張って行きます。練習を継続させるだけです」と。
常々「結果がすべて」と話す新谷にとっての東京マラソンでの「納得のいくタイム」は、日本記録の更新というところだろうか?
トラックやハーフの記録がそのまま通用するほどマラソンは簡単ではないのであろうが、世界陸連の採点表によると10000mの30分20秒44は「1229点」。ハーフの1時間06分38秒もまったく同じ「1229点」。マラソンの「1229点」に相当するタイムは「2時間20分27秒」だ。
新谷にとってこの数字は「納得のいくタイム」ではないかもしれないが、世界陸連採点表からは、そういうタイムが導き出される。
なお、筆者は他種目の記録からマラソンのタイムを予測するのに、x軸に距離(m)の対数値を、y軸に平均走速度(秒速)をとった片対数グラフから計算するという手法を用いることが多い。その方法で、新谷の10000mとハーフの記録(平均秒速)からマラソンの記録(平均秒速)を予測すると、その回帰式は、
y=8.160-0.6667 logx
だ。
この式の「x」にマラソンの「42195」を入れて秒速である「y」を求めると「5.076m/s」。
そこからマラソンの記録を計算すると野口の日本記録を39秒上回る「2時間18分33秒」となった。これならば、新谷自身にとって「納得のいくタイム」になるのだろうか?
話は少々それるが、01年のベルリンマラソンで高橋尚子(積水化学)が「史上初の2時間20分切り」の世界最高記録に挑戦した時、筆者は同じ手法でマラソンのタイムを予測したことがあった。
算出された予測記録は「2時間18分26秒」だった。実際のレース結果は「2時間19分46秒」で、予測タイムには1分20秒及ばなかった。
しかし、レース後に小出義雄監督は「本当の目標は、2時間18分32秒だった」と話した。
小出監督は筆者と同じ方法で「2時間18分32秒」を導き出した訳ではないだろう。おそらく毎日指導する中で、コーチとしての職人的感覚で「5km16分25秒のペースでなら押していけるはず、すると2時間18分32秒になる」というものであったのだろう。筆者の計算による予測と「コーチの眼」がほぼ一致したことに、思わずニンマリするとともに、上記の手法が間違っていないことに安心したものだ。
今回の新谷についても「2時間18分33秒」の予測が当たってもらいたい。
05年に野口が2時間19分12秒の日本新記録で走った時、世界歴代3位に位置していた。
それから17年が経過し、22年2月27日時点での歴代順位は、22位まで下がってしまった。
今回の東京で、一山と新谷には「17年ぶりの日本新!!」という嬉しいニュースを全国に流してもらいたいものである。
一般参加選手では、10000m31分台の加世田梨花(ダイハツ/31.39.86=20年)と森田香織(パナソニック/31.57.95=18年)が初マラソンに挑む。ともにハーフは走ったことがあり加世田は1時間11分29秒(19年)、森田は1時間10秒(18年)がベストである。
初マラソン日本最高は、安藤友香(スズキ浜松AC)の2時間21分36秒(17年・名古屋)とレベルが高いが、歴代10位の一山の2時間24分33秒(19年・東京)あたりが「いい目標」になりそうだ。
大会記録と日本人大会最高記録
大会記録は、2時間17分45秒 ロナー・チェムタイ・サルペーター(イスラエル)2020年。
日本人大会最高記録は、2時間24分33秒 一山麻緒(ワコール)2019年・7位。
大会記録は、その時点での世界歴代6位でパフォーマンス歴代8位。
22年2月27日現在でも同8位と同10位に位置し、日本国内でマークされた最高記録だ。
大会記録と日本人大会最高記録の5km毎は、
距離 大会記録 日本人大会最高記録
5km 16.27./16.27. 16.40./16.40.
10km 32.49./16.22. 33.16./16.36.
15km 49.17./16.28. 50.03./16.47.
20km 1.05.38./16.21. 1.06.45./16.42.
Half 1.09.16. 1.10.29.
25km 1.22.00./16.22. 1.23.31./16.46.
30km 1.38.25./16.25. 1.40.32./17.01.
35km 1.54.19./15.54. 1.58.12./17.40.
40km 2.10.29./16.10. 2.16.32./18.20.
Finish 2.17.45./ 7.16. 2.24.33./ 8.01.
前後半 69.16.+68.29. 70.29.+74.04.
前後半差 △0.47. ▽3.35.
野口みずき(グローバリー)の男女混合レースでの日本記録2時間19分12秒(2005年9月25日/ベルリン)の時は、
距離 日本記録
5km 16.24./16.24.
10km 32.53./16.29.
15km 49.22./16.29.
20km 1.05.43./16.21.
Half 1.09.19.
25km 1.22.13./16.30.
30km 1.38.48./16.35.
35km 1.55.19./16.31.
40km 2.11.53./16.34.
Finish 2.19.12./ 7.19.
前後半 69.19.+69.53.
前後半差 ▽0.34.
世界記録の更新はさすがに厳しいだろうが、コスゲイの2時間14分04秒(シカゴ/19年10月13日)の時は、
距離 世界記録
5km 15.28./15.28.
10km 31.28./16.00.
15km 47.26./15.58.
20km 1.03.27./16.01.
Half 1.06.59.
25km 1.19.33./16.06.
30km 1.35.18./15.45.
35km 1.51.14./15.56.
40km 2.07.11./15.57.
Finish 2.14.04./ 6.53.
前後半 66.59.+67.05.
前後半差 ▽0.06.
東京マラソンでの着順別最高記録
1) 2.17.45. L・S・サルペーター(ISR) 2020年
2) 2.18.35. B・ディババ(ETH) 2020年
3) 2.20.30. S・アセファ(ETH) 2020年
4) 2.21.42. S・チェピエゴ(KEN) 2020年
5) 2.21.56. T・ギルマ(ETH) 2020年
6) 2.22.58. A・ゲブル(ETH) 2020年
7) 2.24.33. 一山麻緒(ワコール) 2019年
8) 2.26.24. J・チェリモ(KEN) 2019年
9) 2.27.42. S・デミセ(SWE) 2020年
10) 2.29.26. 鈴木澄子(ホクレン) 2012年
11) 2.31.20. 兼重志帆(GRlab関東) 2020年
12) 2.31.42. 前田穂南(天満屋) 2019年
13) 2.32.30. 吉富博子(メモリード) 2019年
14) 2.33.04. 清田真央(スズキ浜松AC) 2019年
15) 2.33.41. 山口遥(AC・KITA) 2019年
16) 2.35.04. M・ベレテ(BRN) 2019年
17) 2.36.14. 曹純玉(TPE) 2019年
18) 2.36.16. 坂本喜子(T・FOR) 2019年
19) 2.36.37. 兼重志帆(GRlab関東) 2019年
20) 2.38.23. 野上恵子(十八銀行) 2019年
21) 2.38.43. 川戸希望(京産大) 2019年
・以上、2時間40分00秒以内。
上位には前回20年大会、12位以降は19年大会の記録がずらりと並ぶ。
日本人選手のデータに限ると、「2時間30分切り」は14大会で計11回。大会の歴史の長さに違いはあるが大阪国際女子の39大会(95年は阪神淡路大震災のため中止)で計144回、名古屋ウィメンズの37大会(11年は東日本大震災のため中止)で計160回と比べると寂しい数字だ。
これまで男子は世界選手権や五輪の選考レースであったが、女子は大阪と名古屋との日程の兼ね合いから選考レースでなかったため有力選手が揃って出場することが少なかったことが大きい。
日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎の回数
下表は、22年2月27日現在の日本人選手の「2時間30分切り」の回数を大会別に1分毎にまとめたものだ。
トータルでは173人が計494回。「名古屋ウィメンズ」と「大阪国際女子」が他の大会を大きく引き離している。
「2時間20分切り」の3回はいずれもベルリンでのもので、高橋尚子(2時間19分46秒=当時の世界最高/2001年)、渋井陽子(2時間19分41秒=当時、世界歴代4位/2004年)、野口みずき(2時間19分12秒=当時、世界歴代3位/2005年)と更新した。世界大会での入賞が狙える可能性がありそうな「2時間25分切り」は、42人・83回だ。
ちなみに、22年2月27日現在の世界歴代での「2時間20分切り」は、45人・74回。
「2時間25分切り」は、317人・857回。
「2時間30分切り」は、1137人・3855回。
「20分切り」の人数の日本のシェアは「6.7%」。「25分切り」が「13.2%」、「30分切り」が「15.2%」。
回数でのそれは「20分切り」が「4.1%」、「25分切り」は「9.7%」、「30分切り」は「12.8%」。
あくまでも歴代での人数や回数ではあるが、「20分切り」も「25分切り」も「30分切り」もエチオピア・ケニアに続き日本の層の厚さは世界3位だ。
【日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎回数】
・2022年2月27日現在。
・大会名の「片or下」は「片道または下り坂コース」のため非公認。
分台→ 19分台 20分台 21分台 22分台 23分台 24分台 25分台 26分台 27分台 28分台 29分台 合計
名古屋 ・ 1 2 3 10 14 14 20 28 30 38 160
大阪女 ・ 1 5 4 10 10 10 27 23 27 27 144
東京女 ・ ・ 1 1 1 3 2 2 3 13 3 29
横浜女 ・ ・ ・ ・ 1 1 ・ 5 2 3 2 14
北海道 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 3 2 3 4 14
東京 ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 1 1 4 3 11
MGC ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ 3 4
埼玉女 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 2
防府 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 2
神戸 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ 1
勝田 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ 1
91世選 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1
海外 3 ・ 3 2 3 9 12 21 12 19 27 111
合計 3 2 11 10 25 38 42 79 72 101 111 494
(非公認)
片or下 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ 1 2
「MGC出場権獲得」の条件は?
24年パリ五輪の代表切符を得るための最重要レースとなる23年秋に開催が予定されている「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」への出場資格を獲得することも上位の選手にとっては大きな目標となる。今回の東京での条件は、
・日本人1〜3位で2時間28分00秒以内
・同4〜6位で2時間27分00秒以内
・順位に関係なく2時間24分00秒以内
・「第1期」の2レースの平均で2時間28分00秒以内
そして、
・「シリーズI」終了時点(22年3月31日)のJMCランキングで8位以内
である。
なお、日本陸連が設定している「オレゴン世界選手権・派遣設定記録」は「2時間23分18秒」だ。
「JMC」とは?
「JMC」についての詳細は、
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/outline/
に詳しく説明されている。
また、大阪国際女子マラソンの時の拙稿のにももう少し簡単な説明がある。
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15784/
ここでは、「記録ポイント」と「順位ポイント」を中心に説明しておこう。
「JMC」は、ひとつの年度を2つの「期」で区分し、2期分を「シリーズ」として、2期分の合計ポイントでシリーズ総合成績を争う。
シリーズ総合成績は、日本選手権の順位決定や日本代表の選考などにも直結し、安定して高いレベルのパフォーマンスを残した競技者が、日本選手権者や日本代表となる仕組みである。
そのスタートとなる今年度(シリーズI)は、第0期(2020年12月1日〜21年10月31日)と第1期(21年11月1日〜22年3月31日)が対象となる。
日本陸連主催・共催のレースが「グレード1(G1)」、それ以外で「JMC」に加盟した大会を「グレード2(G2)」、現時点では存在しないが「グレード3(G3)」も今後加わる可能性がある。
世界陸連の「ラベルレース(エリートラベル以上で、第0期の東京五輪も含む/https://www.worldathletics.org/competitions/world-athletics-label-road-races/calendar-results)」が対象レースとなる。
それらのレースでの記録を世界陸連採点表(https://www.worldathletics.org/news/iaaf-news/scoring-tables-2017)から「記録ポイント」を算出。それに各大会のグレードに応じた「JMCポイント(順位によるポイント)」の合計「パフォーマンスポイント」を算出して順位を争うというものだ。
「シリーズI(2021年度)」については、各選手が「第0期」と「第1期」に出場したレースで「パフォーマンスポイント=記録ポイント+順位ポイント(JMCポイント)」の上位2レースの合計ポイントで総合順位を決める(「シリーズII」以降は3レースの総合ポイントによる)。ただし「第0期」については1レースのみがその対象、また海外レースも「第0期」「第1期」で1大会のみがその対象。
「第0期」に出場していない選手は、「第1期」の2レースに出場してポイントを獲得する必要がある。
女子の「第0期」と「第1期」の対象大会と大会グレードは下記の通り。
<G1> 0期 1期
大阪女 ○ ○
東京 × ○
名古屋女 ○ ○
<G2> 0期 1期
大阪 × ○
<海外>
https://www.worldathletics.org/competitions/world-athletics-label-road-races/calendar-results
を参照。
切りのいい記録に相当する「記録ポイント」と1100点以上の50点毎の記録は、
1300点 2.13.38.
1295点 2.14.04.=世界記録(男女混合レース。2.14.07.が1295点)
1285点 2.15.00.(2.15.04.が1285点)
1275点 2.16.00.(2.16.01.が1275点)
1264点 2.17.00.(2.17.04.が1264点)
1264点 2.17.01.=世界記録(女子のみのレース。2.17.04.が1264点)
1257点 2.17.45.=大会記録
1254点 2.18.00.(2.18.02.が1254点)
1250点 2.18.25.
1244点 2.19.00.
1242点 2.19.12.=日本記録(男女混合レース)
1233点 2.20.00.(2.20.04.が1233点)
1228点 2.20.29.=日本記録(女子のみのレース。2.20.33.が1228点)
1223点 2.21.00.(2.21.03.が1223点)
1213点 2.22.00.(2.22.01.が1213点)
1203点 2.23.00.
1200点 2.23.18.
1193点 2.24.00.
1187点 2.24.33.=日本人大会最高記録(2.24.35.が1187点)
1182点 2.25.00.(2.25.05.が1182点)
1172点 2.26.00.(2.26.05.が1172点)
1162点 2.27.00.(2.27.05.が1162点)
1152点 2.28.00.(2.28.05.が1152点)
1150点 2.28.17.
1142点 2.29.00.(2.29.06.が1142点)
1133点 2.30.00.
1123点 2.31.00.(2.31.01.が1123点)
1113点 2.32.00.(2.32.03.が1113点)
1103点 2.33.00.(2.33.04.が1103点)
1100点 2.33.23.
なお、五輪(&世界選手権)での記録ポイントは、完走した実際のタイムに関わらず「1200点(2.23.18.相当)」が基礎ポイントとして付与され、「2.23.18.」よりも記録がいい場合は、それに相当するポイントを獲得できる。が、東京五輪では3選手すべての「記録ポイント」は「1200点」だった。8位入賞の一山麻緒には下記の「順位ポイント」の60ポイントが付加された。
大会のグレード別の女子の「JMCポイント(日本人選手内での順位が対象。海外&東京五輪は外国籍選手を含む順位が対象)」は、
ーー G1 G2 五輪 海外1 海外2
1位 70 20 135 70 45
2位 50 15 110 50 35
3位 45 10 100 45 30
4位 35 ー 85 35 25
5位 30 ー 75 30 22
6位 25 ー 70 25 20
7位 20 ー 65 20 17
8位 15 ー 60 15 15
9位 ー ー 40 ー ー
10位ー ー 35 ー ー
11位ー ー 30 ー ー
12位ー ー 25 ー ー
以上の通りで、「第0期」「第1期」の2レースの合計ポイントで最上位の選手が「2021年度(第105回)日本選手権優勝者」となる。
また、22年7月のオレゴン世界選手権の代表選考にも利用される。
大阪マラソン終了時点でのMGC出場権を得ているのは、以下の6人。
【MGC出場権獲得者(ファイナリスト)一覧/22年2月27日現在】
No. 名前 所属 登録陸協 自己ベスト 出場権を獲得した大会と記録
1 松田瑞生 ダイハツ 大阪 2.20.52. 41大阪国際女子 1位(2.20.52.)
2 上杉真穂 スターツ 千葉 2.22.29. 41大阪国際女子 2位(2.22.29.)
3 松下菜摘 天満屋 岡山 2.23.05. 41大阪国際女子 3位(2.23.05.)
4 谷本観月 天満屋 岡山 2.23.11. 41大阪国際女子 4位(2.23.11.)
5 阿部有香里 しまむら 埼玉 2.24.02. 41大阪国際女子 5位(2.24.02.)
6 佐藤早也伽 積水化学 千葉 2.23.27. 41大阪国際女子 6位(2.24.47.)
下表は、大阪マラソン終了時点での「ポイントランキング」だ。
2レースの合計が2000pt以上の21人と1レースのみで1000pt以上の34人をリストアップし、東京への出場予定者に「★=招待選手」と「▲=一般参加選手」のマークを付記した。
1月30日の大阪国際女子マラソンを2時間20分52秒の自己新&大会新で制した松田瑞生(ダイハツ)が第0期の21年3月14日の名古屋ウィメンズ(2.21.51.で優勝)と合わせて抜け出ている。
今回の東京で松田に迫るか逆転でトップに立つ可能性があるのは、一山のみ。
一山が日本人トップで順位ポイントで「70pt」を獲得した場合、松田を上回るには、記録ポイントで「1218pt以上」が必要になる。具体的なタイムは「2時間21分32秒以内」だ。日本人2位(50pt)なら「2時間19分35秒以内」になる。
2時間19分12秒の日本記録をターゲットにするであろう一山にとっては、こちらもいい目標になりそうだ。
一般参加選手では、21年3月の名古屋を2時間28分38秒(11位)で走って「1146pt」を獲得している大森菜月(ダイハツ)が、ランク8位以内に入ってくる可能性がありそうだ。ただし、大森は翌週の名古屋にもエントリーしているので、東京を走らない可能性もある。
【JMC・第0期&第1期ポイントランキング暫定版(女子)/2022年2月28日現在】
・第0期は国内大会、オリンピックのみ。第1期の海外はニューヨークのみ。
・氏名の後ろの「★」は東京マラソンの招待選手、「▲」は一般参加選手。
順位 名前 所属 都道府県 総合ポイント 第0期ポイント 第1期ポイント
1 松田瑞生 ダイハツ 大阪 2578 1284 1294
2 上杉真穂 スターツ 千葉 2477 1219 1258
3 松下菜摘 天満屋 岡山 2460 1213 1247
4 阿部有香里 しまむら 埼玉 2453 1231 1222
5 佐藤早也伽 積水化学 千葉 2447 1237 1210
6 谷本観月 天満屋 岡山 2358 1122 1236
7 加藤 岬 九電工 福岡 2322 1174 1148
8 田中華絵 第一生命グループ 東京 2319 1194 1125
9 川内理江 大塚製薬 徳島 2314 1117 1197
10 池満綾乃 鹿銀 鹿児島 2312 1168 1144
11 岩出玲亜 千葉陸協 千葉 2302 1127 1175
12 萩原歩美 豊田自動織機 愛知 2291 1200 1091
13 山口 遥 AC・KITA 東京 2218 2218
13 兼重志帆▲ GRlab関東 東京 2218 1114 1104
15 池内彩乃 デンソー 三重 2139 1099 1040
16 澤畠朋美▲ 埼玉陸協 埼玉 2100 1033 1067
17 伊藤 舞 大塚製薬 徳島 2070 1054 1016
18 宮永光唯 大阪芸術大 大阪 2064 1013 1051
19 堀岡智子 大阪陸協 大阪 2049 1027 1022
20 藤澤 舞▲ 札幌エクセルAC 北海道 2045 1038 1007
21 小川那月 神戸学院大 兵庫 2018 1025 993
・以上、2レースで「2000pt以上」。
・以下、1レースで「1000pt以上」。
順位 名前 所属 都道府県 総合ポイント 第0期ポイント 第1期ポイント
- 一山麻緒★ ワコール 京都 1291 1291
- 前田穂南 天満屋 岡山 1248 1248
- 和久夢来 ユニバーサル 千葉 1202 1202
- 鈴木亜由子 JP日本郵政G 東京 1200 1200
- 赤坂よもぎ スターツ 千葉 1189 1189
- 池田千晴 日立 茨城 1156 1156
- 松田杏奈 京セラ 鹿児島 1149 1149
- 福良郁美 大塚製薬 徳島 1147 1147
- 大森菜月▲ ダイハツ 大阪 1146 1146
- 竹本香奈子 ダイハツ 大阪 1146 1146
- 足立由真 京セラ 鹿児島 1142 1142
- 堀江美里 シスメックス 兵庫 1131 1131
- 大蔵玲乃 ノーリツ 兵庫 1130 1130
- 福居紗希 三井住友海上 東京 1128 1128
- 沼田未知 豊田自動織機 愛知 1114 1114
- 小原 怜 天満屋 岡山 1113 1113
- 中野円花 岩谷産業 大阪 1104 1104
- 池本 愛 SWAC 東京 1088 1088
- 青木奈波 岩谷産業 大阪 1085 1085
- 吉冨博子 メモリード 佐賀 1084 1084
- 儀藤優花 肥後銀行 熊本 1083 1083
- 下門美春▲ 埼玉陸協 埼玉 1077 1077
- 竹地志帆 ヤマダホールディングス 群馬 1075 1075
- 永尾 薫 三田飲料 東京 1049 1049
- 清田真央 スズキ 静岡 1048 1048
- 野村沙世 ユニクロ 東京 1046 1046
- 宇都宮恵理 JP日本郵政G 東京 1039 1039
- 川内侑子 AD損保 東京 1033 1033
- 西岡真紀 モクレンRC 和歌山 1028 1028
- 大井千鶴 NARA-X 奈良 1023 1023
- 松村幸栄 埼玉陸協 埼玉 1017 1017
- 坂本喜子 teamF.O.R 三重 1009 1009
- 高野美幸▲ 埼玉医科大学G 埼玉 1004 1004
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
No. 氏名 年齢 出場資格記録 自己記録
51 ブリジット・コスゲイ ケニア 27 2.14.04. 2019 シカゴ 2.14.04.
52 アンジェラ・タヌイ ケニア 29 2.17.57. 2021 アムステルダム 2.17.57.
53 アシェテ・ケベデ エチオピア 33 2.18.18. 2021 ロンドン 2.18.18.
54 ヒウォト・ゲブレキダン エチオピア 26 2.19.35. 2021 ミラノ 2.19.35.
55 ゴティトム・ゲブレシラシエ エチオピア 27 2.20.09. 2021 ベルリン 2.20.09.
56 サラ・ホール アメリカ 38 2.20.32. 2020 チャンドラー 2.20.32.
57 ヘレン・ベケレ エチオピア 27 2.21.01. 2019 東京 2.21.01.
61 一山麻緒 ワコール 24 2.20.29. 2020 名古屋 2.20.29.
62 新谷仁美 積水化学 34 1.06.38. 2020 ヒューストンハーフ 1.06.38.
301 大森菜月 ダイハツ 27 2.28.38. 2021 名古屋 2.28.38.
302 兼重志帆 GRlab関東 32 2.28.51. 2020 大阪国際女子 2.28.51.
303 下門美春 埼玉医科大学G 31 2.29.38. 2018 ゴールドコースト 2.27.54.
304 岡田唯 大塚製薬 27 2.32.00. 2020 名古屋 2.32.00.
305 水口瞳 ユニクロ 25 2.32.33. 2020 大阪国際女子 2.32.33.
306 藤澤舞 札幌エクセルAC 47 2.35.52. 2021 金沢 2.35.52.
307 澤畠朋美 埼玉陸協 29 2.35.58. 2018 さいたま国際 2.35.58.
327 森田香織 パナソニック 26 1.10.28. 2021 全日本実業団ハーフ 1.10.10.
328 加世田梨花 ダイハツ 23 31.39.86. 2020 日本陸上競技選手権 31.39.86.
男子のキプチョゲとともに女子も世界記録(2.14.04./2019年・シカゴ)保持者のブリジット・コスゲイ(ケニア)が参戦。それ以外の海外招待選手も男子ほどではないがなかなか豪華だ。2月27日時点での世界歴代の順位は、1位・10位・13位・31位・46位・59位・75位。4人が「サブ20」で3人が日本記録(2.19.12.)を上回っている。
日本人では女子単独レース日本記録(2.20.29.)保持者である一山麻緒(ワコール)と13年ぶりのマラソン挑戦となる新谷仁美(積水化学)が招待選手。
世界記録保持者に一山&新谷が挑む
日本人ファンの注目は一山と新谷がどんな走りをするか? だろう。
が、世界記録保持者が参戦するのでまずはそちらにふれたい。
コスゲイは1994年2月20日生まれで28歳になったばかり。
21歳からマラソンに取り組み今回が15回目のレースとなる。
【ブリジット・コスゲイのマラソン歴】
1 2015.11.08 ポルト 1)2.47.59.
2 2016.04.03 ミラノ 1)2.27.45.
3 2016.10.02 リスボン 2)2.24.45.
4 2016.12.11 ホノルル 1)2.31.11.
5 2017.04.17 ボストン 8)2.31.48.
6 2017.10.08 シカゴ 2)2.20.22.
7 2017.12.10 ホノルル 1)2.22.15.
8 2018.04.22 ロンドン 2)2.20.13.
9 2018.10.07 シカゴ 1)2.18.35.
10 2019.04.28 ロンドン 1)2.18.20.
11 2019.10.13 シカゴ 1)2.14.04.=世界新
12 2020.10.04 ロンドン 1)2.18.58.
13 2021.08.07 東京五輪 2)2.27.36.
14 2021.10.03 ロンドン 4)2.18.40.
17年のシカゴで20分台(2.20.22.)を出してからその名が知られるようになった。
翌年のシカゴで18分台(2.18.35.)に突入しさらに1年後の同大会で2時間14分04秒の世界新。
ポーラ・ラドクリフ(イギリス)が03年のロンドンでマークした2時間15分25秒は、それまでの世界記録を3分22秒も更新した。その後もそれに迫る選手はなかなか現れなかった。
17年にマリー・ケイタニー(ケニア)が2時間17分01秒で走ったがそれでもまだ1分36秒もの差があった。
「少なくとあと10年くらいはラドクリフの記録が破られることはないのだろうなあ」
と思われていた。
ところが、どっこいでケイタニーの2年半後にコスゲイがそれまでのベスト(2.18.20.)を4分16秒も更新して、ラドクリフの名前を16年半ぶりにレコードブックの世界記録の欄から消したのだった。
コスゲイは当初からマラソンが中心でトラックの記録は、21年6月19日にケニアでの東京五輪選考会の10000mを走った32分18秒90(6位)が、筆者の見つけることができた唯一のもの。
札幌で行われた東京五輪には「ガチガチの本命」として臨んだ。が、蒸し暑い中で苦しい走りを強いられ、最終盤に同じケニアのペレス・ジェプチルチルに振り切られ16秒差で銀メダルだった。
今回の東京ではどんな走りを披露するか? 上述のマラソン歴の通り、2時間14分04秒の世界記録を持っているがセカンドベストは18分台。とはいえ18分台で4回も走っている。自己5番目のタイムが18分台というのは歴代でコスゲイのみ、ラドクリフでも18分台以内は4回だ。
東京での自身の世界記録更新は厳しいかもしれないが、日本国内最高記録で大会記録でもある2時間17分45秒がとりあえずのターゲットとなりそうだ。
日本人選手では一山と新谷が、コスゲイや17〜19分台、あるいは20〜21分台の海外招待選手を相手にどんな走りをするかが焦点だ。
ペースメーカーの設定は不明だが、最も速い設定なら大会記録の2時間17分台あたりかもしれない。日本記録の2時間19分前後も間違いなく設定されるだろう。
【一山麻緒のマラソン歴】
1 2019.03.03 東 京 7)2.24.33.
2 2019.04.28 ロンドン 15)2.27.27.
3 2019.09.15 MGC 6)2.32.30.
4 2020.03.08 名古屋 1)2.20.29.=女子単独レース日本新
5 2021.01.31 大阪女 1)2.21.11.
6 2021.08.08 東京五輪 8)2.30.13.
3年前の東京が初マラソンで日本人トップの7位だった。この時の記録が東京マラソンでの日本人最高記録として残っている。
マラソン挑戦1年目は成績に浮き沈みがあったが、20年の名古屋で女子単独レースの日本記録をマークしてからの3レースはしっかりと結果を残している。
五輪後、疲労などから9月と10月のトラックレースや11月の実業団駅伝でも本来の走りができていなかったようだ。が、東京マラソンにエントリーしたということは、冬場にしっかりとマラソンに向けたトレーニングが積めたということだろう。とすれば、そのターゲットは「サブ20」と野口みずきの日本記録(2.19.12.)更新かもしれない。
もうひとりの新谷は、冒頭でふれた通り13年ぶりのマラソン参戦だ。
東京五輪の10000mで本来の走りができずに精神的に落ち込んでいたようだが、チームのSNS(note)の中で、マラソン挑戦の理由を次のように語っている。
「私の頭が全く切り替えられていなくて、東京五輪の結果をズルズル引きずっている部分がどうしてもあった。そこからどうにかして、立ち上がって戦いたい。そんな想いの中で、今まで遠ざけていた、一番苦手とするマラソンに挑戦しよう決めました」
【新谷仁美のマラソン歴】
1 2007.02.18 東 京 1)2.31.01.
2 2008.08.31 北海道 2)2.32.19.
3 2009.03.08 名古屋 8)2.30.58.
第1回の東京がマラソンデビュー戦で初代チャンピオンとなった。
その後、2回目の北海道は2時間32分19秒で2位。3回目の名古屋は2時間30分58秒の自己新をマークしたものの8位だった。
今回のレースについては、
「マラソン挑戦をSNSで発表して、本当に多くの方が私のマラソンを楽しみにしてくださっていたんだと感じました。目標として、私自身、東京五輪の結果から立ち直りたい想いがある。この挑戦で自分が納得できて、みんなも喜んでくれるような結果で終われたら、と思っています」
また、2月1日の会見では、
「先のことは考えず東京マラソンで納得のいくタイムを出すことに集中する」とも。
東京マラソンに向けてのステップとして2月13日の全日本実業団ハーフに出場した。
15kmまでマラソンペース(1km3分18〜20秒)でいってラスト5kmを上げてしっかり出し切って勝ちにいく。そして、レース後は、疲れた中で20kmを1km4分00秒ペースで……とマラソンを見据え、レースと練習をセットにしたメニューを組んでいた。
が、氷雨の中でのレースは途中から身体が動かずに1時間10分12秒で5位。レースで出し切れないままでの20km練習となり、当初の目論見とは違ったものになってしまったようだ。
レース後の会見では、東京マラソンに向けて「正直なところ、まったく自信はありません、という結果でした。気持ちを一度落ち着かせて、本番に合わせられるように頑張って行きます。練習を継続させるだけです」と。
常々「結果がすべて」と話す新谷にとっての東京マラソンでの「納得のいくタイム」は、日本記録の更新というところだろうか?
トラックやハーフの記録がそのまま通用するほどマラソンは簡単ではないのであろうが、世界陸連の採点表によると10000mの30分20秒44は「1229点」。ハーフの1時間06分38秒もまったく同じ「1229点」。マラソンの「1229点」に相当するタイムは「2時間20分27秒」だ。
新谷にとってこの数字は「納得のいくタイム」ではないかもしれないが、世界陸連採点表からは、そういうタイムが導き出される。
なお、筆者は他種目の記録からマラソンのタイムを予測するのに、x軸に距離(m)の対数値を、y軸に平均走速度(秒速)をとった片対数グラフから計算するという手法を用いることが多い。その方法で、新谷の10000mとハーフの記録(平均秒速)からマラソンの記録(平均秒速)を予測すると、その回帰式は、
y=8.160-0.6667 logx
だ。
この式の「x」にマラソンの「42195」を入れて秒速である「y」を求めると「5.076m/s」。
そこからマラソンの記録を計算すると野口の日本記録を39秒上回る「2時間18分33秒」となった。これならば、新谷自身にとって「納得のいくタイム」になるのだろうか?
話は少々それるが、01年のベルリンマラソンで高橋尚子(積水化学)が「史上初の2時間20分切り」の世界最高記録に挑戦した時、筆者は同じ手法でマラソンのタイムを予測したことがあった。
算出された予測記録は「2時間18分26秒」だった。実際のレース結果は「2時間19分46秒」で、予測タイムには1分20秒及ばなかった。
しかし、レース後に小出義雄監督は「本当の目標は、2時間18分32秒だった」と話した。
小出監督は筆者と同じ方法で「2時間18分32秒」を導き出した訳ではないだろう。おそらく毎日指導する中で、コーチとしての職人的感覚で「5km16分25秒のペースでなら押していけるはず、すると2時間18分32秒になる」というものであったのだろう。筆者の計算による予測と「コーチの眼」がほぼ一致したことに、思わずニンマリするとともに、上記の手法が間違っていないことに安心したものだ。
今回の新谷についても「2時間18分33秒」の予測が当たってもらいたい。
05年に野口が2時間19分12秒の日本新記録で走った時、世界歴代3位に位置していた。
それから17年が経過し、22年2月27日時点での歴代順位は、22位まで下がってしまった。
今回の東京で、一山と新谷には「17年ぶりの日本新!!」という嬉しいニュースを全国に流してもらいたいものである。
一般参加選手では、10000m31分台の加世田梨花(ダイハツ/31.39.86=20年)と森田香織(パナソニック/31.57.95=18年)が初マラソンに挑む。ともにハーフは走ったことがあり加世田は1時間11分29秒(19年)、森田は1時間10秒(18年)がベストである。
初マラソン日本最高は、安藤友香(スズキ浜松AC)の2時間21分36秒(17年・名古屋)とレベルが高いが、歴代10位の一山の2時間24分33秒(19年・東京)あたりが「いい目標」になりそうだ。
大会記録と日本人大会最高記録
大会記録は、2時間17分45秒 ロナー・チェムタイ・サルペーター(イスラエル)2020年。
日本人大会最高記録は、2時間24分33秒 一山麻緒(ワコール)2019年・7位。
大会記録は、その時点での世界歴代6位でパフォーマンス歴代8位。
22年2月27日現在でも同8位と同10位に位置し、日本国内でマークされた最高記録だ。
大会記録と日本人大会最高記録の5km毎は、
距離 大会記録 日本人大会最高記録
5km 16.27./16.27. 16.40./16.40.
10km 32.49./16.22. 33.16./16.36.
15km 49.17./16.28. 50.03./16.47.
20km 1.05.38./16.21. 1.06.45./16.42.
Half 1.09.16. 1.10.29.
25km 1.22.00./16.22. 1.23.31./16.46.
30km 1.38.25./16.25. 1.40.32./17.01.
35km 1.54.19./15.54. 1.58.12./17.40.
40km 2.10.29./16.10. 2.16.32./18.20.
Finish 2.17.45./ 7.16. 2.24.33./ 8.01.
前後半 69.16.+68.29. 70.29.+74.04.
前後半差 △0.47. ▽3.35.
野口みずき(グローバリー)の男女混合レースでの日本記録2時間19分12秒(2005年9月25日/ベルリン)の時は、
距離 日本記録
5km 16.24./16.24.
10km 32.53./16.29.
15km 49.22./16.29.
20km 1.05.43./16.21.
Half 1.09.19.
25km 1.22.13./16.30.
30km 1.38.48./16.35.
35km 1.55.19./16.31.
40km 2.11.53./16.34.
Finish 2.19.12./ 7.19.
前後半 69.19.+69.53.
前後半差 ▽0.34.
世界記録の更新はさすがに厳しいだろうが、コスゲイの2時間14分04秒(シカゴ/19年10月13日)の時は、
距離 世界記録
5km 15.28./15.28.
10km 31.28./16.00.
15km 47.26./15.58.
20km 1.03.27./16.01.
Half 1.06.59.
25km 1.19.33./16.06.
30km 1.35.18./15.45.
35km 1.51.14./15.56.
40km 2.07.11./15.57.
Finish 2.14.04./ 6.53.
前後半 66.59.+67.05.
前後半差 ▽0.06.
東京マラソンでの着順別最高記録
1) 2.17.45. L・S・サルペーター(ISR) 2020年
2) 2.18.35. B・ディババ(ETH) 2020年
3) 2.20.30. S・アセファ(ETH) 2020年
4) 2.21.42. S・チェピエゴ(KEN) 2020年
5) 2.21.56. T・ギルマ(ETH) 2020年
6) 2.22.58. A・ゲブル(ETH) 2020年
7) 2.24.33. 一山麻緒(ワコール) 2019年
8) 2.26.24. J・チェリモ(KEN) 2019年
9) 2.27.42. S・デミセ(SWE) 2020年
10) 2.29.26. 鈴木澄子(ホクレン) 2012年
11) 2.31.20. 兼重志帆(GRlab関東) 2020年
12) 2.31.42. 前田穂南(天満屋) 2019年
13) 2.32.30. 吉富博子(メモリード) 2019年
14) 2.33.04. 清田真央(スズキ浜松AC) 2019年
15) 2.33.41. 山口遥(AC・KITA) 2019年
16) 2.35.04. M・ベレテ(BRN) 2019年
17) 2.36.14. 曹純玉(TPE) 2019年
18) 2.36.16. 坂本喜子(T・FOR) 2019年
19) 2.36.37. 兼重志帆(GRlab関東) 2019年
20) 2.38.23. 野上恵子(十八銀行) 2019年
21) 2.38.43. 川戸希望(京産大) 2019年
・以上、2時間40分00秒以内。
上位には前回20年大会、12位以降は19年大会の記録がずらりと並ぶ。
日本人選手のデータに限ると、「2時間30分切り」は14大会で計11回。大会の歴史の長さに違いはあるが大阪国際女子の39大会(95年は阪神淡路大震災のため中止)で計144回、名古屋ウィメンズの37大会(11年は東日本大震災のため中止)で計160回と比べると寂しい数字だ。
これまで男子は世界選手権や五輪の選考レースであったが、女子は大阪と名古屋との日程の兼ね合いから選考レースでなかったため有力選手が揃って出場することが少なかったことが大きい。
日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎の回数
下表は、22年2月27日現在の日本人選手の「2時間30分切り」の回数を大会別に1分毎にまとめたものだ。
トータルでは173人が計494回。「名古屋ウィメンズ」と「大阪国際女子」が他の大会を大きく引き離している。
「2時間20分切り」の3回はいずれもベルリンでのもので、高橋尚子(2時間19分46秒=当時の世界最高/2001年)、渋井陽子(2時間19分41秒=当時、世界歴代4位/2004年)、野口みずき(2時間19分12秒=当時、世界歴代3位/2005年)と更新した。世界大会での入賞が狙える可能性がありそうな「2時間25分切り」は、42人・83回だ。
ちなみに、22年2月27日現在の世界歴代での「2時間20分切り」は、45人・74回。
「2時間25分切り」は、317人・857回。
「2時間30分切り」は、1137人・3855回。
「20分切り」の人数の日本のシェアは「6.7%」。「25分切り」が「13.2%」、「30分切り」が「15.2%」。
回数でのそれは「20分切り」が「4.1%」、「25分切り」は「9.7%」、「30分切り」は「12.8%」。
あくまでも歴代での人数や回数ではあるが、「20分切り」も「25分切り」も「30分切り」もエチオピア・ケニアに続き日本の層の厚さは世界3位だ。
【日本人選手の「2時間30分切り」の大会別・1分毎回数】
・2022年2月27日現在。
・大会名の「片or下」は「片道または下り坂コース」のため非公認。
分台→ 19分台 20分台 21分台 22分台 23分台 24分台 25分台 26分台 27分台 28分台 29分台 合計
名古屋 ・ 1 2 3 10 14 14 20 28 30 38 160
大阪女 ・ 1 5 4 10 10 10 27 23 27 27 144
東京女 ・ ・ 1 1 1 3 2 2 3 13 3 29
横浜女 ・ ・ ・ ・ 1 1 ・ 5 2 3 2 14
北海道 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 3 2 3 4 14
東京 ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 1 1 4 3 11
MGC ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ 3 4
埼玉女 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 2
防府 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 2
神戸 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ 1
勝田 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ 1
91世選 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1
海外 3 ・ 3 2 3 9 12 21 12 19 27 111
合計 3 2 11 10 25 38 42 79 72 101 111 494
(非公認)
片or下 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ 1 2
「MGC出場権獲得」の条件は?
24年パリ五輪の代表切符を得るための最重要レースとなる23年秋に開催が予定されている「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」への出場資格を獲得することも上位の選手にとっては大きな目標となる。今回の東京での条件は、
・日本人1〜3位で2時間28分00秒以内
・同4〜6位で2時間27分00秒以内
・順位に関係なく2時間24分00秒以内
・「第1期」の2レースの平均で2時間28分00秒以内
そして、
・「シリーズI」終了時点(22年3月31日)のJMCランキングで8位以内
である。
なお、日本陸連が設定している「オレゴン世界選手権・派遣設定記録」は「2時間23分18秒」だ。
「JMC」とは?
「JMC」についての詳細は、
https://www.jaaf.or.jp/jmc-series/outline/
に詳しく説明されている。
また、大阪国際女子マラソンの時の拙稿のにももう少し簡単な説明がある。
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15784/
ここでは、「記録ポイント」と「順位ポイント」を中心に説明しておこう。
「JMC」は、ひとつの年度を2つの「期」で区分し、2期分を「シリーズ」として、2期分の合計ポイントでシリーズ総合成績を争う。
シリーズ総合成績は、日本選手権の順位決定や日本代表の選考などにも直結し、安定して高いレベルのパフォーマンスを残した競技者が、日本選手権者や日本代表となる仕組みである。
そのスタートとなる今年度(シリーズI)は、第0期(2020年12月1日〜21年10月31日)と第1期(21年11月1日〜22年3月31日)が対象となる。
日本陸連主催・共催のレースが「グレード1(G1)」、それ以外で「JMC」に加盟した大会を「グレード2(G2)」、現時点では存在しないが「グレード3(G3)」も今後加わる可能性がある。
世界陸連の「ラベルレース(エリートラベル以上で、第0期の東京五輪も含む/https://www.worldathletics.org/competitions/world-athletics-label-road-races/calendar-results)」が対象レースとなる。
それらのレースでの記録を世界陸連採点表(https://www.worldathletics.org/news/iaaf-news/scoring-tables-2017)から「記録ポイント」を算出。それに各大会のグレードに応じた「JMCポイント(順位によるポイント)」の合計「パフォーマンスポイント」を算出して順位を争うというものだ。
「シリーズI(2021年度)」については、各選手が「第0期」と「第1期」に出場したレースで「パフォーマンスポイント=記録ポイント+順位ポイント(JMCポイント)」の上位2レースの合計ポイントで総合順位を決める(「シリーズII」以降は3レースの総合ポイントによる)。ただし「第0期」については1レースのみがその対象、また海外レースも「第0期」「第1期」で1大会のみがその対象。
「第0期」に出場していない選手は、「第1期」の2レースに出場してポイントを獲得する必要がある。
女子の「第0期」と「第1期」の対象大会と大会グレードは下記の通り。
<G1> 0期 1期
大阪女 ○ ○
東京 × ○
名古屋女 ○ ○
<G2> 0期 1期
大阪 × ○
<海外>
https://www.worldathletics.org/competitions/world-athletics-label-road-races/calendar-results
を参照。
切りのいい記録に相当する「記録ポイント」と1100点以上の50点毎の記録は、
1300点 2.13.38.
1295点 2.14.04.=世界記録(男女混合レース。2.14.07.が1295点)
1285点 2.15.00.(2.15.04.が1285点)
1275点 2.16.00.(2.16.01.が1275点)
1264点 2.17.00.(2.17.04.が1264点)
1264点 2.17.01.=世界記録(女子のみのレース。2.17.04.が1264点)
1257点 2.17.45.=大会記録
1254点 2.18.00.(2.18.02.が1254点)
1250点 2.18.25.
1244点 2.19.00.
1242点 2.19.12.=日本記録(男女混合レース)
1233点 2.20.00.(2.20.04.が1233点)
1228点 2.20.29.=日本記録(女子のみのレース。2.20.33.が1228点)
1223点 2.21.00.(2.21.03.が1223点)
1213点 2.22.00.(2.22.01.が1213点)
1203点 2.23.00.
1200点 2.23.18.
1193点 2.24.00.
1187点 2.24.33.=日本人大会最高記録(2.24.35.が1187点)
1182点 2.25.00.(2.25.05.が1182点)
1172点 2.26.00.(2.26.05.が1172点)
1162点 2.27.00.(2.27.05.が1162点)
1152点 2.28.00.(2.28.05.が1152点)
1150点 2.28.17.
1142点 2.29.00.(2.29.06.が1142点)
1133点 2.30.00.
1123点 2.31.00.(2.31.01.が1123点)
1113点 2.32.00.(2.32.03.が1113点)
1103点 2.33.00.(2.33.04.が1103点)
1100点 2.33.23.
なお、五輪(&世界選手権)での記録ポイントは、完走した実際のタイムに関わらず「1200点(2.23.18.相当)」が基礎ポイントとして付与され、「2.23.18.」よりも記録がいい場合は、それに相当するポイントを獲得できる。が、東京五輪では3選手すべての「記録ポイント」は「1200点」だった。8位入賞の一山麻緒には下記の「順位ポイント」の60ポイントが付加された。
大会のグレード別の女子の「JMCポイント(日本人選手内での順位が対象。海外&東京五輪は外国籍選手を含む順位が対象)」は、
ーー G1 G2 五輪 海外1 海外2
1位 70 20 135 70 45
2位 50 15 110 50 35
3位 45 10 100 45 30
4位 35 ー 85 35 25
5位 30 ー 75 30 22
6位 25 ー 70 25 20
7位 20 ー 65 20 17
8位 15 ー 60 15 15
9位 ー ー 40 ー ー
10位ー ー 35 ー ー
11位ー ー 30 ー ー
12位ー ー 25 ー ー
以上の通りで、「第0期」「第1期」の2レースの合計ポイントで最上位の選手が「2021年度(第105回)日本選手権優勝者」となる。
また、22年7月のオレゴン世界選手権の代表選考にも利用される。
大阪マラソン終了時点でのMGC出場権を得ているのは、以下の6人。
【MGC出場権獲得者(ファイナリスト)一覧/22年2月27日現在】
No. 名前 所属 登録陸協 自己ベスト 出場権を獲得した大会と記録
1 松田瑞生 ダイハツ 大阪 2.20.52. 41大阪国際女子 1位(2.20.52.)
2 上杉真穂 スターツ 千葉 2.22.29. 41大阪国際女子 2位(2.22.29.)
3 松下菜摘 天満屋 岡山 2.23.05. 41大阪国際女子 3位(2.23.05.)
4 谷本観月 天満屋 岡山 2.23.11. 41大阪国際女子 4位(2.23.11.)
5 阿部有香里 しまむら 埼玉 2.24.02. 41大阪国際女子 5位(2.24.02.)
6 佐藤早也伽 積水化学 千葉 2.23.27. 41大阪国際女子 6位(2.24.47.)
下表は、大阪マラソン終了時点での「ポイントランキング」だ。
2レースの合計が2000pt以上の21人と1レースのみで1000pt以上の34人をリストアップし、東京への出場予定者に「★=招待選手」と「▲=一般参加選手」のマークを付記した。
1月30日の大阪国際女子マラソンを2時間20分52秒の自己新&大会新で制した松田瑞生(ダイハツ)が第0期の21年3月14日の名古屋ウィメンズ(2.21.51.で優勝)と合わせて抜け出ている。
今回の東京で松田に迫るか逆転でトップに立つ可能性があるのは、一山のみ。
一山が日本人トップで順位ポイントで「70pt」を獲得した場合、松田を上回るには、記録ポイントで「1218pt以上」が必要になる。具体的なタイムは「2時間21分32秒以内」だ。日本人2位(50pt)なら「2時間19分35秒以内」になる。
2時間19分12秒の日本記録をターゲットにするであろう一山にとっては、こちらもいい目標になりそうだ。
一般参加選手では、21年3月の名古屋を2時間28分38秒(11位)で走って「1146pt」を獲得している大森菜月(ダイハツ)が、ランク8位以内に入ってくる可能性がありそうだ。ただし、大森は翌週の名古屋にもエントリーしているので、東京を走らない可能性もある。
【JMC・第0期&第1期ポイントランキング暫定版(女子)/2022年2月28日現在】
・第0期は国内大会、オリンピックのみ。第1期の海外はニューヨークのみ。
・氏名の後ろの「★」は東京マラソンの招待選手、「▲」は一般参加選手。
順位 名前 所属 都道府県 総合ポイント 第0期ポイント 第1期ポイント
1 松田瑞生 ダイハツ 大阪 2578 1284 1294
2 上杉真穂 スターツ 千葉 2477 1219 1258
3 松下菜摘 天満屋 岡山 2460 1213 1247
4 阿部有香里 しまむら 埼玉 2453 1231 1222
5 佐藤早也伽 積水化学 千葉 2447 1237 1210
6 谷本観月 天満屋 岡山 2358 1122 1236
7 加藤 岬 九電工 福岡 2322 1174 1148
8 田中華絵 第一生命グループ 東京 2319 1194 1125
9 川内理江 大塚製薬 徳島 2314 1117 1197
10 池満綾乃 鹿銀 鹿児島 2312 1168 1144
11 岩出玲亜 千葉陸協 千葉 2302 1127 1175
12 萩原歩美 豊田自動織機 愛知 2291 1200 1091
13 山口 遥 AC・KITA 東京 2218 2218
13 兼重志帆▲ GRlab関東 東京 2218 1114 1104
15 池内彩乃 デンソー 三重 2139 1099 1040
16 澤畠朋美▲ 埼玉陸協 埼玉 2100 1033 1067
17 伊藤 舞 大塚製薬 徳島 2070 1054 1016
18 宮永光唯 大阪芸術大 大阪 2064 1013 1051
19 堀岡智子 大阪陸協 大阪 2049 1027 1022
20 藤澤 舞▲ 札幌エクセルAC 北海道 2045 1038 1007
21 小川那月 神戸学院大 兵庫 2018 1025 993
・以上、2レースで「2000pt以上」。
・以下、1レースで「1000pt以上」。
順位 名前 所属 都道府県 総合ポイント 第0期ポイント 第1期ポイント
- 一山麻緒★ ワコール 京都 1291 1291
- 前田穂南 天満屋 岡山 1248 1248
- 和久夢来 ユニバーサル 千葉 1202 1202
- 鈴木亜由子 JP日本郵政G 東京 1200 1200
- 赤坂よもぎ スターツ 千葉 1189 1189
- 池田千晴 日立 茨城 1156 1156
- 松田杏奈 京セラ 鹿児島 1149 1149
- 福良郁美 大塚製薬 徳島 1147 1147
- 大森菜月▲ ダイハツ 大阪 1146 1146
- 竹本香奈子 ダイハツ 大阪 1146 1146
- 足立由真 京セラ 鹿児島 1142 1142
- 堀江美里 シスメックス 兵庫 1131 1131
- 大蔵玲乃 ノーリツ 兵庫 1130 1130
- 福居紗希 三井住友海上 東京 1128 1128
- 沼田未知 豊田自動織機 愛知 1114 1114
- 小原 怜 天満屋 岡山 1113 1113
- 中野円花 岩谷産業 大阪 1104 1104
- 池本 愛 SWAC 東京 1088 1088
- 青木奈波 岩谷産業 大阪 1085 1085
- 吉冨博子 メモリード 佐賀 1084 1084
- 儀藤優花 肥後銀行 熊本 1083 1083
- 下門美春▲ 埼玉陸協 埼玉 1077 1077
- 竹地志帆 ヤマダホールディングス 群馬 1075 1075
- 永尾 薫 三田飲料 東京 1049 1049
- 清田真央 スズキ 静岡 1048 1048
- 野村沙世 ユニクロ 東京 1046 1046
- 宇都宮恵理 JP日本郵政G 東京 1039 1039
- 川内侑子 AD損保 東京 1033 1033
- 西岡真紀 モクレンRC 和歌山 1028 1028
- 大井千鶴 NARA-X 奈良 1023 1023
- 松村幸栄 埼玉陸協 埼玉 1017 1017
- 坂本喜子 teamF.O.R 三重 1009 1009
- 高野美幸▲ 埼玉医科大学G 埼玉 1004 1004
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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