【週刊グランドスラム78】北海道ガスとエイジェックで懐かしい野球人が新監督に

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【エイジェックさくら球場で練習を終えた野手陣と笑顔を見せるエイジェック・難波貴司監督(前列左から2人目)。】

 例年であれば、全国の監督が一堂に会し、情報交換や社会人野球の未来に向けた活発な議論を交わす指導者研修会が実施され、ここでもレポートをしていただろう。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために今年は中止となった。そこで、主な企業チームで今季から指揮を執ることになった新監督を紹介しよう。
 昨年12月中旬、オールドファンが「おっ」と思わず声を上げるニュースが飛び込んできた。都市対抗初出場を目指す新鋭・北海道ガスが、今年2月1日付で新監督に清水隆一氏が就任すると発表したのだ。
 早稲田実高から早大を経て1982年に熊谷組へ入社した清水氏は、巧打堅守の外野手として活躍。1986年には社会人ベストナイン外野手にも選出され、現役の8年間はすべて都市対抗に出場した。そして、1992年に監督に就任すると、社会人球界を驚かせた。それまで、封建的な雰囲気があったスポーツ部のあり方を見直し、プレーヤーズ・ファーストのチーム作りに着手。自主練習の時間を増やして選手の個性を伸ばし、その年の都市対抗で準優勝という成果を上げる。翌1993年も都市対抗ではベスト8と、名門を活性化する手腕には耳目が集まったが、その年限りで熊谷組が活動を休止してしまう。
 その後、日本野球連盟で競技力向上委員会特別委員を務めるなど、清水氏は後進の育成にも尽力していたが、国際コーチ連盟のプロフェッショナルコーチ資格を取得すると熊谷組を退職。清水隆一コーチングオフィスを立ち上げ、野球の現場以外でも理想的なコーチングとは何かを学ぶ。さらに、2006年からは清水隆一コーチングカレッジを設立して代表取締役社長を務め、様々なシーンでマネジメントやコーチングについて講義をしてきた。
 熊谷組の監督だった時、「このチームはどこまで強くなるのか」と関心を寄せた野球関係者やファンは少なくなかったが、そのプロセスを見ることは叶わなかっただけに、27年の時を経て社会人球界に戻ってくる清水氏が、まだ何色にも染まっていない北海道ガスをどんなカラーのチームにしていくか楽しみである。暖かくなるころには、清水新監督の声も聞いてみたい。

東日本では1990年代を沸かせた懐かしい顔が続々と復帰

 関東の新鋭・エイジェックでは、昨年まで指揮した青野達也監督がシニア・アドバイザーに就き、難波貴司氏が新監督となった。難波氏の実父・昭二郎氏は、大型三塁手として関大から巨人へ入団。同期の長嶋茂雄と競い合い、5年で現役を退いたが、その後は実業界で活躍した。そんなサラブレッドの難波氏も、堀越高から東海大を経て1988年に日本通運へ入社し、内外野をそつなくこなす守備力とシュアな打撃で、1993年に社会人ベストナインに輝くなど目立つ実績を挙げる。1994年の日本選手権で初優勝を飾り、1995年限りで現役を退くと、1999年までコーチを務めた。
 ユニフォームを脱いだ後は、美容業界に転じて人脈を広げつつ、求められて各カテゴリーで臨時コーチを歴任。そうした縁から、2016年に明治学院大で監督に就き、4年間指揮を執る。
 エイジェックは栃木県小山市を本拠地としており、都市対抗に出場するためには北関東二次予選で日立製作所、日本製鉄鹿島、SUBARUといった強豪を倒さなければならない。できる限り早くチーム力を高めていきたいところだが、「まずは若い選手たちに、都市対抗予選を戦い抜くことができる体力をつけさせたい」と、社会人経験者ならではの視点で戦力を整えていくようだ。
 また、今年度からの新規参入企業も2つ。水戸市をホームとする茨城日産自動車は、名門の日産自動車が活動を休止した2009年にコーチだった渡辺 等氏が監督に。埼玉県行田市から東京ドームを目指すテイ・エステックでは、熊谷組から東芝で内野手として活躍し、引退後は成立学園高で監督を務めた菅澤 剛氏が指揮する。奇しくも、名門チームで1990年代の社会人野球を沸かせた野球人が、新天地で若いチームを育てていく。
(文=横尾弘一/写真=宮野敦子)
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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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