【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第10回深堀隼平選手「冷静沈着にやりきる」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第10回目は深堀隼平選手です。


(取材・構成 佐藤拓也)

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

Q.MVV策定にあたり、スタンス面談を行ったと思いますが、いかがでしたか?
「今まで自分の人生や原体験を振り返って、人に話をすることはありませんでした。なので、とても新鮮ではありましたね」

Q.人に話をすることで蘇る記憶もあったのでは?
「自分って『こういうことを考えているんだ』ということがあらためてよく分かりました。自分の思いを再確認できた感じです」

Q.実際完成したMVVを見ていかがですか?
「自分らしい言葉ができたと思っています。面白いですよね。クラブハウス内にある体をケアする部屋に置いていて、時折見て思い出すようにしています」

【Mission】

Q.「Mission」では「自分の頑張り、行動次第でステップアップすることを世の中に示すこと」と書いてあります。
「僕は学生時代からエリートではありませんでした。うまくいったことばかりではなかった自分の過去を思い出して、そういう言葉になりました」

Q.うまくいったことばかりではなかった?
「今まで年代別の代表に選ばれたことはありませんし、ずっと試合に出てきたわけでもありません。けがもありましたし、むしろ、うまくいかなかったときの方が長かったという印象です」

Q.うまくいかなかった時にどういう意識で、どういう取り組みをしていましたか?
「その時にこの『Mission』の言葉を考えて取り組んできました。それを今回言語化して、言葉にしました」

Q.ユース時代からそういった意識だったのでしょうか?
「同年代で代表に入っている選手もいたので、刺激を受けることはありました。でも、自分は自分だと思って、自分に与えられている役割を全うしようと頑張ってきました。常に自分らしく、冷静に取り組んできた結果、プロになることができたと思っています」

Q.名古屋ではトップ昇格しながらも、なかなか出場機会を得ることができませんでした。でも、トップレベルの選手たちと一緒にプレーして学んだことも多かったのでは?
「紅白戦で元代表選手やブラジル代表選手などとマッチアップしていましたし、常に高いレベルで自分を磨くことができました。試合に出たいという思いはありましたが、出ていなくても、日々の練習で得るものも大きかった。まずは1日1日を大切にしようという思いが強かったですね」

Q.昨年はシーズン途中からポルトガルのチームに移籍してプレーしました。
「サッカーに関して、技術は通用しましたし、自分が今までやってきたことは間違っていなかったと思うことができました。でも、言葉が通じなかったり、今まで当たり前だったことが当たり前でなくなることによって、今までの環境も当たり前ではないんだと思うことができるようになりました。ピッチの中だけでなく、ピッチの外でもいろんな気づきがありました。実はそれが目的で、そのために自分で環境を変えようと思って移籍したんです。期間は半年でしたが、いい経験ができたと感じています」

Q.今年は水戸に移籍してきました。ステップアップのシーズンと思って、移籍をしたのでしょうか?
「まさにその通りです。自分が積み上げてきたものを発揮できれば、結果を出せるということを証明したくて移籍を決めました」

Q.開幕スタメンを果たしたものの、中断期間中に負傷して長期離脱してしまいました。それでも復帰後は得点を重ねています。
「リハビリ期間が長くて、自粛期間中も病院に通う日々が続きました。その時は結構メンタル的にきつかったですね。でも、復帰したら絶対に活躍してみせると思うことができていました。そこが揺らがなかったからこそ、気持ちを落とすことなく、しっかりリハビリに取り組むことができました」

Q.復帰後、5得点を挙げています。まさに「行動次第でステップアップできる」ことを証明していますね。
「まだまだですね。残り試合でもっと点を取れると思っていますし、続けて結果を残すことが大事だと思っているので、これからが大事だと思っています」

Q.2得点を挙げた第34節京都戦の後のヒーローインタビューではリハビリに協力してくれた病院の方々に感謝の言葉を伝えていました。そういうこともすごく大切な「行動」ですよね。
「僕は1人で成り立つプレースタイルではありません。周りからボールを送ってもらってゴールを奪うスタイルのFWです。なので、周りの選手との関係性を大切にしています。それはピッチ外でも同じで、1人でプレーすることはできません。周りの人の支えで僕たちはプレーできているんです。リハビリの時も病院の先生たちがすごく親身になってサポートしてくれました。だから、復帰することができましたし、思いっきりプレーすることができているんです。そういう感謝の気持ちを常日頃から持つようにしています。普段はあまりそういうことを言えないので、インタビューの場で言わせていただきました」

【Vision】

Q.「健全な競争と個人の成績を通じて底上げされる組織、社会をつくる」という「Vision」を掲げています。
「普段から100%で全員が練習をすれば、チームとしての競争力が上がると思うし、監督も誰を使うか迷うと思う。僕は名古屋のジュニアユースとユースというすごく競争が激しいチームで育ったので、そういう考えを強く持っています。『競争』はサッカーだけではなく、社会全体にも通じることだと思うので、そういう言葉にしました」

Q.深堀選手が考える「競争」とは?
「勝負の世界なので、自分が上に行ければいいという考えも大事だと思います。でも、それよりも全員で高め合う、引っ張り合うということを僕は今までの人生で経験してきましたし、実際僕自身も引っ張ってもらうこともあったので、お互いに高め合うことが僕の考える『競争』です」

Q.組織として結果を出すために、個々の成長が必要ですからね。
「競争が激しいと出場機会に恵まれない選手も出てくる。でも、そういう状況でも手を抜かずに取り組んでいる選手がいると、チーム全体の士気が高まるし、そういう選手は試合に出た時、結果を残すことができるんです。監督やコーチもそういうところを見ていると思っています。サッカーの神様もそういうところを見てくれている。僕は運も信じているので、日頃の行いが幸運を呼び込むと思っています。だから、どんな状況でも腐らずに競争し続けることが大事だと思います」

Q.やっぱり、人は人のことを見ていますよね。
「予想以上に誰かしらがどこかで見ているということをこれまでの人生を通して感じています。表に出ていない人がしっかり取り組んでいる組織は強いと思うんです。全員が一体となっているチームこそ強いチーム。だからこそ、『Vision』をそういう言葉にしました」

【Value】

Q.次は「Value」について聞かせてください。まず「常に何のために練習しているか考える」とあります。
「これだけいい環境があって、いい選手がいて、いい指導者の方がいるのに、普通に練習して1日を過ごしていたら、もったいない。1回の練習で何か一つでも気づきを得たり、周りの選手の技術を吸収するといったことは意識次第でできると思うんです。なので、周りの選手のプレーを見ることやいろんなことにアンテナを張りながら練習するようにしています」

Q.それは次の「練習から100%を出し切る」ということにもつながっていますね。
「まず、その姿勢がないと、意味がないと思うんですよ。最初は100%で取り組まないとついていくことができなかった。とにかく100%を出さないと置いていかれてしまうということから意識するようになりました。徐々に余裕が出てきて、ある程度試合に出るようになっても、そのスタンスを変えてはいけない。100%を出し切ることは当たり前のようですが、意外と難しいことなので、これからも意識していきたいと思います」

Q.「サッカー以外でも人としての価値を高める」。今までの話を聞いても、ピッチ外の言動もかなり意識していることが分かります。
「やっぱり、そういうところを周りの人もサッカーの神様も見ていると思うんですよ。すべてはピッチの上につながっていると思うし、つなげられると思っているので、私生活から意識して過ごしています。今まで一緒にプレーした選手でも、勝負を決められるような選手はそういう人でした。自分もそういう選手になりたいと思っています」

Q.「発信する」とは?
「サッカー選手は影響力があると思うので、最近はSNS等発信できる環境も整っているので、意識してやっていきたいと思っています。自分を応援してくれる方に対してはもちろん、今までお世話になった方にも自分のプレーや情報を伝えたいという気持ちがあります」

Q.「他選手と常に高め合う姿勢」は先ほど話をした「競争」のことですね。
「高め合うことでいい競争が生まれる。蹴落とすという感じではなく、お互いに引っ張り合うような競争をしたいので、この言葉を選びました」

Q.「置かれた環境でやるべきこと、できることを冷静に判断しやりきる」というのは?
「名古屋でも水戸でもいい環境でサッカーをさせてもらっています。でも、それは当たり前のことではありません。この環境でサッカーをさせてもらっていることに対して、感謝の思いを持つことを忘れないようにしないといけない。特に若い選手にそういったことを伝えていきたいと思っています」

Q.そして、「俯瞰してものごとをみる」とありますが。
「僕は冷静に、一歩下がって物事を見るタイプみたいなんですよ。自分ではあまり思っていなかったのですが、面談を通してキャリアコーチはそう感じたようです」

Q.自分のことを俯瞰して見ているのか、それとも組織を俯瞰して見ているのか。
「全部だと思います。自分の置かれた環境を理解して、自分でやれることをやっていると。冷静に一歩下がって全体を見ることができるとキャリアコーチの方は感じたみたいです。そう言われて、自分も納得しました」

【スローガン】

Q.スローガンでは「冷静沈着にやりきる」と書いてあります。今まで話した通りの深堀選手らしい言葉ですね。
「もちろん、感情を出すこともありますし、言うことは言います。でも、すぐに落ち着くことができるんです。感情の起伏が小さいタイプ。熱くなったら力が入ってしまい、プレーが荒くなってしまう。今まで『冷静にプレーした方がいい』というアドバイスを受けたこともあって、落ち着いてプレーすることを心がけるようになりました。落ち着いてプレーした方が精度は上がるし、自分のよさを出しやすい。熱くなった時には自分の中で『冷静に、冷静に』と言い聞かせてプレーするようにしています。なので、こういう言葉になりました」

Q.元々の性格も多少あると思いますが、自分のベストパフォーマンスを出すために冷静にプレーすることを意識しているのですね。
「そうですね。冷静にプレーした方が自分には合っていると思っています。これからも冷静にプレーし続けようと思います。ゴール前でも冷静にプレーできていれば、GKの動きを見ることができるし、DFの目線も分かる。冷静じゃないと駆け引きで勝てないと思うので、そういう部分を発揮してゴールを決めていきたいと思っています」

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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