記録と数字で楽しむドーハ世界選手権】男子マラソン/二岡康平、川内優輝、山岸宏貴
【JAAF】
9月27日(金)から10月6日(日)の10日間、カタールの首都ドーハで「第17回世界選手権」が開催される。ここでは、日本人が出場する種目を中心に、「記録と数字で楽しむドーハ世界選手権」を紹介する。
なお、これまでにこの日本陸連HPで各種の競技会の記事で筆者が紹介したことがある同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに修正した。
なお、これまでにこの日本陸連HPで各種の競技会の記事で筆者が紹介したことがある同じ内容のデータも含むが、可能な限りで最新のものに修正した。
★男子マラソン★
「MGC」ではなく、世界選手権を選んだ二岡康平(中電工)、川内優輝(あいおいニッセイ同和損害保険)、山岸宏貴(GMOアスリーツ)が出場。
これまでの日本人選手の入賞者は下記の通り。
1991年 1位 谷口 浩美(旭化成)
〃 5位 篠原 太(神戸製鋼)
1993年 5位 打越 忠夫(雪 印)
1999年 3位 佐藤 信之(旭化成)
〃 6位 藤田 敦史(富士通)
〃 7位 清水 康次(NTT西日本)
2001年 5位 油谷 繁(中国電力)
〃 8位 森下 由輝(旭化成)
2003年 5位 油谷 繁(中国電力)
2005年 3位 尾方 剛(中国電力)
〃 4位 高岡 寿成(カネボウ)
2007年 5位 尾方 剛(中国電力)
〃 6位 大崎 悟史(NTT西日本)
〃 7位 諏訪 利成(日清食品)
2009年 6位 佐藤 敦之(中国電力)
2011年 5位 堀端 宏行(旭化成)=4位の選手がのちに失格で繰り上がり
2013年 5位 中本健太郎(安川電機)
1983年、87年、95年、97年、2015年、17年の6大会は入賞には届かなかったが、16大会のうち10大会で入賞を果たし、金1個と銅2個を獲得し、のべ17人が入賞している。
世界選手権での日本人最高記録は、2003年5位入賞の油谷さんの「2時間09分26秒」だ。
参考までに「五輪」での入賞者(全ての大会。1980年までは6位までが入賞)は以下の通り。
1928年 4位 山田 兼松(坂出青年)
〃 6位 津田晴一郎(慶 大)
1932年 5位 津田晴一郎(慶大OB)
〃 6位 金 恩培(養正高普)
1936年 1位 孫 基禎(養正高普)
〃 3位 南 昇龍(明 大)
1956年 5位 川島 義明(日 大)
1964年 3位 円谷 幸吉(自衛隊)
1968年 2位 君原 健二(八幡製鉄)
1972年 5位 君原 健二(新日鉄)
1984年 4位 宗 猛(旭化成)
1988年 4位 中山 竹通(ダイエー)
1992年 2位 森下 広一(旭化成)
〃 4位 中山 竹通(ダイエー)
〃 8位 谷口 浩美(旭化成)
2004年 5位 油谷 繁(中国電力)
〃 6位 諏訪 利成(日清食品)
2012年 6位 中本健太郎(安川電機)
1984年から92年は銀メダルを含め3大会連続で入賞したが、21世紀になってからは苦戦を強いられている。
話を世界選手権に戻す。
各大会の1位に8点、2位7点 〜 8位1点の点数を与えて国別の得点を集計すると次のようになる。
順)点 国名 1 2 3 4 5 6 7 8 = 入賞数
1)85 KEN 5 3 ・ 1 3 ・ 2 3 = 17 ケニア
2)74 ETH 1 4 3 3 ・ ・ 2 1 = 14 エチオピア
3)66 JPN 1 ・ 2 1 6 4 2 1 = 17 日 本
4)58 ITA ・ 1 3 2 1 3 4 2 = 16 イタリア
5)51 ESP 3 2 ・ ・ 1 2 ・ 3 = 11 スペイン
6)24 TAN ・ 1 1 ・ 2 1 ・ ・ = 5 タンザニア
7)26 MAR 2 ・ ・ ・ ・ 1 1 ・ = 4 モロッコ
8)21 UGA 1 ・ 1 ・ ・ 2 ・ 1 = 5 ウガンダ
9)20 AUS 1 ・ 1 1 ・ ・ ・ 1 = 4 オーストラリア
10)17 GBR ・ ・ ・ 2 1 ・ 1 1 = 5 イギリス
11)15 ERI 1 ・ ・ 1 ・ ・ 1 ・ = 2 エリトリア
12)15 BRA ・ ・ 1 ・ 1 1 1 ・ = 4 ブラジル
13)14 USA 1 ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 2 アメリカ
14)14 DJI ・ 2 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 2 ジブチ
15)10 POR ・ ・ ・ 2 ・ ・ ・ ・ = 2 ポルトガル
16)9 MEX ・ 1 ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 2 メキシコ
17)9 GER ・ ・ 1 ・ ・ 1 ・ ・ = 2 ドイツ
18)7 NAM ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 1 ナミビア
18)7 QAT ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 1 カタール
20)6 NED ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 1 オランダ
20)6 SUI ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 1 スイス
22)5 KOR ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 韓 国
22)5 POL ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 ポーランド
22)5 SWE ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 スウェーデン
25)4 BRN ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ = 1 バーレーン
26)3 BEL ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ = 1 ベルギー
27)2 RSA ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 南アフリカ
28)1 ALG ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 アルジェリア
28)1 RUS ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 ロシア
28)1 URS ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 ソ 連
日本は、ケニア、エチオピアに次いで3位だが、2009年・ベルリン大会終了時点ではトップだった。
以下に2017年大会終了時点の得点の上位5国について、累計得点と順位の推移をまとめてみた。
年 JPN KEN ETH ITA ESP 他の上位国
1983年 未入賞 未入賞 2)7 7)2 未入賞 1)8 AUS
1987年 未入賞 3)8 4)7 2)10 未入賞 1)13 AUS
1991年 4)12 5)8 6)7 2)14 未入賞 1)14 DJI
1993年 1)16 6)10 7)7 4)14 未入賞 2)14 USA
1995年 1)16 8)10 11)7 6)14 2)15 3)14 USA
1997年 4)16 9)10 12)7 2)21 1)33 3)20 AUS
1999年 3)27 9)10 12)7 2)32 1)42 4)20 AUS
2001年 3)32 10)17 4)22 2)38 1)42 5)20 AUS
2003年 3)36 6)18 4)22 2)47 1)49 5)20 AUS
2005年 2)47 5)20 4)22 3)47 1)50 6)20 AUS
2007年 1)56 4)29 5)22 3)47 2)50 6)20 AUS
2009年 1)59 3)48 5)33 4)47 2)51 6)21 MAR
2011年 2)62 1)72 5)39 4)49 3)51 6)21 MAR
2013年 2)66 1)72 3)58 5)49 4)51 6)21 MAR
2015年 3)66 1)72 2)67 4)55 5)51 6)21 MAR
2017年 3)66 1)85 2)74 4)58 5)51 6)24 TAN
現時点の上位5カ国の5大会ごとと2017年の得点は、
大会回数(西 暦 年)JPN KEN ETH ITA ESP
1〜5回(1983〜1995) 16 10 7 14 15
6〜10回(1997〜2005) 31 10 15 33 35
11〜15回(2007〜2015) 19 52 45 8 1
16回 (2017) 0 13 7 3 0
-------------------------------
合計得点 66 85 74 58 51
以上の通りで、2005年の第10回大会あたりまでは日本、スペイン、イタリアが「トップ3」だった。が、この10年あまりでケニアとエチオピアが一気に点数を伸ばしてきた。
このところ、ケニア、エチオピアを中心とする東アフリカ勢が、世界の上位記録を独占し、2018年の世界100傑(100位は、2時間08分46秒)では、ケニアが51人、エチオピアが26人、日本が8人、バーレーン3人(モロッコからの国籍変更が1人、ケニアからの国籍変更が2人)、モロッコとエリトリアが2人ずつ、ニュージーランド・南アフリカ・スペイン・イギリス(生まれはソマリア)・アメリカ・トルコ(ケニアから国籍変更)・タンザニア・ウガンダが1人ずつ。国籍変更を含めアフリカ勢が100人中89人。その中での日本人8人は孤軍奮闘といえるだろう。
秋以降のレースが残っている2019年(9月26日時点で100位2時間09分06秒)も、ケニア37人、エチオピア36人、モロッコ4人、ウガンダ3人、日本・トルコ・イギリス・バーレーン・ベルギーの5か国が2人ずつ、アメリカ・スイス・ミナミアフリカ・イタリア・スペイン・ニュージーランド・オランダ・タンザニアのカ国が1人ずつ。こちらもアフリカ出身者で9割を占める。
今回の世界選手権のケニアやエチオピアの代表は、「2時間2〜6分台」の自己記録を持っている。対する日本のトリオの自己ベストは「2時間8〜10分台」で「見劣り」することは否めない。
ただ、タイムでは世界をリードするケニア勢だが、2013、15年の2大会は誰も入賞できなかった。
「フラットなコース」「涼しい気温」のいい条件の中でペースメーカーが30km付近までハイペースで先導する「高速レース」では好タイムを量産しているが、真夏でペースメーカーのいない「勝負優先」の世界選手権や五輪では、なかなか持ちタイム通りにはいかないことも多いようだ。
大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が初マラソンで3位となった2017年4月のボストンも、ペースメーカーがつかず気温も25℃を超える条件のレースだった。そんな中で2時間4〜6分台のベストを持つケニア&エチオピア勢を相手に2時間10分を切ったことがないアメリカ人選手(1人のみ2時間8分台がベスト)が、トップ10以内に6人も食い込んだ。ボストンでの大迫やアメリカ選手が高温の中で、アフリカ勢を相手にしっかりと結果を出したこと。あるいは、ケニア勢が2大会連続で入賞もできなかったことなどからしても、日本勢にも「つけいるスキ」はありそうだ。
以下の「表」に1983年以降の「世界選手権」と「五輪」での「気温・湿度」と「優勝・3位・8位の記録」「完走率」を示した。
・気象状況は、原則として、手許にリザルト用紙が残っているものはそのデータ。
・リザルト用紙がないものは、国際陸連発行の資料(Statistics Handbook)に記載のデータ。
・それにもないものは、両陸上専門月刊誌に掲載された記事のデータ。
日本の競技会では、リザルト用紙に「スタート時」「5km地点」「10km地点」などの「天候」「気温」「湿度」「風向」「風速」が細かく記載されていることが多いが、海外では「天候」の記載もあまりなく、「スタート時と終了時」あるいは「スタート時」の「気温と湿度」のみだったりがほとんどだ。また「終了時」もトップ選手のフィニッシュ時点の場合であったり最終走者のフィニッシュ時点の場合であったりする。
「1位・3位・8位」の記録については、数年後に「ドーピング失格」などで繰り上がった場合の修正をきちんできていない場合があるかもしれないことをお断りしておく。
「完走率(完走者/出場者)」は、のちに「ドーピング違反」などで「失格」となった者のうち、フィニッシュラインを越えたことが確かな者については「完走」として扱った。
【表:1983年以降の世界選手権と五輪の気温と湿度、1・3・8位の記録とトップの前後半タイム、完走率】
・「前半」は、その時点でトップの選手の通過タイムで優勝者のものとは限らない。
年 スタート時→ 終了時 優勝記録(前 半+後 半) 3位記録 8位記録 完走率(完走者/出場者)
1983 15℃・35%→?℃・?% 2.10.03.(??.??.+??.??.) 2.10.37. 2.11.15. 75.3%(63/81)
1984五 27℃・?%→?℃・?% 2.09.21.(??.??.+??.??.) 2.09.58. 2.11.39. 72.2%(78/108)
1987 21℃・83%→22℃・74% 2.11.48.(65.37.+66.11.) 2.12.40. 2.14.41. 72.3%(47/65)
1988五 25℃・74%→?℃・?% 2.10.32.(64.49.+65.43.) 2.10.59. 2.13.07. 80.3%(98/122)
1991 26℃・73%→28℃・58% 2.14.57.(66.25.+68.32.) 2.15.36. 2.17.03. 60.0%(36/60)
1992五 25℃・72%→?℃・?% 2.13.23.(67.22.+66.01.) 2.14.00. 2.14.42. 79.1%(87/110)
1993 25℃・63%→25℃・63% 2.13.57.(66.30.+67.27.) 2.15.12. 2.18.52. 63.2%(43/68)
1995 26℃・43%→?℃・?% 2.11.41.(66.54.+64.47.) 2.12.49. 2.16.13. 68.8%(53/77)
1996五 23℃・92%→?℃・?% 2.12.36.(67.36.+65.00.) 2.12.36. 2.14.55. 89.5%(111/124)
1997 29℃・48%→?℃・?% 2.13.16.(67.08.+66.08.) 2.14.16. 2.17.44. 64.8%(70/108)
1999 29℃・43%→28℃・?% 2.13.36.(67.24.+66.12.) 2.14.07. 2.16.17. 81.3%(65/80)
2000五 21℃・18%→?℃・?% 2.10.11.(65.02.+65.09.) 2.11.10. 2.14.04. 81.0% (81/1000)
2001 19℃・58%→28℃・?% 2.12.42.(66.59.+65.43.) 2.13.18. 2.17.05. 76.0%(73/96)
2003 15℃・72%→?℃・?% 2.08.31.(64.45.+63.46.) 2.09.14. 2.10.35. 77.5%(69/89)
2004五 30℃・39%→?℃・?% 2.10.55.(67.23.+63.32.) 2.12.11. 2.14.17. 80.2%(81/101)
2005 17℃・88%→17℃・88% 2.10.10.(64.17.+65.53.) 2.11.16. 2.12.51. 64.2%(61/95)
2007 28℃・81%→33℃・67% 2.15.59.(68.29.+67.30.) 2.17.25. 2.19.21. 67.1%(57/85)
2008五 24℃・52%→30℃・39% 2.06.32.(62.34.+63.58.) 2.10.00. 2.11.11. 80.0%(76/95)
2009 18℃・73%→21℃・49% 2.06.54.(63.03.+63.51.) 2.08.35. 2.14.04. 76.9%(70/91)
2011 26℃・56%→29℃・47% 2.07.38.(65.07.+62.31.) 2.10.32. 2.11.57. 76.1%(51/67)
2012五 23℃・78%→25℃(途中)2.08.01.(63.15.+64.46.) 2.09.37. 2.12.17. 81.0%(85/105)
2013 23℃・38%→23℃・38% 2.09.51.(65.12.+64.39.) 2.10.23. 2.11.43. 72.9%(51/70)
2015 22℃・73%→?℃・?% 2.12.28.(66.52.+65.36.) 2.13.30. 2.14.54. 65.6%(42/64)
2016五 24℃・?%→?℃・?% 2.08.44.(65.55.+62.49.) 2.10.05. 2.11.49. 89.7%(139/155)
2017 18℃・60%→?℃・?% 2.08.27.(65.28.+62.59.) 2.09.51. 2.12.16. 72.4%(71/98)
25大会中完走率80.0%以上は8大会(32.0%)。スタート時か終了時で25℃以上は14大会で完走率80.0%以上は5大会(35.7%)。
なお、前後半のタイムが判明している23大会のうち前半の方が後半よりも速かったのは9大会(39.1%)で、残る14大会(60.9%)は、後半の方が速い「ネガティブ・スプリット」だった。95年以降は18大会中13回(72.2%)が後半にペースアップしている。
前後半の差が最も大きかったのは、2011年で前半よりも後半が2分36秒速かった。この時の20km以降の5kmごとのスプリットは、14分43秒-14分18秒-14分40秒-15分15秒-7分00秒(5km換算15分57秒)だった。
今回は、日中は40℃以上にも達する可能性がある高い気温を避けるため、10月5日23時59分(日本時間6日、朝5時59分)スタートという「真夜中のレース」となった。
9月26日の時点でレース当日10月5日23:59(6日深夜0時)のドーハの天気は、「快晴」で「気温32℃」「湿度69%」「東南の風3m」の予報。直射日光はないものの「体感温度35℃」とのこと。日本の真夏と同じく高温多湿の「むわっ」とした条件のもとでのレースになりそうだ。沿道にはミスト・シャワーも準備されるが、厳しい環境での戦いになることは間違いない。
いずれにしても、日本人トリオを遙かに上回るタイムの選手が世界リストで何十人いようとも、ケニアからは前回優勝者のG・キルイを含めて4人、エチオピアからも3人しか出場してこない。他のアフリカ勢などに競り勝てれば、2013年以来3大会ぶりの入賞も見えてこよう。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:アフロスポーツ
「MGC」ではなく、世界選手権を選んだ二岡康平(中電工)、川内優輝(あいおいニッセイ同和損害保険)、山岸宏貴(GMOアスリーツ)が出場。
これまでの日本人選手の入賞者は下記の通り。
1991年 1位 谷口 浩美(旭化成)
〃 5位 篠原 太(神戸製鋼)
1993年 5位 打越 忠夫(雪 印)
1999年 3位 佐藤 信之(旭化成)
〃 6位 藤田 敦史(富士通)
〃 7位 清水 康次(NTT西日本)
2001年 5位 油谷 繁(中国電力)
〃 8位 森下 由輝(旭化成)
2003年 5位 油谷 繁(中国電力)
2005年 3位 尾方 剛(中国電力)
〃 4位 高岡 寿成(カネボウ)
2007年 5位 尾方 剛(中国電力)
〃 6位 大崎 悟史(NTT西日本)
〃 7位 諏訪 利成(日清食品)
2009年 6位 佐藤 敦之(中国電力)
2011年 5位 堀端 宏行(旭化成)=4位の選手がのちに失格で繰り上がり
2013年 5位 中本健太郎(安川電機)
1983年、87年、95年、97年、2015年、17年の6大会は入賞には届かなかったが、16大会のうち10大会で入賞を果たし、金1個と銅2個を獲得し、のべ17人が入賞している。
世界選手権での日本人最高記録は、2003年5位入賞の油谷さんの「2時間09分26秒」だ。
参考までに「五輪」での入賞者(全ての大会。1980年までは6位までが入賞)は以下の通り。
1928年 4位 山田 兼松(坂出青年)
〃 6位 津田晴一郎(慶 大)
1932年 5位 津田晴一郎(慶大OB)
〃 6位 金 恩培(養正高普)
1936年 1位 孫 基禎(養正高普)
〃 3位 南 昇龍(明 大)
1956年 5位 川島 義明(日 大)
1964年 3位 円谷 幸吉(自衛隊)
1968年 2位 君原 健二(八幡製鉄)
1972年 5位 君原 健二(新日鉄)
1984年 4位 宗 猛(旭化成)
1988年 4位 中山 竹通(ダイエー)
1992年 2位 森下 広一(旭化成)
〃 4位 中山 竹通(ダイエー)
〃 8位 谷口 浩美(旭化成)
2004年 5位 油谷 繁(中国電力)
〃 6位 諏訪 利成(日清食品)
2012年 6位 中本健太郎(安川電機)
1984年から92年は銀メダルを含め3大会連続で入賞したが、21世紀になってからは苦戦を強いられている。
話を世界選手権に戻す。
各大会の1位に8点、2位7点 〜 8位1点の点数を与えて国別の得点を集計すると次のようになる。
順)点 国名 1 2 3 4 5 6 7 8 = 入賞数
1)85 KEN 5 3 ・ 1 3 ・ 2 3 = 17 ケニア
2)74 ETH 1 4 3 3 ・ ・ 2 1 = 14 エチオピア
3)66 JPN 1 ・ 2 1 6 4 2 1 = 17 日 本
4)58 ITA ・ 1 3 2 1 3 4 2 = 16 イタリア
5)51 ESP 3 2 ・ ・ 1 2 ・ 3 = 11 スペイン
6)24 TAN ・ 1 1 ・ 2 1 ・ ・ = 5 タンザニア
7)26 MAR 2 ・ ・ ・ ・ 1 1 ・ = 4 モロッコ
8)21 UGA 1 ・ 1 ・ ・ 2 ・ 1 = 5 ウガンダ
9)20 AUS 1 ・ 1 1 ・ ・ ・ 1 = 4 オーストラリア
10)17 GBR ・ ・ ・ 2 1 ・ 1 1 = 5 イギリス
11)15 ERI 1 ・ ・ 1 ・ ・ 1 ・ = 2 エリトリア
12)15 BRA ・ ・ 1 ・ 1 1 1 ・ = 4 ブラジル
13)14 USA 1 ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 2 アメリカ
14)14 DJI ・ 2 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 2 ジブチ
15)10 POR ・ ・ ・ 2 ・ ・ ・ ・ = 2 ポルトガル
16)9 MEX ・ 1 ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 2 メキシコ
17)9 GER ・ ・ 1 ・ ・ 1 ・ ・ = 2 ドイツ
18)7 NAM ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 1 ナミビア
18)7 QAT ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ = 1 カタール
20)6 NED ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 1 オランダ
20)6 SUI ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ = 1 スイス
22)5 KOR ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 韓 国
22)5 POL ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 ポーランド
22)5 SWE ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ = 1 スウェーデン
25)4 BRN ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ = 1 バーレーン
26)3 BEL ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ ・ = 1 ベルギー
27)2 RSA ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ・ = 1 南アフリカ
28)1 ALG ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 アルジェリア
28)1 RUS ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 ロシア
28)1 URS ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 = 1 ソ 連
日本は、ケニア、エチオピアに次いで3位だが、2009年・ベルリン大会終了時点ではトップだった。
以下に2017年大会終了時点の得点の上位5国について、累計得点と順位の推移をまとめてみた。
年 JPN KEN ETH ITA ESP 他の上位国
1983年 未入賞 未入賞 2)7 7)2 未入賞 1)8 AUS
1987年 未入賞 3)8 4)7 2)10 未入賞 1)13 AUS
1991年 4)12 5)8 6)7 2)14 未入賞 1)14 DJI
1993年 1)16 6)10 7)7 4)14 未入賞 2)14 USA
1995年 1)16 8)10 11)7 6)14 2)15 3)14 USA
1997年 4)16 9)10 12)7 2)21 1)33 3)20 AUS
1999年 3)27 9)10 12)7 2)32 1)42 4)20 AUS
2001年 3)32 10)17 4)22 2)38 1)42 5)20 AUS
2003年 3)36 6)18 4)22 2)47 1)49 5)20 AUS
2005年 2)47 5)20 4)22 3)47 1)50 6)20 AUS
2007年 1)56 4)29 5)22 3)47 2)50 6)20 AUS
2009年 1)59 3)48 5)33 4)47 2)51 6)21 MAR
2011年 2)62 1)72 5)39 4)49 3)51 6)21 MAR
2013年 2)66 1)72 3)58 5)49 4)51 6)21 MAR
2015年 3)66 1)72 2)67 4)55 5)51 6)21 MAR
2017年 3)66 1)85 2)74 4)58 5)51 6)24 TAN
現時点の上位5カ国の5大会ごとと2017年の得点は、
大会回数(西 暦 年)JPN KEN ETH ITA ESP
1〜5回(1983〜1995) 16 10 7 14 15
6〜10回(1997〜2005) 31 10 15 33 35
11〜15回(2007〜2015) 19 52 45 8 1
16回 (2017) 0 13 7 3 0
-------------------------------
合計得点 66 85 74 58 51
以上の通りで、2005年の第10回大会あたりまでは日本、スペイン、イタリアが「トップ3」だった。が、この10年あまりでケニアとエチオピアが一気に点数を伸ばしてきた。
このところ、ケニア、エチオピアを中心とする東アフリカ勢が、世界の上位記録を独占し、2018年の世界100傑(100位は、2時間08分46秒)では、ケニアが51人、エチオピアが26人、日本が8人、バーレーン3人(モロッコからの国籍変更が1人、ケニアからの国籍変更が2人)、モロッコとエリトリアが2人ずつ、ニュージーランド・南アフリカ・スペイン・イギリス(生まれはソマリア)・アメリカ・トルコ(ケニアから国籍変更)・タンザニア・ウガンダが1人ずつ。国籍変更を含めアフリカ勢が100人中89人。その中での日本人8人は孤軍奮闘といえるだろう。
秋以降のレースが残っている2019年(9月26日時点で100位2時間09分06秒)も、ケニア37人、エチオピア36人、モロッコ4人、ウガンダ3人、日本・トルコ・イギリス・バーレーン・ベルギーの5か国が2人ずつ、アメリカ・スイス・ミナミアフリカ・イタリア・スペイン・ニュージーランド・オランダ・タンザニアのカ国が1人ずつ。こちらもアフリカ出身者で9割を占める。
今回の世界選手権のケニアやエチオピアの代表は、「2時間2〜6分台」の自己記録を持っている。対する日本のトリオの自己ベストは「2時間8〜10分台」で「見劣り」することは否めない。
ただ、タイムでは世界をリードするケニア勢だが、2013、15年の2大会は誰も入賞できなかった。
「フラットなコース」「涼しい気温」のいい条件の中でペースメーカーが30km付近までハイペースで先導する「高速レース」では好タイムを量産しているが、真夏でペースメーカーのいない「勝負優先」の世界選手権や五輪では、なかなか持ちタイム通りにはいかないことも多いようだ。
大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が初マラソンで3位となった2017年4月のボストンも、ペースメーカーがつかず気温も25℃を超える条件のレースだった。そんな中で2時間4〜6分台のベストを持つケニア&エチオピア勢を相手に2時間10分を切ったことがないアメリカ人選手(1人のみ2時間8分台がベスト)が、トップ10以内に6人も食い込んだ。ボストンでの大迫やアメリカ選手が高温の中で、アフリカ勢を相手にしっかりと結果を出したこと。あるいは、ケニア勢が2大会連続で入賞もできなかったことなどからしても、日本勢にも「つけいるスキ」はありそうだ。
以下の「表」に1983年以降の「世界選手権」と「五輪」での「気温・湿度」と「優勝・3位・8位の記録」「完走率」を示した。
・気象状況は、原則として、手許にリザルト用紙が残っているものはそのデータ。
・リザルト用紙がないものは、国際陸連発行の資料(Statistics Handbook)に記載のデータ。
・それにもないものは、両陸上専門月刊誌に掲載された記事のデータ。
日本の競技会では、リザルト用紙に「スタート時」「5km地点」「10km地点」などの「天候」「気温」「湿度」「風向」「風速」が細かく記載されていることが多いが、海外では「天候」の記載もあまりなく、「スタート時と終了時」あるいは「スタート時」の「気温と湿度」のみだったりがほとんどだ。また「終了時」もトップ選手のフィニッシュ時点の場合であったり最終走者のフィニッシュ時点の場合であったりする。
「1位・3位・8位」の記録については、数年後に「ドーピング失格」などで繰り上がった場合の修正をきちんできていない場合があるかもしれないことをお断りしておく。
「完走率(完走者/出場者)」は、のちに「ドーピング違反」などで「失格」となった者のうち、フィニッシュラインを越えたことが確かな者については「完走」として扱った。
【表:1983年以降の世界選手権と五輪の気温と湿度、1・3・8位の記録とトップの前後半タイム、完走率】
・「前半」は、その時点でトップの選手の通過タイムで優勝者のものとは限らない。
年 スタート時→ 終了時 優勝記録(前 半+後 半) 3位記録 8位記録 完走率(完走者/出場者)
1983 15℃・35%→?℃・?% 2.10.03.(??.??.+??.??.) 2.10.37. 2.11.15. 75.3%(63/81)
1984五 27℃・?%→?℃・?% 2.09.21.(??.??.+??.??.) 2.09.58. 2.11.39. 72.2%(78/108)
1987 21℃・83%→22℃・74% 2.11.48.(65.37.+66.11.) 2.12.40. 2.14.41. 72.3%(47/65)
1988五 25℃・74%→?℃・?% 2.10.32.(64.49.+65.43.) 2.10.59. 2.13.07. 80.3%(98/122)
1991 26℃・73%→28℃・58% 2.14.57.(66.25.+68.32.) 2.15.36. 2.17.03. 60.0%(36/60)
1992五 25℃・72%→?℃・?% 2.13.23.(67.22.+66.01.) 2.14.00. 2.14.42. 79.1%(87/110)
1993 25℃・63%→25℃・63% 2.13.57.(66.30.+67.27.) 2.15.12. 2.18.52. 63.2%(43/68)
1995 26℃・43%→?℃・?% 2.11.41.(66.54.+64.47.) 2.12.49. 2.16.13. 68.8%(53/77)
1996五 23℃・92%→?℃・?% 2.12.36.(67.36.+65.00.) 2.12.36. 2.14.55. 89.5%(111/124)
1997 29℃・48%→?℃・?% 2.13.16.(67.08.+66.08.) 2.14.16. 2.17.44. 64.8%(70/108)
1999 29℃・43%→28℃・?% 2.13.36.(67.24.+66.12.) 2.14.07. 2.16.17. 81.3%(65/80)
2000五 21℃・18%→?℃・?% 2.10.11.(65.02.+65.09.) 2.11.10. 2.14.04. 81.0% (81/1000)
2001 19℃・58%→28℃・?% 2.12.42.(66.59.+65.43.) 2.13.18. 2.17.05. 76.0%(73/96)
2003 15℃・72%→?℃・?% 2.08.31.(64.45.+63.46.) 2.09.14. 2.10.35. 77.5%(69/89)
2004五 30℃・39%→?℃・?% 2.10.55.(67.23.+63.32.) 2.12.11. 2.14.17. 80.2%(81/101)
2005 17℃・88%→17℃・88% 2.10.10.(64.17.+65.53.) 2.11.16. 2.12.51. 64.2%(61/95)
2007 28℃・81%→33℃・67% 2.15.59.(68.29.+67.30.) 2.17.25. 2.19.21. 67.1%(57/85)
2008五 24℃・52%→30℃・39% 2.06.32.(62.34.+63.58.) 2.10.00. 2.11.11. 80.0%(76/95)
2009 18℃・73%→21℃・49% 2.06.54.(63.03.+63.51.) 2.08.35. 2.14.04. 76.9%(70/91)
2011 26℃・56%→29℃・47% 2.07.38.(65.07.+62.31.) 2.10.32. 2.11.57. 76.1%(51/67)
2012五 23℃・78%→25℃(途中)2.08.01.(63.15.+64.46.) 2.09.37. 2.12.17. 81.0%(85/105)
2013 23℃・38%→23℃・38% 2.09.51.(65.12.+64.39.) 2.10.23. 2.11.43. 72.9%(51/70)
2015 22℃・73%→?℃・?% 2.12.28.(66.52.+65.36.) 2.13.30. 2.14.54. 65.6%(42/64)
2016五 24℃・?%→?℃・?% 2.08.44.(65.55.+62.49.) 2.10.05. 2.11.49. 89.7%(139/155)
2017 18℃・60%→?℃・?% 2.08.27.(65.28.+62.59.) 2.09.51. 2.12.16. 72.4%(71/98)
25大会中完走率80.0%以上は8大会(32.0%)。スタート時か終了時で25℃以上は14大会で完走率80.0%以上は5大会(35.7%)。
なお、前後半のタイムが判明している23大会のうち前半の方が後半よりも速かったのは9大会(39.1%)で、残る14大会(60.9%)は、後半の方が速い「ネガティブ・スプリット」だった。95年以降は18大会中13回(72.2%)が後半にペースアップしている。
前後半の差が最も大きかったのは、2011年で前半よりも後半が2分36秒速かった。この時の20km以降の5kmごとのスプリットは、14分43秒-14分18秒-14分40秒-15分15秒-7分00秒(5km換算15分57秒)だった。
今回は、日中は40℃以上にも達する可能性がある高い気温を避けるため、10月5日23時59分(日本時間6日、朝5時59分)スタートという「真夜中のレース」となった。
9月26日の時点でレース当日10月5日23:59(6日深夜0時)のドーハの天気は、「快晴」で「気温32℃」「湿度69%」「東南の風3m」の予報。直射日光はないものの「体感温度35℃」とのこと。日本の真夏と同じく高温多湿の「むわっ」とした条件のもとでのレースになりそうだ。沿道にはミスト・シャワーも準備されるが、厳しい環境での戦いになることは間違いない。
いずれにしても、日本人トリオを遙かに上回るタイムの選手が世界リストで何十人いようとも、ケニアからは前回優勝者のG・キルイを含めて4人、エチオピアからも3人しか出場してこない。他のアフリカ勢などに競り勝てれば、2013年以来3大会ぶりの入賞も見えてこよう。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
写真提供:アフロスポーツ
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