WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ 井上尚弥vs.マロニー

11/1 10:30

井上尚弥、7RにKO勝ち

総括

7Rに右カウンターでKO勝利【gettyimages】

 ボクシングWBA&IBFバンタム級王者の井上尚弥が10月31日(日本時間11月1日)、アメリカ・ネバダ州のラスベガスでジェイソン・マロニー(オーストラリア)を相手に両王座の防衛戦に臨んだ。

 マロニーはWBA2位、IBF4位、WBO1位にランクされ、22戦21勝(18KO)1敗という戦績を持つ選手。試合は無観客での開催となり、通常とは異なる雰囲気となるが、井上は序盤から前に出てプレッシャーを掛けていく。

 ガードの固いマロニーに対し、井上はアッパー、ボディとパンチを散らしてこれを開かんとするが、5Rからは逆に手を出させる作戦か、リング中央でマロニーを待つ。そしてマロニーがジャブを連打してくるクセを見抜いていたと試合後話した井上は、1発目と2発目の間に左フックをカウンターしてダウンを奪取(6R)。

 続く7Rも井上を遠ざけんとしたマロニーだが、ジャブに続き右ストレートを放とうとしたところに井上は一瞬速く右ストレートをカウンター。これでマロニーは後方に力なく倒れ、井上がラスベガスでの初戦をKO勝利で飾った。

 快勝の井上はラスベガス初戦でやや緊張があったことを語ったが、ダウンを奪った左フックと右ストレートはいずれもマロニー対策で用意してきたものであることを明かし、今後はWBCとWBO王座も獲得し、四団体王座統一を果たしたいとした。(文:長谷川亮)

ラウンド詳細

  • 試合前

    無観客の中、先に入場するのはマロニー。右、左と細かくパンチを出しながら、軽やかにステップを踏みながらリングイン。コスチュームは黒。

    続いて井上が入場。気合の入った表情を見せながら、ゆっくりと歩きながらリングイン。右手を挙げてアピールする。

  • 1R

    まず井上が左フックで先制。マロニーも右を伸ばして対抗。マロニーはさらに鋭いステップで詰めていくが、井上もアッパーを繰り出し、中には入らせない。

    それでもマロニーは距離を詰めてプレッシャーをかけるが、井上はパンチがよく見えているか、空を切らせる。井上は左のジャブを起点に組み立て、さらにボディー、右とコンビネーションで攻めていく。

    依然、距離を詰めていくのはマロニーだが、井上はこれに左ジャブを合わせ、マロニーにペースをつかませない。

  • 2R

    このラウンドもまず左フックで井上が先制していく。さらに左から右のワンツー。今度は井上がプレッシャーをかけていく。左ジャブの相打ちのあと、井上は左ジャブ、左のボディストレート。さらに右の強打を振るう。

    マロニーも井上のプレッシャーに負けじと右の強打を返していくが、井上にはヒットしない。井上のプレッシャーが徐々に強まり、ロープに追い詰められていくマロニー。井上は冷静に左、右をマロニーにヒットさせていく。

    このラウンドは井上がペースを握ったか。

  • 3R

    序盤からジリジリとプレッシャーをかけていく井上。さらに左から右ストレートを伸ばし、懐に入ってきたマロニーに対し右のアッパーを当てていく。

    マロニーは接近戦に活路を見出しているか、距離を詰めて右のフック、ボディー。しかし、井上はこれをしっかりガードし、左のフック、アッパーを返していく。さらに距離を詰めて強烈な右フック。下がるマロニーを追いかけ、ボディーも的確に打ち込んでいく。

    このラウンドも井上ペースで進められた。

  • 4R

    プレッシャーをかける井上、下がるマロニーの展開。井上は右、左のアッパー、ガードの間を突きさすようなジャブを繰り出していく。さらに左のボディー強打が効いたか、マロニーの動きが鈍る。

    マロニーは距離を詰めて左フックを返すが、井上もすぐさまフックで反撃。マロニーはなんとか巻き返しを図って接近戦を挑みフック、ボディーの連打。手数を増やしていくものの、井上の反撃も早く、相手に攻勢の場面を作らせない。

    残り10秒から井上は左、右のコンビネーションを叩き込んでいく。

  • 5R

    このラウンドはマロニーが積極的に前に出て距離を詰める。さらにマロニーの右フックが井上にヒット。井上はやや後退していくが、左から右のワンツーを返していく。

    マロニーのペースで進んだかと思われた中盤、井上の右の強打がヒット。しかし、マロニーはすぐさまクリンチで絡み、決定的な場面を逃れる。

  • 6R

    再びプレッシャーをかけていく井上。マロニーのジャブ連打に合わせ、井上がカウンターで繰り出した左フックがクリーンヒットし、マロニーは尻餅をついてダウン。

    立ち上がったマロニーに対し攻勢をかける井上。マロニーはクリンチで逃れようとするが、井上はこれを振りほどき、ロープに追い詰め、フック、アッパー。

    距離をあけながら足を使って左右に動くマロニーに対し、井上はガードを下げながら冷静に相手を見て左ジャブ、ボディーを的確に打ち込んでいく。だが、マロニーはガードを固くして守りに入ったため、追撃のダウンを奪うには至らなかった

  • 7R

    井上は序盤から左ジャブを起点に、プレッシャーをかけていく。負けじとマロニーも懐に入ろうとするが、これにアッパーをヒット。さらに、井上は左ジャブの連打で追い込んでいく。しかし、マロニーもガードを固めつつ、一発、二発とパンチを返してリズムを取り戻していく。

    だが、井上はマロニーが左右のワンツーで前に出たところを狙いすましたかのように、カウンターで右ストレートの強打。この一撃でマロニーは膝から崩れ落ちてダウン。立ち上がることができず、井上が王座を防衛するとともに、聖地ラスベガス初戦を見事なKO勝利で飾った。

  • 海外メディアのインタビュー

    井上
    「フィニッシュのパンチはすごく納得のいく形で終わりました。マロニー選手はすごくガードも固くてテクニックのある選手で、(ダウンを獲った)2つのパンチは日本で練習してきたパンチなので出せて安心しています。

    (ドネア戦より強くなった?)場面場面での判断力はドネア戦を通して学んだので、その時より良くなっていると思います。今後の計画としてはWBC(王者)の(ノルディ・)ウバーリ、WBO(王者)の(ジョンリエル・)カシメロをターゲットとして考えてるので、タイミングの合った方とやりたいと思います」

  • 日本メディアのインタビュー

    井上
    「うまく調整も行ってリングに上がったんですけど、ラスベガスということもあって少し緊張しました。左も右もマロニー対策で練習してきて、スムーズに出せました。

    マロニーはテクニックもあってフルラウンド足を動かす選手なので、前半攻めに行ったんですけど、足も上体も動かすので、なかなか当てられないなと思ってカウンター狙いにしました。左ジャブもダブルで突っ込んでくるクセも勉強していたので、そこもハマりました。

    無観客はリングに上がっちゃえばそんなに気にならなかったので大丈夫でした。1年ぶりで不安もあったんですけど、前半が終わって大丈夫だなと思いました。

    ラスベガス第1戦を無事にクリアできたので、WBCかWBOをターゲットにして4団体統一を目指して頑張っていきたいと思います。

    (7Rへ行くとき)足に違和感があったので、ドネア戦同様そこも課題にしていかないといけいないと思います。右目は100%完治していますので大丈夫です」

見どころ

 昨年11月、階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級決勝でのノニト・ドネア戦以来の試合となる井上尚弥。

 優勝と引き換えに眼窩底骨折、右目上裂傷と代償は大きかったが強さを証明し、パウンド・フォー・パウンドランキングで上位、あるいはトップに推す声もある中、1位の常連だったワシル・ロマチェンコが先日敗れたこともあり、さらに井上への注目は高まっている。

 今回は井上が持つWBAとIBFのバンタム級王座を懸けたタイトルマッチとなり、オーストラリアのジェイソン・マロニーを迎え撃つ。マロニーはWBA2位、IBF4位、WBO1位にランクされ、22戦21勝(18KO)1敗の戦績を持つ。WBSSにも出場したものの初戦でエマヌエル・ロドリゲスに判定負け。このロドリゲスと準決勝で対戦したのが井上であり、幻の一戦が今回実現することとなる。

 負傷あけ、1年ぶりの試合となる井上に対し、マロニーは6月に試合を行い7RTKO勝ち。だが不安要素を挙げるとするならこの試合間隔ぐらいで、井上は14年末の試合で右拳を脱臼し長期欠場となったが15年末の試合で復活、圧勝した過去もある。

 世界的注目を得て臨むラスベガスの大舞台で“モンスター”がさらなる伝説の一歩を刻むのか。(文:長谷川亮)

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