2023年夏版 高校生「最強スラッガーランキング」
記事
現役高校生の最強投手ランキングに続き、アマ球界に精通する西尾典文氏に作成してもらったのが、「最強スラッガーランキング」だ。全国でトップ10に入る、希少な長距離打者たちの顔ぶれは?
※ランキング上位と解説はスポーツナビアプリでご覧いただけます
ランキング
順位 |
選手名 |
守備位置/投打 |
寸評 |
---|---|---|---|
1 | 佐々木麟太郎(花巻東/3年) | 一塁手/右投左打 | ホームランを打つことに関しては歴代最高の素材。軽く振っても広角に場外弾の長打力は規格外だ |
2 | 真鍋慧(広陵/3年) | 一塁手/右投左打 | スケールの大きさでは佐々木と並ぶ大砲。センバツ以降は苦しむが、それでも評価は揺るぎない |
3 | 明瀬諒介(鹿児島城西/3年) | 一塁手/右投右打 | 九州No.1の右のスラッガー。ホームラン打者らしい角度があり、打った瞬間にそれと分かる打球も |
4 | 佐倉侠史郎(九州国際大付/3年) | 一塁手/右投左打 | 佐々木、真鍋とともに1年から注目の強打者。4月のU18代表候補合宿では木製バットにも対応した |
5 | 武田勇哉(常総学院/2年) | 一塁手/右投右打 | 1年秋から不動の中軸として活躍。春の関東大会でも3試合で打率5割、1本塁打と見事な成績を残す |
6 | 仲田侑仁(沖縄尚学/3年) | 一塁手/右投右打 | 恵まれた体格とパワフルな打撃が持ち味だ。センバツでは左翼席中段へ満塁ホームランも放った |
7 | 高野颯太(三刀屋/3年) | 三塁手/右投右打 | 山陰に現れた右の大砲。昨秋の中国大会であわやサイクルヒットの活躍を見せU18代表候補にも選出 |
8 | 片井海斗(二松学舎大付/2年) | 一塁手/右投右打 | 昨年夏の甲子園で1年生ながら一発を放った強打者。巨漢だがスイングに柔らかさがあるのが特長だ |
9 | 松本大輝(智弁学園/3年) | 外野手/右投左打 | 強力打線の中でも不動の中軸を担う。春の近畿大会では3試合で1本塁打を含む長打8本と大暴れした |
10 | 武田陸玖(山形中央/3年) | 投手兼外野手/左投左打 | 打者としても全国屈指の実力者。全身を使ったフルスイングは迫力十分で、左中間にも放り込める |
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解説
長打力が持ち味の「スラッガー」に限定したランキングは、10位までの選出にとどめた。それだけ強打者タイプの選手は希少価値が高いということだが、とはいえ例年に比べれば、人材はある程度揃っている印象だ。
なかでも圧倒的な存在が、佐々木麟太郎(花巻東/3年/一塁手/右投左打)だろう。入学直後からホームランを量産し、1年秋に出場した明治神宮大会でも3試合で2本塁打、9打点と大活躍。2年春に出場したセンバツでは初戦で市立和歌山の米田天翼(現・東海大)の前に4打数ノーヒット、2三振と完璧に抑え込まれたが、その後も順調にスケールアップを果たしている。
圧巻だったのは6月3日、4日に愛知で行われた招待試合だ。東邦など昨年秋の愛知大会でベスト4に進出した強豪校を相手に4試合で4本塁打、しかもそのすべてが場外弾という規格外のパワーを見せつけたのだ。打球方向もライト2本、センター1本、レフト1本と、見事に打ち分けている。速いボールへの対応が課題と言われていたが、ドラフト候補にも挙がる至学館・伊藤幹太(3年)の140キロを超えるストレートをライト前に鋭く弾き返すなど、進歩の跡を見せている。
まだタイミングをとる際のバットの動きは大きいものの、構えた姿勢は上手く力が抜けており、パワーだけでなくスイングに柔らかさがある点も長所だろう。ホームランを打つということに関しては、日本の高校野球史上でもナンバーワンと言える存在であることは間違いない。最後の夏はまともに勝負してもらえない場面も多くなりそうだが、警戒されるなかでも特大のアーチを描けるか。
その佐々木に続くスラッガーが、真鍋慧(広陵/3年/一塁手/右投左打)と明瀬諒介(鹿児島城西/3年/一塁手/右投右打)だ。
真鍋は1年秋の明治神宮大会でホームランを放って注目され、昨年秋の同大会でも3試合で2本塁打の活躍で、チームの2年連続準優勝に貢献した。これまで2度出場したセンバツでも、ホームランこそないものの通算6試合で10安打を放ち、5割近い打率を残している。中井哲之監督が命名したニックネームは“広陵のボンズ”だが、本家のバリー・ボンズと比べると構えは大きく、小さい動きで強く振れるというのが特長だ。
内角の速いボールへの対応にやや課題が残るとはいえ、それは大型打者の宿命と呼べるもので、大きな欠点には見えない。むしろ外のボールをレフト後方へ運ぶなど、広角に打てる長所のほうが目立っている。チームは全国制覇も狙える戦力を有しているだけに、最後の夏こそ甲子園での一発に期待したい。
一方の明瀬も、甲子園出場こそないが、下級生の頃から注目を集める右のスラッガーだ。1年秋、3年春に出場した九州大会はいずれも初戦で敗れたものの、明瀬自身はどちらの試合でもホームランを放っている。佐々木と同様にタイミングをとる時のバットの動きが少し大きいが、リストワークが巧みで、軽く振っているようでもヘッドが走り、打球の角度をつけるのも上手い。
近年の野球界で右のスラッガータイプが不足していることも、明瀬にとっては追い風と言える。現時点での全国的な知名度は佐々木、真鍋に劣るとはいえ、夏の活躍次第では十分に肩を並べる存在となり得るだろう。
最強投手ランキングでトップ20に入った下級生は、広陵の高尾響(2年)だけだったが、最強スラッガーランキングのトップ10には、武田勇哉(常総学院/2年/一塁手/右投右打)、片井海斗(二松学舎大付/2年/一塁手/右投右打)の2人が名を連ねた。この時点で上位に名前が挙がるのだから、素材の素晴らしさは言うまでもない。
武田は今春の関東大会で、片井も昨夏の甲子園でホームランを放つなど、レベルの高い投手が相手でもしっかりと結果を出しているのは頼もしいかぎりだ。今後はさらにマークが厳しくなることが予想されるが、そのなかでどんなバッティングを見せてくれるのか、注目したい。
3月のワールドベースボールクラシック(WBC)でも、ここぞという場面での効果的なホームラン、長打が侍ジャパンの優勝を手繰り寄せており、あらためて長打力の重要性を感じさせた。ここに挙げた10人の高校生スラッガーの中から、未来の侍ジャパンで中軸を担うような打者が出てくることを期待している。
【監修・寸評・解説:西尾典文】
(企画・編集/YOJI-GEN)