2023年夏版 高校生「最強投手ランキング」

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 沖縄を皮切りに、いよいよ火蓋が切って落とされた高校野球・夏の地方大会。これから全国各地で甲子園出場をめざした熱い戦いが繰り広げられるが、ここではアマ球界に詳しい西尾典文氏に、現役高校生の「最強投手ランキング」を作成してもらった。いま、実力ナンバーワンのピッチャーは?
※ランキング上位と解説はスポーツナビアプリでご覧いただけます

ランキング

順位 選手名
投打
寸評
1 前田悠伍(大阪桐蔭/3年) 左投左打 世代No.1の実戦派左腕。センバツ以降はマウンドから遠ざかるが、夏の完全復活に期待だ
2 東松快征(享栄/3年) 左投左打 球威なら前田以上との声もある本格派左腕。冬に柔軟性強化に取り組み、制球力も向上した
3 坂井陽翔(滝川二/3年) 右投右打 右投手では近畿No.1と言われる大型投手。打者が「消える」と語るスライダーは一級品だ
4 木村優人(霞ケ浦/3年) 右投左打 春に成長した関東屈指の右腕。140キロ台の速球とカットボールを駆使した投球は安定感抜群
5 平野大地(専大松戸/3年) 右投右打 高校から投手に転向。ポテンシャルは好投手を多く輩出してきた専大松戸で歴代No.1とも
6 高橋煌稀(仙台育英/3年) 右投右打 強力投手陣の不動のエース。先発、リリーフどちらもこなす安定感は高校球界でも屈指だ
7 武田陸玖(山形中央/3年) 左投左打 二刀流でも脚光を浴びる本格派左腕。春は不完全燃焼に終わっただけに、夏の快投に期待だ
8 武内涼太(星稜/3年) 右投右打 入学時から注目度の高い北信越を代表する右腕。フォームは先輩の奥川恭伸とイメージが重なる
9 日当直喜(東海大菅生/3年) 右投左打 馬力が魅力の大型右腕。意外に器用で、センバツでも変化球を交えた巧みなピッチングを披露
10 天野京介(愛産大工/3年) 右投右打 好投手が揃う今年の愛知で、東松に次ぐ存在。ストレート、変化球ともに精度の高さが光る
11 高尾響(広陵/2年) 右投右打 広陵で1年春から背番号1を背負う右腕。センバツでも快投を見せてチームをベスト4に導いた
12 升田早人(光/3年) 右投右打 センバツでは彦根総合を相手に99球で完封勝利。細身だがボールには数字以上の勢いがある
13 湯田統真(仙台育英/3年) 右投右打 強力投手陣でもスピードはNo.1。センバツ後に大きく成長し、春の東北大会で153キロをマーク
14 小玉湧斗(健大高崎/3年) 右投右打 北関東では木村と双璧。センバツでは制球を乱すも、春の県大会で前橋育英から18奪三振の快投
15 藤原大翔(飯塚/3年) 右投右打 九州No.1の呼び声高い本格派右腕。制球には課題が残るが、素材の良さなら全国でも上位だ
16 高橋史佳(日本文理/3年) 右投右打 入学直後に147キロをマーク。その後は少し停滞したが、春は150キロを超えるなど馬力を証明
17 仁田陽翔(仙台育英/3年) 左投左打 期待の大きいサウスポー。安定感には欠けるも、センバツ後に149キロをマークするなど急成長
18 早坂響(幕張総合/3年) 右投右打 昨秋に投手へ転向し、今春には早くも150キロをマーク。底知れぬポテンシャルに注目度は高い
19 杉山遥輝(横浜/3年) 左投左打 1年時から名門・横浜を支える。安定したコントロールと試合を作る能力の高さが光る左腕だ
20 細野龍之介(札幌新陽/3年) 右投右打 無名校ながら昨年は門別啓人(現阪神)と投手戦を演じ、練習試合で山形中央の武田陸玖も抑えた

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解説

大阪桐蔭のキャプテンでエースの前田。春季近畿大会もベンチ外となるなどセンバツ以降は公式戦の登板がないが、万全なら今年の夏も一番の主役候補だ【写真は共同】

 今年は下級生の頃から評判だった好投手が多い印象を受ける。

 なかでも実力、実績ともにナンバーワンと言えるのは、やはり前田悠伍(大阪桐蔭/3年/左投左打)だろう。力のある選手が揃うチームで1年秋から主戦となると、3季連続で甲子園に出場し、2年春には優勝にも大きく貢献。また、秋の明治神宮大会では高校の部としては初の連覇も達成している。

 140キロ台中盤のストレート、コーナーに投げきるコントロール、ブレーキ抜群のチェンジアップなどももちろんハイレベルだが、それ以上に目を引くのが高校生離れしたマウンドさばきだ。走者を背負ってもまったく動じる様子がなく、勝負所でギアを上げられるのも大きな長所である。センバツ以降は調整で公式戦の登板はなく、状態が気になるところだが、万全であれば今年の夏も主役となる可能性は高い。

 総合力の高さで前田に続く存在と言えるのが、東松快征(享栄/3年/左投左打)、坂井陽翔(滝川二/3年/右投右打)、木村優人(霞ケ浦/3年/右投左打)の3人だ。

 東松は2年春からエースとなり、昨年夏には早くも149キロをマーク。秋まではコントロールに不安があったものの、この春は柔軟性が増したことでフォームのバランスが良くなり、安定感が一気に増した印象だ。先日行われた大阪桐蔭との練習試合でも5回を投げて無失点、6奪三振と圧巻の投球を見せた。球威に関しては前田よりも上との声が多く聞かれ、夏の投球次第では評価が入れ替わることも考えられるだろう。

 坂井も下級生の頃から評判の大型右腕だ。昨年秋の兵庫大会ではセンバツで準優勝することになる報徳学園に敗れたものの、7回までは無失点の好投を見せた。長身で手足の長い、いかにも投手らしい身体つきで、角度のあるストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークする。また打者が“消える”と話す縦のスライダーなど変化球も多彩だ。夏に報徳学園と再戦することになれば、全国でも屈指の注目カードとなるだろう。

 木村は1学年上に好投手が多かったこともあって、エースとなったのは2年秋からだが、冬を経て大きくスケールアップを果たした。春の茨城大会で150キロをマークしたストレートは数字に見合う勢いがあり、鋭く変化するカットボール、スプリットを低めに集められる制球力も光る。坂井に比べるとやや細身だが、フォームの躍動感は申し分なく、身体が出来上がればまだまだ球速が上がる可能性を秘めている。

今春のセンバツで完封勝利を挙げて一気に評価を高めた光の升田。伸びのあるストレートが武器の本格派右腕が、12位にランクインした【写真は共同】

 ランキング5位以下には甲子園出場経験のある投手が多くを占めたが、それ以外で注目度が高いのが7位の武田陸玖(山形中央/3年/左投左打)と10位の天野京介(愛産大工/3年/右投右打)だ。

 武田は二刀流で注目を集めているサウスポー。昨年秋の東北大会、専大北上戦ではみずからツーランを放ち、1失点完投とまさに大車輪の活躍を見せている。4月に行われたU18日本代表候補合宿では、調整中ながら140キロ台のボールを連発するなど高い能力を見せた。春の県大会は死球を受けた影響などで自身が欠場したままチームは敗戦となっただけに、夏はその悔しさを晴らす快投に期待したい。

 愛知県内で東松に続く存在と見られているのが、大型右腕の天野だ。この1年で見違えるほど身体が大きくなり、スピードもコントロールもレベルアップを遂げた。特に両サイドを突く制球力は見事で、三振を奪う能力も高い。昨年秋は中京大中京、今年の春は愛工大名電を相手にも接戦を演じており、夏も強豪校に対してどんな投球を見せてくれるか楽しみだ。

 11位以下にはセンバツの初戦で彦根総合を完封した升田早人(光/3年/右投右打)、昨年秋に投手に転向したばかりだが、すでに150キロをマークしている早坂響(幕張総合/3年/右投右打)、北海道で注目を集める細野龍之介(札幌新陽/3年/右投右打)など、いわゆる強豪校ではない高校の好投手もランクインした。

 現在はトレーニング方法などの情報も溢れており、特に投手は個人でスキルアップができる。それだけに今後、地方大会の戦いを通して意外なチームから全国クラスの投手が台頭してきても、不思議ではない。

【監修・寸評・解説:西尾典文】
(企画・編集/YOJI-GEN)

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