開幕当初は不調が心配されたが、巨人のV奪回に坂本勇人の活躍は欠かせない【写真は共同】
ファンが選んだ攻撃型の最強遊撃手は、坂本勇人(巨人)がダントツの票を集めて1位に輝いた。守ってはゴールデン・グラブ賞5回。打っては首位打者、最高出塁率、最多安打各1回。通算安打はすでに2000本を超えており、史上2番目の年少記録(31歳10カ月)の名球会入りも2020年に果たしている。
「打撃も要の実力だから」(以下、カギカッコ内はファンのコメント)
「打てるショートといえば坂本以外考えられないから」
昨年までの通算安打数は2205本。3000安打を達成すれば、張本勲(元東映ほか)以来、史上2人目の快挙になる。もちろん、遊撃手では初めてだ。
2位は現・西武監督の松井稼頭央。並外れた身体能力と強肩で魅せた華やかな守備、そして俊足強打のスイッチヒッターとして、一世を風靡(ふうび)した。
「スイッチヒッターで、トリプルスリーを達成した印象が強いため」
「攻めを感じるから」
メジャー移籍後は二塁転向を余儀なくされたが、楽天で日本球界復帰と同時に遊撃へと返り咲いた。
3位は“ブンブン丸”こと、池山隆寛(元ヤクルト)。遊撃手として史上初の“3割30本”を打ったのは、この人だった(※のちに元広島・野村謙二郎、上記の松井、坂本が達成)。
「パンチ力があり、ホームランが打てるショート」
「思いっきりのよさ」
晩年の池山が三塁にコンバートされ、そのあと遊撃に入ったのが、当時の野村克也監督に“(守りだけの)自衛隊”と呼ばれた宮本慎也だったのは、不思議な巡り合わせである。
4位の石毛宏典(元西武ほか)は「西武全盛期に活躍していた」選手。特に「斬り込み隊長として、黄金時代を築いた」1982年からのイメージが、当時を知るファンには強く残っているようだ。
立浪和義は二塁での出場が圧倒的に多いが、遊撃での活躍も強烈にファンの印象に残っている【写真は共同】
5位には現・中日監督の立浪和義がランクイン。通算では遊撃(426試合)より二塁(1148試合)、三塁(570試合)を守った試合のほうが多く、ゴールデン・グラブ賞の受賞も遊撃部門では88年の一度きりではあった。それでも「打撃や盗塁に長けていた」「さすがはミスター・ドラゴンズ」と、票を集めたのはさすが。
6位の鳥谷敬(元阪神ほか)には、「名球会入りした打撃力はもちろんですが、フォアボールの多さも評価できると思います。また練習においてもストイックな性格が幸いし、多くの若手の手本となったことも評価の一因です」とすべてを語る、熱いコメントが。
7位の石井琢朗(元横浜ほか)は、「守備力を期待されつつ、攻撃面で中軸やチャンスメイク、切り札的な起用をされていて、タイトルを獲ったこともある」と評価された。タイトルは盗塁王4回、最多安打2回。ゴールデン・グラブ4回受賞(うち遊撃部門は1回)の実績の持ち主である。
8位・川﨑宗則(元ソフトバンクほか)が、「積極的にバットを振る」姿勢や盗塁王、最多安打各1回のタイトル獲得歴のみならず、「ガッツあふれるイメージ」「愛称(ムネリン)とインパクト」で推す声も見られたのは、やはりキャラクターゆえだろう。
9位の源田壮亮(西武)と10位の今宮健太(ソフトバンク)は、わずかな差。源田は「WBCで負傷していたのに得点につながるヒットを打ったのは、普通じゃないと思ったため」と、世界一への貢献も大いに称えられた。今宮は「いい場面でよく打っている印象」が目立った投票理由。ちなみに今宮の昨季のOPSはリーグ8位の.761、得点圏打率は同3位の.337だった。
最後に11位以下から、レジェンド遊撃手を一人。20位の豊田泰光(元西鉄ほか)は、「西鉄の黄金期を支えた、長打力と確実性を備えた歴史に残る遊撃手」として球史に輝く。坂本が首位打者を獲得したちょうど60年前――1956年に遊撃手初の首位打者を獲得した、“攻撃型遊撃手”の先駆けである。
(文:前田恵、企画構成:スリーライト)