WBC・出場選手ランキング【投手編】
記事
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はメジャーリーガーを中心に世界の一流選手が顔を揃えた舞台となる。今回のコラムでは出場全20カ国の選手を5項目10段階で評価し、それぞれの合計によるランキング形式で上位になった選手を中心に紹介する。
投手編の各数値の算出方法を簡潔に述べると、速球はストレートやツーシームなどの球速や被打率など、球威はゴロの多さや被本塁打の少なさなどを対象とし、それぞれの項目で過去の3年の成績を重み付けしてベースの値を求めた上で、リーグ間のレベル差などを踏まえて算出している。また今回はスタミナを評価項目からは除外している。1試合平均で7イニング投げる投手もいれば5イニング程度の投手もいるのは承知の上で、今大会は投球数に一定の制限が加えられており、どの先発投手もスタミナよりも投球数の上限によって降板するケースが多いと判断したためである。その関係でリリーフ投手が相対的に評価されやすいランキングになっていることは念頭に入れてもらいたい。
(企画・編集/データスタジアム株式会社)
※ランキング上位と寸評コラムはスポーツナビアプリでご覧いただけます
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解説
総合トップは昨年のナショナル・リーグでサイ・ヤング賞に輝いたサンディ・アルカンタラ(ドミニカ共和国)となった。平均球速158キロのツーシームをはじめ、チェンジアップが148キロ、スライダーでも145キロと持ち球すべてにスピードがある。四隅を狙うような投球スタイルではなく、球威を生かしてストライクゾーン内で勝負するタイプで四球の期待はあまりできず、22年に1イニング平均投球数が14.2と球数に制限があるWBCのルールにおいても長いイニングを消化できるだろう。現役最高クラスのピッチングがどのようなものか、アルカンタラを見たことのないファンは、ぜひ彼の登板試合を見てほしい。
2位から6位までの間に侍ジャパンで先発を任される見込みの大谷翔平、ダルビッシュ有、山本由伸、佐々木朗希の4人が入った。すでにMLBで実績を残し、サイ・ヤング賞投票で上位に入った経験のある大谷やダルビッシュがこの位置につけているのは意外なことではないだろう。その上で、2年連続沢村賞に輝いた実績がありながら、今季から投球フォームを見直すなど変化を恐れない山本や、MLBでもそうはいない160キロ超のボールを連発できる先発投手の佐々木も彼らに比肩しうる存在だ。また今大会の特徴として、投手でMLBを代表するエース格の参加は野手と比べるとはるかに少なく、加えてアメリカのクレイトン・カーショーやドミニカ共和国のフランバー・バルデスなど有力投手の辞退もあり、相対的に層が薄いことも上位評価の原因の一つだ。大会参加国でトップといっても過言ではない先発陣が3度目の栄冠を狙う日本代表にとっては最大のストロングポイントといえる。
ただし、エース格の参加が乏しい中で救援陣は豪華なメンバーが勢ぞろいする。昨季課題だった制球面に改善が見られた上で驚異の奪三振率17.13をマークしたエドウィン・ディアス(プエルトリコ)や、22年のワールドシリーズの覇者であるアストロズのクローザーを務めたライアン・プレスリー(アメリカ)を中心に、カットボールで160キロ以上の球速を叩き出すカミロ・ドバル(ドミニカ共和国)や“魔球”チェンジアップを操るデビン・ウィリアムズ(アメリカ)といった所属チームの守護神、アダム・オッタビーノ(アメリカ)やジオバニー・ガイェゴス(メキシコ)といったセットアッパークラスが招集されていて、ロースコアの展開になれば得点機会はそう多くはない。また、日本球界ではおなじみのライデル・マルティネスやリバン・モイネロ(ともにキューバ)もボールのスピードや変化球の精度、制球力から彼らに遜色ない力を持っていると考えられ、対戦国の驚異となるだろう。
他にも21年のナショナル・リーグ最多勝、22年に最優秀防御率のタイトルを獲得したカーブが持ち味のフリオ・ウリアス(メキシコ)、MLBでも上位の有望株と目され、昨季開花の兆しを見せた平均球速155キロの快速球左腕であるヘスス・ルザルド(ベネズエラ)や、17年大会にはアメリカ代表の先発としてMVPに輝き、今大会はプエルトリコ代表として出場する技巧派のマーカス・ストローマンなど、先発ローテーションで活躍している投手が参戦している。短期決戦ゆえに、各国リーグでの実績は関係ないといわんばかりの快投を見せる投手も出てくる可能性は十分で、各選手の個性あふれるピッチングに期待したい。