五輪代表が直前合宿で得た3つの成果 調整とOAの融合、そして危機感
ブラジル戦の衝撃、選手に芽生えた危機感
親善試合でブラジルの強さを目の当たりにし、選手たちに危機感が芽生えた 【写真は共同】
結論から言えば、疲れのピークに達し、「一番キツい」(原川力)状態だったために大苦戦。開始 1分に興梠のゴールで先制したが、その後はブラジル4部リーグの相手に押し込まれ、前半終了間際にセットプレーから失点。メンバーを大幅に入れ替えた後半は盛り返したものの、1−1の引き分けに終わった。
もっとも、指揮官は苦戦も織り込み済みだった。試合後「今の自分たちのコンディションを知ろうというなかで、こんなものだろうなと感じている」と振り返ったが、決して強がりには聞こえなかった。キャプテンの遠藤も、あくまでもコンディション調整と確認の場ということを強調した。
「(興梠)慎三さんのワンタッチのフリックとか、基点になるプレーは随所で出ていたし、ハルくんのオーバーラップのタイミングも分かった。そんなに悪くはなかったと思います」
翌28日にアラカジュ合宿を打ち上げた日本代表は、その日のうちにゴイアニアに移動し、ブラジルとの親善試合に備えた。30日に行われたゲームは前半のうちに2失点して0−2。スコア以上に完敗だった。とりわけブラジルがネイマール、ガブリエル・バルボサ、ガビリエル・ジェズスといったベストメンバーを並べてきた前半は、日本はシュートを1本も打たせてもらえなかった。
ブラジルの強さがどれだけ衝撃的だったかは、ミックスゾーンでの選手たちの様子を見れば分かる。放心状態の者、言葉数が少ない者、足を止めず立ち去っていく者……。
「ブラジルももちろんすごいですけど、自分にも問題があった。もっと修正して、もっとうまくなりたいと思いました」と中島が言葉を絞り出せば、矢島は「もう何だろう。差というか、比べちゃいけないくらいの、比較対象にも入っていないくらいのうまさ」とネイマールについて言及。前日に「楽しみです」と対戦を心待ちにしていた笑顔は、すっかり消え失せていた。
ブラジル戦は「仮想ナイジェリア」
追加登録の鈴木武蔵(右)も練習に合流している。ナイジェリア戦は2日後だ 【写真は共同】
大会前の準備試合の組み方は、大きく分けてふたつある。ひとつは、自分たちよりも弱い相手と戦い、確認作業を行ったうえで、勝って弾みを付けること。もうひとつは、自分たちよりも強い相手と戦い、課題をあぶりだしたうえで、チーム内に危機感を芽生えさせ、引き締めること。
相手にブラジルを選んだ時点で、おそらく後者の意味合いが強いはずだ。効果のほどは十分すぎるほどあった。
「抜かれないと思っているところで一歩前に入ってきた。このドリブルのスピード感は経験できてよかった」と話したのは遠藤だ。室屋成は「このレベルのチームは五輪にもなかなかいないと思う。しっかり準備して、この試合が良いきっかけになったと言えるようにしたい」と語った。ブラジルとの肌感覚を残した選手たちがナイジェリアと向き合ったとき、「ブラジルほどではない」と感じられれば、ブラジル戦の意義は一層高まる。
さらに指揮官は、ブラジル戦に「仮想ナイジェリア」の意味合いも込めていた。
「フィジカルコンタクトや攻撃の速さなど、ナイジェリアはアフリカの中でもブラジルに似ているようなところがある。ブラジルとやっておいてよかったなと思っている」
8月2日のトレーニングではナイジェリア戦に向けて4−3−3のフォーメションが試された。それは、引いて守るのではなく、高い位置からハメにいき、前からボールを奪うという意思の表れだ。「ブラジル戦の前半はビビってしまって後手を踏んでいた。後半のようなゲームができれば、ナイジェリアにも簡単にはやられないと思う」と大島僚太は言う。ナイジェリアとの決戦は、いよいよ2日後に迫ってきた。