ファインダー越しに見た羽生結弦 カメラマン・坂本清が追った7年間

スポーツナビ

【坂本清】

 フィギュアスケートをはじめ、バレーボールなど数々のスポーツシーンをカメラで切り取っている坂本清さん。フィギュアスケートは2005年の全日本選手権から撮り始めた。羽生結弦を初めて写真に収めたのは、08年の全日本選手権。ジュニアにすごい選手がいるとカメラマン仲間に言われたことがきっかけだったという。

「ほかの選手と違って見えましたね」

 坂本さんはこう回想する。この大会、出場選手中最年少だった14歳の羽生は、初出場で8位に入った。それ以来、坂本さんは数々の競技会やアイスショーを取材し、羽生の姿を追いかけている。この7年間で、被写体として感じた羽生の変化は。

「シニアに上がって、さらに五輪チャンピオンになってからはオーラが違うように思いますね。羽生選手は決めのポーズではまるというか、やっぱり絵になります」

 カメラマンから見た、フィギュアスケートの魅力は何だろうか。

「ジャンプひとつとっても、リンクレベルから見る選手たちの演技は迫力が違いますね。ジャンプの後に氷の破片が飛び散るのも見えますから。選手の表情もはっきり見えますし、自分のそばをさーっと通り過ぎていく時のエッジの音も聞こえます」

 フィギュアスケートならではの工夫や苦労もある。羽生の場合、フリーの4分30秒の中で、多い時は800カットシャッターを切っているという。

「フィギュアスケートは基本的にワンシーズン通して同じプログラムを滑りますので、撮る時には、プログラムを頭に入れておくことが重要ですね。シーズン前のアイスショーなどでも極力演技を見るようにして、撮りどころを抑えるようにしています。練習を見ないと、カメラがついていかないですね。一発で撮るのは難しいです。

 僕の場合は、ほかの写真家と違って記録写真としての速報性と枚数を求められているので、作品としての絵作りはそれほどできないんですが、やはり選手の美しいシーンを切り取ってあげたいと思っています」

 今回は、これまで撮りためてきた写真の中から、坂本さん自身に羽生のベストショットをセレクトしてもらった。

2008年12月:全日本選手権(長野)

SP:ボレロ 映画『ムーラン・ルージュ』より 【坂本清】

「当時は名前すら知りませんでしたが、印象に残りました。衣装がジュニアっぽくないですよね」

2009年12月:ジュニアGPファイナル(代々木)

【坂本清】

「憧れていたプルシェンコをまねて、マッシュルームカットにしていたんですよね。この髪型がジュニア時代の羽生選手のイメージです」

2010年10月:NHK杯(名古屋)

FS:ツィゴイネルワイゼン 【坂本清】

「この大会で4回転トウループを成功させたんですよね。シャッタースピードが速いので、ジャンプを美しく撮るのは難しいのですが、羽生選手はジャンプの時にも崩れないことが多いです」

2012年3月:世界選手権(ニース)

FS:映画『ロミオ+ジュリエット』より、映画『プランケット&マクレーン』より 【坂本清】

「国旗がバックにあって、演技後のちょっとほっとしたような、放心したような表情がいいですね」

2012年11月:NHK杯(宮城)

FS:ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』より 【坂本清】

「地元・宮城での優勝ということで、表情がとても嬉しそうですよね」

2012年12月:GPファイナル(ソチ)

SP:パリの散歩道 【坂本清】

「演技の後半はシャッターをたくさん切りますね。見せ場は特にステップだと思います。この時はリンクサイドではなく客席から撮ったので、上からの構図になっています」

2012年12月:全日本選手権(札幌)

【坂本清】

「全日本初優勝の時ですね。あえて3人並んだ表彰台の写真を選んでみました。2位の高橋大輔選手、3位の無良崇人選手ともにいい笑顔ですよね」

2013年12月:GPファイナル(福岡)

SP:パリの散歩道 【坂本清】

「スピンに入る瞬間がとらえられたので」

2014年3月:世界選手権(さいたま)

FS:映画『ロミオとジュリエット』より 【坂本清】

「演技終わりのスピンのシーンですね。力を振り絞っているさまが伝わってきます」

2014年4月:ソチ五輪パレード(仙台)

【坂本清】

「パレードはどうしても写真に収めたくて仙台に行きました。9万人ものものすごい人が詰め掛けていて、びっくりしました」

2014年12月:全日本選手権(長野)

FS:映画『オペラ座の怪人』より 【坂本清】

「選手の表情を撮りたいので、クローズアップや顔が見える瞬間は多めにシャッターを切ります」
 当初、坂本さんには数ある写真の中から5枚を厳選していただくようお願いしたのだが、時間をかけて当時の映像を見たり、過去の写真を掘り起こしたものの、なかなか決められなかったそうだ。「人それぞれ好みが違うと思いますし、自分は選べないんですよ」。最終的には、12枚の写真が残った。

 今年も坂本さんはスケートカナダ、NHK杯、全日本選手権と、羽生が出場を予定している試合を撮影に行く予定だという。

坂本清

【提供:坂本清】

1998年のバレーボール世界選手権の取材をきっかけに、2000年よりフリーランスとして活動を開始。現在はバレーボール、フィギュアスケートを中心に国内外での世界大会を取材している。05年より全日本フィギュアスケート選手権、07年よりISUグランプリファイナル、09年より世界フィギュアスケート選手権をそれぞれ毎年取材している。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント