世界最速vs.世界最強、勝つのはどっち!? 青山剛のランニングナビ

青山剛

【Getty Images】

【写真:築田純/アフロスポーツ】

 自転車レースはチームプレイなので、エースと言われる選手を勝たせるために、ほかのチームメイトがそのアシストになり、選手にはさまざまな役割、そして特徴があります。特徴のことを「脚質」といって、その選手の得意分野を示します。

 下記が代表する主な脚質です。
・スプリンター=短い距離で爆発的なダッシュ、スプリント能力を持っている
・ヒルクライマー=その名の通り、登り坂が得意な選手
・TT(タイムトライアル)スペシャリスト=主に単独でハイアベレージで走り切れる選手
・オールラウンダー=登りもTTも強く、まさに「最強」なイメージ

※このほかにパンチャー、ルーラーなどもある。

 話を陸上競技に戻すと、例えば箱根駅伝5区山登りで強かった柏原竜二選手(東洋大)や、神野大地選手(青山学院大)などは、もちろんトラックや平地でも速いのですが、登りの力が突出しているので「ヒルクライマー」ですね。
 この連載で「現役最高フォーム」と称した大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)は、ラスト100mのスパート力こそ世界からまだ劣るものの、その高い高速維持能力からすると「TTスペシャリスト」でしょうか。今回の世界陸上男子5000m予選では、高速域からのさらなるスピードアップに対応する、今までの日本人が誰もできなかった走りを見せていました。残念ながらあとちょっとで予選通過ならずでしたが、本当に今後が楽しみです。

 その大迫選手を今年の日本選手権の5000mで、ラスト100mのスパート合戦の末に驚異のスプリントで破った村山紘太選手(旭化成)は、まさに「スプリンター」ですね。

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 では、オリンピックや世界選手権で勝つ長距離種目の選手の脚質はというと、「オールラウンダー」が多いというわけです。今回の世界陸上男子5000m、10000mの2冠に輝いたM.ファラー(イギリス)選手は、持ちタイムはもちろんトップクラスの上に、どんな展開になっても勝てる無敵のオールラウンダー=世界最強といえるでしょう。

 トラックが弱くても、ロードや駅伝で能力を発揮する選手、距離が長くなればなるほど強い選手や、クロカンが得意な選手など、実は陸上選手にも、タイムだけでは表せない特徴があります。

 テレビやメディアでの陸上選手の紹介も自己記録の表記だけではなく、こういった脚質も紹介していくと、もっと観戦が面白くなりそうですね。

 2020年の東京オリンピックに向けて、世界最強の日本人オールラウンダー・ランナーが現れることを楽しみにしています!

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著者プロフィール

元プロトライアスリート。大学時にプロ活動を開始し、1999年世界選手権日本代表に選出される。その後トライアスリート中西真知子選手のコーチとなり、指導者としての活動をスタート。同選手を2004年アテネ五輪出場に導く。現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのコーチとして競技者から初心者、子供、タレントまで幅広く指導。著書に『ランニング・コアメソッド』『DVDパーフェクトストレッチ100』など多数。(社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員 元日本オリンピック委員会・強化コーチ

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