長く走り続けられるカラダを育てる! 岡山大名誉教授が考案した“筋トレっち”

東邦出版

2種目の“筋トレっち”をやってみよう!

 私が考案したプログラムは、1日1種目の“筋トレっち”を行い、それを12週間続けるものです。「12週間も!?」と思う人がいるかもしれませんが、走るという全身運動を支える身体づくりには最低12週間はかかると考えてください。12週間で鍛えた身体はなかなか衰えないということは学術的に証明されています。つまり、12週間で一生ものの身体をつくることができるわけです。

 ここで12週間分を紹介するのは難しいので、“筋トレっち”とはどんなものなのかを理解してもらうために、2種目だけ紹介しましょう。どちらの“筋トレっち”も、「筋トレ→ストレッチ」という順番で行います。筋トレは、あまり体力に自信のない人は5回×3セットから始めましょう。軽くこなせるようなら回数を増やし、目標は15回×3セットです。セット間のインターバルは呼吸が整う時間が目安です。

 そしてストレッチは、ゆっくりジワーっと伸ばして、その姿勢を20〜30秒間キープします。呼吸を止めず、痛みが生じない範囲でやりましょう。モデルと同じポーズがとれなくても大丈夫です。大切なことは、鍛える筋肉をきちんと意識して筋トレを行い、ストレッチも「使ったこの筋肉を伸ばす」という意識で取り組むことです。どこの筋肉を使っているのか意識しているかどうかで効果が大きく変わってくるので、その点を頭に入れてトレーニングを行ってみましょう。

クロスレッグオブリーク・クランチ

【撮影:櫻井健司】

 お腹全体を鍛えるトレーニングです。ひねりを加えたトレーニングのため負荷は強めになります。腹筋が弱いと、腰が落ちたスライドの伸びないフォームになってしまうので、その点を補うためのトレーニングになります。

1)仰向けになり片手を頭に添え、片膝を立て、もう片方の足を立てた足に交差させる

【撮影:櫻井健司】

2)交差させた足の膝に反対側の肘がつくように、ひねりながら上体を起こす。このとき息を吐きながら上体を起こすこと。反対側も行う

【撮影:櫻井健司】

 筋トレを行ったあとは、お腹を緩めるストレッチをやりましょう。

★イスに腰かけ、左足を後方に伸ばし、左手を上げて、右側に倒していく。イスに乗せた足が浮かないように注意。反対側も行う

バックブリッジ・レッグレイズ

【撮影:櫻井健司】

 お尻と下半身、背中全体を鍛えるトレーニングです。ランニングに必要な各部をいっぺんに鍛えられますが、筋肉にかかる負荷がかなり高く、ストレッチも十分に時間をかけるようにしましょう。

1)両足を投げ出して床に座り、両手は身体の後ろにつく

【撮影:櫻井健司】

2)両手の位置はそのままで、片方の足を持ち上げると同時に腰も持ち上げ、その状態をキープする。持ち上げる足は床から離れる程度でもOK。床につけたかかとから肩までが一直線になるようにすること

【撮影:櫻井健司】

 かなり強度が強い運動なので、2種類のストレッチで十分に筋肉を伸ばしましょう。

★床に腰を下ろして膝を立てる。右足を倒し、右膝の前に左足を置き、上体を前に倒していく。交差させた足がずれないように注意すること

【撮影:櫻井健司】

★両足を伸ばして仰向けになる。両足を振り上げ、腰に手を当て、さらにつま先が頭の上に届くくらいまで後方に両足を伸ばしていく

強くしなやかな身体をつくるプログラム

 ここでは、主に体幹部を鍛えるトレーニングを紹介しました。しかし、実際には腕や肩などの上半身、太ももやふくらはぎなどの下半身など、全身をくまなく鍛えていきます。また、1つ目のトレーニングより、2つ目の方が負荷が高くなっているように、徐々に負荷を高めていきます。

 基本的にはどのトレーニングも自重で(自分の体重を負荷にして)行うもので、ダンベルやバーベル、チューブなどの専門的な器具は必要なく、水の入ったペットボトルやイスなど身近にあるもので十分に対応できます。

 ムキムキになるというよりは、強くしなやかな身体をつくるプログラムになっています。トレーニングを始める前と同じ生活をしたとしても、エネルギーの消費量がアップするので、それだけ脂肪がつきにくい身体になり、ダイエット効果も高まります。筋トレを効果的に、そして疲労を残さず、ケガを防ぎ、メタボ対策やダイエットにも効果を発揮する、それが“筋トレっち”なのです。

(撮影:櫻井健司、男性モデル:田野井強/ギグマネジメントジャパン、女性モデル:華湖/表現舞踏家)

指導者プロフィール:三浦孝仁(みうら・こうじ)

1957年9月28日生まれ。埼玉県出身。博士(医学)・学校法人朝日医療学園学園長・岡山大学名誉教授。早稲田大学卒業後、日本体育大学大学院へ。助手時代からスポーツ科学の研究手法を学ぶと同時に「ハイ・パフォーマンス・マネジメント」を学ぶ。その後、専門学校講師を経て88年に岡山大学へ赴任。体力学や運動生理学的研究とともに「ハイ・パフォーマンス・マネジメント」理論の検証・ブラッシュアップを行う。2013年10月より、学校法人朝日医療学園の副理事長に就任。指導者・教育者・研究者としての30年以上にわたる実績・研究成果を基に教育・経営に携わっている。14年4月には学園長に就任した。

筋トレっち 走れるカラダの育て方

【東邦出版】

 鍛えたい筋肉を「筋トレ」で鍛え、使った筋肉を「ストレッチ」で伸ばす。この組み合わせによって使った筋肉を意識しながら疲労回復ができ、効率のよい筋肉運動になる。「筋トレ+ストレッチ」は効率性と継続性を兼ね備えた画期的なトレーニング方法だが、当たり前のように思えて実は主として取り上げたのは本書が初めて。

 この「筋トレ+ストレッチ」を、パワーリフティング世界一を輩出した岡山大学体育会ウエートトレーニング部創設者で、岡山大学名誉教授の著者は “筋トレっち”と命名し、1日1筋トレっちで1週間(7日間)を1サイクルとして、ランナー向けにワークアウトを組み立てた。12週間のワークアウトをこなすことで、付け焼き刃ではない“本物”のランニング・ボディが手に入り、末永くランニングを楽しむことが可能となる。

 これからランニングを始める初心者はもちろん、フルマラソン完走を目指す人、自己タイムを大幅に縮めたいと意気込むアスリートまで、すべてのランナーに向けたトレーニング本。

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著者プロフィール

サッカーや野球、ゴルフ、テニス、ラグビーなどのスポーツ本、競馬や宝くじのギャンブル本を中心に、文芸、脳トレ、音楽、芸能……幅広いジャンルの単行本を出版。最近の売れ筋商品に『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』や『高校球児に伝えたい!プロでも間違うバッテリーの基本』など。

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