お話をうかがっている間にも、皇居ランナーたちがひっきりなしに「バン・ドゥーシュ」を出たり入ったり。そのたびに山村さんはなじみのランナーとおしゃべりを楽しみ、「いってらっしゃい！」と送り出していく。といって、“一見さんお断り”のような雰囲気はまったくない。この日初めて来たというカップルランナーも、気さくな山村さんの人柄もあり、すっかり仲良くなってしまっていた。

「私も昔は走っていたの。だから、ランナーのみんなの気持ちがすごく分かるし、ここに来てくれるみんなとはもう友だち感覚よ（笑）」

「家族風呂みたいなものだから」と山村さんが言っていたように、お風呂自体は決して広くはないけれど、駅＆皇居に近く、湯船につかれて、石けん・シャンプーが無料、また時期によっては各メーカーの食料サンプル品などを提供してくれて（僕が取材したときは「ウイダー　エナジードリンク　アップ」をいただきました）、それでいて４５０円は格安。そして何と言っても番台のお母さん、山村さんのお人柄が最高です。

「あなたも走っていかないの？　皇居はいいわよぉ〜」

　取材終わりに、ひとしきり皇居ランの魅力をたっぷり語ってくれた山村さん。お誘いはうれしいですし、確かに１度くらいは皇居を走ってみたいのはやまやまなんですが……。中学時代は陸上部だったのに、ここ１０数年まともに走った記憶がない僕としては、いきなりの皇居１周５キロはさすがに厳しい。へたをすると遭難してしまうかもしれない……！　というわけで、「ある程度走れるように練習してから、今度はランナーとしてここに来ますね」「待ってるわよ！」と約束しました。

　皇居ランナーたちのオアシス「バン・ドゥーシュ」。そこは身も心もホッコリと温まる癒しの湯なのでした。

（取材・文：森永淳洋／スポーツナビ）

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