自分自身が変わるためにも 宇都宮徹壱の「初めてのジム通い」第1回

宇都宮徹壱

久々に汗をかいて170キロカロリーを消費

【Getty Images】

 その後、いよいよトレーニングということになり、男性のインストラクターと交代。こちらも笑顔がさわやかで、きびきびとした身のこなしの好青年である。私の飲み仲間には、まずいないタイプだ。インストラクターという職業は、こういう明朗な人でないと務まらない職業なのだろうか。ともあれ、この日のメニューは以下のとおり。

(1)エアロバイクを10分間こいで体を温める
(2)ビデオを見ながらストレッチ
(3)チェストプレス(12キロ)で上腕と胸筋のトレーニング(10回×2)
(4)ローイング(14.5キロ)で背筋のトレーニング(10回×2)
(5)レッグプレス(43キロ)で足のトレーニング(10回×2)
(6)クランチで腹筋のトレーニング(10回×2)
(7)クロストレーナーで20分間の有酸素運動
 最もきつかったのが(3)のチェストプレス。最も軽い12キロでも音を上げそうになった。(4)のローイング、(5)のレッグプレス、(6)のクランチは初めてにしては難なくクリアして、インストラクターのお兄さんに褒められた。そして、この日のクライマックスが(7)。クロストレーナーというのは、ノルディックスキーのように手と足を動かすマシンで、全身が宙に浮いている状態で運動するので関節にかかる負担が少ない。これで20分間、徐々に負荷をかけながら全身運動を続ける。10分も続けると、次第に汗が噴き出してくる。久々の感覚。真夏の取材現場や激辛で有名なラーメン屋以外で汗をかいたのは、果たしていつ以来のことだろうか。このトレーニングだけで、私は170キロカロリーを消費することができた。

 人生初のジム通いは、およそ2時間弱で終了。「トレーニングコード」と書かれたピンク色の用紙に、今日のメニューを書き込んでもらい、来週の予約を済ませてフィットネスクラブを後にした。心なしか、夕刻の冷たい風が心地よく感じられる。今日1日、たった2時間ちょっとで、何かが劇的に変わったとは思えない。それでもジム通い初日で得たものは、間違いなくあったと確信している。

 まず「はじめてのジム通い」という、記念すべき一歩を踏み出すことができた。そして、具体的な目標数値を意識することができた。さらに「来週もまた来よう」という気分になることができた。いずれもほんの小さな変化でしかないが、その小さな変化の積み重ねが、目に見える大きな変化を生み出すかもしれない。インストラクターの女性は「少なくとも3カ月続ければ、体つきが変わってきますよ」と教えてくれた。とりあえず、厳しい冬の寒さが終わり、桜咲くころまでは頑張ってみよう。自分自身が変わるためにも。
<第2回につづく>

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)、『日本代表の冒険』(光文社)など著書多数。『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した。2010年より有料メールマガジン『徹マガ』を配信中。Twitter:tete_room

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント